超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game109:迫る戦いの時

舞達が展示場東側のモンスターを討伐している頃、ネプテューヌ達は展示場西側に出現した上位危険種と接触禁止種の討伐に当たっていた。二体のモンスターの姿が視界に映る。この展示場に生息している上位危険種はアイスガルーダ。世界中の迷宮に生息しているフェニックスと同じ鳥型のモンスター。フェニックスは朱色の体色をしているが、アイスガルーダは水色の体色をしている。フェニックスが火の鳥ならば、こちらは氷の鳥だ。

 

そしてもう一つの討伐対象である接触禁止種はナスパラディン。大きい胡瓜を槍の形にした武器を持ったナスビンダーが馬鳥に乗っているという変わったモンスター。最初はネプテューヌが接触禁止種を担当すると言っていたのだが、ナスパラディンの姿を見たネプテューヌは青ざめた表情をして距離を取った。ネプテューヌの行動を見て残る三人は彼女が仕事以上に苦手としている物の存在を思い出した。

 

「まさか接触禁止種が茄子のモンスターだったなんて…! 見てるだけでも嫌な気分になってくるわ…。ごめんなさい。そいつの相手は任せるわ…」

 

「流石の舞もネプテューヌの仕事嫌いは直せても茄子嫌いは直せなかったみたいね…。ネプテューヌが女神化を維持している内にさっさと片付けましょう。元の姿に戻って騒がれたら面倒なことになるのが目に見えているもの」

 

「同感だな。おい、ネプテューヌ。わたしと一緒にアイスガルーダを片づけるぞ。まさか茄子のせいで戦えないなんてふざけたことを言うつもりはないよな?」

 

「本当なら言いたいところだけど、向こうでは舞とネプギア達が頑張っているもの。姉であるわたしが頑張らないわけにはいかない。相手が茄子じゃなければ問題無いわ」

 

「女神化を維持しているからマシになったほうよね。しょうがないからナスパラディンは私とセレナで何とかしてあげるわ」

 

「まあ、誰にでも苦手な物の一つや二つはある物だからね。それを克服するために努力するかどうかはその人次第だけど…」

 

セレナは月の魔術書を顕現させる。月の魔術書の頁数は600。攻撃魔法から補助魔法を中心にセレナが編み出した幅広い分野の魔法が記されているのだ。詠唱を開始すると足元に白い魔法陣が現れて魔術書のページが自動的に捲れる。

 

「先手は撃たせてもらうよ。フォトンエッジ!」

 

光属性の魔力で作られた刃がナスパラディンに直撃した。怯んだ隙に業火を発動したノワールが距離を詰めて大剣の一撃を叩きこむ。火属性が弱点なので効果は抜群だ。ナスパラディンは手に持った胡瓜の槍で反撃してきたがノワールには通用しない。

 

「ノワール、ナスパラディンの体力をギリギリの状態で残してくれる?」

 

「やってみるわ。インフェルノソード!」

 

ノワールは武器を大剣から片手剣に変える。インフェルノソードはトルネードソードを元に開発した新たな剣技。トルネードソードはシェアの力を刀身に纏わせて敵に強烈な斬撃を叩き込む剣技だが、インフェルノソードは業火の力を刀身に纏わせて三連続で斬撃を叩き込む剣技で敵に火傷を負わせることができる。毒と同じように相手の体力を時間と共に削って、さらに防御力を低下させる強力な状態異常の一つだ。

 

「これでどうかしら?」

 

「十分。黒曜の魔術書の力を見せてあげる」

 

セレナは月の魔術書をしまうと、もう一つの魔術書を取り出した。かつての教え子でもある六魔将アリスとの決闘の末に残されていた黒い表紙の魔術書。頁は全て何も書かれていない白紙の状態なのだが、この魔術書にはある特殊な能力が隠されている。

 

ナスパラディンの体から蒼い光が現れると黒曜の魔術書はそれを吸収する。白紙だった頁には自動的に文字が刻まれていき、三頁が文字で埋まるとナスパラディンの体は何と完全に消滅してしまった。これが黒曜の魔術書に隠された蒐集能力。蒐集したモンスターは自分の配下として戦闘中に召喚できる上にモンスターが何か特殊な能力を持っている場合は魔術書を介してそれを行使することも可能。蒐集するためには対象のモンスターの体力を瀕死の状態まで追い込むことが絶対条件。

 

「セレナの教え子は随分と凄い魔術書を残していったようね?」

 

「まあね。頑張ればゲイムギョウ界に生息している全てのモンスターを従えることもできると思うよ。とても厳しい道だけど挑戦してみる価値はあるかもしれないね」

 

ゲイムギョウ界には様々なモンスターの生息が確認されているが、最近になって観測されるようになったダンジョンの変遷の際には未知のモンスターが出現することも普通にあるので、全容はギルドでも把握しきれていないと言われている。

 

「さて、ネプテューヌ達の方はどうなっているかな?」

 

