リビートリゾートでボーンフィッシュを討伐した私達の前に再び現れたのは
バーチャフォレスト最奥部にてプラネテューヌのゲイムキャラを破壊しようとしていた
犯罪組織マジェコンヌが誇るマジパネェ構成員、リンダであった。
「また会ったね。リンダ。これで会ったのは2回目だけど、口の悪さは相変わらずと言うべきなのかな?」
私の事を暴力女神と呼びネプギアのことをクソガキ女神と呼ぶリンダ。
私達にやられた借りを返しに来たと言っていたが、まだこの国のゲイムキャラの居場所は
特定されていないのだろうか。私は武器を構えながら思考する。
「ちょっと、誰よ? コイツ。アンタ達の知り合い?」
「まぁ、因縁がある相手かな。こんなに早く再会するとは思わなかったけど」
「犯罪組織マジェコンヌの下っ端だよ。プラネテューヌでゲイムキャラを壊そうとしてたから私と舞さんで懲らしめたの」
「アタイにはリンダって名前があるって言ってんだろうが! また下っ端呼ばわりしやがって…。このクソガキ女神!人の名前も言えねぇとは、教育がなってねーんじゃねぇのか? その点に関してはそこの暴力女神を見習いやがれってんだ!」
ネプギアにまたも下っ端呼ばわりされたリンダは怒鳴り散らす。
今回は最初に会った時のように下っ端呼びの空気が強くないので
私は普通にリンダと呼んでいるが。
「マジェコンヌの…。いいわ。こんな奴、アタシがコテンパンにしてあげる。ネプギアと舞は下がってて」
「私も一緒に戦うよ。アイエフさんとコンパさんを傷つけて、絶対に許さない! 私も堪忍袋の緒が切れちゃったから!」
「私も戦う。私達にやられた借りを返しに来たって言ってたけど、相手になってあげるよ。しつこく出てきても、何度でも懲らしめてやるから。覚悟することだね」
私達を倒しに来たと言うなら相手になるまでだ。
「調子に乗ってんじゃねぇよ。プラネテューヌの時は油断してただけだ! クソガキ女神と暴力女神の二人にただの生意気なガキが1人加わっただけであの時みたいに勝てると思うなよ! まとめてここで始末してやる!」
「誰が生意気なただのガキですって? アタシの本気の力、その身に焼き付けなさい! はあああああっ! アクセスッ!」
ユニの体が光に包まれる。その黒髪は白色に変わり瞳は緑色になる。
ネプギアと似たような黒いレオタードのような服を纏い、機械的なパーツが
その身に装着されていく。武器であった銃はその身長を超えるほどに巨大化する。
〈エクスマルチブラスター〉と呼称される巨大銃を持ち彼女は大地に降り立つ。
女神ブラックハートの妹、女神ブラックシスターの登場である。
私達は女神化したユニの姿に驚きを隠せなかった。女神であることを示す特徴的な瞳。
先ほどまで共に戦ったユニがこのラステイションの女神候補生だったのだから。
「ユニが、ラステイションの女神候補生だったんだね…。ネプギア、私達も行こう。話はリンダを懲らしめてからだよ」
「わかりました! 私も行きます! はああああっ!」
ネプギアも女神化する。膨大なシェアの輝きを放ち女神パープルシスターが再び降臨する。
続けて私も銀の女神の力を解放して武器を握る。内に秘められた力を解き放つような
イメージを頭の中に抱けば解放することができるようだ。ネプギアとユニは外見が変化するが
私は変化しない。銀のグローブと銀の脚甲が装着されるのみである。一応能力も上昇するが
女神である2人には到底及ばないだろう。銀の女神の力を完全に使いこなせるようになれば
私も2人みたいに変身できるようになるのだろうか…。そんな思いを抱いていた。
「聞いてねぇぞ…。クソガキ女神と暴力女神に加えて、生意気なガキまで女神だったなんて!」
「戦闘で予想外のことが起こるのは日常茶飯事だと思うけどね。自分から喧嘩を仕掛けておいて逃げるなんて絶対許さないよ。もう一度懲らしめてあげる」
「アンタ達、その姿は…」
「ユニ、言いたいことはあると思うけど今は目の前の敵に集中しよう。私達3人でかかればすぐ終わるよね?話はそれからだよ」
「…っ。わかったわよ」
私達はリンダに攻撃を仕掛ける。
