この苦しみ溢れる世界にて、「人外に生まれ変わってよかった」   作:庫磨鳥

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第十六話

 ──月世から毛布を渡された『ペガサス』の面々は各々、ソファの上、三脚の椅子を並べたベッドの上。床にそのまま、背中にもたれるなど、好きな姿勢で寝始める。

 

「……なんだか変なことになったわね……」

 

「ごめんね。月世が勝手に決めちゃって、正直、一緒にみんなで寝るっていい提案だと思っちゃって賛成しちゃった」

 

「……別に嫌とは言ってないです……帰っても眠れなかったと思いますし」

 

「それならよかったよ……改まって言うのもおかしいと思うけど、これからよろしくね」

 

「あ、はい……よろしくお願いします、喜渡先輩」

 

「あ、できれば名前で呼んでほしいな。私ももう咲也って呼んじゃってるし」

 

「大丈夫です」

 

「それと慣れないなら敬語もいいからね」

 

「……遠慮しておきます……自分の性格はよく分かっているので……その、先輩に対して、いままで失礼な態度をとってしまってすいませんでした」

 

「いえいえ。むしろ駄目な先輩で苦労掛けてごめんね」

 

「そんなことっ! ……ないです。今日だけじゃなくて喜渡……愛奈先輩にはたくさん、助けられてますから」

 

「そっか、それならよかったよ」

 

「……愛奈先輩、学園に戻ってきてくれて……ありがとうございます」

 

「……ううん、こちらこそ受け入れてくれてありがとう」

 

 

 咲也の呟きを愛奈が拾ったことを切っ掛けに我慢できなくなった彼女たちは、声を抑えながらも話し始める。

 

 

「そういえば来てから気にはなっていたんだが、なぜ壁に大穴が空いているんだ?」

 

「うっ! その……時間が無かったので彼にショートカットを作ってもらって……明日から直します!」

 

「オ、オレも手伝うぜ!」

 

「その必要はありません! ここは使われていない施設なので適当に理由をでっち上げれば、このまま放置で問題ないと思います──それよりも愛奈先輩って学園にどうやって帰ってきたんですか?」

 

「彼に運んでもらって正面門を真上から登って入ったんだけど……やっぱり不味かったかな?」

 

「返答に困りますね! まあ、正規の入り口を使っていないのならなんとでもなるでしょう──え? 彼って正面門を飛び越えられるんですか?」

 

「『ペガサス』よりも速いし、壁も登れるよ。まるで忍者みたいだった。おかげで監視エリアを避けて帰ってこれたよ」

 

「──感知されずに学園に入り込んだ理由が純粋なフィジカルだった──彼が本当にボクたちの味方でよかったです!」

 

 

 不安から解放されたかのように、あるいは不安を生まないように声量の小さな会話は弾んでいき、会話が終わったと思ったら、また別の会話へと混ざるを繰り返す。

 

 

「……こうやって白衣を脱いで寝るのは中等部以来かもしれない」

 

「いつも着たまま寝るんですか?」

 

「気がつけば寝てしまう事が多くて。それでしか寝られなかったとも言えるけど」

 

「……そ、その、白衣を着ながら寝るならせめて洗濯しましょうよ。洗濯機って中等部寮にあるものと一緒ですよね? それなら中に入れるだけで乾燥まで全自動でやってくれるんですから」

 

「覚えてたらやる。そういえば、上代がどうして高等部寮に?」

 

「え? いま話すんですか?」

 

「寝物語には最適だと思って」

 

「とかりんの話? それならきょうちゃんも聞きた-い!」

 

「わたくしも、愛奈とどういう関係か気になりますね」

 

「月世先輩まで。わ、わかりました! うまく話せるか自信はありませんが頑張ります! ……えっと、はじめて愛奈先輩のことを知ったのは雑誌の写真を見たときで──」

 

「本当に最初からなんだ……途中で寝ても怒らないでね」

 

 

 それでも精神的な疲労がピークに達していたのか、彼女たちの精神は次第に落ち着いていき、時間の経過とともに声数が少なくなっていく。

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

「香火って、いまどんな夢を見ているんだろうねー。レミはどう思う?」

 

「そうですね、あくまで小説の知識なので、どこまで正しいかは分かりませんが、人って深い眠りにつくと夢を見ないと言います、なので今の香火さんは深い眠りについているようなので夢を見ていない可能性が高いかと、はい」

