見えない境界少年   作:迦羅

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十三話

「考えてみれば、私達って空を飛べるんでしたね」

 

 新たに三人を加えた青達一行は、冥界を悠々と飛んで白玉楼を目指していた。

 

「急にどうしたのよ」

 

「いえ、冥界の入り口から白玉楼まで大分距離があると藍から聞いていたので、億劫だなぁと思っていたんですが…」

 

「実際遠いですからね」

 

「歩く前提で考えていたので、そう考えると大分気持ちが楽になりました」

 

「まぁ、元々私は青様と歩く前提で話を進めていましたけどね」

 

「鬼ですか?」

 

「狐です」

 

 藍の言葉でその状況を想像したのかあからさまに顔を歪めながら不満を漏らした後、青は話題を変える。

 

「幽々子嬢もですが、妖夢と会うのも久しぶりですねぇ…」

 

「妖夢の事知ってるの――って、賢者様の弟なら知ってるわよね」

 

「えぇ、二人共昔からの付き合いですので。妖夢なんて、こんなに小さい頃から知ってますよ」

 

 そう言って青は自分の腰辺りに手を持っていく。

 

「へぇ、何か面白い話とか無いの?」

 

 リリカは面白半分興味半分で青に話を促す。

 

「そうですね…あ、妖夢は小さい頃私に随分懐いていましてね、一緒に寝ていた時の事なんですが――」

 

「・・・青様、お話し中すみませんが、そろそろ白玉楼に到着しますよ」

 

「む、流石に本人に聞かれるのは不味いですね。ならこの話はまた後日ということで…」

 

「「えぇ~」」

 

 いい感じの所で話を切ったのでメルランとリリカから不満の声が上がる。しかし妖夢本人に聞かれて拗ねられるのは面倒だ。ルナサはそんな二人を宥めている。長女というのは大変だなぁと青は他人事ながらに思った。

 すると自分の服の裾がクイクイと引っ張られる。恐らく隣にいる藍だろう。どうやら無事に白玉楼に到着した様だ。

 青もゆっくりと速度を落としていき、藍の手も借りて無事に地面に着地する。

 

「ようこそお越しくださいました青様」

 

 少し歩いて行くと、目の前から懐かしい声が聞こえて来た。懐かしいと言っても数週間程前に会っているのだが。

 

「久しぶりですね妖夢。背は伸びましたか?」

 

「いきなり傷を抉るのはやめてください!数週間ぽっちじゃそんなに変わりませんよ!」

 

 先程までの冷静な雰囲気は何処へやら。彼女、魂魄妖夢は青の言葉にむきになって反論する。何故自分よりも背の低い青に揶揄われなければならないのだろうか。妖怪と言うのは常に自分を棚に上げる生き物なのである。

 

「青様、知り合いに出会ったらすぐに弄るのはやめてください」

 

「いや~、やっぱり妖怪の本分ですね。ついつい楽しくて…」

 

「楽しいですか!?人の傷を抉って楽しいですか!?というか青様は私よりも小さいじゃ無いですか!」

 

「私はもう身長を一々気にする程幼くはありませんので」

 

 ケラケラと笑う青にこれ以上言っても無駄だと判断したのか、小さな溜め息を吐く。

 

「もういいです。幽々子様がお待ちですので、どうぞお入りください」

 

「はいはい、私達は先に幽々子の下に参りましょうか」

 

「そうですね」

 

 そう言って青は白玉楼の主であり古くからの友人でもある西行寺幽々子に挨拶をするために、藍の手を借りて一足先に白玉楼に足を踏み入れる。

 

「案内は…藍さんがいるので大丈夫ですね。楽団のお三方も、どうぞゆっくりしていってください」

 

「「「お邪魔します」」」

 

 プリズムリバー三姉妹も白玉楼へと入り、妖夢と並んで雑談に花を咲かせながらこの屋敷の主の下へと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視点が妖夢達から変わって、青と藍は白玉楼の廊下を二人で歩いていた。

 

「妖夢達を置いて来てしまいましたが、このままでは幽々子嬢が何処にいるのかわかりませんね」

 

