この苦しみ溢れる世界にて、「人外に生まれ変わってよかった」 作:庫磨鳥
巨大ハッチが開かれた、教室列車が横並びに二車両が入るほど広大な通路には、ざっと見ただけで五十体ほどの『プレデター』が居て、目のようにも見える触角が『
全長五メートル以上はあるが、高さは150センチメートル未満であり、横幅が広く平べったい印象を受ける。自分の身体を守る金属部位である『外殻』は見た感じ存在せず、宝石のように輝く赤紫色の軟体動物のような外見の、全く未知と言っていいプレデターであった。
「……あ、に、にげ──!」
夜稀は先程の反省を踏まえて、すぐこの場から逃げ出そうとしたが、一足遅かった。
「は?」
未知のプレデターは尾で地面を叩き跳躍。夜稀は覆いかぶさる波の如く、己に向かって飛びかかってくるプレデターたちを目にして硬直する。口をあんぐりと開き、真っ白の頭の中で真っ先に浮かんだのは、このプレデター、図鑑でしか見たことのないイルカのようなヒレと尾を持ったウミウシみたいだなと言う、彼女らしいものであった。
「夜稀!」
「グエッ!?」
内心でウミウシ型プレデターと呼称か決まったプレデターに押しつぶされる前に、側に居たハジメに白衣の裾を掴まれ、後ろへと引っ張られた事で間一髪助かる、
「
「撃っつよー!」
名前を呼ばれた
「散弾、効果あり! 液状化確認! でも急所以外に当たったのはすぐに治ってる!」
ウミウシ型プレデターは即死したのを除き瞬時に肉体を再生、完全回復する。その様子から攻撃能力に得意な点はなく、防御能力も低いが、回復能力が他の『プレデター』に比べて非常に高く、致命傷を与えない限りは、動きを止めることすら難しいタイプであるとハジメは認識する。
「戦闘続行! 夜稀、悪いが投げるぞ!」
「え? ──ぐえ!?」
「こちらハジメ、巨大ハッチが開いた事で通路に居た、識別不明のプレデター群に襲撃されている! 至急応援に来てくれ!」
ハジメは夜稀を安全な後方へと放り投げると、全体通信で周囲に状況を知らせつつ、肩に下げていた【
「
「
そうしてハジメと
「リロード!」
現に散弾を撃ち尽くした
≪──こちら
「ナイスだ
≪
教室列車の天井上にて、
彼女が使用する【
「な、なにあれ? プレデターなの?」
「えー、なんだかネトネトねっとりしてて可愛いね!」
「ふぁ……」
「みんな無事か!? 夜稀、怪我したのか!?」
「は、鼻打っただけ、怪我はないよ」
「ならよかった、後ろに下がっていてくれ……ハジメ!」
先んじて『土峰真嘉』『白銀響生』『篠木咲也』『穂紫香火』アルテミス女学園ペガサスが合流する。
「先輩、相手は再生能力が高く、急所である頭以外はすぐに再生される、恐れがあります……先輩方、前を任せてもよろしいでしょうか?」
「分かった、交代してくれ!」
「
「
「
≪
ウミウシ型プレデターの数が半分以下になった事で弾薬を温存、ハジメと
「ハジメ!」
「ルビー、列車の護衛は?」
「チョウも来る気配はなかったから、
「盾に杭打ち機器……大鎌……十字形の槍に半円状の斧……全部格好いい!」
「あながち間違ってないわねぇ……それにしても、さすが先輩たち、援護は必要無さそうね」
リロードなどをしている最中、
「ナー、銃無しで生き残ってきただけはあるな」
「だから何でそう偉そうなのよ
「全員が全く違う能力でありながら、完璧な連携を行っている……これが月の神の加護を持ちし『ペガサス』の力というのか!?」
「あんたはあんたで、後で本当にレミ先輩に謝りなさいよね? 見なさいよ何も出来ずに困ってるじゃない」
「あ、お、お構いなく、そもそも基本的に、遠くから撃っていたり、撃たなかったりするだけなので、はい……」
ついには単なる見学会になってしまい、アイアンホースたちが話し合っている最中、真嘉たちは危なげなくウミウシ型プレデターを葬り去り、最後の一体を真嘉の盾型専用ALIS【ダチュラ】の杭で突き刺した。
「よし、倒しきったな」
≪──こちら
「……まじかよ」
今の群れよりも四倍以上、大規模侵攻で相手取るような数が、こちらに向かっているという
≪あくまでも“目視”計算ですが間違っていないかと~、むしろ、奥に続いているのでもっと増えるかもしれません≫
「奥にいたのが固まって来たのか?」
「……今のは迷子……ちゃんと、見つけないと……森に溶けちゃう……」
「はぐれた群れだったって? ……勘弁してくれ」