 

「なら、いま香火はゆっくり眠れているんだな?」

 

「はい、多分きっと恐らくプレデターが現れる前のフィクション作品内に出てきた知識なので間違ってたらすいません、はい」

 

「信憑性皆無なのね……」

 

 

 眠気が強くなっていくなか、襲いかかってくる微睡みに不安を抱く少女たちは、己の声が寝息に変わるまで言葉を発し続ける。

 

 

「しかし、最終的にみんなで雑魚寝するとは思いませんでした。これなら茉日瑠(まひる)も連れてくれば良かったですね。可哀想なことをしました」

 

「反応が予測付かないから寮に置いてきたのは適切な……蝶番、いま名前で……?」

 

「いい機会なので変えてみました──これからよろしくお願いしますね、夜稀(よき)

 

「……はぁ、確かにいい機会なのかもしれない……野花(のはな)

 

「──なんか単純に聞き慣れなくて気持ち悪いですね」

 

「その言葉そっくりそのまま返すよ」

 

「──あの頃とは違うんだね、全部、なにもかも」

 

「あたしとちょうつが……野花だけじゃないんだ。当たり前だよ……あたしたちは高等部の『ペガサス』になったんだ」

 

「……そうでしたね」

 

 

 微睡みが強くなるごとに、不安や恐怖はどこかへと消えて無くなっていき、彼女たちは次々と意識を闇に落としはじめ、安心したかのように寝息を立て始める。

 

 

「──真嘉」

 

「愛奈先輩? どうしたんだ?」

 

「もう手は平気?」

 

「あ、ああ。もう傷が塞がってる。痕も無い」

 

「そう、よかった……。ねぇ、真嘉、あなたは彼のこと、どう思ってるの?」

 

「え? ど、どう思うってなんだ……?」

 

「人格っていうと物々しいかな? 性格とか人となりとか、そういうの」

 

「ああ、そう言う……なんつーか、まだわかんねぇのが本音だな。なんで俺たちを助けてくれたのかとか、色々と謎だらけだ」

 

「そっか、それはそうだよね。私もまだ分かってないほうが多いし」

 

「……でも、優しい奴だってのは……それだけは分かった」

 

「そうだよね! 彼、優しいよね! それに料理も上手なんだ。彼が温めた缶詰、本当に美味しいんだよ」

 

「それは料理って言わないんじゃないっすかね……」

 

「学園の中にあるか分からないけど、今度作って欲しいな、ねっ、いいよね? ……いいって良かったね!」

 

「……待って、もしかして起きてるのか!? それなのに話振ったのか!?」

 

「真嘉うるさーい」

 

 

 そして気がつけば、沈黙のほうが長くなっていた。

 

 

「……先輩。起きてます?」

 

「うん。お昼寝しちゃったからかな? なんだか眠れなくて」

 

「……オレも、なんだか寝るのが怖くて……」

 

「どうしてか聞いてもいい?」

 

「だって……今日は本当に色々とあった。夢みたいなことがあったんだ……なあ、本当にオレたちは救われたのか? 嘘じゃないよな?」

 

「……うん。多分。ごめん、私もちょっと自信がないんだ」

 

「──それを言うなら、ボクなんて訳も分からずここまで来ちゃいましたからね──正直、彼のこと未だに疑ってますよ、着ぐるみの類いとかじゃないですよね、いや、それでもとんでもないんですけども」

 

「お前まだ起きていたのか? ずっと黙っているもんだから寝たかと思ってたぜ」

 

「ちょっと明日からについて色々と考えていました、忙しくなりますからね──忙しくなるよ、本当に忙しくなる──」

 

「野花、私にできることなら何でも協力するから言ってね」

 

「──もちろん! 一人では絶対にどうしようもないので、愛奈先輩だけではなくみんなに手伝って貰いますからね! ──そう、みんなで生きていくんだ──そうですよね?」

 

「うん。だから真嘉たちにも手伝ってほしいの」

 

「オレはいいけどよ、どうするつもりなんだ?」

 

「端的に言えば、彼をボクたちだけの秘密にして、大人たちの目を欺いて高等部は独自の道を進みます」

 

「……マジか?」

 

「マジ……だよね?」

 