「ご安心を。幽々子様が何処にいらっしゃるか、ある程度の目星はついております。それにこの白玉楼の構造は、全て頭に入っております故」

 

「そういえば藍は姉様と共に結構な頻度で白玉楼を訪れていましたね…貴女も大変ですねぇ」

 

「紫様もですが、何故他人事の様に仰るのでしょうか」

 

「そりゃあ、他人事ですもの」

 

 当たり前の様に返答する苦労の元凶の一端でもある青に、藍は小さく溜め息を吐く。

 

「本当、藍ちゃんも苦労しているわねぇ」

 

 すると突然、背後からおっとりとした女性の声が聞こえてくる。

 彼らにとってはもう何百年と聞いた馴染みのある声。二人は特に驚きもせずに後ろに振り返る。

 

「それを言うんだったら、貴女の所の妖夢も大概だと思いますよ。幽々子」

 

 そこにいたのは青の古くからの友人であり、この白玉楼の主の西行寺幽々子であった。

 

「私はいいのよ。妖夢にはご飯の時にしか苦労かけていないもの」

 

「本当ですかねぇ…」

 

「お久しぶりです幽々子様、一つお伺いしたいことがあるのですが」

 

「なぁに藍ちゃん」

 

「先程プリズムリバー楽団の方達に会い、本日宴会が開かれると耳に挟みました。それは本当なのですか?」

 

「えぇ、昨日家に紫が来て青ちゃんが外に出られるようになったことを知ってね。今日の朝に紫からこっちに来るって聞いたから、妖夢に頼んで呼んで貰ったのよ」

 

「私達は何一つ聞いていないのですが…」

 

「私が紫に宴会を開くって言っていないんだもの。別に細かい事は気にしなくていいのよ。サプライズだと思えばいいじゃない」

 

「そうですよね。家の藍は真面目過ぎるんですよ。ちょっとは息抜きというものを覚えて欲しいものです」

 

「わかるわぁ。妖夢も全部手を抜かないというか…そんなに力を入れてたら疲れるだけなのにねぇ」

 

「本当ですよ。私や姉様、貴女の様に余裕を持っていないと大妖怪と言われる部類にはなれませんよ」

 

「私を評価してくれるのは嬉しいけど、私は亡霊だから妖怪じゃ無いわよ」

 

「話を逸らさないでください!」

 

 藍は思わず声を荒げるが、二人はどこ吹く風だ。藍の言葉を二人は笑みを浮かべながら軽くいなし、他愛のない会話を続けている。流石にこの二人の相手は、藍一人では手に余る。

 

「妖夢~、ようむぅ~!」

 

「はい、何の御用でしょうか幽々子様」

 

「青ちゃんも来たし、早速宴会を始めましょうか。夕飯の用意をしてくれる?」

 

「了解しました」

 

「来てくれたお客様方は私について来て頂戴。宴会場まで案内するわ。青ちゃんも私が連れて行ってあげる」

 

「ではお言葉に甘えて」

 

 青の了承を得た幽々子は、彼の手を取って先頭を歩く。

 

「ちょっと藍さん大丈夫ですか?大分疲れてるみたいですけど…」

 

「あ、あぁ、ありがとう妖夢。私ではあのお二方のノリについて行くことは出来なかった…」

 

「あぁ、わかります…」

 

 妖夢と共にはぁ、と深い溜め息を吐く藍。従者はいつも主人に苦労させられるものだ。

 

「幽々子様の相手は青様に、青様の相手は幽々子様に任せて、ご命令どおり料理を作りに行くとしましょうか」

 

「あぁ、私も手伝うよ。幽々子様だけでなく青様達の料理もとなると大変だろう?」

 

「ありがとうございます」

 

 藍と妖夢の二人は、青達とは別の方向へと並んで歩いて行く。触らぬ神に祟りなしの精神で主達から離れた二人だったが、青と幽々子を止めることの出来る存在がいなくなって大丈夫なのかという一抹の不安が結果として残ることになってしまった。

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