超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game100:神の雷

プラネテューヌの忘却の遺跡に展開された結界魔法。かつて先生と教え子の関係にあった金の女神と黒衣の魔術師が結界内部で激しい魔術戦を展開する。決闘の開幕からお互いに披露し合う上級魔法の嵐となっていて結界魔法を展開していなければ遺跡自体が崩壊しかねないほどの被害になっている。

 

「闇の魔弾よ。我に仇名す者を殲滅せよ。カラミティ・ダークネス」

 

「邪を打ち払え、星の煌めき! シャイニング・スターズ!」

 

百を優に超える光と闇の魔力弾の激突はまさに弾幕の嵐。誘導制御の技術を必要とする射撃魔法に分類されるが、大量の魔力弾の生成と制御には非常に高い技能を要求される。光と闇の弾幕の嵐は互いに相殺し合う形で消滅した。

 

「大戦争の時も思ったけど、本当に変わってしまったんだね…」

 

「私の魔導の全ては主の敵の殲滅とあなたを越える為にあります」

 

アリスの最も得意とする属性は闇属性。光属性を最も得意とするセレナとは対極の位置。魔術禁書に記されている魔法は闇属性の魔法が大半を占めると言われている。かつて自分のことを慕ってくれていた少女の面影は完全に消え失せていた。魔術禁書は記された強大な魔法の習得を代償に閲覧した人間の心を蝕むと言われている。

 

「続けていきますよ。ディザスターカノン!」

 

闇属性と火属性を融合させた黒焔属性の魔力を収束させて放つ砲撃魔法。

 

「その砲撃は通さない。クレッセントミラー!」

 

セレナの前に大きな鏡が現れる。魔法を反射する効果を持つ鏡がアリスの砲撃魔法を別の方向に跳ね返したが、一度の反射で鏡が砕け散ってしまった。大戦争で戦った時よりもアリスの魔力が上昇しているのだろう。

 

「属性融合まで使えるようになってるんだね…。敵同士で無ければあなたの成長を心から喜びたいよ。それも私を倒すための力?」

 

「はい。ファントムハート様の敵は私の敵でもあります。私に新しい現実を与えてくれたあの方の邪魔をする者は殲滅するのみ。師であっても容赦はしません」

 

「私があの時に駆けつけることができていたら運命は変わっていたのかな…?」

 

「どうでしょうか。スカーレットハート様が仕掛けた罠をセレナ様が見破っていたのならば国が滅ぶということはなかったでしょう。私もあの方が偶然駆けつけてくれてことで生き延びただけに過ぎませんから」

 

自分が駆けつけていたならば、アリスは六魔将になることはなかったと言える。彼女を別人に変えてしまったのは自分の罪だ。償う方法は唯一つ。大戦争の時と同じように自分の魔導の全てを賭けてもう一度倒すしかない。

 

「あなたが私を倒すための魔法を使うと言うのなら、私も今この時はあなたを倒すために魔法を使うよ。親友との鍛練で習得した魔法を見せてあげる」

 

あの時と違って今のセレナが行使できる魔法は月の魔術書に記されている魔法だけでは無い。舞とのハード・リンクで習得した魔法もある。成長しているのはセレナも同じなのだ。

 

「ウィークメーカー!」

 

セレナから放たれた金の魔力光がアリスの体内に入る。

 

「続けていくよ。インスパイア!」

 

セレナは雷属性の初級魔法を放つ。セレナの体を守護するプロセッサユニットとアリスが身に纏っている黒衣は魔法に対する抵抗力が高いので大きなダメージにならないかと思われたが直撃を受けたアリスは苦痛に表情を歪めた。

 

「初級魔法で私の黒衣の防御を突き破られるとは思いませんでした…。その前に使った魔法の力ですね?」

 

「ご名答。ウィークメーカーは敵に強引に弱点属性を付加させる魔法。雷属性を弱点に設定して使ったから威力の弱い初級魔法でも十分な効果が期待できる」

 

「それが舞様との絆で得た力ですか…。ならば私もお見せしましょう。ファントムハート様からこの時のために授かった魔法を」

 

アリスの魔術書が禍々しい紫光を放つ。戦場に突如現れたのは黒い扉。

 

「召喚魔法…?」

 

黒い扉が開き、中から一人の人物が姿を現した。それはセレナにとってたった一人の肉親とも言える人物。魔剣ゲハバーンによって命を散らした先代ゴールドハートだった。最後まで超えることができなかった優しき姉。

