とある少女の話   作:nite

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朝起きて、ごはんを食べて、準備する。とは言っても少女に準備が必要なものなどないのだが。

それに対して少年は小さなポシェットを持っていた。どうやらその中には水とパンが入っているようだ。少女は見つけることができなかったがどこかに畑があるのだろう。この森の中で十分な日光を得るには結構苦労しそうだと少女は勝手に少年に同情した。

 

「それじゃあ行くよ」

 

少年の手を取り移動する。

謎の力による浮遊感が過ぎ去った後、少女の前には町が広がっていた。小さな公園にあまり大きくない役所など、なんだかベッドタウンといった様相だ。そして何より誰の気配も感じない。ここは建築だけがあって、誰も住んでいないようだった。

 

「なんだか気味悪いわね」

「こんなところばかりだよ。慣れて」

 

むしろここは建物がきれいな状態なのでまだマシな方なのであるという。少年が旅をしてきた世界ではむしろ荒地や廃墟の方が多いらしく、一回目の転移でこんな町に来れたのは幸運だったと少年は笑った。

少女は町を見て思う。人工物である以上誰かが作らなければいけない。となれば作った人は、人々はどこへ行ったのだろうか。やはりここは気味が悪いと、笑う少年とは対照的に少女は少しずつ気分が悪くなっていた。

 

「顔色が悪いね。大丈夫かい?」

「ええ、ただここにはあまりいたくないわ」

 

少女は少年に訴えかけて転移してもらうことにした。

またもや少女を襲う浮遊感。どうしても目を瞑ってしまう少女が目を開いたときには既に別の世界に到着していた。

 

「きゃっ!」

 

そしてすぐさま少女は何かに押されて倒れこんでしまった。少女を押したのは豚のようであった。少女が起き上がり周囲を見渡すと豚だけではなく様々な動物が思い思いに過ごしていた。この世界は地平線の向こうまで広がっているはずなのに、その先まで動物で埋まっており明らかに密度が過多であった。

しかも運の悪いことに豚に押されたはずみに少年と別れてしまったようだ。少女自身には創造することしかできないので少年がいなければ自分の家に帰ることができない。

少女が焦り始めたとき後ろから手を引かれた。そして少女が振り向く間もなく浮遊感。気づけば少年の世界の森の中に立っていた。

 

「大丈夫だったかい?」

「…」

「えっと…」

「…ふふふ。あはは!」

 

少年が変なものを見るかのような目をしていることに気が付き少女は弁明した。

 

「ああ、楽し」

「…それは、よかったよ」

 

少年は少しほっとしたかのような表情を浮かべた。

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