この苦しみ溢れる世界にて、「人外に生まれ変わってよかった」   作:庫磨鳥

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今回の視点主は『土峰真嘉』です。




第九話

 ──真嘉ー、ありがとねー。

 

 進学してから13日目の夜。いつものおやすみ代わりの感謝を言ってから、アイツは寝た。

 

 +++。

 

 ──愛奈(えな)先輩から話を聞いたオレたち二年生は同じ施設内にあったベンチと自販機が置いてある休憩スペースのようなところで話し合っていた。

 

「──だからって、あの人型プレデターのことを受け入れるっていうの?」

「うん! えなりん先輩の話を聞く感じ、他の『プレデター』とは違うみたいだし、きっと仲良くできるよ!」

「でも、先輩だって何も分かっていないって認めていたじゃない……。こんなこと言いたくないけど、最悪、操られている可能性だって……」

「そんな風には見えなかったけどなー。あの人型プレデター、えなりん先輩とつきっち先輩が抱き合っている姿を腕を組みながらじっと見てたよ!」

「それがなんの根拠になるっていうのよ!」

 

 オレたちはとりあえず愛奈先輩の話を本当であると結論付けた。月世(つくよ)先輩の活性化率が下がり、どれだけ時間が経っても『ゴルゴン』にならなかったことが決め手になった。

 

 だから、あの人型プレデターにはオレたち『ペガサス』の体内にあるP細胞の活性化率を下げられる〈固有性質(スペシャル)〉を持っている事は疑いようのない事実であると全員が納得した。しかし、だからといって相手は『プレデター』だ。人間を何十億人と殺したオレたちの天敵。

 

 受け入れるか拒絶するか、オレたち……というよりは二人が賛否分かれて激しく言い合っていた。

 

「いくら先輩たちを助けてくれたからって、『プレデター』と『ペガサス』は何十年も殺し合ってきた敵同士なのよ!?」

 

 拒絶を訴えているのは『篠木(ささき) 咲也(さや)』。いつもオレたちのブレーキ役を担ってくれている。戦闘ではそんな冷静で現実的な思考に何度も助けられた。厳しい事を常々言うやつだが、その内容はオレたちを気遣っているものばかりで、心配してくれているのが分かる。

 

 とにかくフォローが上手く、さっきだって愕然として固まることしかできなかった俺たちの代わりに、真っ先に愛奈先輩に発言してくれたのは咲也だった。

 

 咲也の意見はどこまでも真っ当だ。冷静で常識的、都合が良すぎることには裏があると危険視する批判的な意見は、オレをいつだって正気に戻してくれる。

 

 ……だけど長い付き合いだ。どうしてもいつもとは違う部分に気付いてしまう。先ほどからこめかみに指を当てている仕草が目立つ。本人に直接聞いたわけじゃないがオレは知っている、この仕草をするときは“なにかの声を聞いて苦しんでいる”ときだと。

 

 その頻度が多いということは、よほど無理して口を動かしているんだろう。あるいは本当は違うことが言いたいのかもしれない。だが、それを口にすることを自分自身が許してくれないのだろう、そのため咲也は何時ものようにブレーキになってくれている。

 

「人間の中に『プレデター』好きな人が居るみたいに、『プレデター』の中に人間を好きになってくれる個体が現われても不思議じゃないってー」

 

 逆に賛成しているのは『白銀(しろがね) 響生(ひびき)』。腰にまで届く銀色の三つ編み。小柄で童顔、あの『上代(かみしろ) 兎歌(とか)』っていう新入生と並んでもそう違和感はないが、こいつも立派な高等部二年生の一人だ。

 

 中等部一年から同じ寮部屋で暮らしている長い付き合いである響生は、オレの考えや行動をいつも肯定してくれた存在で常に後ろを付いてきてくれた。高等部になっても変わらなくて、どんな時でも明るく振る舞ってくれる彼女に救われた場面は数え切れないほどある。

 

 見た目に寄せているかのような子供っぽい話し方をする、その内容は楽観的なものに聞こえるが彼女なりに考えがあっての発言だってことはオレたち全員が理解している。

 

 そもそも響生はオレが決めた事に対して補足やフォローをする内容を自分の“意見”だと言う。そんな響生が、オレが何も言っていないのに自分の考えを話している。二年生のオレたちからすればかなりの異常事態だが、理由は分かっている。

 

 響生はいつだって、オレと“アイツ”のために何でもしてくれた。それこそ“バカ”にもなってくれた。だからあの『プレデター』を受け入れる意見を言うのは……つまりそういうことなんだろう。

 

 ──月世先輩の活性化率が下がった時、オレはどんな顔をしていたのだろうか?

