嫌われてしまったとしても   作:アルル・

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陸話

宇髄さんの奥さん3人と文通し始めてしばらくが経った。たわいもない話をお互い綴る。この時の私にとって3人との文通は密かな楽しみとなった。久しぶりに人とー紙の上だがー会話するのが楽しかった。会うたびに隊士達に罵倒され蔑んだ目で見られていた私にとって文通は数少ない心の拠り所となった。

******

ある日

 

「カァ、炎柱ヨリ呼ビ出シィ‼︎直グニ炎柱邸に向カウベシィ‼︎」

 

紡がいきなりそんな伝令を届けた。

 

(はあ!?私なんかしたっけ!?…………もしかして)

 

なにもやらかした記憶がない私だが一つだけ心当たりがあった。

 

(噂のことかなぁ……)

 

鬼殺隊士に広まった自身の悪い噂。それしか思いつかなかった。おそらく柱合会議でいきなり裁判をする前に話を聞くつもりなのだろう。

 

(行くか……やましいことなんて何一つないんだし)

 

紡に案内され炎柱邸に向かう。門の前では現炎柱の煉獄慎寿郎が仁王立ちをして待っていた。

 

「呼び出しに応じ馳せ参じました。階級己、天堂結衣です」

 

炎柱はこちらを向くとかなり驚いていた。大方噂の張本人がこんなチビだとは思わなかったのだろう。 

 

「入れ」

 

無愛想に言われ中に入る。案内されたのは家の中ではなく庭だった。そしていきなり木刀を投げつけられた。

 

「構えろ」

「え?」

 

いきなりのことで目が点になった。とりあえず投げられた木刀を拾い構える。

 

「今から模擬戦をやる。一歩でも俺を動かせばお前の勝ちだ。全力でかかってこい」

「あ、あの……」

 

たじろいだが炎柱の目はマジだったので腹を括った。

 

「……よろしくお願いします」

 

先手必勝ではないが勝利条件の通り炎柱は微動だにしないので私から斬りかかる。初撃は難無く受け流される。反撃に横から斬りかかられそれを避けた。そうやって何度も打ち合ううちに私の動きも洗練され攻撃が次第に鋭くなっていく。打ち合うこと10分ほど。私の一撃で炎柱はたった一歩だが動いた。

 

「……お前の勝ちだ」

 

そういうと炎柱は構えを解き家に入るよう促す。私は炎柱についていく。居間に通され奥さんの瑠火さんがお茶を置いた。

 

「……飲め」

 

言われた通りお茶を飲む。マイルドで甘みのある香りが良いお茶だった。

 

「……美味しい」

 

お面越しに私の緊張がほぐれたのを見て炎柱は話を切り出した。

 

「お前を呼んだ理由は分かってるな?」

「……はい」

 

ピリッとした空気になる。やばい、現役炎柱怖すぎる。

 

「お前の噂はお館様や俺たち柱にまで伝わっている。柱の中にはお前の除隊を提言する者もいたがお館様が却下なされた。不確かな噂で除隊させることはしないと」

 

知らないところで除隊とか話が大きくなってた。却下されたお館様、ありがとうございます。

 

「俺は隊の秩序を乱す者がどんな者か確かめるために独断だがお前を呼んだ。噂通り隊に相応しくなければ俺も除隊を提言するつもりだった」

 

やっぱりそうか。

 

「だがお前は想像以上に強く、判断力もあった。お前ほどの腕があるならば隊士を犠牲にせずとも鬼を討てる。大方最近の犠牲は噂を鵜呑みにした隊士が指示を聞かなかっただけだろう。噂が広まる前は誰1人犠牲を出していなかったみたいだからな」

 

あの模擬戦でそんなこと考えてたのか。っていうかかなり私のこと調べたんだね。

 

「とにかく俺はお前が噂と違い隊に必要な存在だと考えている。お館様にもそう報告しておく」

 

おお、よかった。現炎柱の信頼ゲット‼︎めちゃくちゃ嬉しい‼︎今まで裏切られたり最初から信用されてなかった私にとって必要だと言われたことはかなり嬉しいことだった。

 

ドサッ……

 

「母上‼︎」

 

向こうのほうで何かが倒れる音と母親を呼ぶ少年の声がした。私と炎柱が急いでそちらに向かうと瑠火さんが倒れていた。

 

「瑠火‼︎」

 

炎柱は声をかけるが瑠火さんは気を失っていた。私は怒られるのを承知で瑠火さんを診た。

 

(脈も呼吸もある……)

 

「炎柱、奥様は神経調節性失神です。すぐに目を覚まされると思います」

 

私が言った通り瑠火さんはすぐ目を覚ました。瑠火さんはやはり原作通り体が弱いみたいだ。

 

「君は医学にも明るいのか」

「今回のような失神をなさらないためには水分をこまめにとったり長時間の起立を控えてください」

 

予防法を教えるついでに普段何をしているか聞いてみた。

 

(あれ?これなら瑠火さん助けられるんじゃ……)

 

原作では瑠火さんが何の原因で亡くなったのかはわからない。ただわかっているのは病死したということだけ。

 

(普段の生活を聞いてみて分かった。瑠火さんの体調を良くするには……)

 

「炎柱、奥様は普段家にいてばかりなのですよね?」

「ああ、体が弱いからな」

「それはあまり良くありません。晴れている時は外に出て日光を浴びてください。長時間ではなく15分くらいで十分です。あと、部屋の中でできる運動を教えますので明日からなるべく毎日少しでいいので運動をしてください。晴れた時は外に出るついでに庭を歩いてもいいと思います。あっ、瑠火さんはタンパク質も足りてないのでお魚や豆腐なども食べるようにしてください」

 

ポカンとした顔で炎柱は見ていた。今言ったのは現代の健康法である。適度に日光を浴び、適度に運動し、バランスの良い食事をする。これらをしていなかったので瑠火さんは体が弱くなっていたのだ。

 

「それらをすれば瑠火は良くなるのか?」

「私が診たところおそらくそれでだいぶ良くなられると思います。でも無理はダメです。できる範囲で毎日続けてください」

 

分かったと炎柱は頷く。多分ダメ元で試してみるつもりだろう。けど瑠火さんは小娘のいうことなのに真剣に聞いてくれていた。そして母を心配していた炎柱そっくりの少年と口元に包帯を巻いた黒髪の少年ー煉獄杏寿郎と伊黒小芭内ーは瑠火を助けた自分たちと同い年くらいのその人物をキラキラとした目で見ていた。

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