超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game98:白き蒼空の女神

六魔将ラグナと結晶の女神クリスタルハート。瓜二つの外見をした二人の少女はお互いに秘めた力を解放して真の姿を現した。地底からマグマが湧き出る洞窟内に響き渡る龍の咆哮が紅と蒼。二体の龍の決闘の始まりの合図となる。

 

「最初から全力で行かせてもらうぜ!」

 

龍となったラグナは赤黒い雷を体から放出する。それはドラゴンが生まれた時から宿している龍属性の力の顕現。龍属性はドラゴンが忌み嫌う属性でもあるのだが、謎の多い力ということもあってゲイムギョウ界では武器に転用された前例が無い。龍属性の存在は危険種以上に分類されることの多いドラゴン族モンスターの強さの理由でもあるのだ。

 

女神龍となったシエルも龍属性を操るが、同時に弱点でもあるという欠点がある。条件をクリアすれば適応化能力で耐性を上げることも可能だが、弱点の龍属性に限ってはその攻撃を何度か受けて耐える必要があるのだ。

 

「ぐっ…! 龍属性の力はやはり効くな…。だが、逃げてばかりでは前に進めない…!」

 

危険種狩りを得意とするシエルでも龍属性を使う敵を避けることは多い。特に超接触禁止種のドラゴン族モンスターは今の自分やラグナのように龍属性の雷を自由自在に操る上に戦闘能力も凶悪極まりない物なので未だに一人で討伐できたという試しがない。

 

ネプギアとハード・ユニゾンした舞と模擬戦を行った時にも龍属性を逆手に取られて一撃をお見舞いされている。苦手な物から逃げ続けていた自分に別れを告げたシエルはこの決闘で初めの一歩を踏み出す決意を固めた。

 

「敢えて受け止めることを選んだか…。アタシにはできない真似を平然としやがる…」

 

「逃げるのはもう終わりにしたのでな…。立ち向かう心の強さを戦友に教えてもらった。今度はこちらから行かせてもらうぞ…!」

 

シエルの体が蒼い光に包まれると姿が変化する。マジックとの戦いで見せた前肢が翼となったワイバーンタイプに。飛行能力が高まった翼で飛翔すると足爪に龍属性を纏わせてラグナに強烈な蹴りをお見舞いする。

 

「アタシの体に傷をつけるとはな…!」

 

シエルの攻撃を受けたラグナは少しではあるが後退する。どうやら龍属性の耐性はラグナの方が上のようだ。ダメージが入ったとは言っても僅かに過ぎない。身を覆う重厚な甲殻を突き破るのは容易ではないのだ。

 

初代クリスタルハートの元となったドラゴンは結晶を好んで捕食するという特性を持っていたが、ラグナの相棒のドラゴンは武具を好んで捕食するという他に類を見ない特性をもっていた。摂取した武具は甲殻と融合を果たして尋常ならざる強度を獲得している。それを人の身で貫くことは適わないと言ってもいい。

 

「何という固さだ…」

 

「スカーレットハートの奴が引き起こしたあの大戦争は相棒に取っては最高の餌場でもあったからな。アタシ達は屠った獲物の数だけ力を増していった」

 

相棒の龍と共に戦場を駆け抜けるラグナに付けられた二つ名はドラグーン。隙の無い巧みな連携の前に数多の兵たちが命を散らしている。かつてセレナと共にゲイムギョウ界を守護していた残る二人の守護女神が力を合わせて何とかラグナを撃破することができたのだという。ラグナはシエルを倒すために次の手段を行使する。

 

ラグナが咆哮を上げると地面から噴き出したマグマがシエルに襲い掛かる。自分の真下からの強襲に僅かではあるが反応が遅れてしまい、被弾してしまう。

 

「ぐうっ…!」

 

適応化能力が自動的に反応してシエルの火耐性を上げる。シエルは形態変化を行い次の一手を繰り出す。光の中から姿を現したのは二足歩行であることには変わりないが翼が無い竜。前足は非常に小さいが後足は頑強に発達している。これが脚力とパワーに特化した恐竜型タイプなのだ。

 

「行くぞっ!」

 

発達した後足の脚力を使って凄まじい速度で駆け出した。足元から襲い掛かってくるマグマは軌道を巧みに変えながら突撃することで回避する。ラグナとの距離を詰めて繰り出したのはタックル。

 

「そんな単純な攻撃がアタシに効くかよっ!」

 

ラグナは爪の一撃を繰り出すが、それは空を切るだけに終わる。次の瞬間にシエルは恐竜型からいつもの人間状態に戻っていた。さらにタックルを当てた際に体から離れた蒼の結晶がラグナの体に付着している。

 

「クリスタル・バースト!」

 