「マジです! ──え? なんで愛奈先輩が疑問形なんですか?」

 

「あはは……実はあんまりよく分かって無くて……」

 

「……それで? 具体的にはどうするつもりなんだ?」

 

「全くもって決まっていませんね。愛奈先輩は何か明確な目標とかありますか?」

 

「え!? えっと……彼とみんなで生きたいです……じゃあだめ?」

 

「駄目じゃないですけど目先の目標が欲しいですね」

 

「目先……夏の大規模侵攻をみんなで生き残るとか?」

 

「……なんか一気に現実感が増したな」

 

「確かに活性化率が下がって、救われましたがボクたちの立場が特別変わったというわけではないですからね──はぁ、いやだいやだ──まったく、どうして『ペガサス』なのにこんなに悩まないといけないのか──」

 

「なんだかんだ言っても、人間なんだろオレたち」

 

「──まったくもってその通りですね! ──ああもう、働きすぎですね、ボク」

 

「ちゃんと寝ないとね。私たち、もう日が変わってると思うし」

 

「──そうですね、では先輩たち、おやすみなさい」

 

「……オレも寝るよ。おやすみ」

 

「うん。みんな、おやすみ」

 

 

 既に日付は変わっており、その中で全員が寝静まった中で、まだ起きていた愛奈が彼に話しかける。

 

 

「……まだ起きてる? ……そもそも貴方って寝るの? ……そうなんだ」

 

「なんだか、最後までバタバタしちゃってごめんね。本当は色々と説明しないとっては思っていたんだけど、そんな余裕なかったよ」

 

「……明日になったら話がしたいの。私たちのこととか、学校のこととか知って欲しいことが沢山あるの」

 

「……みんなね。きっとまだ貴方のことあんまり受け入れられていないんだと思うんだ。『プレデター』だからとかじゃなくて、私たちの寿命を延ばしてくれる存在が現れるなんて、正に夢のような出来事だから。だからみんな、どうしていいか分からなくて距離感を探っている状態なんだと思う」

 

「だからその……もしも彼女たちが距離の詰め方を間違えても、少しだけ様子を見て欲しいんだ……怒らないでほしいの。真嘉にしてくれたように」

 

「……ありがとう。今日出会ったばかりなのに、こういうこと言うのはおかしいかもしれないけど、貴方ならそう言ってくれると思った」

 

「……私は……貴方が学園を去って私たちの傍から居なくなったら、優しい貴方でも許せないことがあったんだって考える。それでも私は貴方を探すよ。それでもしも再会できたら話を聞いてほしいの……いい?」

 

「……うん、ありがとう。我が儘ばっかりでごめんね。その代わり貴方の望むこと、できる限り叶えるから──私たちの傍に居てね」

 

「……おやすみ──今日は、本当に、ありがとう──」

 

 

 ──そうしてしばらくして愛奈から寝息が聞こえ始めて、『ペガサス』全員が安らかに眠りについた。

 

 

 

 

9582:識別番号01

……みんな寝たかな? 

 

9583:識別番号02

要求⇒識別番号01の現状を確認したい。

 

9584:識別番号01

右にエナちゃん、左にツクヨさんが寄りかかって寝ているので動けないっすね。話を聞く感じまともに寝れてないっぽいので、起こすのは極刑ものっす。

やー。でも無事で終わってなによりだよ。明日からの事は一旦置いておいて、大団円といっても良いのでは? 

 

9585:識別番号03

お疲れ様です、識別番号01。

 

9586:識別番号04

識別番号01よ。改めて問いたいがこれからどうするつもりだ。

 

9587:識別番号01

どうするって、まあエナちゃんと約束したし、当分はここで暮らすよ。

……んー。正直に言っちゃうと約束は二の次でさ。俺がエナちゃんたちを助けたいって思ったからかな。

 

9588:識別番号02

質問⇒識別番号01は恋をしたのか? 

 

9589:識別番号01

恋かぁ……そうかもしれない。一目惚れってやつ? 

ほら、俺って『プレデター』じゃん? でもってエナちゃんは『ペガサス』じゃん? だからどんな事情があるにしろ、受け入れるって絶対難しいと思うんだよね。

それを、エナちゃんはやってくれた。俺の出してくれた缶詰を美味しそうに食べて、お願いしてくれて、こうやって信頼してくれる……惚れてまうって! 

