「今日は昨日に比べて晴れ模様です」
テレビの中のお天気アナウンサーがそう告げる
今日の気温は30℃か・・・少し暑いな
テレビの電源を切り、カバンを背負って靴を履く。
「今日は部活がないからさっさと帰ろう」
戸締まりを確認して学校に向かう
ミーンミンミン――
蝉のうるさい音が頭に響く
「来週の自然合宿だけど誰と組むか決めたか?」
「まだ決めてない。どうせ組むなら千聖さんと組みたいな」
同級生の会話に耳にする
また、淡い期待を抱く人がいる。千聖は絶対そういう人と組まないからな
それより、自然合宿か・・・また練習の時間がなくなる
「めんどくさいな・・・」
「よぉ!朝から辛気臭い顔してんな」
後ろから裕太が肩に手を回してきた
「朝から元気だな、お前は・・・」
「元気だけが俺の取り柄だからな!それでさ、来週の合宿だけどよ。俺と組まないか?」
特に組む相手もいないし丁度いいや
「俺も丁度相手を探してたし」
「よし!あと三人必要だけどなんとかなるだろう!」
呆れるほど前向きだな・・・
そういえば、こいつ問題集どうしたんだ?
「ところで、この前の問題集はどうした?」
「あ~それの事だけど・・・」
裕太が目を反らした。さては、出来なかったなこいつ
「はぁ・・・お前って――」
「何でだよ!」
言葉を遮るように怒号が聞こえてきた
校門の方をみると、氷川さんと金髪の男子生徒が揉めていた
今日は持ち物検査があるんだった。
「規則ですからこれは没収します」
「ちょっとぐらいいいじゃん?」
「ダメです」
氷川さんは金髪の持ち物らしきポーチを段ボールに入れた
「おお・・・コワイコワイ、お前は大丈夫か?」
「不要物が無いなら怯える必要ないだろう?」
「あー・・・実は・・・」
裕太の鞄からライターが出てきた
「なんでライターなんか持ってんだよ。まさかお前!」
「吸ってない吸ってない!煙草なんてこれぽっちも」
「まぁ、バレないよう頑張れよ」
「次の人、どうぞ」
生徒会の人に促され、俺は氷川さんに鞄を渡す。
そういえば氷川さんは誰かと班を組んだんだろう?
「おはようございます。氷川さん」
「おはようございます。伊丹さん、先日は今井さんが失礼しました」
氷川さんは頭を下げた
「いえ、気にしてないので・・・あの氷川さん」
「何でしょうか?」
「来週の自然合宿、誰かと組んでいますか?もし良かったら・・・組みませんか?」
「いいですよ」
手元を動かしながら氷川さんはあっさりとそう返事した
「いいんですか?」
「えぇ、私達も人を探していたので・・・」
「私達?」
「はい、私とあそこにいる白金さんです」
校舎の方を見てみると黒髪ロングの女性・・・白金さんが見ていた
「でも、班を組むにしてもあと一人足りないような・・・」
「いいえ、人数の関係上では2班は4人になります」
「じゃあ、俺たちがその1班になりますね」
「そういうことです。鞄、お返しします」
会話をしている間に持ち物検査が終了していた
「どうも、班の申請は俺が書いておきます」
「よろしくお願いします。あ、待って下さい」
「何ですか?」
「伊丹さんその後ろ髪、長すぎませんか?来週までに切ってきてください」
鞄を受け取り裕太の方を見ると案の定ライターが見つかり先生に怒られていた
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~昼休み~
班名簿に名を書き終え、担任に提出する
「このメンバーでおねがいします」
「ハイハイ、4人だけでいいんだね?」
「はい」
「じゃあ、受け取るよ」
職員室を後にし、自分のクラスに戻ると白金さんと目が合った気がした
考えてみれば今まで白金さんと話したことがなかった
同じ班になるからすこし話してみるか・・・
「白金さん、少しいいですか?」
「――ッ⁉」
突然声をかけた所為か、白金さんはビックリしてスマホを落としてしまった
スマホを拾い白金さんに渡す。その時チラッとNFOの記事が見えた
NFOとはNeo Fantasy OnlineというPCゲームで俺も息抜き程度でやっている
「はいどうぞ・・・」
「あ、ありがとう・・・ございます」
「いえ、驚かせてすみません。あの・・・NFOやっているのですか?」