倒しやすい部類とはいえ、打撃が通り辛く、再生能力が高いおかげで致命傷以外は直ぐに直ってしまい、動きを鈍らせる事も難しい。そのため数で攻められると苦しい相手であると真嘉は評価していた。そんなウミウシ型プレデターが二百以上、さっきのように簡単に済まないだろう。
≪プレデター、来ます≫
──最後尾が見えないほどのウミウシ型プレデターの大群が密集し、平べったい体を波打つように動かして迫りくる。
「き、気持ち悪い……!」
赤紫色をしているからか、その光景は幻想的のようであるが、見ただけで人心の危険信号を狂わせる何かがあり、咲也は身震いして、鳥肌を立たせる。
「真嘉先輩、先ずは自分たちが通路側へと射撃を行い数を減らします」
「といっても今、持ってる弾じゃ、半分も減らせないがな」
「──ギャハ、くたびれ損になると思ったが、最高のタイミングじゃねぇか!」
「チッ! おいクソ犬! 列車の護衛はどうした!?」
「暇だったから、ちょっとお手伝いに来たんだよ!! 感謝してくれたって構わないぜ!」
列車の護衛へと回っていた
「貴様! その『ALIS』は!? ……我も使いたかったのに!!」
「ギャハハ、悪いな
「ちょ、ちょっと何をするつもり!?」
「何って、プレデター退治に決まっているぜ!」
──BRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRTTT────!!!!!
雷にも劣らぬ乾いた轟音が、敵を滅するために吠える。
「ギャハ、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ!!! 【KG10-GIII/《サンダーライン》】!!!!」
喉が、はち切れそうな高笑いと共にK//G社製第2世代ガトリング型ALIS【KG10-GIII/《サンダーライン》】による毎分二千発からなる弾丸の嵐が、ウミウシ型プレデターに襲いかかる。圧倒的な火力に触れた分厚い肉体、水の塊のようにも見える体が破裂していき、跡形もなくなっていく。
「てめぇ
「分かってる分かってるって! あ──、やっぱり最高の『ALIS』だぜこいつはぁ!!」
撃ち続けたまま銃口を右から左へ、左から右へと扇状に動かす、たったそれだけでウミウシ型プレデターの逃げ場所が無くなり、瞬間的に数を減らしていく。
「な、な、なんなのこれっ!!? 本当に『ALIS』なの!?」
絶え間なく発射される弾丸の音に、両耳を押さえる咲也は思わず叫ぶ。
K//G社製第2世代ガトリング型ALISである【KG10-III/《サンダーライン》】は、その本体価格と、使用コストから六百番台の教室列車のみ実装されている『ALIS』である。二度の改修によって軽量化こそ行われているものの、未だに本体重量は60キロを超えており、そのあまりの反動から『アイアンホース』ですら、扱えるものは限られている。
その火力、その威力、砕かれるだけのウミウシ型プレデターの大群を見れば証明されたようなものだろう。
「……おっ、なんだ終わりか、あーあ、もう少し笑っていたかったぜ」
カラカラカラと鳴りながら回転が緩やかになり、八門の銃身が止まる。僅か三十秒ほどで撃ち尽くし、空っぽとなったコンテナのベルトを外して、地面に落とす。
「……と、とんでもないな」
──ウミウシ型たちは弾丸の嵐に抗えず蹂躙、殲滅された。【KG10-III/《サンダーライン》】の、ド派手な火力に、真嘉は背筋が寒くなった。
「確かに火力は高いんだけど、取り回し悪いから『街林』とかだと使いづらすぎるし、アイアンホースでも重いから背負ってるだけで動きが鈍くなるし、反動キツイしで、物凄く扱いづらいのよねぇ」
「他のやつが便利」
「分からねぇやつらだな! 派手な武器、圧倒的な火力。どれも最高だろ!?」
「その通り、我が愛機や相棒も素敵だが、この【KG10-III/《サンダーライン》】には、他にはない魅力と格好よさが存在する!」
「ナー、黙れ馬鹿共」
【KG10-GIII/《サンダーライン》】を実際に使った事があるルビーと
「……お? なんだ、お前も興味あるのか? ……あー、何だっけ?」
「アスクヒドラ。みんなアスクって呼んでいるわ、ちゃんと覚えなさい」
「そうそう、アスクだったな! んでだ、お前、こういうのイケる口か?」
【KG10-GIII/《サンダーライン》】を興味深そうに見ていたアスクに問いかけると親指を突き立てる。