 

「だからってそんなにすぐ決められるわけじゃ……」

「──きょうたちにそんな時間なんてあると思う?」

「っ! そんなこと言われなくても分かってる! でもはいそうですかって受け入れられるわけないじゃない!」

「落ち着け……レミ、お前はどう考えている?」

 

 熱を上げてきた二人をクールダウンさせるためにも、オレは『雁水(かりみず) レミ』の意見を聞くことにした。

 

「えっと……意見を述べさせて貰いますと──」

 

 くせっ毛が目立つ青髪で、本人曰く気弱貧弱系文学少女な見た目と言うが、そんな大人しい奴ではないことはここの誰もが知っている。

 

「あくまで創作で得た知識を前提とした考えですが、あの人型プレデターはなんらかの理由で人の心を宿したタイプで先輩たちへの対応からも危険性は少ないと感じました。しかしながら彼が使用する活性化率を下げる〈固有性質〉のようなものについて、小説や漫画ではああいったご都合主義の塊みたいなものが後になって脈絡もなく現われた場合、かなり重めの代償を支払われる展開が多く、そのため人型プレデターは受け入れる方向性で、〈固有性質〉に関しては、とりあえず様子見をするというのはどうでしょうか? はい」

 

 いつものように素早く長ったらしい“ひと言”を話し終えたレミは、またなにも喋らなくなった。話を振られたら長いひと言だけ喋って、また次、話を振られるまで黙る。そんないつもの調子に、オレはほんの少しだけ心が癒やされた。

 

 レミは紙の本を好む読書家なだけあって知識が豊富なのもそうだが、物事の見方に対する視野が広い。なので第3の選択を出してくれることが多く、考えが行き詰まった時には彼女の意見を聞くのがオレの中で定番となっていた。

 

 そしてレミの提案を悪くないと思った。人型プレデターを一旦受け入れて、〈固有性質〉については、また別の日にでも考える。そう、高等部一年たちのこともあるんだ。べつにいますぐに全てを決めなくても……

 

「……妥協なんて……無理よ……」

 

 そんな甘ったれた選択を選びそうになったオレを、こめかみを押さえた咲也が止めてくれる。

 

 ──そうだ、その通りだ。もしも人型プレデターを受け入れるなら、オレたちは“我慢”なんてできるはずがない。人型プレデターが高等部に居座ることになったら、そのときは俺たちのほうから……。

 

 だから咲也が言うように拒絶するなら全てでなければならない。響生の言うように受け入れるならば全てでなければならない。

 

 会話が止まった。咲也、響生、レミはオレを見る。どうやら三人はオレの判断を待つことにしたようだ。そんな中でオレは思わず逃げるように意見をまだ聞いていない『穂紫(ほむら) 香火(かび)』に視線を向けた。

 

「ふぁ……んぅ? どうしたの~」

 

 深い欠伸をして、目を閉じたり開いたりする香火。眠そう、ではない。実際寝たり起きたりを繰り返している彼女は、話を半分程度しか聞いていなかったと思う。だけど、それを咎めるものはオレたちの中にはいない。

 

 ──香火は三年の先輩たちよりも成人女性に見間違うほど大人びた容姿をしていて、だからか、心のほうもオレたちの誰よりも大人だった。

 

「香火は、あの人型プレデターについてどう思っている?」

「えぇ~。んー……一緒に……海に行ければって……真嘉がどこか決めて……浮き輪を……すぅ……」

 

 凜々しく気高かった。戦場で槍を振るう彼女は『ペガサス』の中でも最強と呼ぶに相応しい実力者で、その戦いぶりは見惚れてしまうほど綺麗で同年代だからこそ憧れていた部分もあって……それは今でも変わらない。だが、あの時の香火はもう居ない。

