復活した犯罪組織マジェコンヌの四天王が要求を出した日から九日目。四つのフェイズに渡る討伐作戦が遂に開始された。プラネテューヌのジュンクボックスで待ち受けていた怒り狂う審判者ジャッジ・ザ・ハードを撃破し、第一フェイズは目立った被害も無く無事に終了した。次に待つ戦いに向けての覚悟を決めたところでプラネタワーの屋上からラステイションに向けて飛び立ち、教会でノワール達と合流する。
「予想以上に早い到着ね。無事で何よりだわ。メンバーが揃ったから早速ブレイブ・ザ・ハードが待つ無限回廊に向かうわよ。準備はいいかしら?」
「大丈夫だよ。覚悟はここに来る前に決めてきたから。迷いはない」
第二フェイズの同行者はノワール・セレナ・サイバーコネクトツーの三人。サイバーコネクトツーは犯罪組織の撲滅作戦を開始した時から有志で私達に協力してくれている頼もしい仲間の一人。フコーカという街の出身の彼女は凄腕の双剣使いであり、現在はラステイションを活動拠点に様々なクエストをこなしている。マンガ・アニメ・ゲームの情報に詳しい上に四女神オンラインでもCC2という名で活躍している凄腕プレイヤーなのだ。平和になったら彼女とも思いっきり遊びたいところではある。
私達はノワールの案内でブレイブが待つダンジョンの無限回廊に向かう。無限回廊はラステイションの首都から東に向かった場所にある。内部の雰囲気はゾーンオブエンドレスとノーコネディメンションに似た感じで、徘徊するモンスターは他のダンジョンと比較すると強めのモンスターが多いが今の私達の敵ではない。消耗を抑えるために可能な限りモンスターと交戦は避けて最奥部を目指す。数十分かけて無事に最奥部に到達した私の目に映ったのは紛れもない戦友の姿だった。自らの得物である大剣を構えて立っている姿は最初に出会った時と変わっていない。
「来たか…。犯罪神様に刃向う愚かな女神共よ」
「戦う前に一つだけ聞かせてほしい。あなたは私達のことを覚えているの?」
「知らぬな。貴様ら守護女神などと慣れ合った記憶などない。守護女神はこのゲイムギョウ界から根絶しなければならぬ敵なのだからな」
「そっか…。それだけ聞ければ十分だよ。始めようか、ブレイブ・ザ・ハード。私達がもう一度あなたを墓場に送り返してあげる。ガンナーフォルム、発動!」
私の服装がモノクロパーカーワンピから新しいプロセッサユニットに変化。両手に持つのは銀色の二挺拳銃。あるゲームに登場する銃使いの装備とユニのプロセッサユニットを元に組み上げた物。頭に装着される猫耳のようなカチューシャと腰部に装着されるガンナー用のポーチが特徴で性能としては回避能力と素早さに特化させている代わりに総合的な防御力が低めという形になっている。
セレナが言うには女神の体を守護するプロセッサユニットは纏う者の意思で形状及び性質を変化させることができるようだ。実際にセレナは闘技場でネプテューヌと模擬戦を行った際にゴールド・ルナを元にしたプロセッサユニットを組み上げている。
戦友の偽物を前にして私が両手に握るはアリアが過去に使っていた銀の二挺拳銃シルバーブレット。その片方をユニに渡していたので実戦で二挺拳銃として扱うのは随分と久しい。最近は近接武器を使ってばかりだったが空いている時間にネプギアとマルチプルビームランチャーを改造していたようにユニとは銃の練習を積み重ねていたので実戦で使用する上での問題は無い。
「消えるのは貴様らの方だ。ここで我が大剣の錆となるがいいっ!」
ブレイブの言葉を合図に第二の決闘の火蓋が切って落とされる。
「聖なる月の加護を我が戦友に…!」
女神化したセレナの体から放たれた金色の光が戦場に広がった。それはセレナの固有能力『月の祝福』の発現。戦場で共に戦う仲間の能力を上昇させる効果がある。その効果はセレナが戦闘不能に陥らない限り継続されるのだ。
ブレイブは手に持った巨大な大剣で私に斬りかかってきたが業火を発現させたノワールの大剣がその一撃を受け止める。私とサイバーコネクトツーは懐に潜り込み、銃撃と斬撃の連携で攻める。
「旋風無双刃!」