「くくっ、いいねぇ。こいつの良さを分かるやつは好きだぜ! ほらほら持ってみろよ、ぜってぇ似合うから!」
えー、いいのー? じゃあちょっとだけ。みたいな反応をしつつ、差し出された【KG10-III/《サンダーライン》】を持ったアスクは、ノリノリでポージングをする。
「おお! なんという……正に漆黒の暴力の化身の様……すごい格好いい!」
「ギャハハ、マジ本当に似合うじゃねぇか、なぁ
「ナー、警戒中だろうが、遊ぶんじゃねぇ、お前もだ
「ふ、ふふふ……大変申し訳ない!!」
「ふーん、アスクって、こういうの好きなのね」
「……アスクは結構、男の子っぽい趣味してるの」
何気ないルビーの呟きに、『アイアンホース』と仲良くしているのを見て、自分の心の狭さを『妖精』に責められていた咲也が答える。
「そうなの、なんだか可愛いわね」
「…………別に」
「ふ~ん」
そっぽ向いて、小さく呟く先輩。素直になれる相手に関係するものは全部、素直になれない所が本当に可愛らしいと、ルビーはニヤつく。
「ナー、馬鹿犬の所為で話が逸れたが、なんだこの『プレデター』、初めて見るタイプだ」
「まさか、『ギアルス』か?」
「……違う、分類的には『プレデター』だと思う」
ハジメの疑問に答えた夜稀は、彼らが液状化して溶けて消えた辺りの床を調べ始める。
「でも、あたしたちが知っているのとは違う、このプレデターは、きっと“海”に居るやつだ」
「……海だって?」
「ちょっと待って、あれだけの数が居たから、よっぽど運が悪くなければ……やった、有った!」
ウミウシ型プレデターの正体を察した真嘉が目を見開く中、夜稀は地面に落ちていたものを拾い上げる。それはウミウシ型プレデターと同じ、赤紫色に薄く光る布のような物であった。
「それは?」
「『遺骸』だよ。『深海プレデター』は陸とは違って皮膚そのものが『外殻』なんだ。だから残る『遺骸』も、これみたいな金属物じゃなくて分厚い布生地のように見える皮膚になると聞いた事が有ったんだけど……本当だったみたい」
『深海プレデター』、主に海中にて活動を行い、海にやってきた人間を狙うプレデターの総称。この存在によって人類は海から追い出されてしまい、日本は他国との貿易などを空路しか許されなくなった現況である。
『遺骸』とは液状化するプレデターが確率的に残す金属部位の事である、それは加工された金属物のような見た目であるが、ウミウシ型プレデターが遺したものは硬くも薄く、伸縮性が高い布生地のようなものであった。
これこそが、ウミウシ型プレデターが陸上とは違う、『深海プレデター』である決定的な証拠でと、夜稀は断言する。
「これが『深海プレデター』? 生で見るのは初めてだったわね」
「陸と比べて非常に大きいという話しだったが……あまり変わらないな?」
「……そのサイズが、小型種だったり……」
「……海、マジやべぇ」
『アイアンホース』として各地を回っているハジメとルビーは話しに聞いている特徴と違って首を傾げる中、いつの間にか側に来ていて、話を聞いていたレミがボソッと口にすると、それを聞いていた『
「だが、このウミウシ型プレデターが名前の通り、『深海プレデター』で間違いないのなら、なぜ陸に居る? やつらは確か決して海の中からは出ないはずですが」
『深海プレデター』の活動範囲内は海中だけであり陸に上がってくる事もなければ、川を昇ってくる事もなかった。だから北陸聖女学園・第七分校の校舎内にて存在するのは、ありえない事だ。
「また謎か……この学園で、一体どれだけの事が起きているんだ?」
「分からない、いくつか理由らしいのはあげられるけど、今の段階だと想像の域を出ない」
「結局、進まなければ何も分からない、か……」
学園が『プレデター』に襲撃されている。それ以上の事態が発生してるのだと危険度はさらに跳ね上がる。しかし鉄道アイアンホース教育校から指令が下されている以上、
「……真嘉先輩、提案があります」
「お、おう? どうした?」
であるならば、変えることが出来るのは進み方であるとして、ハジメは再び真嘉へと進言する。
「──この通路進行を、自分たちアイアンホース主体でやらせてもらえませんか?」
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3521:識別番号02 疑惑→本当に深海プレデターが学園内に居るというのか?