「は、はい・・・もしかして伊丹さんも?」
「え、えぇ・・・以外に思えますか?」
「い、いえ・・・そんなことないです」
休み時間の間、白金さんとゲーム話題で話すことが出来た
キーンコーンカーンコーン
休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴った
「いい攻略法を聞きました」
自分の席に戻ろうとすると
「あ、あの・・・今度一緒に・・・やりませんか?」
「えぇ・・・時間があるときにお願いします」
それにしても白金さんがゲームやっているとは驚いた
早速、帰ったらレベル上げでもするとしよう
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~放課後 ショッピングモール~
え~と・・・虫除けスプレーにタオル、後は懐中電灯に下着に諸々・・・
「出費がかさばる・・・今月も厳しくなってきたのに」
そう呟きながら無地のタオルをカゴに入れていると――
「あ!伊丹先輩」
振り向いてみると、この前山で出会った山吹さんが荷物を持ちながら松葉杖をついていた
「山吹さんこんにちは。買い物ですか?」
「はい。アクセサリーを探しに来ました。先輩は合宿の買い出しですか?」
「家業の事で頭いっぱいで今まで準備してなかったので・・・それより、足は大丈夫ですか?」
「まだ少し痛みますけど生活には支障はないです」
「それなら良かったです」
「あの時、伊丹先輩とあの子がいなかったらどうなっていたか・・・」
「いいえ、あの時弟さんが叫んでいなかった俺も探すことが出来なかったし、感謝するのは弟さんですよ」
「そうですね。純には感謝しないと」
弟に感謝・・・我が家では絶対にありえない事だ
~山吹ベーカリー~
「すみません・・・家まで荷物を持ってもらって・・・」
「構いませんよ。困った人は見逃せないからね」
山吹さんの荷物と自分の荷物・・・少し重たいが松葉杖をついている山吹さんに運ばせるわけにはいかない気がした
山吹さんを家に送り、自宅に帰ろうとすると
「あ、待ってください」
山吹さんは戸棚からパンが入った袋を差し出してきた
「これは・・・」
「山で助けて頂いた分と今回の分です」
「ありがとうございます。とてもおいしそうです」
「沙綾!帰って来たのか?って・・・この前の!」
奥から山で遭遇した男の人が出てきた
「どうも・・・」
「いやぁ~この前はありがとうございます。此方感謝の印に・・・」
男性から食パン一斤を貰った
「ありがとうございます」
チラッと見えた神棚を見る
神棚には、破魔矢に祝辞が括り付いているのもが飾っていた
「あれが気になりますか?」
「い、いえ・・・では、俺はこれで・・・」
姉が射た矢・・・厄払い福を引き寄せる矢・・・
本来、俺が射るはずだった矢だった
俺は逃げるように山吹ベーカリーを出てた
「おや?一矢じゃないか?奇遇だね」
振り向いてみると、幼なじみの瀬田薫がいた
「薫。息災か?」
「ああ、毎日儚い一日を過ごしているよ。君の方は・・・少し疲れていないかい?」
相変わらず意味が分からないことを言ってるし・・・
「まぁ、言われてみれば疲れているかも・・・千聖に弓を教えろって言われたし・・・」
「君も千聖も大変だね」
「まぁな、薫は風の噂だとバンドを組んだと聞いたが・・・」
「うん?ああ、素晴らしい子と出会ってね。君と似たような夢をもった子でね」
「俺と似たような夢?」
「彼女は世界を笑顔にするって、君の願いの人々が幸福になって欲しい・・・似てないかい?」
願いか・・・
「そうかもな・・・」
「そうそう・・・今度、演劇があるのだが来てくれるかい?」
「行けたら行くよ・・・俺も忙しいから」
「そういえば、もうすぐ秋祭りだったね。今年も君が射手を務めるって聞いてるよ」
「ああ、去年のような失態は・・・」
「あれは運が悪かっただけで君は何も悪くない」
「ありがとう。そう言ってくれるのはお前と千聖だけだよ」
「それに彼女・・・
「そうかもな・・・でも、
「子猫ちゃん達かい?」
「その子猫が誰か分からないんだが・・・」
「あぁ、それはすまないね。君も罪な男だね」
「冗談でも笑えないぞ・・・バカ」