 

 過眠症で不眠症、オレたちは香火の状態をそう言っている。どこでも寝てしまう、時には一日の大半眠っているのに、寝不足のままの香火は現実と夢の合間で生きている。

 

 寝起きの多幸感によって支配され続けているであろう香火は、微笑みを絶やさないまま夢を混濁させた内容を話す。それでも彼女はオレに決めてと言った。勝手な解釈なのかもしれないが、それが香火本人の意志であるのだろう。

 

 ──結局、いつも通りになった。

 

 オレたち高等部二年生は、いつも最後にはオレこと『土峰(つちみね) 真嘉(まか)』の判断で物事を決めていた。だから、これまでの言い合いも提案も、全てはオレが判断するために必要な材料を提出していただけであって、人型プレデターを受け入れることを選んでも咲也は従ってくれる、拒絶しても響生は従ってくれる。レミも香火もそうだ。四人がオレの判断を待っている。

 

 ──いつもオレが決めてきた。こいつらはオレをいつも待ってくれる。自分の命に関わることなのに、オレなんて無視すればいいのにだ……。

 

「……真嘉?」

 

 咲也が心配して名前を呼んでくれるが返す余裕は無かった。

 

 ──ぐちゃぐちゃになる思考を、かき混ぜてかき混ぜてかき混ぜて一個の答えにならないかと試すが、いつまで経っても溶けもしなければ固まりもしない。むしろ混ぜていくごとに、吐き気だか気持ち悪さが増していき全身の穴から飛び出そうになる。

 

「真嘉?」

「まかまか?」

「真嘉さん?」

「ん~? 真嘉ぁ?」

 

 無意識に立ち上がってしまったオレに、四人がほぼ同時に名前を呼んでくる。明らかに様子がおかしいオレを、とても心配してくれている。

 

「……もう一度」

 

 そんな四人を不安にさせないようにと思ったら、自然と口を動かせた。

 

「え?」

「もう一度、人型プレデターに会ってくる……オレひとりで会ってきて見極めてくる」

「まって、そんなの危険よ! もしアイツが襲ってきたらどうするの!?」

「そんときは逆にぶち殺してやればいい。あの病室には【ダチュラ】だってある。遅れはとらねぇよ」

 

 自分の『ALIS』である大盾の【ダチュラ】はオレの身長と殆ど変わらない大きさだ。いくら高等部の施設が『ALIS』を振り回せるように広く作られていようとも、話し合いには邪魔になるだけだと病室に置いてきていた。

 

 ──あの人型プレデターがいる病室にだ。昨日までのオレなら絶対にそんなことはしなかった。

 

「……30分だけでいい、お前たちはここで待っててくれ」

「あ、真嘉!」

 

 響生の呼びかけに聞こえないふりをして、オレは病室へと戻るために長い廊下を歩きだした。

 

 +++

 

 ──中等部の寮ではオレと響生、そしてアイツ──来夢(らむ)の三人で生活する事となった。本当はもう一人いたが、小学生の時からの友達がいる部屋に移ると言って出て行き、そのままオレの知らない所で“卒業”してしまったためあまり記憶には残っていない。

 

 来夢は気弱なヤツだった。『ペガサス』になって戦うことが心底嫌だったが、親和性が平均よりも高いことから、『ペガサス』になった場合の家族に給付される金が多かった。

 

 金に困っていた両親が、できるだけ高い金になる娘を国に売りつける。『ペガサス』たちの間ではよくある話ではあるが、そういった理由で『ペガサス』になった来夢には覚悟ができていなかった。

 

 そんな来夢を単純に可哀想だと思った。中級家庭の育ちではあるが、オレも“親和性が高くて”『ペガサス』になったタイプだからと同情もした。いま思えばまったく違くて、むしろオレが勝手に仲間意識を芽生えさせただけだと、かなり後になって気付いた。

 

 死ぬのが怖いと布団を被って震える来夢を、どうにかしてやりたかった。だから柄にもなく言ったんだ。

 

 ──だったら、オレがお前のリーダーになってやるよ!

