テンプレ系裏ボス少女 作:るて
「──む……」
ゼアはゆっくりと目を覚ます。薄く辺りを見渡すと、日は既に顔を出しかけていた。
硬い土に手をつきながら身を起こす。未だ眠っているのはラドラのみのようだ。ぐーすかと毛布を枕に寝こけていた。
「……となると、メレリィは」
「あれ?ゼア様、呼びました?」
いつからいたのか。後ろからぴょこりと顔を出したメレリィに、内心驚きながらゼアは軽く冗談を口にした。
「ああ……いや、いつも最後に起きるお前がいないことに違和感がな」
「──ゼア様ったら酷いですよ!」
それを聞いて軽く頬を染め、ぷんすか怒るメレリィを笑うと、ゼアはいつものように焚き火の後始末を始める。余りこういうことは『冒険者』はしないが、国柄ゆえかゼアはこのような汚れた状況は好きではなかった。
「そういえばですけど、昨日ってなにを話したか覚えてます?私、多分ですけどいつの間にか寝ちゃってて……どうも思いだせないんですよね」
そこで『あはは』と笑いながらかけられた問に、ゼアは不思議そうに答えた。
「ラドラに多少説教をして……これからの話をして、終わりにしなかったか?」
確かそうであったはずだ。『魔王』を倒したのだ。もう何も重荷を背負う必要はない。これからの話をしても、バチは当たらないだろう。
「その『これからの話』ってなんでしたっけ?」
「確かだが……《静謐の儀》を行う為にセルド王国に戻り、それからラドラは、一旦故郷に戻ると言っていたな。……メレリィ、何故このような事を聞く?」
違和感が微かに背筋によぎる。それを聞き、パチパチ目を伏せる瞬くとメレリィはにへりと笑った。
「どうも私魔力使い過ぎちゃったみたいでして……記憶が曖昧なんです」
「それは……ああ、ラドラの傷を治すためにあれだけの魔力を使えば仕方が無いか」
ふとよぎったそれは、だがすぐに否定された。魔力の使いすぎは記憶の混濁を招くのも周知の事実であった。メレリィは名の通り『聖女』だ。傷を治す魔術を心得ている。
ならば、これは何の違和感もない──、
「──?」
「どうかしましたか?ゼア様」
「いや、何か忘れている気がしてな……だが、気のせいだろう」
「そうですか、よかったです!」
一瞬感じた奇妙な感覚は瞬きの間に搔き消える。ともすれば虫の知らせとも呼べるかもそれないそれを、しかし『もう魔王は倒したのだ』と言う安心感が揉み消した。
「さて……寝ぼすけメレリィが珍しくこんな早くに起きているのだ。さっさとラドラを起こさなくてはな」
「──ゼア様言いますね!いいですよ!これからは傷を負っても直してあげませんから!」
「ふむ……それは困るな」
そうだ。考えるべきはこれから。過去の懸念など気にするものではない。疑問が頭から抜けてゆく。
そしてその談笑の最中、ラドラがゆっくりと目を覚ました。
「──ふわぁああ……ん、あれ?……め、メレリィが起きてる?!」
「ラドラ様?!」
メレリィがキッとラドラを睨む。突然の怒りに慌てふためくラドラに、キレるメレリィ。
「──ははは」
思わず笑い声が漏れる。これが、勇者パーティーの日常だ。そう、魔王を倒してもいつもと変わらない、変哲もない、日常──。
だから、ここで一つ言うのであればこうなるのであろう。
「めでたし、めでたし」
ちゃんちゃん