最初に動いたのは私。銀の長剣でリンダに斬りかかる。
リンダは鉄パイプで私の剣を受け止める。今度は折られない。
もう2度と砕かれてなるものか。私は剣を握る両手に力を込める。
「舞さん、これを受け取ってください!」
後ろで魔法の詠唱をしていたネプギアからシェアの光が飛んでくる。
私の体の中にその光が入り込むと、体の底からさらに力が湧いてくる。
その力を利用して押し切る。それによってできた隙を見逃さずに剣撃を叩きこむ。
ネプギアも魔法の心得があるとは。補助系の魔法を使うのが得意のようだ。
「ぐあっ! やりやがったな! この暴力女神!」
リンダはそう言うと反撃で鉄パイプを私に振りかざす。
「させません!」
今度は間に入ってきたネプギアが受け止める。
「アタシを忘れないでくれる? くらいなさい、パラライズショット!」
ユニの銃から一発の弾丸が発射される。狙いを定めた正確な銃撃はリンダを捉える。
「なんだ…。体が動かねぇぞ…」
「特製の麻痺毒を詰めたアタシの自作弾よ。効いたかしら?」
「舞さん、今です!」
「アタシが作った隙を無駄にするんじゃないわよ。さっさと決めなさい!」
『ここは、大技いってみたほうがいいんじゃないかな? その銃を使ったらどう?』
二人の声に紛れて銀の女神が話しかけてくる。
大技を使おうにもまだ使ったことのない銃でどうにかなるものなのか。
『今はその場しのぎで。これから学んでいけばいい』
どうやら使うしかないようだ。私は剣をしまって腰の銃を取り出す。
「仕方ない。今の私にできそうな銃の技は…これしかないかな」
私は両手に銃を持ち、リンダに接近する。
「ガトリング!」
銃に装填された弾丸を連射する。私の銃に装填できる弾丸は7発。
2つあるので合計で14発の弾丸を装填できる。装填した弾丸を全て撃ち尽くす技だ。
単純な技ではあるが、最終的に相手に入るダメージは大きい。ボス戦ではお世話になる。
「くそがああああ!」
以前に聞いた記憶がある叫び声をあげながらリンダはその場に跪く。
事実上の数の暴力ではあるのだが、2戦目も私達の勝利のようだ。
『まだまだ伸ばせるところはあるね。これから頑張ってよ。それじゃ、また会おうね』
突然私に話しかけては助言を与えて風のように去っていく銀の女神の声。
本人に会えるのはいつになるのか。きっとまだまだ先の話だろう。
「汚ねぇぞ! 女神が3人がかりなんて数の暴力じゃねえか! 畜生、次は絶対に始末してやるから覚えてろよ! 特に暴力女神! テメェはアタイが絶対に始末してやる!」
いつの間にか復活したリンダは捨て台詞を吐き捨て、その場を立ち去る。
これは近い内にまた戦わなければならないだろう。ゲーム好きの直感が告げていた。
リンダが去ったのを確認した私は力を抜く。銀のグローブと脚甲はそれに合わせて消失する。
解除する時は体の力を抜いて気持ちを落ち着かせればいいようだ。
「ネプギア、舞。アンタ達、女神だったの?」
「私は力を貸してもらってるだけだから違うけど、ネプギアはそうだね。それにしてもギルドで会ったばかりのユニがまさかラステイションの女神候補生とはね…。驚いたのはこっちも同じだよ」
「ユニちゃんがラステイションの女神候補生だったんだね! 会えてよかった。私達は女神候補生とゲイムキャラの協力を得るためにラステイションにやってきたんだよ!」
ネプギアは嬉しそうに言う。自分と同じ女神候補生に会えたのだ。
それだけでも嬉しいことだろう。対するユニは嬉しそうには見えない。
その表情はネプギアに対して不満がある…。と言ったところだろうか。
「…っ。どうして…」
「ユニちゃん?」
「どうして、アンタがここにいるの! お姉ちゃん達はどうなったのよ! 答えなさい、ネプギア!」
「お姉ちゃん達はまだ捕まったままだよ…。私はアイエフさんとコンパさん。そして舞さんのおかげでギョウカイ墓場から救出されてここにいるの。私はお姉ちゃん達を助けたい。だからこのゲイムギョウ界を旅しているの。ユニちゃんから見れば私だけがここにいることは絶対に許せないと思う。それでも私はユニちゃんに協力してほしい。お願い、お姉ちゃん達を助けるためにもユニちゃんの力を貸して!」
