弓取りと雨女   作:hirag

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18.5話

 

 今日は羽沢珈琲店の休日。何して過ごそうか。昨日は有咲ちゃん家に行ったし……つぐちゃんは夕方になるまで帰ってこないし退屈に思っていた。

 

 店の二階の自室でベットの上でSNSを眺めながらゴロゴロしていると懐かしい人から着信。

 

「あ、椿さんからメッセージ!」

 

 椿さんは昔、父が道場を構えていた時の同級生。確か今は駅前に出来たカフェでバイトしながら大学に行っていたはず

 

 椿さんのメッセージには、”一矢君。女の子とお茶してるよ。いやぁ~お熱いわね”と来ていた。

 

 どうしよう気になるな一矢の意中の相手。でも、下手なことしたらまた嫌われちゃうし嫌だな。

 

「意中の相手か……そんな子本当にいるのかな……あの子は……」

 

 ベットの上スマホを投げだしてゴロゴロしていると段々眠たくなってきた。

 

「あ、ダメダメ。暇だと言っている場合じゃない」

 

 急用を思い出し、ベットから飛び起きる。数日前に有咲ちゃん家に行った時に一矢の様子がおかしいって話を聞いた。

 あの子が不在の間、家に何か手掛かりがあるかもしれない。少し調べに行く必要があった。

 ______________________

 

「久々の我が家ってね。さて、あの子がいない間に何か情報になりそうなものを探し出そう」

 

 裏口の建付けの悪い扉をこじ開け、屋敷に侵入して一矢の部屋に入る。

 机の上には見覚えのあるノートと文房具、学校の配布プリントが置いていた。

 

「あ、わたしの日記! なんで一矢が持っているんだろう? まぁ、いいか。取り合えず回収……回収っと……」

 

 日記を持ち上げると開封済みの封筒と白い包み紙が姿を現した。封筒の中身が気になり確認するとそれは隣町の演武会の案内状が入っていた。

 

「なんだ。ちゃんと依頼貰ってるじゃん」

 

 ちゃんと家業をこなしているようで安心したのと同時に何か起こらないか不安が襲う。

 中身を元通りに直し、横にある包み紙も気になり開いてみると白い粉が入っていた。

 

「なにこれ? 漢方薬?」

 

 あの子に持病があるなんて聞いていない……

 確か……椿さんのお父さんは医者だったはず。少し調べてもらおう。

 

「1つだけ拝借っと……」

 

 持参していたジップロックに包み紙を1つ入れて、カバンの奥に忍び込ませて日記を回収しようとしたその時、一枚の手紙が日記の隙間から滑り落ちた。

 

「うん。なにこれ?」

 

 紙を見ていると住職さんから一矢に宛ての手紙だった。手紙の内容は次の演武会の手引きする内容が書かれていた。

 

「どうして住職が……こっちも少し探ったほうがいいかな?」

 

 わたしがやっていた時は、親戚の人から案内があったけど……いや、あの子を取り巻く環境が変わったから住職が間に入ってやり取りをしているのかな? 

 

「もしかして……」

 

 祭りの時にお坊さん達がわたしの周りをうろついていた。まるで、監視しているような……気のせいかな。

 ふと、顔を上げて窓の外を見てみると青空も緋色に染まっていた。

 

「しまった! もうこんな時間。急いで出て行かないと……あの子が帰ってくる」

 

 ______________________

 

「ただい……ま?」

 

 店の扉を開けるとつぐちゃんが誰かを慰めていた。気になったわたしは彼女たちの元に向かった。

 

「あ、理矢さん……お帰り」

「……」

 

 つぐちゃんの隣で目を赤くしているのは蘭ちゃんだった。

 

「何かあったの?」

「実は……一矢さんのことで……」

 

 数分後

 

「なるほどね……あの子がどうして変わってしまったのかね?」

 

 蘭ちゃんの話を聞くと、あの子に祭りの日にどうして姿を現さなかったのは何故か問いただしたけど、何故か口論になったらしい。

 

