Game102:ウラヌス
犯罪神マジェコンヌとの戦いで肉体を失ったプラネテューヌの女神、ウラヌス。意識だけの存在となっても今代のゲイムギョウ界を見守り続けているウラヌスから犯罪神マジェコンヌを完全に消滅させる方法を知るためにネプギア達はセレナの案内でギャザリング城の地下に向かうことに。
ネプギア達はトリックとの戦いでこの城を訪れてはいるが、城の地下は未知の領域なのでセレナが先頭にたってネプギア達を導いて行く。生息しているモンスターを蹴散らしながら薄暗い城内を進む。地下に生息しているモンスターは黒い体に水色の斑紋をもった蜘蛛と青色の幽霊がいる。余談ではあるが幽霊の頭にあるリボンの有無は本当に性別の違いを表しているとのこと。
注意しなければならない危険種は赤黒い体色で羽を持ったイルカ。ドルフィンと同じ水棲型モンスターに分類されるドリコリンプスというモンスターだ。迂闊に刺激しないように注意しながら最奥部の部屋の扉の前までたどり着いた。扉を開けて中に入る。
部屋の中は以外にも広い。中を観察していると壁には一枚の肖像画があった。描かれているのは自分達と同じ守護女神の瞳を持ち、豪華なドレスを着ている四人の女性。彼女達はネプテューヌ達が誕生する遥か昔にゲイムギョウ界を守護していた先代の守護女神達である。
「ウラヌス、いるんでしょ? 話がしたいから出てきてくれないかな?」
「誰かと思ったらお前だったか、セレナよ。お前を入れて守護女神が十一人…か? これは前代未聞の来客だな…」
「あの、あなたがウラヌス様ですか? 私はプラネテューヌの女神候補生のネプギアと言います。今日はあなたに聞きたいことがあってきました」
「今代の女神候補生か…。聞きたいこと…というのは犯罪神マジェコンヌのことじゃな? またも復活を果たしてこのゲイムギョウ界を滅ぼそうとしているか…。つい先ほど感じ取った邪悪な力はまごうことなき奴の物…。そしてもう一つ。三日ほど前にもそれに似て非なる邪悪な力を感じ取った。何者かまでは掴めなかったが…」
「それは女神の亡霊ファントムハートの力よ…。姿は過去にゲイムギョウ界を守護していたスカーレットハートみたいだけど、中身はまるで別人。ネプテューヌが聞いた話だと何者かが緋色の女神スカーレットハートの存在を喰らったそうよ…」
「犯罪神マジェコンヌの復活に加えて
「あなた、犯罪神と戦ったことがあるのよね? 私達も戦ったけど、器を壊した後に現れた本体には手も足も出なかったわ。犯罪神の本体は実体を持たない思念体なのよね?」
「いかにも。邪なる意志の集合体でもある奴にダメージを与える方法についてなのだが…。まず、犯罪神と戦ったのはわし一人だけでは無い。わしと共にゲイムギョウ界を守護していた三人の女神が一緒じゃった。もっとも、そやつ等は皆、犯罪神との戦いで命を落とし、意識すら残っておらぬ。わしは偶々運が良かっただけじゃ…。守護女神だけでは無い。他にも当時の戦いで命を落とした者も数えきれぬほどいる」
ウラヌスの言葉にネプギア達は言葉が出なかった。四人の守護女神が一つとなって戦いを挑んだにも関わらず、三人の守護女神が犠牲となって、ウラヌス自身も肉体を失うと言う結果に終わっている。犠牲者を出さずに犯罪神を倒すことはできるのだろうか。不安が頭の中に過っていた。
「それだけの犠牲を払っても犯罪神を倒すことはできなかった。あの時に倒したのであれば今代のゲイムギョウ界に復活することもなかったことだからな。当時の我々にできたのは奴の力を弱めて何とか封印までこぎつけただけに過ぎぬ。それが精一杯だったのだ」
「それができたってことは、あの状態の犯罪神にダメージを与えることができたってことだよね? 何をすればいいのか教えて? 覚悟はできているのか?っていう質問はいらないから。犯罪神を何とかしないと私達の世界が終わっちゃうのはここにいるみんながわかっていることだからね」
「ふっ…。わしの考えを読み取るとは流石だな。セレナよ。犯罪神と既に戦っているお前達ならばわかると思うが、奴は肉体を持たないが故に活動するための器を必要としている。器は実体があるので攻撃を加えることができるが、肝心の本体には物理的な接触はどうあがいてもできぬのだ。奴の本体にダメージを与える方法は唯一つ。それは犯罪神とは異なる別の意志の力を奴にぶつけることだ」