 

「ファントムハート…! どこまでふざけた真似をすれば気が済むのっ…!」

 

セレナの瞳から一筋の涙が流れる。それは死者さえも戦いの道具とする禁術をアリスに教えた女神の亡霊に対する怒りの涙。

 

「本当ならば使いたくはなかったのですが、あなたを越えるためにはこれしかないのですよ…! 我が忠実なる僕よ。我に仇名す女神を殲滅せよっ!」

 

アリスの命令を受けた姉の幻影は武器である長剣でセレナに斬りかかる。金の太刀を具現化させて受け止めるが簡単に押し切られてしまう。

 

「重いっ…!」

 

「この程度?」

 

続けて襲い掛かる鋭い斬撃。最後まで超えることのできなかった姉は魔術のみならず剣術にも秀でていた。アリアに匹敵するほどの斬撃がセレナの体を斬り裂く。

 

「うあっ…!」

 

「隙だらけですよ。セレナ様。ブラッディ・ランス!」

 

セレナの敵は姉の幻影だけでは無い。アリスの魔法が続けて襲いかかる。直撃は何とか回避したが着弾点から広がった闇属性の波動がセレナを吹き飛ばす。召喚された姉の幻影とアリスに苦戦を強いられる。鋭い剣術と強力な魔術の前にセレナは次第に追い詰められていった。

 

「はぁ…。はぁ…」

 

「思った以上に粘るね?」

 

「最後は私の手で葬らせていただきます。セレナ様、お別れの時です…」

 

セレナの体が宙に浮かび上がると四肢と首を黒い輪が拘束する。アリスが行使したのは敵の動きを封じる拘束魔法でバインドと呼称される物。

 

「ああっ…!」

 

「これで終わりです。エクリプス・バスター」

 

無属性の極大の魔力砲撃がセレナの体を飲み込む。砲撃が通過した後には女神化が解除されたセレナが地面に倒れ伏していた。黒の着物も至る所が破れていて素肌が露わになっている。起き上がってくる気配はない。

 

アリスはその場を立ち去ろうとするが背後から聞こえてきた物音に足を止めて振り返る。倒したと思ったセレナが立ち上がろうとしていたのだ。

 

「馬鹿な…。直撃を受けてまだ立ち上がるというのですか?」

 

「私の大切な人を助けてくれた親友が言ってたの…。自分の体が消えて無くならない限りは絶対に諦めない。最後まで立ち向かってやるってね…!」

 

舞が心に秘めていた不屈の心は共に高みを目指して鍛練を続けてきた仲間達の心にも刻まれている。他の六魔将と戦っているネプテューヌ達、舞と戦っているネプギア達、裏側で戦っているアリア。全員で生きて帰る為にも自分だけがここで屈するわけにはいかないのだ。

 

「今のセレナ様に何ができるというのですか? 姉の幻影を前にして何もできなかったというのに…」

 

「姉さんの幻影を越えてあなたを倒す…。確かに私一人の力だと姉さんの幻影を越えるのは無理…。ここは親友の力を借りるよ。サモン・フレンズッ!」

 

現れたのは銀色の扉。中から現れたのは黒の髪を持ち、モノクロパーカーワンピを着た銀の女神の瞳を持つ少女、神奈 舞だった。

 

「私は何をすればいいのかな?」

 

「アリスを足止めしてほしい。先に姉さんの幻影を何とかする」

 

「わかった。セレナなら必ず越えられるって信じてるから」

 

舞がアリスの相手をしている間に姉の幻影に立ち向かうセレナ。

 

「まさか舞様とお手合わせを願えるとは思いませんでした」

 

「誰か知らないけど今のセレナの邪魔をするなら許さないよ」

 

セレナが召喚したのはファントムハートに連れ去られるまでの舞を再現した幻影だが、この時点で六魔将とも十分に渡り合える程の強さを持っているので相手に不足は無い。

 

「その体でどこまで私に刃向える?」

 

「姉さんを倒すまでだよ。魔法剣【嵐の型】!」

 

特殊女神化状態で最後を飾る最上級魔法の術式の構築を行いながら新たな魔法を行使する。魔法剣は武器に属性を付与させることで威力を上昇させる魔法。今代のゲイムギョウ界でも使っている者は多い。セレナが太刀に付与させたのは風属性と雷属性を融合させた嵐属性。

 

「はあああっ!」

 

嵐属性を纏わせた金の太刀で姉の幻影に一閃を繰り出した。

 