「大体なんなの! 時期跡継ってあたしの事をおちょくってんの!? いま、思い出しただけでもムカついてきた。でも、どうしてあいつは寂しそうな顔をしてたんだろう? それにあの声……」

「声?」

「うん。最後に何処かに聞いたことがある声を聴いた」

 

 彼女達の言葉を聞き、わたしは話すべきだと思った。

 

「理矢さん。どうして一矢さんは変わってしまったのですか?」

「その話をする前に珈琲でも淹れようか」

 

 わたしが調理台に向い人数分の珈琲を淹れて二人の前にカップを置いた。

 

「ミルクとお砂糖は各自で調整してね」

「ありがとうございます」

「いただきます」

 

 蘭ちゃんはそのまま珈琲に口に運ぶ。それに対してつぐちゃんはお砂糖とミルクを多めに淹れて呑んでいた。

 あの子も昔はつぐちゃんみたいにお砂糖とミルクをたっぷり淹れて可愛かったのに……今じゃ生意気小僧になっちゃって……

 

「──? 理矢さん。私の顔になにかついていますか?」

 

「ううん。何でもないよ。本題に入るけど、正直な話わたしもなぜあの子が変わってしまったのか詳しく分からない。でも、あの子は嘘をついていると思う」

 

「……嘘? どうしてそう思うのですか?」

「さっきの話を聞いている限りだと、ただ単に蘭ちゃんのことを避けているだけだとわたしはそう思うね」

「避けている? あたしはあいつに何も悪い事は……」

「違う違う。蘭ちゃんはなにも悪くはないよ。多分、あの子が変わったのは香矢が関係していると思う」

 

「香矢……」

「どうして香矢ちゃんが……」

「香矢が亡くなってから、わたしの家は全て変わった。あの子は弓に執着するばかりに山で事故に会うし、わたしは親戚関係から圧をかけられるようになった。あまりいい気持じゃなかったけどね。二人には……特に蘭ちゃんは分かるでしょう?」

 

 蘭ちゃんもわたしと同じく本人の意思とは関係なしに家督を継がされそうになった。

 だけど、わたしはそれが嫌で家から逃げた。

 

「……あたしもその気持ちは分かります」

「わたしが大学に行ってからは、あの子が家を継ぐために努力をしていたと思う。だから、あの子は君たちを見ると昔の……楽しかったころを思い出してしまうから蘭ちゃん達から逃げたんだと思う」

 

「その話だとあいつはあたし達より家の事を優先した……てことですか?」

「そうなるね」

 

 話を区切り珈琲を一口含む。一方、二人は何か考えているように見えた。

 しばらくの沈黙が流れた後、わたしは深く息を吐いて重い口を開いた

 

「これは二人だけに話すけど……わたしが此処に帰ってきた本当の理由はあの子をここから連れ出すため」

「──! それって……この街から出て行くって事ですか?」

「うん。此処はわたし達にとって思いでの地と同時に辛い場所でもある。本当のこと言うとあの子には弓道を継いでほしくはなかった。好きなことやりたいこともあったはず……」

 

 あの子はまだ17歳。いまからでも遅くないはず。望むなら自然に囲まれたところでゆっくりと暮らすのもできるはず。

 

「理矢さん。前から思ってたんのですけど、どうして理矢さんが家業を継がなかったのですか?」

 

 蘭ちゃんが素朴な疑問を投げかけてきた。

 

「あぁ、その事ね。ちょっと昔にいろいろやり過ぎて、わたしは親から勘当されたから干渉できないんだよね」

 

 勘当されたとしても、わたしはあの子。あの子達を放って置くことは出来ない。例え、恨まれていたとしても……あの子のためにわたしはまたみんなに嘘を吐く。特に目の前に居る二人と恋愛感情を抱いているひまりちゃんは特にね

 

 こんな事言えるわけない。

 

 

 

 

 

 

 

 一矢が此の世に居ないなんてね

 

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