ネプギアはユニの気持ちを少しでも理解しようとしているのだ。
姉についていくことができずに1人残された少女の気持ちを…。
「ねぇ、どうしてアタシは置いて行かれたのかな…? アタシだって精一杯努力したのよ。お姉ちゃんに少しでも追いつくために毎日頑張ったの。それは今でも変わらない。アンタと何が違ったっていうのよ。アタシがしてきた努力は全部無駄だったの…?」
「それは…。私にもわからないよ。私だってあの時は何もできなかったから…。でもこれだけは言えるよ。ユニちゃんがしてきた努力は絶対に無駄じゃない。だってユニちゃん強かったから。一緒に戦って私はそう思えたの。だからお願い…。お姉ちゃん達を助けて、ゲイムギョウ界を救うために私達と一緒に!」
「ゴメン。アンタの手を取ることは今のアタシにはできない。わからなくなっちゃったのよ。自分の気持ちが。アタシだって短い間だけど一緒にクエストに行けて楽しかったし、自分と同じ女神候補生と出会えて素直に嬉しいと思えたの。できることならアンタの手を取って一緒に行きたい…。でも、ギョウカイ墓場からアンタだけが帰ってきた現実を認めることができないアタシがいるのも事実なの…。お願い、考える時間をちょうだい…。アンタ達がこの国での目的を果たしてラステイションを出るまでには必ず答えを出すから。」
彼女には気持ちの整理の時間が必要なのだ。
ネプギアと一緒に行きたいという気持ちとネプギアを許せない気持ち…。
二つの思いが絡み合って自分の気持ちに正直になることができていないのだ。
「うん。わかった。私、待ってるよ。ユニちゃん言ったよね? 私がユニちゃんに追いつくのを首を長くして待っててあげるって。だから私も待ってる。ユニちゃんが納得のいく答えを出してくれるまで」
「ありがとう…。ネプギア。それと、いきなり怒鳴ってゴメン…」
「ううん。私の方こそごめんなさい。ユニちゃんが同じ女神候補生だって分かって舞い上がっちゃって」
二人の女神候補生はお互いを理解しようと少しずつではあるが前に進んでいる。
私はそんな二人の様子を黙って見ているしかできなかった。これは二人の問題だ。
私は二人がお互いに協力し合えるようにと心の中で祈っていた。
その後リンダに不意打ちを受けたコンパとアイエフも目を覚ましたので
私達はリビートリゾートを出てラステイションの街へと帰還する。
ギルドでクエストの達成報告をして報酬を受け取ると
ユニは約束通りその半分を私達に譲ってくれた。
ユニは去り際に小さな声でありがとう。と言ってギルドから出ていった。
「そんなことがあったのね。それにしても、あの子がラステイションの女神候補生ね…」
「驚きです。女神候補生ならあの強さにも納得がいくです」
私とネプギアは先ほどのことをコンパとアイエフに説明した。
「それにしても、あの下っ端本当にやってくれたわね。まだ痛みが取れないわ」
「本当です。次に会ったらたっぷりお返しするです」
「多分そう遠くない未来で会えるよ。その時に仕返ししてやればいいと思う。勿論私も参加するけどね。2回とも私が止めを刺したから変な因縁をつけられたみたい。それで、これからどうしようか?もう少しクエストをこなしたほうがいいかな?」
「そうね。それもいいとは思うけどここは教会へ向かいましょう。この手段は使いたくなかったんだけど、仕方がないわ。このままだと下っ端に先を越されるのも時間の問題よ。教祖に会ってこの国のゲイムキャラの情報をもらうしかないわ」
確か教祖が厄介だと言う話だったと記憶している。
アイエフがそこまで言うということはタダでは情報をもらえないということだろう。
「わかったよ。それじゃ、行こうか。アイエフ、場所は知ってるの?」
「この国には前に来たことがあるから知ってるわ。私についてきて」
私達はギルドを出てラステイションの教会へと向かう。
アイエフの言う厄介な教祖。本当にどんな人物なのだろうか…。
手遅れになる前にゲイムキャラの情報が手に入ればいいんだけどね。