「この力は…!」

 

反撃を太刀で受け止めるとシェアの力を乗せて押し切ることで隙を作る。今度はこちらの番だ。自分に出せる剣舞を姉の幻影に届ける。目の前の存在を越えて世界を照らす金の女神になるために。

 

「斬魔月華閃!」

 

セレナの一閃が姉の幻影の体を斬り裂いた。

 

「馬鹿な…! 私の存在が消えるっ…?」

 

「今の姉さんはアリスの魔法で強引に顕現しているだけに過ぎない。私が斬ったのは正確には姉さんの幻影を構築している魔法の術式」

 

「まさか術式を斬るとはね…。完敗だよ。剣術は私の方が分があると思ってた…」

 

「私はまだまだ弱い。だからみんなと一緒にさらなる高みを目指す」

 

「そっか…。なら私はそれを応援してるよ。頑張って、私の自慢の妹…!」

 

姉の幻影はセレナに微笑むと光となって消滅した。残るは舞の幻影が足止めしているアリスのみ。

 

「先代ゴールドハートの幻影を打ち倒すとは…。流石ですね」

 

「セレナは乗り越えたんだよ。次はあなたの番だね。セレナ、準備はできてる?」

 

「勿論。教え子の間違いは私が直してあげないと。オーバーリミッツ発動! プリズムチェーン!」

 

オーバーリミッツによる詠唱破棄で発動する拘束魔法。七色の強靭な光の鎖がアリスの体を縛り上げる。舞の幻影が距離を取ったのを確認すると先程から術式を構築していた最上級魔法に繋げる。アリスを中心に巨大な紫色の魔法陣が出現すると雷属性の魔力が上に収束していく。

 

「天光満つる所に我はあり。黄泉の門開くところに汝あり。出でよ、神の雷!」

 

月の魔術書を上に掲げてそれを解き放つ。

 

「これでお終い! インディグネイション!」

 

収束した魔力が巨大な轟雷となりアリスに直撃した。結界魔法が解除されて風景の色が元に戻る。壊れていた部分はまるで何事も無かったかのように元の状態になっていた。

 

「まるであなたの怒りを体現したかのような雷でした…」

 

「当然だよ。私は怒ってるんだから。あなたにあの魔法を教えたファントムハートは勿論、それを戦闘で行使したあなたに対してね」

 

「ふふっ…。死者をも利用した私が受ける報いでしょうか…。それでも私はあなたに勝ちたかったのですよ…」

 

「どうして?」

 

「敵同士であったとしてもあなたが私の憧れた最高の魔術師であることに変わりは無いからですよ。スカーレットハート様から女神の力を転写されて魔術禁書を読み漁った私の心は魔法の力で才能の無い者達を虐げる屑共に対する復讐心で満たされていましたが、あなたを越えたいという思いだけは消えることはなかったのです」

 

「そっか…。結果として国を守れずにあなたを救うことができなかった私は本当に駄目な先生だよね。それでも目標としてくれてたのは嬉しかった」

 

「いえ…。今回も私の完敗ですね…」

 

アリスの体は半透明になって消滅しかかっていた。

 

「ああ…。既に死した状態で甦った私もこの戦いに敗れたことで消えるようですね…。もし、生まれ変わることができるのならもう一度手合せを願いたいです。今度は禁書から得た魔法では無い。私自身の魔法をお見せしたい」

 

「うん…。私もいつまで生きれるのかわからないけどまた会えたらいいな。その時は魔法もまた一から教えてあげるよ。だから今はもう眠って…。私も祈ってるから。どうかもう一度アリスと会えますようにって。願いが現実になったらもう一度初めからやり直そう?」

 

「はい…。セレナ先生…。またいつの日かお会いできる日まで…!」

 

アリスは光となって消滅した。消滅する直前、彼女は確かに微笑んでいた。消滅した後に残されていたのは黒い表紙の魔術書。中を開いてみると全て白紙になっている。彼女の笑顔を見たのはいつ以来だろうか。

 

「また、あの子と会えるといいね?」

 

「本当にありがとう。あなたと出会えたおかげで私は強くなれた」

 

「それは本物の私に言ってあげて。ここにいないってことはどこかで戦ってるんだよね? 全てが片付いたら本物の私にもまた魔法を教えてね?」

 

「うん。舞には私の魔法の全てを教えるつもりだから」

 