セレナとノワールはアイスガルーダと戦っているネプテューヌ達の方に視線を移す。紫電と絶氷の女神の連携の前にアイスガルーダは既に瀕死の状態に陥っていた。後はとどめを刺すだけ。ネプテューヌは紫電を纏わせた漆黒と白金の長剣による連撃を加えるとアイスガルーダの体を空中に打ち上げた。

 

「ブラン、最後はあなたに任せるわ!」

 

「おうよ! 喰らいやがれぇぇぇ!」

 

空中に待機していたブランは右腕に絶氷の力を纏わせるとアイスガルーダの体を素手で殴る。凄まじい勢いで地面に叩きつけられたアイスガルーダは光となって消滅した。これがブランとネプテューヌの合体技。名はツェアシュラーゲンである。アイスガルーダとナスパラディンの討伐に加えて周囲の雑魚モンスターを手分けして討伐したことでクエストはクリアとなった。女神化を解除したら展示場の外に出てネプギア達と合流する。

 

「お姉ちゃんの方も無事に終わったみたいだね?」

 

「いやー。まさか茄子のモンスターが出るとは思わなかった。わたし一人だったら大変なことになってたところだよ。あれ? 舞は普通に起きてるね? 大丈夫なの?」

 

「舞お姉ちゃんの体、今はアリアさんが動かしてるよ…? わたし達とのハード・リンクも復活したから、記憶も戻るみたい…」

 

「わたし達と舞がまた繋がったのはよかったけど、記憶が一気に戻ってることで意識が飛んでるみたいだってアリアさんが言うから、舞の体を動かしてもらって展示場の外でお姉ちゃんが帰って来るのを待とうってことになったの」

 

「輝きは前より弱い状態だけど、アタシ達とのハード・リンクはこれで復活したから今回は一気に思い出してくれそうな気がするわ。まだ戻ってこないみたいだけど…」

 

「少しでも進歩があれば十分よ。ここで待つのも何だからルウィーの教会に帰って待つといいわ。記憶の状態によってはこれからの話を舞と一緒に進められるかもしれない」

 

ブランの提案に従い、ルウィー国際展示場を後にする。ギルドにクエスト達成の報告を行った一行は教会のブランの仕事部屋に集まっていた。教会まではアリアが舞の体を動かしていたが、舞の体を無理に動かすのは力もそれなりに使うらしい。舞の体で部屋の中にあるハート型のべッドに寝転がって目を閉じるとアリアは舞の中から出てきた。まだ本人の意識が戻っていないのか、目を開ける気配は無い。四人の女神候補生が傍について様子を見ているのでネプテューヌ達は話を進めることにした。

 

「目を覚ました時にどこまで思い出しているのかはわからないのよね…?」

 

「私が話を聞いた時はラステイションを出るところまで思い出したって言ってたから、ルウィーを出るところまで戻るとは思うわ。私達が反撃に出る九日目までに舞がどこまで思い出せているかはわからないけど…」

 

「ハード・リンクを復活させないといけないのはわたしとセレナとアリアだよね? この調子で進めていけば大丈夫だと思うけどなー」

 

「確か四天王からの要求が出されてから今日で五日目だったかな? イストワールから聞いた話だと四天王は各国のダンジョンに潜んでいるみたいだよ。あちらも期限を指定した以上はそれを過ぎるまでは何もしてこないみたいだけど」

 

復活した四天王は各国のダンジョンで待機している。プラネテューヌのジュンクボックスにはジャッジ・ザ・ハード。ラステイションの無限回廊にはブレイブ・ザ・ハード。ルウィーのアイシクルホールにはトリック・ザ・ハード。リーンボックスのガペイン草原にはマジック・ザ・ハードがいる。各国の偵察部隊がギルドと連携して監視を行っている状態だが、今のところは何かを仕掛けてくる様子は見受けられないとのことだ。復活した四天王を撃破して背後に控える犯罪神マジェコンヌ。そして闇の中に潜む女神の亡霊ファントムハートを倒すためには舞の力は必要不可欠とも言える。

 

「反撃に出る九日目までは私達にできることを積み重ねていこう。各国のシェアの方はどうなっているのかな?」

 

「シェアは四国とも上がっているから、いい傾向にあると言えるわ。四天王が復活した時はまた巻き返される危険もあったけど。舞達が四天王を倒したあの時点で犯罪組織は崩壊しているも同然だったから。今も悪事を働いている犯罪組織の残党が僅かに残っている程度ね。こちらが優勢ではあるけど油断はできない状態よ。何か仕掛けてくる可能性のある人物が残っているから余計にね…」

 

「ブラン達の懸念はわかる。それを踏まえた上で言わせてもらうとファントムハートはまだ何も仕掛けてこないと思う。私達が復活した四天王を倒すまでの間だけど」

 

「どうしてそう言えるのかしら?」

 

