超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game121:開幕

緋色の大地の教会内で舞とファントムハートの戦いが始まった時。黒き扉を通った守護女神達はファントムハートが奪った舞の記憶から再現された強敵達と対峙する。

 

四人の女神候補生達の視界に映ったのは荒ぶる神々によって食い散らかされた大地。破壊された周囲の建造物は決して消えることのない猛火に焼かれ続けている。さらに巨大なクレーターが大量に形成され、かつて存在していた雄大な大地は見る影も無い。背後を振り返ると巨大な防壁が目に映る。壁の向こうには力無き人々が懸命に生きている場所があるのだ。

 

ユニとラムは舞とのハード・ユニゾンを発現させる試練の記憶を振り返る。ジェネラルドラゴンと戦った『嘆きの平原』。ブラッドフェンリルと戦った『黎明の亡都』に続けて登場した今回の戦場は『創痕の防壁』と呼称される人類の最終防衛線。荒ぶる神々を喰らう者となった舞はこの地で最大の強敵とぶつかり合った。四人の女神候補生の前に邪悪な黒い霧が収束。モンスターの姿を形成する。

 

「このモンスターは…!」

 

「流石に今までアタシ達が戦ってきたモンスターとは桁違いね…」

 

「どれだけ強い相手でも、わたし達は負けない…」

 

「他にジャマなモンスターがいない分マシなだと思うわ」

 

ネプギア達の前に現れたのは3本の尾を持った狐型のモンスター。禍々しい黒色の体からは強烈な邪気が漏れ出している。さらに腰部から灯る6つの炎が3本の尾と合わさることでまるで9本の尾を持っているかのように見える。敵であるネプギア達を捕捉すると咆哮を上げる。それは舞が自分に出せる全てを賭けて撃破した最凶の敵の一柱。禍ヨリ来タリシ者(マガツキュウビ)

 

ネプテューヌ達の視界に映るのは崩壊した都市。それは自分達が守り抜いてきた街の風景を元に再現された偽の世界。空は黒雲に覆われて光は届かない。モンスターはまだ現れていないが、周囲に散乱している建造物の瓦礫を女神化したネプテューヌは観察する。ネプテューヌはあるモンスターの姿を想像していた。

 

「これができるのはあのモンスターしかいないわね…」

 

この中で舞とハード・リンクを発現させているのはネプテューヌのみ。故にネプテューヌだけが分かっている。この地に降臨しようとしている最強のモンスターを。

 

「炎に焼かれたような物と竜巻に吹き飛ばされたような物があるわね。これだけでも異常な光景だけど」

 

「それだけではありませんわ。瓦礫の中には氷漬けになっている物もあれば、落雷で焦げ付いている物まで…。明らかに不自然ですわ…」

 

「これを1体のモンスターの仕業だと言うの…? 信じられないわ…」

 

「常識外れだと思うところはあるかもしれないけど、舞が倒したあのモンスターなら、この不自然な状況を作り出せるわ。どうやら来たようね」

 

ネプテューヌの言葉と同時に黒い霧が上空に収束。モンスターの姿を形成する。ネプテューヌ達の前に現れた赤黒い体を持つ龍。体を覆っている鱗は全てが逆立ち、頭部にある双角は不気味な白光を放つ。四肢の先にある爪は異様な程に鋭い。

 

舞を含めてあの世界で狩人(ハンター)となった者達に言わせればこれほどの存在との戦いであっても狩るか、狩られるか。その一言だけで片付いてしまう。ゲイムギョウ界を守護する4人の女神の前に現れた龍もまた神と呼ばれる存在。その名は煌黒龍(アルバトリオン)。龍の咆哮が響き渡ると巨大な嵐が起き、地面から炎の柱が次々と噴き出した。ネプテューヌ達は自らの固有能力を全開放。最凶の神に挑む。

 

シエルとシオンの視界に映る風景。それは女神龍クリスタルハートが誕生した場所。ゲイムギョウ界の覇権を我が物にするという野心に呑まれた当時の守護女神達によって滅ぼされた場所。充満する血の匂いと吹き抜けるどこか寂しい風まで再現されている。二人は周囲を警戒しながら、ある場所に向かう。

 

『まさか再びこの場所に戻ることになろうとはな…』

 

「随分と趣味が悪いよね。辛い思い出のある場所を再現するなんて」

 

この空間はファントムハートの能力によって創り出された物。人の感情を平気で弄ぶ彼女に言わせれば遊び場でしか過ぎない。この場所から出る方法は彼女が用意した敵に勝つこと。教会の跡地の前に黒い霧が収束。モンスターの姿を形成した。

 

『これは…!』

 