「シャインバレット!」
風属性を纏わせた双剣による八連撃と光属性の魔力を込めた弾丸がブレイブに直撃。ダメージはそれなりに入ってはいるのだが、身を守護する強固な装甲によるダメージの軽減が大きい。単純に攻めるだけでは決定的な一打を入れることは難しい。
「効かぬ!」
反撃が来るのを見越して私達は後退する。直後に襲い掛かるのは長いリーチを誇る大剣での薙ぎ払い。後退するのが少しでも遅かったら大剣の錆にされていたところだ。弾丸を装填して反撃の機会を窺っているとブレイブの大剣が赤い光を帯びる。次に来るのは最初の戦いの時に使ってきた火属性の魔力を込めた薙ぎ払いだろう。
「エクステンション発動! リタリエイション!」
セレナが発動したのは魔法の効果範囲を味方単体から味方全体に拡大するアビリティ。それに乗せて放つのは敵の攻撃を反射する防御魔法。私達の体を球状の薄い膜が包み込む。魔法の効果によりブレイブが大剣を振って発生させた衝撃波は反射され、自分自身の体にダメージを与える結果に終わった。リタリエイションの効果は一度だけなので、敵の攻撃を反射すると自動的に消滅する。再度かけ直せば効果は再び適用されるが、魔力の消費も大きいので乱用はできない。
「小賢しい真似を…っ!」
「あなたの魔力、利用させてもらうわ」
ノワールは先程のブレイブの攻撃で戦場に散った火の魔力を体に取り込む。武器をヒナの機械剣に変えてカートリッジロードを行う。ノワールが使ったのは業火の力と自身のシェアの力の両方を込めたカートリッジ。刀身が紅蓮の炎を纏い、威力が跳ね上がる。
「ブレイズフェンサー!」
紅蓮の炎を纏わせた機械剣でブレイブの胸にある黄金の獅子の部分に三連続の突きを叩き込む。怯んだところを見ると強固な装甲でも軽減しきれないほどの威力のようだ。カートリッジロードは使用すると機械剣とノワールの体に大きな負担がかかるので回数制限がある。現在は一日で二回まで使用可能。
「フロストウェイブ!」
私はノワールの攻撃に続ける形で氷属性の魔力の塊を放つ。弾丸一発につき氷属性の魔力の塊を三回連射できる。若干ではあるが誘導性能もついているので多少狙いを外しても当たることには当たるが、それに頼り切るのではない。狙いはしっかりと定める。
「ぬっ…! これは…!」
黄金の獅子の部分に無数の罅が走る。私とノワールはこれを狙っていた。火属性の攻撃で熱した部位に氷属性の攻撃を繋げて急激に冷却することで防御を崩す戦術。私は罅が入った黄金の獅子の部分に銃撃を撃ち込む。
「ぐがあっ!」
私の銃撃を受けたブレイブが仰け反るが、体勢を立て直すと肩に装着された砲塔から強力なレーザーを放ってきた。
「その砲撃は通さないよ。エクリプスバスター!」
セレナが放つのは無属性の中級砲撃魔法。ブレイブが放ったレーザーを相殺する。
「舞、行けるかい?」
「いつでも行けるよ」
私は銃口から銀色の魔力刃を展開。これを展開することで接近戦が可能となる。サイバーコネクトツーと再びブレイブの懐に飛び込む。
「虚空双刃撃!」
「スプレット・クロス!」
サイバーコネクトツーの双剣による高速の乱舞と私のX字型の魔力斬撃がブレイブの体を斬り裂き、ブレイブは膝をついた。
「おのれ…! 女神の分際でこの俺に膝をつかせるとは…! だが、このままでお前達にやられるわけには行かぬ!」
私はとどめを刺そうと近づいたがブレイブの最後の抵抗が私に襲い掛かる。力任せに振るわれた大剣の刃を私は展開した魔力刃で受け止める。
「ばかな…! この俺の剣が完全に止められるだと…!」
ブレイブは大剣に力を込めて舞を叩き斬ろうとするが、魔力刃に受け止められた大剣はどれだけ力を込めても動かない。
「受け止めて感じたけど本物のブレイブの剣には到底及ばないかな。戦友の剣には強い力と強い意志の力が宿っていたの。あなたの剣に宿っているのはただ強い力だけ。偽物のあなたの剣は私達には絶対に届かない」
「戯言を…!」
『戯言などではない。お前の剣では我が戦友に一太刀を浴びせることはできぬ』
「この声は…!」
(本物のブレイブ…?)