「ファントムハートに捕まってた時の話にはなるけど、あいつは舞のことを観察していたけど見ているだけで何も行動は起こさなかったの。そしてあの戦いが終わった時に私と舞に緋色の大地で待っていると言い残して去って行った。このタイミングであいつから何かを仕掛けてくる可能性は低いとは思う」

 

「じゃあ、あいつは私達が四天王を倒すのを待っているってこと?」

 

「セレナの言う通りだよ。犯罪神マジェコンヌとファントムハート。この二者を完全に倒さないと私達の勝利は無い。奴らの存在はこの世界だけに留まらない。他次元のゲイムギョウ界にも影響を与える危険がある」

 

また同じことの繰り返しになることは避けなければならない。超次元を滅ぼす者と女神を喰らう者。二つの脅威は一つの世界だけに留まる物ではないのだ。世界の平和を取り戻して本当の意味での明日を迎えるためにも絶対に倒さなければならない。アリアの言葉に失敗が許されないということを再度認識させられる。

 

「厳しい戦いになると思うけど、私達全員の力を合わせれば十分に勝機はある。みんなで頑張れば負けないよ。あの大戦争の時も同じだったから」

 

「実際に国を賭けた戦争を経験しているだけあって言葉に重みがあるわね…」

 

「昔の私達の争いは小競り合いの程度で済んでいたからよかったとも言えるけど、一つ間違えていれば、戦争に発展した可能性もあるのよね…」

 

「同じ女神同士で争い続けても何にもいいことないからねー。初めて四人でクエストに行った時は色々あったけど楽しめたよ。それからは四人で遊ぶことも増えてきたよね」

 

それはネプギア達が生まれる前の話。今もネプテューヌ達の胸の中に仕舞われている。これからも楽しい思い出を作っていくために今はできることを頑張らないといけないのだ。これから何をするか続けて話し合おうとすると眠っていた舞が目を覚ました。

 

「舞さん、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ。また色々と思い出すことができたからよかった。今回は随分と流れてきた映像の内容が多かったけど、後どれだけ残っているのかな…」

 

「今回はどこまで思い出せたの?」

 

「殆どがルウィーにいた時の思い出だったけど、犯罪組織マジェコンヌの四天王の内の二人と戦ったことも思い出したよ。確かトリック・ザ・ハードとブレイブ・ザ・ハードの二人だったかな。ルウィーを出る前にみんなとゲームで勝負したところで映像が終わった。今回で思い出せたのはここまでだよ」

 

「なるほど。次はリーンボックスにいた時の思い出だね。後はネプテューヌとセレナのハード・リンクを復活させて一緒に戦闘を積み重ねていけば殆どの記憶が出揃うかな。明日リーンボックスにみんなで行ってみる?」

 

「うん。それと今何時か教えてもらってもいいかな?」

 

「今は十五時になったところだよ。今の状況の整理とこれから何をしようか話し合いを進めようとしていたところ。何かしたいことはある?」

 

「まだ時間があるならクエストに行きたいかな。もう少しで何か大事なことを思い出せる気がするから…。ネプギア達と一緒にもう一度だけ行ってきてもいい?」

 

「あなたがそれを望むのならわたし達は止めないわ。ギルドで何かいいクエストが無いか探してみましょう。夜になると危ないから比較的早めに達成できるクエストを中心に達成数を積み重ねる…。この流れで進めるのはどうかしら?」

 

夜になってもクエストを受注することができるが、ダンジョン内の危険度は日中と比較すると上がる。夜にしか姿を見せない希少なモンスターもいるのだが、戦闘力が総じて強い傾向にあるらしい。また暗闇からの奇襲なども十分にあり得ることなので夜にクエストを受注する権利を得ているのは守護女神とギルドが認めた一部の実力者に限られてきてしまうのだ。

 

「それでお願いするよ」

 

「わかったわ。時間も惜しいから早速行ってみましょう」

 

私の勘に過ぎないけど、本当に後少しで何か大事なことが思い出せる気がする。どこまで思い出せば完全な状態になるのかわからないけど、みんなと結果を積み重ねて行けばきっと大丈夫だと思う。反撃開始の日にも間に合わせることができるはずだ。

 

ギルドに向かった私達はブランとアリアが持ってきた比較的簡単な内容のクエストを受注する。街に近いアイリス草原に生息しているモンスターから取れる素材を集めてギルドに納品するという内容。対象の素材が取れるモンスターをアリアから教えてもらったらネプギア達と現地で素材集めをして達成したらギルドに報告する。

 

みんなで頑張っている内に時間もあっという間に過ぎてしまい日も暮れてきたので教会に帰還して明日を待つことになった。次に私達が向かうのはリーンボックス。そしてプラネテューヌに帰還して最後の調整を行う流れになるみたい。私が参戦できるかどうかは八日目における私の記憶の状態次第。置いて行かれないように何とかして取り戻したいという願いを抱いて私は眠りに就いた。

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