テンプレ系裏ボス少女   作:るて

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深まる謎

「ワンツーステップいちにーいちにー! ……さてさてさてぇ? 準備運動も終わったことですしぃ――次の場所へと向かいますかぁ!」

 

 少女は嗤う。それは世界を。死した《魔王》を。そして何より知らぬ《勇者》を。

 

 「魔王が死んじゃったのは予想外でしたけどぉ……せっせこせっせこ働いてきた私の努力が無駄にされるわけじゃぁありませんしー」

 

 だから少女は笑みを止めない。彼女は止まりは決してしない。

 暗い暗いその空間で、塗り潰された暗闇の広がるその部屋で。

 

 少女は笑う。

 

「《世界樹》の管理人も、ましてや《時の先導者》もぉ……《統治者》ですら私の敵にすらなり得ませんしぃ」

 

 そして彼女は――ニヤリ、と。

 これまでで一番の大きな笑みを浮かべ、いつの間にか現れた金色の王冠を右手にクルクルと回す。そして彼女は、それはもう愉しそうに瞳を歪めた。

 

 

「――ワンツーステップいちにーいちにぃー! さてさてこれより始まりますわぁ、誰も彼もが参加者の、大きな大きな舞踏会!! 子供も大人も老人もぉ……さぁさぁ皆様ご一緒にぃ! ――レッツステップ躍りましょー!」

 

 

 そして少女は――姿を消した。

 

 

 ◆◇

 

 

「はて――謎の少女、ですか?」

 

「ああ」

 

 《聖女》と《勇者》は向かい合っていた。ラドラの隣に座る《剣聖》は難しい顔をして腕を組むのみ。

パチパチと弾けるような音が焚き火から鳴り、三人の顔を明るく照らしていた。

 

「ラドラ、それはそんな深く考える必要があることなのか?」

 

「ゼア、よく考えてくれ。明らかに異常だ」

 

 《魔王》との決戦で現れたその少女は、なによりラドラになんの兆候も見せず消えたあの少女は――明らかなイレギュラーだった。

 それを強く訴えるが、ゼアと《聖女》は不思議そうに首をかしげるのみ。

 

「ラドラ様、それってそんなに大切な事なんですか?」

 

「――メレリィ、君も僕のこれは考え過ぎだって言うのかい?」

 

「……《魔王》を倒した。世界は平和への道を歩み始める。例えそれが不確定要素と成りうるとしても、ここに不安の種を持ち込む意味はあるのか?」

 

 それはたしかな正論だった。魔王を倒した。そして世界は平和になった――めでたしめでたし。

 これが《勇者》の物語で、そしてこれ以上は語られない蛇足で。そして役目が終わったのなら、これ以上なにか重荷を背負う意味は見出だせないのも当然で。

 

  だが、《魔王》の発言がラドラの頭にこびりついて離れない。

 

「――《魔王》が言った『あの存在』……それがあの少女だと、僕は思っているんだ」

 

「と言われてもな……我々はその場にいなかった故に、結論が出せん。誰かさんのせいだな」

 

「……奇遇なことに、私もゼア様と同じく記憶にありません。誰かさんのせいでですね」

 

「うっ……」

 

 痛いところをつかれたラドラは思わず言葉に詰まる。

 

「……ご、ごめん」

 

「はぁ……別にいいですよ、もう終わったことですし」

 

「そうそう、俺達のことを考えてなんだろ! なら気にする必要ねえって!」

 

 軽く空気が入れ変わったところで、ラドラは一拍おいてゆっくりと語り出す。

 

「それはおいておいて、だ。……お願いだ、二人とも。一回だけでもいいから、真面目に考えてくれないか?」

 

「……しょうがねぇなあ」

 

「ラドラ様がそうおっしゃるのでしたら……」

 

 ゼアがうなり、メレリィが顎に手を当てる。そして数秒後。

 

「――取り敢えず、まず皆でその少女の情報を共有しません?次に見たときに真っ先に分かるようにしておくのは重要だと思うのですが……」

 

 メレリィの口から出された意見に、そう言えばとラドラは頷く。何故忘れていたのかすら分からない程重要なことに、思わず苦笑いをし。

 

「それじゃあメレリィ、僕の記憶を投影してくれるかい?」

 

「了解です、ラドラ様」

 

 流れるように話しは進む。記憶を映像として写し出すその魔術は難易度は高い。だか、聖女所以のその技術は遺憾なく発揮され、見事なまでに精緻に投影された少女の外見が焚き火の上に写し出される。

 

 「……あれ?」

 

 「動かない、ね」

 

 そして異常はすぐに起こった。『記憶』を元に、映像としてそれを写し出す技術。本来なら写るはずのそれではなく、一枚の絵として固定されたようにその少女は動かない。

 だが、それ自体に支障はない。

 

 「……まあ大丈夫だよ、ありがとうメレリィ。これが僕が魔王を倒した後に現れた少女だ」

 

 「まあ……その、覚えにくい方ですね」

 

 「あははは……そうかも」

 

 あまりにも『ありきたり』なその外見に、思わず二人で笑い合うと――、

 

 「――あれ?ゼア?」

 

 目を大きく見開いたゼアがラドラの目に入る。その瞳には、確かな驚きが滲み出ていた。

 

 「……ラドラ」

 

 「なんだい?」

 

 たたならぬ様子のゼアに向き直り、ラドラは言葉をゆっくりと待つ。

 

 「これが……この少女が、魔王討伐の直後に居た、というのは本当か?」

 

 「――ゼア様、一応私から言わせて貰いますと、時間的にもそれで間違いないかと」

 

 それを聞き――ゼアは息を大きく吸う。それと同時、突然異常が起きた。

 

 「ッ――?」

 

 ブッ、と言う音と共に画像がブレ始める。かけ違えたボタンほどの違和感のそれは、やがて大きくなり始め――。

 そして、それを横目にゼアがゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

 「ラドラ――俺はこの少女を、見たことがある」

 

 「それは……本当かい?」

 

 「ああ」

 

 そして、次の瞬間。ブツリと無理矢理なにかが断ちきられるような音と共に、画像が途切れ。

 

 

 「――俺がこの少女を見たのは、ラノート帝国の王城――そのときのメイドの一人に、この少女がいた筈だ」




 序盤で実は遭遇していた。これはかなりの裏ボス点の加点。

 ちなみにゼアさんの台詞がところどころおかしいのは仕様です。共通点に気が付けた貴方には裏ボス点を2点プレゼント!
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