3522:アスクヒドラ ヨキちゃんが言うには、通路に居たプレデターが、そうだったんだって。まあ、あくまで『遺骸』を見た感じ、深海プレデターかもしれないってところだったけど。
3523:識別番号02 質問→識別番号04の方はどうだ?
3524:識別番号04 学園外周には『深海プレデター』と思われる種類は確認できない。
3525:識別番号02 質問→そのプレデターの特徴を教えて欲しい。
3526:アスクヒドラ えっと、肌色が赤紫色で、イルカみたいなヒレと尻尾があって、ブヨブヨとした軟体動物っぽいんだけど……これで分かる? ヨキちゃんはウミウシ型って名付けたよ。
3527:識別番号02 肯定→先ほど聞いた特徴から該当するプレデターを海中で見た事がある。 評価→群体移動型であり、通気口などを通って海中施設を襲撃する事に長けているように思えた。
3528:アスクヒドラ 海中施設? 船とか潜水艦とか?
3529:識別番号02 回答→海中に作られた人間の居住街の事である。一億八千万年前は、当たり前のように存在していたと思わしき記録がある。
3530:アスクヒドラ あー、でも今の時代にあるとは思えないけど、なんで
3531:識別番号02 推察→『プレデター』が人間を殺す事のみを突きつけた生物兵器である以上、『深海プレデター』は海域に住む人間抹殺を目的としている。結論→そのため現代の技術や、人類の強さによる調整とは別に、一億八千万年前と同じように海に住める技術がある事を前提として製造されている可能性が高い。
3532:アスクヒドラ 人間殺す事が目的だから、海に人間を居るのが当たり前として生み出されるか、まさに本末転倒というか……。 というか、それって『ギアルス』の方が近くない?
3533:識別番号02 肯定→元となっているのは現代生物であるが、その機能は一億八千万年前に準じたものであるとされる。 簡潔→ベースは『ギアルス』の方が近いと思っても問題ないだろう。
3534:アスクヒドラ 改めて聞くと、本当にヤバすぎ……ゼロツー、すんごい苦労したんだね……。
3535:識別番号02 本当→マジで。
3536:プテラリオス 識別番号02に質問があります。深海プレデターが陸に上がるという事はあり得るのですか?
3537:識別番号02 否定→深海プレデターは原則、活動範囲は海域にのみ限定されているため、本来であればあり得ない事である。 補足→月のブレインによる変更もあり得ないだろう、確証はないため例え話による表現しかできないが、潜水艦として作った兵器を陸上で使うのは運用プログラムとしてあり得ない事である。
3538:アスクヒドラ 上陸して人を襲うってのは、本来の目的として外れまくってるってことね。 じゃあ、なんで学園内に居たのかってなるんだけど、なんか考えられる事ってある?
3539:識別番号02 不明→情報があまりにも少ないため想像にしかならないが、この学園が拿捕していた『深海プレデター』が脱走したのが最も現実的である。 一応→極めて稀な事ではあるが、『深海プレデター』が上陸しているケースを、自身らは既に知っている。
3540:アスクヒドラ マジで? 全く思い当たらないんだけど……。
3541:識別番号02 実例→自身
3542:アスクヒドラ あ、ああー、そういえばそっかぁー。
3543:識別番号02 仮定→自身という極めて稀な事態を元に考えるのであれば、何かしらの外部干渉によって誘導によって学園へと上陸した可能性がある。
3544:アスクヒドラ なるほど……待って、深海プレデターを呼び寄せる何かが、学園にいるってことは、『深海プレデター』が、日本に上がって来るって事だよね!?
3545:識別番号02 注意→あくまでも自身を元に考えた理由でしかない。
3546:アスクヒドラ ……もし、本当に何かが呼んでいるなら、俺たちはどうすればいい?
