見えない境界少年   作:迦羅

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七話

「ふぅ、なんとか見つける事が出来ました」

 

 ルーミアとの密会を終わらせた青は、何も無かったかのように藍の下へと戻った。

 

「・・・きっかり三分、ですね。ご無事の様で、安心しました」

 

「藍はもう少し肩の力を抜いても良いと思いますよ。私だって妖怪の端くれ。そう簡単に死ぬことはありませんし、傷だって少しすれば回復します」

 

「そういう訳には行きません。これは私に与えられた任務ですので、怠る事など」

 

「昔から真面目と言いますか…頭が固いと言いますか…貴女に気の許せる友人はいるんですか?」

 

「ふぐっ!?」

 

 青の何気ないその一言は藍にとってはクリティカルヒットだったらしい。グサッという音と藍のうめき声が聞こえた。

 

「べ、別に構いません…私には橙がいますし…」

 

「私達の下から藍が離れた様に、橙もいつか貴女の手を借りなくとも仕事をこなせる日が来ますよ」

 

「聞こえません…私は何も聞いていません」

 

「あらら…現実逃避をしてしまいました」

 

 しまいには耳を塞いでしまった藍に青は思わず嘆息する。そのまま一人で歩き出すが、藍は任務を放棄する訳には行かないので渋々現実を見る。

 

「さて…次はどこに向かうのですか?」

 

「はい、人里へ行こうかと考えておりましたが、あの場所は人間の住処、八雲との関係はそこまで深い物では無い故、行き先を変更し紅魔館へと向かいます」

 

「成程、その紅魔館とやらはどんな場所なのですか?」

 

「吸血鬼が支配する紅い館です。この先にある霧の湖の向こうに存在します」

 

「ほう、吸血鬼ですか…流石に出会った事は無いので楽しみですね」

 

 新たな種族との対面を前に、青は若干浮足立った状態で紅魔館を目指す。途中で危うく転びそうになり藍に叱られる事になるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、青様、無事に紅魔館に着きましたね」

 

「・・・だとしたら何故、かれこれ五分もの間ここで立ち止まっているのですか」

 

 無事に霧の湖を超え、紅魔館へと到着した青と藍。しかし青の言った通り、藍は何故かこれより先へと進もうとしないのだ。

 

「では青様、先程から何か聞こえませんか?」

 

「え…?確かにここに着いた時から何か規則正しい音が聞こえていますが…」

 

「・・・それはですね、この館の門番の寝息です」

 

「え…?」

 

 藍の言っていることがイマイチ信じられなかったのか、青は思わず聞き返してしまう。

 

「それは…門番と言えるのですか?」

 

「この館に限っては、門番と言うことが出来る様です」

 

「えぇ…」

 

 藍の返答に青は思わず呆れたような声を出してしまう。藍も流石にこれ以上待つつもりは無いのか、寝ている門番に話しかける。

 

「おい、いい加減起きろ門番。さもなくばナイフで刺すぞ」

 

「藍、いきなり何を「ひゃぁあ!起きてます!起きてますよ咲夜さぁん!」」

 

 藍の突然の言動に青はその真意を問おうとするが、それよりも早くに聞いた事の無い声、恐らく目の前にいるであろう女性から発せられたであろう声が、彼の耳を突き抜ける。

 

「全く、そんなに罰が怖いのなら、寝なければいい話だろう…」

 

「アハハ…生理現象ですから――って、あれ?随分と珍しい方がいらっしゃいましたね。藍さんはともかくとして、そちらの方は…?」

 

「初めまして、門番さん。私は八雲青、妖怪の賢者八雲紫の弟である妖怪です。目が見えないので貴女が何処にいるのかはわかりませんが、顔はこちらに向けていて大丈夫ですか?」

 

「あ、はい、問題ありませんよ。私は紅美鈴と申します。この紅い館、紅魔館の門番を務めている妖怪です」

 

「今日は幻想郷の各勢力に青様の紹介をしていてな。アポ無しですまないが、この館の主、レミリア・スカーレットに会いたいのだが、宜しいか?」

 

「お嬢様への御用ですね?はい、大丈夫ですよ。アポも必要ありません。幻想郷でその有無を確認する人の方が珍しいですから」

 

「ふむ、そうか、ありがとう。では、入らせて貰う」

 

「どうぞお通りください。あ、青様は目がご不自由なんですよね?宜しければ私がエスコートを引き受けますが、よろしいですか?」

 

「ありがとうございます美鈴さん。しかし私は自分の従者を信用しておりますので。それと、様付けは必要ありませんよ」

 

「わかりました。それでは藍さん、青さん、どうぞごゆっくり」

 

 そこにいるであろう美鈴に軽く会釈した後、青は藍に手を引かれて紅魔館の敷地へと入っていく。途中で館内の者に伝えなくても大丈夫なのかとも考えたが、今更気にしても遅いかとその考えを切り捨て、置いて行かれることの無いように僅かに歩く速度を速めるのだった。

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