「意志って何かがしたいって気持ちのことだよね? 例えばの話だけど、ゲームがしたいとか、遊びに行きたいとかでもいいの? あっ、でもシェアの力が一番効果的なのかな?」
「その答えで間違ってはいない。どのような思いでも構わないのだからな。それらを束ねて一つの強大な意思の力とすることで犯罪神を倒す為の武器とする。これが当時の我々が実際に用いた方法だ。但し、束ねた意志の力が奴の邪なる意志を完全に上回らねば跳ね返されて、奴の力に飲み込まれてしまう。その先に待っているのはこのわしのように肉体を失うか、最悪の場合は命を落とすという結末だ。そのような結末を避けるためにも統一された一番強い思いの力が必要となる。お前達の心にそれだけの思いの力はあるか?」
「あります」
「即答か。面白い、その思いを聞かせてもらおう」
「ゲイムギョウ界を守りたい、ゲイムギョウ界が好きだって気持ちです! 私達はその思いを持ってここまでやってきました!」
「そうね。それがあったからアタシ達は手を取り合ってここまでこれた」
「わたし達は女神だから…! その思いは誰にも負けない…!」
「わたし達の世界とみんなとの思い出は壊させないんだから!」
四人の女神候補生の思いは一つ。
「ふふっ…。これが未来を担う若き力か…。お前達ならば違う結果を出せるかもしれぬな。わしもお前達のことを信じさせてもらおう。わしに肉体が残っていればお前達について行きたいところではあるが、今のわしはこの場を離れることも叶わぬ身。ここからお前達の創り出す新たな未来を見守ることしかできぬのが心苦しいが…」
「気にしないでください。それに私達は一人じゃない。私達を支えてくれる優しいお姉ちゃん達は勿論のこと、力を貸してくれる仲間達がついていますから。これからも私達のことを見守っていてくれますか?」
「よかろう。その強い意志の力で次の未来に向かって羽ばたくといい。お前達がこの危機を無事に乗り越えてくれることを願っている」
「はい! ありがとうございました!」
ネプギアがお礼を言うとウラヌスの声は聞こえなくなった。復活を果たした犯罪神を倒すための一手を得ることができたネプギア達はギャザリング城を後にしてプラネテューヌの教会に帰還する。再び会議室に集まって今回の報告をイストワールに行う。
「なるほど…。意志の力を束ねて一つの強大な力を生み出すということですか」
「いーすんさん。実は私に一つ考えがあるんです」
「聞かせていただきましょうか」
「はい。舞さんと戦った時のことなんですけど…」
ネプギアは山の頂での戦いのことを話す。四人の思いを一つにしたハード・ユニゾン・フォースを行使した際に現れた長剣。舞の手に握られていた魔剣ゲハバーンを破壊したあの長剣の刃はネプギア達が持っていたアンチクリスタルを上書きした結晶で構成されていた。あの時は四人分の意志の力だけだったが、それが四国のシェアクリスタルにすれば犯罪神を滅する新たなる剣を作ることができるのではないかと言う。
「なるほど。とてもいい考えだと思うよ。ネプギアさんの言う通り四つの国のシェアクリスタルを合わせれば高密度のシェアの刃を作り出せるだろうね。四天王が出した刻限まではまだ時間がある。その間に各国のシェアを可能な限りまで高めて、高純度のシェアクリスタルを用意すれば実現は十分可能だ」
「四天王が出した期間は十日間ですね。その期間を最大限に利用させていただきましょうか。今日を入れて七日間、守護女神のみなさんはご自身のシェアを高めてください。教祖のみなさんにはシェアクリスタルの作成をお願いします。八日目にシェアクリスタルの作成と剣の開発を行い、九日目に反撃を開始しましょうか」
当面の方針が決まる。復活した四天王と犯罪神マジェコンヌに対する反撃の準備を整えるには全員が一丸とならなければならない。ゲイムギョウ界の真の平和を取り戻すまでは慌ただしい毎日が続きそうだ。
「いーすんさん。もう一度舞さんの病室に行ってきてもいいですか?」
「はい。舞さんが目を覚ましたら傍にいてあげてください。その間のシェアの確保はネプテューヌさん達にしていただきますので」
「はいっ! ありがとうございます!」
ネプギア達は教会を出て舞の病室に向かう。扉を開けると…
「あれっ…?」
