最終選別が終わって日輪刀が届く前日の日、私は千里に呼び出されていた。
「千里、何の用?」
「気安く名前で呼ばないでくれる?あんたに呼ばれると虫唾が走る」
ドスの効いた低い声でそう言われた。これが千里の本性なのだろうか。初めて見る千里の雰囲気に呑まれていると千里が話を進めた。
「あんたさぁ、転生者よねぇ?そうでしょ?西園寺結衣」
ドクンと心臓が止まるかのような気持ちだった。だって西園寺は……前世の私の苗字だったから。この世界では名前は前世と同じだったが苗字は違った。西園寺なんてお金持ちっぽい名前ではなく鱗滝さんが考えてくれた天堂というちょっと珍しい苗字。だから千里に前の苗字を言われ目の前が真っ暗になった。
「まあ、あんたに挨拶されて気づいたけどね。びっくりしたわー。死んだと思ったあんたがイケメン神様が転移させてくれた世界にいるんだから。ねえ、消えてくれない?目障りなのよ。何鬼滅キャラと仲良くしてんのよ。しかも勝手に手鬼から錆兎救済してるし」
やっぱりあの時からバレてたのかと冷静に思っていた。というか千里は私の時と違う神様が転移させたのか。
「何でそんなに私を目の敵にするの……⁉︎」
「そんなの決まってるじゃない。あんたが幸せにしているのが気に食わないのよ。イライラする」
酷い言いがかりだった。‘ただ気に食わないから’それだけで今まで私からずっと大切な人たちを奪っていったというのか。
「あんたが最終選別前に泣き寝入りしたの見て胸がスーッとしたわ!笑いを堪えるのが大変だったわー。義勇達も単純よね。あんたが私をいじめてるって訴えたら最初は信じなかったくせに自傷してから訴えたら簡単に信じたわ!あんたが虐める暇さえ無かったのを忘れてね!……言っとくけどあんたに味方は作らせないから。どこまでも追いかけて死にたくなるほどの絶望を味合わせてやる」
私が何をしたというのだろうか。というか錆兎達私が千里を虐めてるって思ってたのか。だからあんなに無視したのか。純粋な彼らがか弱そうな千里の話を鵜呑みにしてしまったのも納得できる話だった。そうだよね、誰かを虐めてるかもしれない人と話したくなんてないよね。軽蔑だってするに決まってる。私だって同じ立場ならそうしてたかもしれない。でもさ……私ずっと鍛練してたんだよ?錆兎達が4人で仲良くしていた時も独りでずっと。千里はずっと錆兎達と一緒だったじゃん。私が千里と一緒だったのって鱗滝さんもいる時くらいだったよ?虐めてるなら鱗滝さんだって何か言うはずだよ?ちょっと考えれば分かるじゃない。
庇護欲を掻き立てる可愛らしい容姿の千里はそれを感じさせないほどの歪んだ笑顔で愕然とする私を見る。千里の掌で踊らされていた私は酷く滑稽に見えるのだろう。
「まあ、鬼殺隊に入ったら絶対にあんたを陥れるから楽しみにしててよ」
そんな千里の言葉も聞こえないくらい私は錆兎達に信じてもらえなかったことがショックだった。千里は私を置いて麓へと降りて行った。
「私……どれだけ信用なかったのかな?話を聞いてくれたっていいじゃない?千里の話しか聞かないで信じて決めつけるなんて酷いよ……‼︎何で…………何で信じてくれなかったの…………」
もし無理矢理にでも話を聞いて貰えばよかったのか……いや、余計に溝が深まっていたかもしれない。誰もいない山の中、ボロボロと涙を流し嗚咽を漏らす。もう、元には戻れないのだと悟った。
『結衣、なかなかやるな‼︎』
『錆兎こそ‼︎』
『結衣、今度は私が相手だよ!』
『ど、どっちも頑張れ‼︎』
・・・・・・
・・・・・・
『どんな事があってもお互いを支え合って頑張ろう‼︎』
『『『もちろん‼︎』』』
4人で笑い合っていたあの頃には。
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散々泣いたあと山の川で目を洗い麓に戻った。鱗滝さんは買い出しに行って不在であった。戻っても誰も話しかけて来なかった。そして翌日、3人の刀鍛治師の人たちがやってきた。
「いやー、驚きましたよ。今回は全員が合格というんですから。我々も大忙しでしたよ」
そういうのは鉄穴森鋼蔵さん。この人は義勇の刀担当だ。
「儂も驚いた。こんなこと初めてだからの」
キセルをふかしながら鉄井戸さんも賛同する。鉄井戸さんは錆兎の刀担当だ。
「さぁさぁ刀を抜いてみなぁ」
皆さん、このセリフで察せられた通りもう1人は鋼鐵塚さん。名前が蛍と可愛らしい人である。私の刀担当である。…………折ったらみたらし団子だな。
鋼鐵塚さんに急かされ3人同時に刀を抜く。すると色が変わり始めた。義勇と錆兎は深い鮮やかな青色だった。一方、私はというと……
「黒っ!」
「黒いな……」
そう、炭治郎と同じで黒かった。……いや、よく見ると紫にも見える。光の加減で黒にも紫にも見えた。
(日の呼吸?月の呼吸?どっちに適性があるのかな?)
漆黒なら日の呼吸、はっきりとした紫色なら月の呼吸に適性があるはず。だが私は光の加減によって変わるのでどっちかわからない。刀に気を取られ気づかなかったが後ろでは千里が刀の色を見てギリギリと歯ぎしりしながらこちらをみていた。