ラグナの体に付着した蒼の結晶に向かって白い光弾を飛ばす。光弾が直撃した結晶が何と爆発した。かつて世界中の迷宮でキラーマシンの大群に囲まれていた舞達を助けた際に使用した技。シエルが飛ばした光弾は自分のシェアエナジーを収束させて作り出した物で、体から離れた蒼の結晶はシェアエナジーと結合すると爆発を引き起こす性質があるのだ。

 

「今のアンタは自由自在に姿形を変えられるってわけか」

 

「ここまで間を置かずに変えたのはアリアと本気で戦った時以来だけどね」

 

形態変化は対人戦で相手を翻弄する際にも使えるが、モンスターを相手にする際にはまず使わない。基本的に特殊女神化と通常女神化で済んでしまうからだ。中には人間に匹敵するほどの高度な知能を持っているモンスターも噂ではいるらしいが、まだ出会った経験は無い。いる可能性があるとすれば超接触禁止種だろう。

 

「一つ聞かせてほしい。アンタのことを化物呼ばわりする奴とかいたのか?」

 

「いたよ。一緒にクエストに行く友達とギルドマスターは私の正体を知ってるけど、他の人は知らないからね。アリア達と出会う前の話にはなるけど、クエストで訪れたダンジョンで実力も無いのに危険種に手を出して襲われてた冒険者を女神化して助けたことがあってね。その後に人の姿に戻って大丈夫かって声をかけたら化物呼ばわりされて逃げられたよ。それからアリア達と出会うまでは色々な意味で大変だった」

 

その冒険者がギルド内に情報を広めたのか当時はシエルのことを意図的に避ける冒険者が多かった。それでもシエルはアリア達と出会うまでの間は一人で戦い続けた。誰かに声をかけても避けられる。助けても感謝すらされない。そんな毎日を過ごしていた時期もあった。アリアとセレナとの出会いで現実は変わったが、それは忘れたくても忘れられない辛い過去。今もシエルの胸の中にしまわれている。

 

「アンタは本当に強いんだな…。アタシには無理だったよ。竜と心を通わせて話をすることができる能力がアタシにあることがわかった瞬間に村の奴らのアタシを見る目が変わったからな。アタシだけをバカにするならまだ許せたけど、家族をバカにされるのだけは絶対に許せなかった。アタシの家族はそんな奴らの迫害を受け続けて苦しみ続けた結果、アタシがいない間に無理心中した…」

 

住む場所と家族を失ったラグナは相棒の竜と共に過酷な自然の中で精一杯生き続ける。金を目当てに成体となった相棒を狩猟しようとする者達に襲われることもあった。そんな彼女の現実を変えたのが緋色の女神スカーレットハートとの出会い。

 

「遂に守護女神様のお出ましか。アンタもアタシ達を殺しに来たのか?」

 

「まさか! ただ精一杯生きているだけの君達を殺すなんて真似はしないよ。一応この場所は私の守護する緋色の大地の一部でね? 君達の情報がギルドから私のところに入ってきたから様子を見に来ただけさ。隣にいるドラゴンは君の友達なのかい?」

 

「ああ。今やアタシに残された唯一の友達さ。この自然の中で出会った他の友達はみんな金目当ての人間や国の発展しか考えていない守護女神に殺されたからな。そうか、ここはアンタの守護する大地だったのか…。それで? アタシ達をどうするつもりだ?」

 

「そうだなぁ…。君のことを聞かせてもらおうかな。竜と共存している人間には会ったことがないからね。何か困っていることがあるなら私が力になってあげるよ?」

 

「アンタの目、これまで出会ってきた奴等と何か違うな…」

 

「私の女神の瞳のことかい?」

 

「違う。アタシ達のことを見る目だ。住む場所を追われてから出会ってきた人間の目はアタシ達のことをただの獲物としか見ていない目だった。今アタシ達を見ているアンタの目はそいつらと何かが決定的に違うんだよな…。言葉で上手く言い表せねーけど…。まあ、アンタになら話してもいいか。それで? 何が知りたい?」

 

「君の全てさ。どうやら君には深い事情がありそうだからね。今の状況に至るまでのことを教えてほしい」

 

ラグナは緋色の女神に全てを語る。緋色の女神はラグナの瞳を見つめたまま黙って話を聞いていた。ラグナが過去を語り終えたところで彼女は次の言葉を紡ぐ。

 

「なるほどね。その話を聞いた上で私は君にある提案を持ちかけたい。私のところに来てくれないかな? 君とそのドラゴンの命の安全は保障することを約束するよ」

 

「アンタがアタシ達を殺す気が無いのはわかった。でも世界にはアタシ達のことを殺そうとする奴らがごまんといる。それを理解した上で言ってるのか?」

 