 

9590:識別番号02

応答⇒識別番号01が与える利を考えれば友好関係を築こうとするのは当然の行動とも言える。

 

9591:識別番号01

それでもだよ。

……エナちゃんの友達、間違いなく『プレデター』に殺されてる。ひとりでもヤバイのに、きっともの凄くたくさん。

 

9592:識別番号04

──識別番号01は無関係だ。

 

9593:識別番号01

わかんない。もしかしたら記憶が戻る前に殺してるかも。なんにしても彼女たちからすれば大事な仲間とか友達とか人間をたくさん殺している敵。俺はそういう立場の奴なんだ。

 

9594:識別番号01

だから、人にあっても俺は拒絶されるしかないと思ってた。それか実験動物扱いぐらい? 

でも、どんな事情があったにせよ。エナちゃんは俺のことを心を持った人外として扱ってくれたんだ。

喋れないのに、意志疎通なんてまともにできない『プレデター』であることは変わりないのに。

 

9595:識別番号01

埋まったんだ……。味が分からない、匂いが分からない、触れた温度が分からない。記憶が……知っているはずのことが確認できなくて、空虚だった俺の……人の心がエナちゃんと出会って埋まったんだ。

 

9596:識別番号01

だから、最低な考えだって自覚しているけど、俺は……エナちゃんたちが俺を求めてくれたことが本当に嬉しかった。傍に居て欲しいって言ってくれて……救われた気持ちになったんだよ。

 

9597:識別番号02

疑問⇒識別番号01は寂しかったのか。

 

9598:識別番号01

うーん。ちょっと違うかな? お前達が居てくれたから寂しくはなかったよ。だからなんて言うのかな……生きてるって実感が無かった。それがエナちゃんを見て、聞いて、触れたことで、俺って『プレデター』だけど、ちゃんと生きてるんだなって実感を持てた……かんじ? 

 

9599:識別番号01

だから、俺はエナちゃんが言うようにしたい。俺を救ってくれた彼女に恩返しをするためにも、俺が人の心を持った『プレデター』としてあり続けるためにも、エナちゃんたちと一緒に居たいんだ。

……単純に、彼女たちの現状を知ってどうにかしたいってのもあるしね。

 

9600:識別番号02

了解⇒であれば識別番号01の目標を提示してもらいたい。

理由⇒今後の自身等の行動を定めるため。

 

9601:識別番号01

そう言われると、なんともなぁ……。俺っていうよりかは、彼女たち次第なところあるし、なんか話を聞く限り結構すごい事考えているみたいだから、活性化率を下げるっていう俺にしかできない役割をこなしながら、色々とみんなのためになることを模索していく感じかな? 

 

9602:識別番号02

質問⇒アルテミス女学園高等部ペガサスたちは識別番号01の存在を他者に隠蔽を行い人間組織からの独立を行うつもりか。

 

9603:識別番号01

多分、さっきノハナちゃんがそれっぽい事言ってた。ただどうするかはまだ分かっていない。あんまり苦労は掛けたくないけど現状考えると仕方ないんだろうなぁ……。

 

9604:識別番号04

その質問の意図を読み取れない。なにを考えてる識別番号02? 

 

9605:識別番号02

回答⇒識別番号01およびアルテミス女学園高等部ペガサスの今後の行動を考察するにあたって戦力や協力者が多いに越したことは無いと判断した。

追記⇒彼女たちが識別番号01を受け入れるというのならば従って識別番号01に類似する『プレデター』であるならば彼女たちのコミュニティに参加が可能だと考える。

 

9606:識別番号01

……つまり? 

 

9607:識別番号02

回答⇒自身等三体の『プレデター』は、識別番号01およびアルテミス女学園高等部ペガサスと合流することを提案する。

 

9608:識別番号01

……ま、まじで? 

 

9609:識別番号04

──識別番号02の意見に賛成する。

 

9610:識別番号03

識別番号02に賛成します。

 

9611:識別番号01

てことは……ここにみんな来てくれるってことか!? 

マジか!? 大歓迎っていうか大歓迎! マジで助かるっ! ていうか普通に会えるってだけで嬉しいんだが!? 近くまで来たら迎えに行くよ! 

 

9612:識別番号04

だが識別番号02。お前は水中内でしか活動できなかったはずだが解決策はあるのか? 