 

 元ネタなんて忘れた。多分、東京に居たときに見ていた旧時代のアニメだか漫画の台詞だったと思う。いま思うと本当に意味不明であったが、傍で話を聞いていた響生も乗り出して、オレは二人のリーダーになった。

 

 それからオレは学園でも、戦場でも二人を先導する立場になった。オレたちは上手くやっていた。大規模侵攻も生き残った。そうこうしていく内に高等部に上がった時、オレは二人のリーダーから、五人のリーダーになった。

 

 ──だったら、オレがお前たちのリーダーになってやるよ!

 

 入学式を終えて、高等部の冷たい現実に茫然自失になり、絶望の言葉が飛び交うなか、オレはあの日のことを思い出して無意識に口に出していた。

 

 そうしたら来夢(らむ)があの日と同じだと笑ってくれて、響生(ひびき)が賛同してくれて、元から付き合いがあった香火(かび)が乗ってくれて、咲也(さや)は渋々と言った様子で、レミが皆がいいならと、オレはリーダーになった。

 

 そんなオレが掲げた目標は、六人全員で本当の意味で卒業生になることだった。深い考えがあったわけじゃない。絶望を払拭するためのバカみたいな目標が欲しかったから言った。それだけのものだった。

 

 なのにあいつらは無茶とも無理とも言わないでくれた。そのための努力を惜しまずやってくれた。そのおかげで去年起きた二回の大規模侵攻でも誰も“卒業”すること無く、六人全員で進級することができた。

 

 そんな俺たちを誰かが『偉業』と褒め称えた。こんなこと口が裂けても言えないが、『伝説』とまで言われた愛奈先輩たちにも出来なかった、全員での進級を達成した時は本当に嬉しかった。自分たちは特別だったんだと調子に乗った。

 

 ──きっとオレだけが浮かれていた。

 

「……どうすれば……どうすればいいんだよっ!」

 

 病室と、オレたちが話し合っていた休憩所の丁度半分ぐらいの廊下で足が止まってしまい、床に座り、本音が零れてしまう。

 

 このまま人型プレデターと会えば、どうであれオレは決めなければいけなくなる。だから進むことができない、戻ることもできない。どうすればいいか分からない。なにが正解なんだ?

 

 人型プレデターの目的はなんだ? オレたちの活性化率を下げて何になる? そもそもどうやって下げている? 下げたあとはどうなる? 副作用とかあるのか? それは『ゴルゴン』になることよりもヒドイものなのか? そもそもオレが下げてくれといって下げてくれるのか? 

 

 どうすればいい……どうすれば……“あいつら”にとって良い結果になる?

 

 あいつらの活性化率を考えれば、受け入れたほうがいいに決まっている。頼み込んででも活性化率を下げてもらったほうがいいに決まっている、だが! その後、なにも起きない保証はないんだ!

 

 ほんの少しの時間でもいいから様子を見たい。だけど愛奈先輩は許してくれないだろう。ちゃんとは聞かなかったがあの雰囲気から今日、オレたちの意志を確認できなかったら、あのプレデターと月世先輩との三人で学園を出て行ってもおかしくない。

 

 一年の反応次第でもあるのは分かっている、それでも二年がどうするのか、今日中にオレが決めなければならない。

 

 受け入れるか、拒絶するか、このまま決められた通りに『ペガサス』として生きて、『ゴルゴン』になるまえに“卒業”する道を“あいつら”に進ませるのか? それとも、恐ろしい未来が待っているかもしれない不確定な道を進ませるのか?

 

「もう少し……時間をくれてもいいじゃねぇかよ……!」

 

 壁を殴りそうになり、寸前で抑える。いま大きな音を出せば、あいつらが来るのは分かりきっていた。こんな姿を見せられるわけがない。

 

 暴力的な衝動を必死に抑えて頭を抱える。このまま自分の脳みそを握りつぶせれば、どれだけ楽か。

 

「……オレを……置いてかないでくれよ」

 

 本音が零れる。……オレ個人の答えは人型プレデターを受け入れて、みんなの活性化率を下げることに傾いていた。だけど怖かった。これ以上、オレの判断であいつらに辛い思いをさせるんじゃないかって思うと選べない。

 

