世の中って云うのは表向きに見える部分では綺麗かもしれない。誰だって好き好んでその後ろ側を見ようとはしないだろう?。
ご多分に漏れず俺だってその一人だ。目に見える所だけ綺麗にしておけば取り敢えずの体裁は保てる。普通に生きていける。棚の後ろの埃なんて目を瞑れば無いのと同じだからな。だがもしも…。
〜とある場所にて〜
「あぶねー……。最後の最後で滑り込みセーフ…。全くあいも変わらず人気商品ってのはすぐ無くなりやがる…」
スマホを片手に俺はそうボヤく。画面には「決済完了」の見慣れた四文字。
「人が多けりゃそれだけ争奪戦も激しい…か。ま、確保できただけでもめっけもんかね」
スマホを閉じ、深く息をしながら椅子にもたれ掛かる。
何をしていたかって?俺はものの数分前までまさしく死闘を繰り広げていたんだよ。とあるグッズの限定品…。如何にも販売意欲を掻き立てるそのワード、年に数回ある金と悲鳴が飛び交う日。頭の中でその事を反芻していると
「お…?どうした、しき?今回は駄目だったか?」
奥の部屋で何か作業をしていた男が自室に入ってきた
「秋星のオジキ…。部屋に入る時って普通はノックするもんじゃない?」
「固いこと言うなよ、誰がこの部屋に住まわせてるのか…。名前を教えてやろうか?」
「いや…いいよ。それより俺に何か用じゃないの?」
俺こと、しきは怪訝そうな顔でオジキを見る。いや、正確にはオジキが手に持ってるやつに目が行く
「ほら、いつもの。お前も懲りないねぇ…その内多方面から怒られるぞ」
そういってオジキは俺の足元に紙を放り投げる。拾い上げると案の定
「カード決済のご利用について」
の文言。
「いつもの事だし。もう向こうも慣れてるでしょ。それに、別に規約には違反してない。全く、上限まで行きそうになるとすぐ送ってきやがる…」
手紙を乱雑に机の上に放り投げる。その時の衝撃からかいくつかの手紙が机の後ろに落ちてしまったが、まぁ気にすることもない。どれも同じ様な手紙だからな。
「しかしなぁ…。いくらカードの利用率が現物の紙幣を超えたからっていくらなんでも使い込みすぎだぞ。カードは信用だってよく言うだろ?」
オジキは嘆息するようにそう言う
「上限さえ行かず、きっちり返せば信用なんて損ねないだろ。向こうが気にしすぎなんだよ。」
カードによる決済は「信用」により成り立つ。つまり、後々しっかり払ってくれさえすれば向こうは波風立てる気など更々ない。そして、俺は上限行こうがぎりぎりだろうが必ず払っている。まぁ…何かしらのリストには含まれてるだろうがね。
オジキの話を他所に俺は出掛ける支度をする
「ん?今日は仕事だったか?」
「ああ、やる事終わったし、日銭でも稼いでくるよ」
のそのそと着替え荷物を纏める。こう見えても働いているのでね。悲しいかな出勤の時間だ。
「そうか、お前もいつまでも淡白な飯じゃなくてもっとマシな物食べないといつか倒れるぞ」
「余計なお世話だよ。それに週に何回かはまともな物食ってる。じゃ、夜に戻るから」
家を出て自転車に乗る。職場に向かう時間は既に多くの人が行き交う時間帯。人混みを避けながら行くのも面倒なのでいつもの裏道から職場に向かうとしよう。
俺は勢いよくペダルを漕ぎ行き慣れた道へと曲がっていった。
だがもしも…。棚の後ろを見ないといけない…そんな場面になったらどうする?正直な話、どんなになってるか想像もできない…いや…したくない。普通なら見向きもしないところに強制的に目を向けざる負えない。それは人間的な感覚として嫌悪感を助長させるものだ。
分かりやすく棚で例えてはいるが、これが人間社会なら?もう目も当てられないだろう。およそ闇なんて言われているがそこで起きてる事は想像を絶するものだろうな。
なんでこんな話してるかって?勘の良い奴なら気付きそうなもんだが…、まぁいいか。
そうだな…一言で言うなら。「踏み込まざる負えなかった…」とだけ言えば皆分かるだろうさ。