 

9613:識別番号02

回答⇒既に一月前ほどから解決策となるものは発見しておりつい先ほど実証がなされた。

結果⇒時間は掛かるが成功すれば陸上での活動を行なうことができるだけではなく戦力として充分に役にたてるだろう。

提案⇒そしてこの解決策は識別番号03および識別番号04も行なうことを推奨する。

 

9614:識別番号03

自身は既に陸上活動を行なっていますが? 

 

9615:識別番号02

否定⇒そうではない。

説明⇒解決策とは他プレデターを捕食して体内の『P細胞』を増やすことによって発生する肉体変化を行ない識別番号01と同じく人型プレデターに至ることである。

 

9616:識別番号01

……はっ!? 人型プレデターになる!? 

 

9617:識別番号04

──可能なのか? 

 

9618:識別番号02

肯定⇒まだ到達はしていないが自身は他プレデターを捕食したことによって肉体を変化させることができた。

追記⇒また自身の望む形に肉体の変化をある程度操作可能であることも実証済みである。

結論⇒『P細胞』を一定数まで獲得した場合人型プレデターへの進化は充分に可能であると判断した。

 

9619:識別番号01

マジか……ちなみにどんな風に変わったか聞いてもいい? 

 

9620:識別番号02

応答⇒身体が巨大化して望み通りに自壊しなくても放電が可能となった。

愚痴⇒自身が捕食できる『プレデター』を見つけるのマジ大変だった。

 

9621:識別番号01

なんか……お疲れ……? 

……いや、まってまってまって!? つまりゼロツーは他の『プレデター』を食べ続けたら、最終的に人型へと進化できるってことでファイナルアンサー!? 

 

9622:識別番号02

肯定⇒ただし識別番号01とは違いあくまで外見上という話ではある。

訂正⇒また自身だけではなく識別番号03および識別番号04も可能だと思われる。

 

9623:識別番号01

……マジか…………マジかぁ……。

 

9624:識別番号02

肯定⇒マジである。

 

9625:識別番号04

何故わざわざ人型に至ることを目標とする? 

 

9626:識別番号02

応答⇒これから活動の中心となる場所が『ペガサス』など人間の拠点ならば識別番号01と同じく人型であるほうが都合が良いと判断した。

 

9627:識別番号03

捕食する『プレデター』はどうすればいいですか? 

 

9628:識別番号02

応答⇒時間は掛かるが自分よりも弱いあるいは同格の個体を優先して狙うべきである。

注意⇒攻撃を加えた個体は敵性存在と認識して反撃してくるため、できるかぎり一撃且つ不意打ちで仕留めたほうがいい。

 

9629:識別番号01

待ってタイム! なんかやる方向性で話進んでいるけど……いいの? 『プレデター』を食べないといけないんだろ? 

 

9630:識別番号02

肯定⇒そもそも『プレデター』という括りに関して特別な同族意識は存在せず無用な心配である。

 

9631:識別番号04

優先するべきは識別番号01の役に立つ能力を得ることである。

 

9632:識別番号01

おまえら……。

 

9633:識別番号02

追記⇒それにいいかげん識別番号01を通しての情報収集は面倒であるため自身で陸に上がり自由に本とか読みたい。

 

9634:識別番号04

識別番号01に任せてはいつまで経ってもリベンジしたい『ペガサス』の正体に行き着かないと判断した。

 

9635:識別番号01

なんでオチつけようとするんですかね? 

 

9636:識別番号02

回答⇒識別番号01の影響。

 

9637:識別番号04

識別番号01の影響。

 

9638:識別番号01

ぐうの音もでねぇや! 

 

9639:識別番号03

とりあえず同型機を捕食しました。目立った変化は確認できません。続いて捕食を続行していきたいと思います。

 

9640:識別番号01

既に食べちゃってる子がいるし!? だ、大丈夫? お腹痛くない? 

 

9641:識別番号03

なにも変化ありません。はやく識別番号01の助けになりたいので頑張ります。

 

9642:識別番号01

……ああもう! お前ら最高! 愛してる!! 

……もしもさ。人間ならエナちゃんたち助けられなかったし、みんなに会えなかったしよ。

 

──俺、人外に生まれ変わって良かった。

 

 

 




これにて1章終わりとなります。ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。


人外(仮)の1章後書き

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