 ──オレが何気なしに掲げてしまった全員で本当の卒業生となる目的のために、“五人”は奔走してくれた。その結果が今の二年生だ。

 

 全員が生き残るために、オレは全員に無茶をさせた。活性化率を抑えるためには、活性化率が低い誰かに負担を掛けるという戦い方をさせてしまった。その結果、全員が平等に……限界を迎えていた。

 

 レミは【87%】、響生は【89%】。咲也は【90%】、そして香火は【92%】。次の大規模侵攻時にはまず生き残れない。特に香火はなにを切っ掛けに抑制限界値に達するか分からない数値まで上がっている。

 

 だから心を壊した……オレが壊したんだ! 香火だけじゃない、四人全員の心をオレが壊した! 来夢だってオレが“卒業”させたようなものだ! 

 

 それなのに! オレは未だに【82%】だ! なんなんだよ! オレだってちゃんと戦ってるのに!? 盾役の前衛。普通なら誰よりも早く活性化率が上がるポジションなのに! どうして!?

 

「なにが天才だよ……ふざけんなよ……っ!」

 

 なにもしなければおよそ30日で1%あがるとされている中、オレは180日で1%上がるだけで済む。つまり他の『ペガサス』と比べて、かなり上がりにくい天性の体質を持っていた。だから〈魔眼〉も多用した。前衛の盾役として惜しまず戦った。それでも、あいつらのよりも活性化率の数字は遙かに下だ。

 

「……なんで……なんだよ……っ!」

 

 自分に余裕があるからこそどうすればいいのか分からなくなる。オレの命がどうこうって話じゃないからだ。これはあいつら四人の命をどう扱うかって話なんだ!

 

 あまりにも重すぎる。もう既に来夢を取りこぼしてしまっているんだ。これ以上失いたくない。だからといって、あのプレデターの玩具にも道具にもさせたくねぇ。あいつらはオレの命よりも大切な奴らなんだよ!

 

 ──神様。お願いだ。あいつらを連れて行かないでくれ……あいつらを幸せにしてくれ……そのためなら、オレはなんだって……。

 

「──くそっ……!」

 

 ある程度吐き出したことで、ほんの少しだけ軽くなった体をなんとか立ち上がらせて、人型プレデターに会うために、歩き出す。

 

 ──答えはまだ決められないでいる。

 

 +++

 

 

 

8210:識別番号01

……ヤバイ。もうだめかも分からない。

壁の破片が合わない……よく見たら三つ前ぐらいに置いた場所のがこれだったかも……。

 

8211:識別番号03

やり直しを提案します。

 

8212:識別番号01

いや無理。もう自家製接着毒(剤?)でくっ付けちゃったもん。取れないし、下手に力いれると再生不可能なまで粉々になるかもで怖いし。

 

8213:識別番号02

提案⇒接着性を弱めるための別の毒を生成してかけてみる。

 

8214:識別番号01

ゼロツー。お前やっぱ天才か?

……というかさ、薄々思っていたけど、もしかしてオレの能力って毒精製じゃなくない?

 

8215:識別番号02

肯定⇒正確には液体精製と呼称するのが正しいと思われる。

 

8216:識別番号01

そうだよね……毒にしちゃ、なんか自由過ぎるよね……でも、これ毒だから。毒でやってくからよろしく!

 

8217:識別番号04

なぜ毒という名称に固執する?

 

8218:識別番号01

だって蛇筒(触手のようなもの)から液体って表現的にヤバイじゃん……。

 

 

 

 

 ──ベッドで無防備に寝ている人間(兎歌)に目もくれず。破壊した壁を直している人型プレデターを見て、オレのなにかがプツリと切れた。

 

 

 

8232:識別番号01

うるせぇええ! なにを言われても俺の能力は毒なの! 蛇の牙っぽいのから出るから毒なの! そこは譲れないの!

ん? 誰か帰ってきた?

あの子は確か……そう、エナちゃんの後輩のマカちゅべっ!?

 

8233:識別番号03

マカちゅべの、ちゅべとは敬称の一種ですか?

 

8234:識別番号04

──どうした識別番号01?

 

 

 

 そして考えるよりも先に人型プレデターに飛びかかり、その顔面を殴った。

 

 








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