「なら私が裁きを下してあげるよ。何十人、何百人、何千人いたとしてもね。ただ精一杯生きているだけの君達を殺そうとする者達こそが真に化物と呼べると私は思う。君達の家族を追い詰めて住む場所を追い出した奴等も同じさ。そんな屑共に君達のことをどうこう言う資格は無い。君は今を精一杯生きている一人の人間なのだから」

 

「人間って言われたのはいつ以来だろうな…。嘘であっても嬉しいよ…」

 

「嘘じゃないさ。私は嘘が嫌いなタイプだからね。さて、君はどうする?」

 

「アンタと一緒に行くよ。残った人生も少しは楽しめるかもしれないからな。相棒もいいって言ってくれてる。ただ、守られるだけってのはアタシの性に合わねえ。だからさ。アタシ達にも何かできることをさせてほしい。アンタの敵はアタシ達が駆逐するって言うのはどうだ? これでも自然の中を相棒と一緒に生き抜いて来たから腕には自信があるぜ?」

 

「ならば私は君達を歓迎させてもらおうかな。これからよろしく頼むよ」

 

緋色の女神と出会ったラグナと相棒の龍は彼女の直属の部下である六魔将の一人となった。これが竜騎士ラグナが誕生するまでの物語。

 

「それからアタシは手始めにアタシの事を追い出した奴らを殺してスカーレットハートの奴の道を阻む敵も相棒と一緒に葬ってきた。アンタを倒したら他の女神共も全員始末してやるよ。女神は何人もいらない。世界を支配する一人だけでいいんだ」

 

「私は負けるわけにはいかない。あなたを倒してファントムハートの狂った野望も今度こそ終わりにしてみせるから…!」

 

「なら試してみようじゃねーか。この戦い、どちらが生き残るのかをな…!」

 

ラグナはドラゴンの姿から人間の姿に戻る。その手に握られているのは紅の刀身を持つ太刀。表面に赤黒い電撃を纏ったそれは強烈な龍属性を帯びた武器。

 

「それは…!」

 

「ファントムハートの奴がアタシを甦らせた時に一緒に出てきたらしいぜ。この黒雷は相棒の怒りの具現さ。この太刀その物が世界を憎んでいると言ってもいい。こいつを前にしてアンタはどう抗う?」

 

ラグナの問いに応えるようにシエルも太刀を具現化させる。自信の象徴でもある蒼白色の刃は振るうたびに蒼い光の軌跡を描く。

 

「そうこなくちゃな…。さあ、続きを始めようぜ!」

 

二人が駆け出したのはほぼ同時だった。ラグナとシエルの太刀が激しい音を立ててぶつかり合う。ラグナの太刀に纏わりついた龍属性の雷が斬撃と同時にシエルに襲い掛かる。

 

「っ…!」

 

太刀を握るシエルの手からは鮮血が滴り落ちる。痛みは当然シエルの体を駆け廻るが、それでも太刀を離さない。これを乗り越えなければラグナに勝利することはできない。痛みに耐えながら攻防を繰り広げるが、僅かな隙が生じてしまう。ラグナの太刀の一撃がシエルの体を斬り裂いた。

 

「うあああああっ!」

 

ラグナは追撃として蹴りをお見舞いする。守護女神と同等の力を持つ蹴りの一撃はその体をいとも容易く吹き飛ばした。

 

「流石のアンタもこの太刀の一撃を受けたら立てないか?」

 

「まだ…だよ…!」

 

シエルは立ち上がる。足元には血だまりができていた。

 

「それだけの血を流して何で立ち上がれるんだよ…!」

 

「約束…したから…! 精一杯…生きるって…!」

 

体がふらついて今にも倒れそうになっているが、その瞳の蒼い輝きはまだ失われていなかった。太刀を両手で握り直してラグナを見据える。常人ならば死ぬほどの致命傷を負ってもなお立ち上がったその意志に応えるかのように持っていた蒼のクリスタルがシエルの目の前に現れる。クリスタルが体内に入ると蒼の光がシエルを包み込む。

 

「苦し紛れに龍になったところでアンタの負けは変わらないぜ…?」

 

ラグナは龍が現れると思っていたがその予想は覆されることになる。

 

「なっ…! その姿は…!」

 

光の中から現れたのは龍では無く、何とプロセッサユニットを纏ったシエルだった。白を基調とし、蒼色のラインが入ったそれを身に纏ったシエルの姿はまさに白き蒼空の女神。背に顕現している白翼からは薄らと蒼い光が漏れ出していた。

 

「これが今を生きるための力だよ…!」

 

(戦友と交わした約束を果たすためにここは押し通らせてもらうぞっ…!)

 

声色の違う二つの声が木霊する。新たな姿を得た結晶の女神は交わした約束を守るために目の前の強敵に立ち向かう。

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