眠っていた舞の姿が見当たらない。布団が捲れているので起きてどこかに行ったのだろうか。
(病院の屋上にいるみたいだよ。行ってみようか)
どうやらアリアは舞の居場所がわかるらしい。アリアの声に従って屋上に向かうと確かに舞がいた。屋上の広場に設置されているベンチに座っている。屋上から見えるプラネテューヌの街並みを眺めているようだ。
「あ、あの…」
ネプギアが声をかけると舞はこちらに振り向いた。舞の瞳は銀色になっていて女神の印が浮かび上がっている。
「ん?」
「あっ、すみません。お隣、座ってもいいですか?」
「いいよ。一緒にいる人はお友達かな? よかったらどうぞ」
舞は体を寄せて座るスペースを作る。かなり大きいベンチなので五人座っても窮屈には感じない。
「ここで何をしていたんですか?」
「外の風景を見れば何か思い出せるかなって思ってここに来たの。自分が誰なのか、どうして病院にいるのか、何も思い出せなくてね…。私のことを知ってる人ってどこかにいるのかな? もし心当たりがあったら教えてほしい」
「あなたのことは知っていますよ」
「本当に? ということは私達は友達だったのかな? ここで会えたのは何かの縁かもしれないし、よかったらお話を聞かせてもらってもいい?」
「はい。それじゃあ、何の話をしましょうか?」
「最初に私の名前を教えてほしい。相手の人に名前を教えてもらったのに、自分の名前は言えませんって言うのは嫌だからね」
「わかりました。あなたの名前は
「神奈 舞…か。それが私の名前なんだね? 教えてくれてありがとう。えっと、ネプギアさんでいいのかな?」
「ネプギアでいいですよ。舞さんは私の事をそう呼んでましたから」
「アタシはユニよ。アタシのことも呼び捨てで構わないわ」
「わかった。私のことも好きに呼んでくれていいからね」
ユニは舞に手を差し出した。舞もその手を取って握手を交わす。
「ロムです…。わたし達のこと本当に忘れちゃったの…?」
「あなた達の話を信じるなら、そういうことになるのかな。自分の名前はネプギアのおかげでわかったからよかったけど、他は思い出せないままだから…」
舞は暗い顔をしていたロムの頭を自然に撫でていた。
「あっ。ごめん。何か無意識に撫でちゃってた…」
「ううん…。もっとしてくれると嬉しい…」
「そう? なんだか可愛い妹みたいだね?」
「あーっ! ロムちゃんばっかりずるい!」
「あなたは…?」
「わたしはラム! もう忘れないでよね!」
「わかった。ちゃんと覚えたから大丈夫だよ。これからよろしく」
舞がラムの頭を優しく撫でるとロムと同じように嬉しそうな表情を浮かべる。
「少し冷えてきたね…。お話の続きは病室でしようか?」
風も強くなってきたので病室に移動して話の続きをする。小一時間ほど話をしていると医師が入ってきて舞は再検査に入ることになった。検査に行く前に舞はネプギア達にまた明日も来てほしいと言ってくれた。
ネプギア達は病院を後にする。最初に出会った時の話くらいしかできなかったが、今日はこれで十分な気がした。全てを忘れてしまっていたが、バラバラだった自分達を導いてくれた大切な人ともう一度言葉を交わすことができたのだから。また明日になったら会いに行こう。教会に帰ったらイストワールに舞が目を覚ましたことを伝える。
「そうですか…! 本当によかったです。舞さんの具合はどうでしたか?」
「記憶は失っていましたけど、元気でしたよ。また明日も行ってきますね」
「はい。お願いします。舞さんに共に過ごした思い出を聞かせてあげてください。些細なお話でもハード・リンクを再度発現させるきっかけになるかもしれませんから」
「わかりました。あの、お姉ちゃん達は?」
「ネプテューヌさん達はシェアの確保のためのクエストに行っています」
「そうですか…。あの、私達も手伝いましょうか?」
「ありがとうございます。では、私の仕事を手伝っていただいてもよろしいでしょうか? いつもやっている書類整理と同じような物ですが」
「はい!」
ネプギア達はイストワールのお手伝いをする。仕事がある程度片付いたらバーチャフォレストの秘密の場所での自主鍛錬に切り替えて技の練習をしたりと自分たちにできることを積み重ねて行く。四天王が示した刻限までは後九日。緊迫した状況が続いていた。