「あははっ…。私も頑張らないといけないね。また私の力が必要になった時はいつでも呼んでよ。セレナの力になれるように私も頑張るから」

 

舞の幻影は微笑むと銀色の光の粒子となって消えていった。セレナは魔術書をしまうと外の様子を確認するために忘却の遺跡を後にしてプラネテューヌの教会に帰還する。

 

「あっ、セレナさん! ご無事でしたか!」

 

「イストワール。状況はどうなっているの?」

 

「つい先程、ネプテューヌさん達の帰還を確認しました。みなさん、酷い傷を負われていたので現在は病院で治療を受けています」

 

「ネプテューヌ達が無事に戻ってきたということは…」

 

「はい。六魔将はこれで全員が倒されたということになります。後はファントムハートと操られた舞さんだけですね。女神候補生のみなさんとアリアさんを信じて待ちましょう。全員でプラネテューヌの教会に帰ってきてくれる時を…」

 

「わかった。ネプテューヌ達のところに案内してくれる? 私も結構やられちゃったから…」

 

「わかりました」

 

(アリア、お願い。ネプギアちゃん達と舞を助けてあげて…!)

 

アリアとのハード・リンクはまだ切れていない。セレナは舞を助けるために裏側で戦っているアリアと表側で戦っているネプギア達の勝利を願っていた。

 

 

 

極限女神化状態の舞との戦いを繰り広げるネプギア達。今の状態の舞には攻撃が通用しないので回避に徹しながら猛攻に耐え続ける。

 

「がはっ…! うあああああっ!」

 

「舞さんっ!」

 

突然血を吐いた舞にネプギア達は驚きを隠せなかった

 

「きゃはははっ! どうやら舞の体の限界が近いようだよ? さっきから逃げ続けてるみたいだけど、このままでいいのかな? 君達の大切な人が死ぬのも時間の問題だよ? まぁ、その時はまた別の形でオモチャにしてあげるけどね」

 

極限女神化状態は単純に戦闘能力を上昇させるだけではない。斬撃、銃撃、魔法。あらゆる攻撃を無効にすることができるが、強大な力には代償が付きまとうのは常。このまま極限女神化状態を行使し続ければ舞は死ぬ。タイムリミットは刻一刻と迫ってきていた。

 

「アンタ、どこまでふざけた真似をすれば気が済むのよッ!」

 

「私にとっては楽しい遊びでしかないからね。私に怒鳴り散らしても無駄さ。言っただろう? この状態の舞はもう私には止められないって」

 

「舞お姉ちゃんを操って酷いことさせて…! 絶対に許さない…!」

 

「舞を助けたらアンタもコテンパンにしてやるから覚悟してなさいよ!」

 

「できもしないことを口にしないでほしいなぁ。言うだけなら誰にでもできるんだよ? さぁ、タイムリミットまで後少しだ。どうする? 諦めて舞を殺すかい?」

 

「絶対に諦めませんっ! みんなで一緒に帰るんです!」

 

(その意気だよ。ネプギアちゃん。諦めなければ活路は見えてくる)

 

この場にいないはずの人物の声が聞こえた。

 

「この声は…アリアさん!」

 

「馬鹿な…。シェアエナジーを全て吸い尽くしたのにどうして生きている…!」

 

(言ったでしょ? あなたの歪んだ欲望が成就することは絶対にあり得ないって。まぁ、今の私は消滅寸前の状態であることに変わりないけど)

 

「アリア、どうすれば舞の女神化を解除できるの?」

 

(これを使って)

 

四人の女神候補生の目の前に銀色の結晶が現れる。

 

(即席で作ったから今回限りの代物だけど、この結晶を体内に取り込めば今の状態の舞に攻撃が通るようになる。攻撃を続ければ舞の女神化を解除できるよ。辛いと思うけどこれしか方法は無い)

 

「シルバーハートッ…! 死にぞこないの分際でやってくれたね…!」

 

(それは褒め言葉として受け取らせてもらうよ。さあ、みんな。この夜を越えるまで後もうひと頑張り。行けるよね?)

 

「うん…! これで舞お姉ちゃんを助ける…!」

 

「よーし! 舞を助けてあのひきょーものを懲らしめるわよ!」

 

「今までいっぱい助けられてきた…。今度はアタシ達がアンタ達を助ける!」

 

「はいっ! ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん、行くよっ!」

 

四人の女神候補生は銀の結晶を体内に取り込み、それぞれの武器を構える。妹達の反撃(ターン)が今始まりを告げた。

 

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