3547:識別番号02 回答→アスクヒドラは直ぐにアルテミス女学園へと戻り、全戦力を北陸女学園へと集結、その間、我々三体が解決のために動く。 理由→やつらが上陸して活動する事となれば、この日本に住む人類全てが滅ぶ事となる。 断言→それだけは阻止しなければならない。
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「──では最終確認を行います」
巨大ハッチ付近まで進んできて合流した【606号教室列車】と【303号教室列車】は、移動中の戦闘を考慮して、転車台を用いて前後が入れ替わっていた。その傍らで、ハジメたちアイアンホース全員が集まり、各々が自分に最適だと判断した装備を携えて最後の確認作業が行われる。
「
違う所属同士であったハジメたちは、あくまで即席のチームであるとして、今まで部隊名を付けなかった。しかし今回は別であると、もう余計な事を考える必要はないんだとして自分たち『アイアンホース』である事を表しつつ、分かりやすいとして、鉄を意味する『アイゼン』という名前を付ける。この部隊名は、この作戦のみならず、ずっとこれからも使われるものとなっている。
「自身から右回りに、アイゼン部隊アイアンホース七名点呼……リーダー、
「サブリーダー、
「
「
「
「
「
「確認完了、続いて作戦内容を確認へと移行」
「これより自分たちは北陸聖女学園・第七分校の調査を行うため、現時点『第1荷役施設アルカイド』から『第2居住施設ミザール』へと移動、そのために『プレデター』が居るとされる“第1通路”への進行を行います。そのさいの【606号教室列車】および【303号教室列車】の移動速度は7キロに固定、到着までの推定時間三十分間、自分たちは列車の正面を走り続けつつ、通路を突破します」
ハジメたちが決めた作戦とは、この通路を教室列車と一緒に進み続けて、一秒でも早く突破するというシンプルなものであった。
長い一本道の通路は、できるだけ早く通り過ぎたいほどの危険地帯であり、教室列車、特に重装甲である【606号教室列車】となれば停車してから再発進するまでには、それなりの時間を要する。この事から、なるべく時間を掛けないで進みたいアイアンホース全員の意見によって、迅速な突破を最優先する事とした。
想定で三十分の間、銃型ALISを構えて、何十キロの装備を伴い、適度な速度で走り続けるのはかなりの重労働であるが、『アイアンホース』たちは問題ないと判断したゆえの作戦でもあった。
「トラブルには通路上に残存する『プレデター』との戦闘の他に、通路が進行不可状態、線路の損傷などが考えられる。そのため正面進行方向の確認を怠らないでくれ……最後に【606号教室列車】の横をアルテミス女学園ペガサスの先輩たちが護衛として付いてくれるのですが、交代支援も行ってくれるので、選択肢として常に頭に入れておくように」
誰も返事を口にしない。最終チェックでしかないというのもあるが、ハジメの話しを一字一句、全員が聞き覚える。それが前提であるからだ。
「作戦確認終了、続いて装備チェック、弾薬、通信、服装……問題なし、ゼロ先生に通達、これより進行作戦を開始」
≪作戦承認。以降……“アイゼン1”を主体として作戦を実行せよ≫
「……“アイゼン1”了解」
そういえば、自分は“卒業”扱いを受けていて、先生との通信では名前を出してはいけないことを事を思い出し、アドリブに乗っかる。ゼロ先生の方でやってくれているとは思うが、これからも記録が残らないように気をつけなければならないと、ハジメは思い直す。
「では……」
「ハジメ」
「ん、どうした
話を終わらせようとしたハジメは、
「……我ら全ての害する物を弾き、砕き、突き進む鉄の馬──さあ、蹄鉄を鳴らせ!」
ドンッ、ドドン!
アイアンホース七名が大地を踏みしめて
「──作戦開始。移動はじめ」
≪こちらゼロ、【606号教室列車】および【303号教室列車】の移動はじめ≫
教室列車が動き始める、それに合わせてハジメたちも進み始める。アルテミス女学園は、そんな鉄道アイアンホース教育校の動きに各々の感想を抱きつつ、言われた通りに着いていく。
──鉄馬行進
お気に入り登録、感想、評価、ここすき、誤字報告、いつもありがとうございます!
季節変わりの寒暖差や気圧などで、次回の更新は遅れるかもしれません。
【私事】
前話にて紹介したTRPGリプレイ動画の次話が出ました、よろしければ見ていただけると幸いです。
[【エモクロアTRPG】薄幸少年と不幸お姉さんが巻き込まれる『0番童話』#2]