『舞、ユニよ。お前達ならば既に理解しているとは思うが、お前達の目の前にいるのは俺ではない。俺の姿をした別の存在だ。俺に見せた力強い輝きで我らの誓いを阻む敵を全力で倒せ!』
「わかった…! 戦友が見ている手前、カッコ悪い姿は見せられないね。次の一撃で確実に決めてみせるよ」
『その意気だ。俺も今この時はお前達の背中を支えてみせよう』
本物のブレイブの言葉を合図に体の底から力が湧き上がる。ブレイブの大剣を押し返して距離を取ると身長を優に越える巨大銃エクスマルチブラスターを顕現させる。
「ユニ、一緒に決めるよ! ハード・ユニゾン限定解除!」
私の体から灰色の光の玉が現れ、それが弾けると眩い光の中から女神化したユニ。ブラックシスターが現れる。ユニと二人でエクスマルチブラスターを持ちシェアの力を内部に注ぎこむ。限界までチャージが完了したら後はそれを解き放つだけだ。
「「ブレイブ・カノンッ!!」」
エクスマルチブラスターの銃口から放たれるのは銀色の光の奔流。それは一直線にブレイブに向かって行き、その体を飲み込む。
「ぐああああああっ!」
銀色の光の奔流が通過した後には偽物の戦友の姿が完全に消滅していた。
『見事…! 最後に剣を交えたあの時よりもさらに輝きが増しているか…! 真の高みに到達したお前達の姿をこの目で見ることができないのが残念でならないが、最後に再びお前達と言葉を交わすことができた。死者である俺がこれ以上のことを望むわけにもいかぬ』
「お別れ…かな?」
『そうだな…。舞、ユニよ…。その輝きを持ってどこまでも突き進むがいい。さらばだ…!」
「さよなら、戦友…!」
「ありがとう。ブレイブ・ザ・ハード…!」
戦友に別れを告げた私達の目の前に蒼色の小さな炎が現れる。手を近づけてみると仄かな暖かみを感じる。これに対して何をすればいいのかは自然と私の脳裏に浮かび上がってきた。
「セレナ、黒曜の魔導書を貸してもらってもいい?」
「言うと思ってたよ。使ってあげて」
「ありがとう。黒曜の魔導書、蒐集開始!」
セレナから黒曜の魔導書を受け取るとそれを蒼い炎に向けて蒐集を行う。蒼い炎が光の粒子になって魔導書の内部に取り込まれる。魔導書の頁に文字が書き込まれたが、私には解読できないのでセレナに見てもらう。
「なるほど…。これは武器を召喚する魔法みたいだね。早速使ってみようか」
セレナがその魔法を使うと一振りの大剣が姿を現した。それは本物と比較すると小さいけど、確かに戦友が使っていた大剣と同じ物だった。私はそれを両手で持つ。
「これはユニが持っていてほしい」
「わかったわ。アンタが使いたい時は言いなさいよ。この剣はアタシだけが使っていい物じゃないから。この騒ぎが落ち着いたら接近戦の練習に付き合ってもらってもいいかしら? 情けない話だけど、今のままだと使いこなせる自信がないから」
「勿論だよ。一緒に頑張っていこうね」
「私も付き合うわ。大剣は女神化した時に使うから。その時の練習は私の全ての剣術を教えてあげるわ」
「舞…。それにお姉ちゃんまで…。本当にありがとう。二人を越える勢いで頑張るから!」
ユニはブレイブソードを粒子に変えると再び灰色の光の玉となって私とユニゾンした。目的を達成した私達は無限回廊を後にしてラステイションの教会に帰還する。次に私達が向かうのはルウィー。アイシクルホールで待ち受けるのはトリック・ザ・ハード。トリックと戦うのは狂女神化を始めて使ったあの時以来だ。
(あの変態、もう絶対に復活できないようにコテンパンにしてやるんだから!)
(またあの人と戦うのは嫌だけど、わたし達が何とかしなくちゃ…!)
「最後は三人で墓場に送り返してあげようか。この姿だとトリックにババアって言われるのは目に見えてるし…」
守備範囲の狭さが凄まじいトリックは私のことを何故か同志と呼んでいたが、今の私は普段の見た目から成長しているのでババア認定は避けられないと思う。どれだけ暴言を吐かれたところで私達のやることは変わらない。全力を以て倒すのみだ。
セレナとノワール。サイバーコネクトツーと別れた私達はルウィーに向けて飛び立つ。四天王討伐作戦の成功まであと2フェイズ。平和な日常を取り戻す時まであと少し。最後の戦いの時は確実に迫ってきていた。