翌朝目が覚めると枕が冷たくなっていた。どうやら寝ていた時に泣いてしまっていたようだ。顔を洗い朝食を食べると錆兎と義勇と共に最終選別に向かう。鱗滝さん、真菰、千里が見送りに来た。けど千里は私に見向きもせず錆兎や義勇だけに激励する。
「行ってらっしゃい。義勇も錆兎も頑張ってね」
真菰は私に対して名前を呼ばず抑揚のない声で言った。けど錆兎や義勇には心のこもった激励を送った。
(私のことどうでもいいんだ)
帰って来なくても別に構わない、私は真菰にとってそんな存在になってしまったようだ。
(鱗滝さんはどう思ってるんだろう)
子ども同士の喧嘩か何かだと静観しているのだろうか?何にせよ口を挟まないと言うのはそういうことだろう。
(鱗滝さんにも嫌われたら……)
5年以上一緒に過ごしてきたのだ。漫画の原作云々関係なく共に過ごした時間の分以上に信頼している。もし嫌われたら精神的に大ダメージを負うと思う。別れを済ませ3人で歩いていく。歩いてる間ずっと独りだった。一緒に歩いてるのに会話にも加われなかった。加わろうとすると無視をされた。置いて行かれなかっただけマシかもしれないが藤襲山に着くまですぐ隣で仲良く話す2人の声が苦痛に感じていた。
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(綺麗……)
藤襲山に咲く藤の花を見てそう思う。息を呑むほどに幻想的で暫しの間ほうけていた。錆兎や義勇も同じだったらしく2人も呆然としていた。気を引き締め広場に行くと10人ほどの少年少女がいた。その中に村田さんもいた。
「では行ってらっしゃいませ」
そう言われ山の中に入っていく。山に入ると早速鬼が出た。
「久しぶりの獲物だァ、それも旨そうな匂いをさせているなァ」
旨そう……私は稀血なのだろうか?そんなことを疑問に思いつつ襲いかかる鬼の頸を斬る
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」
刀に水のエフェクトが纏う。鬼の頸がゴトリと落ち、体は塵となって崩れていく。
(…………2人は大丈夫だろうか)
山に入ってすぐ2人は私と離れた。どうやら2人にとって一緒にいるのも嫌みたいなようだ。
(手鬼がいるからなぁ……こっそり探そうかな)
周囲に鬼がいないので人の気配を中心に探りながら山を駆け抜ける。
(うーん、あっ、いたいた)
丁度2人が村田さんと共に行動しているのを見つけた。そこに鬼が襲いかかった。義勇が怪我をしたが錆兎が鬼の頸を斬った。錆兎は村田さんに義勇を託すと声のする方へ向かった。私は錆兎の後をつける。錆兎は襲いかかっていた鬼全てを倒しみんなを助けた。そうやって順調に最終日まで時間は過ぎていった。
(このまま出くわさないといいけど……)
そんな私の願いも虚しく奴は現れた。鱗滝さんの作った面のせいで、鱗滝さんのせいで弟子が喰われていると手鬼が言った時、錆兎は激怒したし私もブチ切れた。
(鱗滝さんがくれたお面は鱗滝さんの優しい想いが込められている。それなのに……‼︎)
鱗滝さんの鍛練や岩斬りの試練が厳しかったのも私たちが死なないようにとあえて厳しくしてくれていた。鱗滝さんなりの優しさをいつも私は感じていた。そんな鱗滝さんを憎む手鬼に錆兎が斬りかかった。しかし……
パキンッ
多くの鬼を斬ったせいで摩耗していたのか錆兎の刀が折れた。それを見て咄嗟に出て行き錆兎に迫る手鬼の腕を斬り落とした。
「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦」
空中にいて足場がなく不安定だったためねじれ渦を放つ。手鬼の頸は神様印のチートな体だった私の力でも少し硬かったが斬る事ができた。そのまま頸は転げ落ち私が着地すると目の前には手鬼の体があり手を握って欲しそうにしていた。
(鱗滝さんの弟子を逆恨みで殺したことは許せないけど……)
何となく手鬼の悲しみが伝わる。暗闇の中たった独りでいる寂しさが。誰かに手を握って欲しいという思いが。私はそっと手鬼の手を握る。すると手鬼はそっと握りしめてきた。その手は私の手より少し温かかった。
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私が助けたことが意外だったのか錆兎は呆然とこちらを見ていた。そして気を取り直すと何事もなかったかのように山を降りていった。空を見ると東の空が白んでいた。
「おめでとうございます、無事で何よりです」
山を降り広場に戻ると最初の時と同じ人数が集まっていた。けど義勇は怪我をしているからか意識が無さそうだった。そばで錆兎が寄り添っていた。
(ショタの錆義……破壊力がヤバい)
前々から思ってたがかなり絵になる。イケメンショタ2人の場面がこんなに破壊力抜群とは思わなかった。きっとお姉さん達の心を鷲掴みにするだろう。ちなみに村田さんはこの頃からさらつやストレートだった。きっとこの頃から椿油を使っているに違いない。
(…………鬼殺隊でお給料貰ったらスキンケアも考えるか)
女子として大事なことだろう。今はあまり傷んでなくても後のことを考えたら絶対に要る。そのあと玉鋼の選定と隊服の支給、あと階級を刻まれたあと義勇の怪我の手当てをしてもらって帰路についた。フラフラな義勇を錆兎が支えて帰っていた。私も手伝おうとしたけど錆兎に睨まれて手伝えなかった。日が暮れかけた頃やっと狭霧山に着くと3人とも鱗滝さんに抱きしめられた。
「よく生きて戻った‼︎」
感極まって3人とも泣いた。
(生きて帰って来れた……‼︎…………え?)
ふと視線が気になり鱗滝さんの後ろを見ると物陰から千里が射殺すような目で私を睨んでいた。