今回移動してきたのは区分けされたエリアの中にそれぞれ独特な建造物がある世界。黒くて大きな像が多いのは特徴だが、これはいったい何なのだろうと少年は思う。
彼は少女と別れてからも様々な世界を渡り歩いた。少女がいたときは何度かに一度自分の世界へと戻っていたが一人旅なら何も心配する必要はない。そこが一人旅の魅力であると少年は思っているし、実際気楽に旅ができるというのは嬉しいことであり危険なときはすぐに別の世界に移動できるのは安全面でもありがたい。
それでも定期的に思い出すのは少女のこと。別れるときに何か言ったほうがよかっただろうか…そんなことを何度も思っては振り払う。少年は自分と一緒だと危険であると自覚しているので少女には安全な場所で生活していてほしかったのも事実だ。
「これ…結構難しいな」
過ぎたことを考えても仕方ないとこの世界にあったアスレチックに挑戦する。少年は運動神経が良いとまではいかないのでどうしても動きはぎこちないが、悩みを振り払うのにはとても役立っていた。
挑戦すること約十分。少年は諦めた。そこまで背が高いわけでもないというのに何度も高いところにある場所にジャンプをさせられるのは体力に限界があったのである。なんとか地面まで下りて一考。
「やっぱりあの時…」
すぐに悩み事は再来する。ずっと同じことで悩んでいるのは無益なことであるというのは少年も分かっているが、そこで割り切れるほど大人でもない彼は悩むのをやめることができなかった。
彼はこの世界を歩きながら散々悩んだあと何も解決しないまま世界移動をした。ちょっとした浮遊感のあとに広がったのは平原と青い空。何もないような世界だけど、この世界はとても見覚えがある。
少年が後ろを振り返ると小さな一軒家と大きな庭。ここはあの少女の世界である。家の中に明かりがあるということはきっと彼女は今料理でもしているのだろう。そういえば一番最初に会ったときもあの子は料理をしてたなと少年は苦笑した。そこまで昔でもないのに、遠い思い出のように感じるそれは少年をこの場に縫い付けるには十分だった。
ここでまた少女と出会ったらどうしよう。何と言おう。そんなことをちょっとだけ考えて、やめた。
「今思えばこの世界に来たのは四回目か…君は運がいいね」
そう呟いて少年は世界移動をした。浮遊感とともに場面が変わり、目の前には森。少年の世界。
寂しく、ただ喪失感はない感覚。不思議な感覚。少しだけ自分の中で割り切れたような、そんなことはないような感覚。森の中を歩いて、誰もいない自分の家のドアの前に立ち…
「ただいま」