神域遺物の蒐集者   作:東條九音

3 / 20
色付く世界、越えられない苦しみ#03

「……どうぞ」

 

部屋から返事が返ってきた事を確認し、ツムギは本を取り出し目的の頁を開くと小声で何かを呟いた後に、本をしまって室内に入る。

 

「えっーと、久しぶり、かな?私の事、憶えているかな?」

 

「とうさまの友達、本とお話していた人?」

「お父様のご友人、コレクターさんですよね?」

 

「あ、あはは……いろいろとツッコミたいけれどまぁ、憶えているなら何より」

 

クロエ・オルレアとサクラ・オルレアの2人共に憶えていた事に安堵するツムギ。そしていくつか確認を取り始める。

 

「そちらの淡白な回答をするのがクロエ、しっかり回答するのがサクラだよね?」

 

「そうね」

「はい、そうです」

 

「髪がホワイトブロンドがクロエ、イエローブロンドがサクラ?」

 

「そうね」

「そうです」

 

「K、改めまして私はツムギ。キミたちの両親の友人で、まぁ神域遺物(レリック)の専門家かな?神域遺物絡みで問題が起きた、と言う事で呼ばれてきた」

 

「……メガネ」

 

「そのメガネも神域遺物ですか?」

 

ツムギが姉妹に改めて自己紹介をすると、クロエはツムギのかけているメガネを指摘した。その指摘を捕捉するように、サクラは訊ねた。

 

「Yes、だからまぁそうだね。キミたちが両親にも隠している事、私に話してみないかい?」

 

「隠している事なんて、」「サクラ。ツムギは、分かってるわ」

 

「姉さん…!」

 

「大丈夫よ。この人はちゃんと、わたしたちをみてくれる。サクラを認めた2人目の人。憶えてない?」

 

クロエはサクラの目をまっすぐ見て意見する。一方でサクラは気が立っているのか、クロエほどツムギへ信頼を寄せてはいなかった。

 

「…おーけー、まだ警戒してるみたいだけど、問題を解決するための話をしようか?特にク…いやサクラ、キミは気を張り積め過ぎた。その様子だと、まともに休めてないでしょ?」

 

ツムギが指摘した通り、気を張り詰めているせいか、サクラに疲弊しているようにみられる。

 

「気を抜ける訳がないです。姉さんは皆さんに、期待されているんです。だから」

 

「サクラ、気にし過ぎ」

 

「ですが姉さん!私の描く絵が認められないせいで、姉さまが描けなくなっていると」

 

「関係ない。サクラはサクラ、わたしはわたし。それに、とうさまたちは見る目がない」

 

「そんなはずありません!姉さんは」

 

「そこまで、そこまで。姉妹共にお互いが大好きなのはわかった。なら早いところ解決するべきだ」

 

ツムギが2人の会話の間に割って入る。

 

「一応確認するけどその姿、メイクや変装の類いじゃなくて、入れ替わっている、って言う事で良いのかな?」

 

クロエとサクラの身に起こった現象は、それは精神の入れ替わり。もっと分かりやすく言うなら、クロエとサクラ、2人の外見が入れ替わってしまったのだ。

リクが話した姉妹の変化。それは2人の外見が入れ替わり、クロエだと思っていた中身はサクラ。クロエっぽい行動をとるクラの中身はクロエなのだから、当然の変化と言える。

だがリクは2人が入れ替わってしまった事には気付かず、単純に『コレクションの神域遺物が原因で不調になったのでは?』と考え、専門家のツムギを呼んだのだった。

 

「リクからは2人とも原因は分からないと聞いている。けど本当は、心当たりあるんじゃないかな?」

 

「…ないわ」

 

「…………」

 

「サクラ?」

 

「……さい、姉さん。私の「なんで?」せい……えっ、姉さん?」

 

「サクラはなんで、わたしに謝るの?」

 

ツムギが問い掛けると、クロエは少し思案し知らないと答える。一方サクラは無言で俯いた。どうやらサクラには心当たりがあったらしい。

 

「…私が願ってしまったんです。姉さんの様になりたい、と」

 

 

 




部分解説
~~ある姉妹の話~~

姉は物心付く前から絵を描いており、絵を通して自身の感情や想いを伝えていた。その結果、姉と言う稀代の天才を生み出した両親は、妹も同様に育てようとする。

がしかし、上手くはいかなかった。妹には才能があり賢くもあったが、姉の才能には遠く及ばなかったのだ。
その事はすぐに広まり、両親を含め殆どの人たちは妹には才能がない、所詮は劣化品と判断した。姉と言う大き過ぎる才能と比べ勘違いをしたのだ。

幸いなことに妹は、絵を描く事を嫌いにはならなかった。敬愛していた姉が自身の絵を好きだと言ったから。
しかし周囲の人たちは、姉と妹を比べては落胆する。妹は嫌だった。勝手に期待してその作品が、姉程では無いと分かると勝手に落胆する。

次第に自身の活動は消極的になり、持ち前の賢さで姉を支え補佐する事を選んだ。敬愛で劣等感に蓋をして、姉と競うことを避けてきた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。