現れたのは黒色の重圧な甲冑を纏った騎士。右手の大剣と左手の光を放つ大盾が特徴だ。シオンが感じたのは彼の体から発せられる龍の血の匂い。それは鉄壁の防御を誇る不死身の騎士。邪龍の血を浴びたことで得た不死身の肉体はその背中のみ効果が及ばぬと伝わる。彼の名は空虚なる騎士(ジークフリート)。とある世界にて紅蓮の王となった舞が従えていた存在だ。右手に持った大剣バルムンクを上に掲げると光の輪が彼の体を包み込む。

 

「魔法反射障壁か…。なら私の武器はこれだよ」

 

シエルは女神化を行使。プロセッサユニットを装着すると続けて武器を顕現させる。現れたのは蒼白の大剣と大盾。対峙する相手と同じ武器を写し取る鏡の如き力。さらにシオンが蒼い光の玉になってシエルの体内に入ると適応化能力が発動。斬撃と打撃に対する防御力と氷耐性を底上げ。舞の記憶から読み取った彼の攻撃に対する防御策。だが油断はできない。一撃でも貰えばそれが致命傷になる恐れがあるからだ。基本的な動きを忘れずに堅実に攻めることを意識。互いの準備が完了したところで結晶の女神と不死身の騎士がぶつかり合う。

 

セレナの目に映るのはシエルとシオンと同じ過去の記憶から形成された街の風景。それは自分が守ることのできなかった金の大地の首都。国を奪われたあの日の記憶が甦る。

 

「あれから長い年月が過ぎたけど、私は絶対に忘れない。過去の自分が犯した罪を。守れなかった者達のことを。私は最後の時まで生き続ける。それが今の私にできる償いなのだから」

 

セレナはこの空間内に満ちる邪気の大元がいる場所に向けて歩を進める。所々に赤い血のような液体が流れ出ている場所が見受けられる。足を踏み入れないように避けながら進むと自分の教会があった場所に着いたが、建物自体が無い。代わりにあったのは底が見えない大穴。空間内に満ちる邪気はこの中から発せられている。

 

「来る…」

 

大穴の中から大量の黒い霧が噴き出した。それはモンスターの姿を形成する。水気を帯びた見上げるほどの黒き巨体。タコのような体の頭部にあるのは巨大な銀色の女神像。本来は黒い騎士の姿なのだが、アリアの姿を模した銀の女神像になっている。セレナの前に現れたのは月の光が届かぬ暗黒の海に潜み、八の触手を操る邪神。深淵の使徒(クトゥルフ)

 

『矮小なる者よ。我を畏れよ…! はあああああっ!』

 

アリアの声を使って邪神は大気を振るわせるほどの咆哮を放つ。それを受けた途端にセレナは自分の体にある違和感を感じた。自分の魔力が空になっていたのだ。幸いにも女神化は行使できるのだが今回は魔法に頼ることはできない。これが邪神の呪いの力。

 

「魔法封じか…。それでも私は負けないよ。魔法以外の武器は常に持っている」

 

セレナの手に握られた剣と盾。剣の刀身と盾の表面は半分が黄金色で、もう半分が白銀色。刃の中央には炎の力を封じ込めた紅いコアが埋め込まれている。銀の女神と金の女神の祝福を受けた剣と盾。ゲイムギョウ界の闇を打ち払う輝きが宿っていた。

 

『お前の敵は我だけでは無い。この街全てがお前の敵だ!』

 

深淵の使徒(クトゥルフ)の触手は無機物に憑りつき、それを意のままに操る能力を持つ。金の大地を再現したこの空間内には過去に金の大地で開発されていた魔術兵器が大量に眠っている。邪神の触手に操られた魔術兵器の矛先は全てセレナに向けられるのだ。

 

「どれだけ厳しい状況に立たされたとしても、私の選択は変わらない。あなたを倒して、生きて帰ってみせる!」

 

強い意志を秘めた言葉と共にセレナは駆け出した。舞とアリアを除いた守護女神達も女神の亡霊が差し向けた強敵に立ち向かう。続けて舞台は緋色の大地の教会内部にてぶつかり合うファントムハートと舞の方に移る。

 

「どうやら君の仲間達もそれぞれの戦いを始めたようだ。まあ、私が欲しいのは君とアリアだけだから他の連中がどうなろうと知ったことではないけどね。負けた時は奴らが現実世界に解き放たれるだけさ。愚民共が泣き叫ぶ姿が目に浮かぶよ」

 

『世界はお前の玩具じゃない。ふざけたことを口にするのも大概にしたらどう?』

 

「なら私を殺して黙らせてみせてよ。あの時のようにさっ!」

 

ファントムハートの黒い剣と私のプリズムハートがぶつかり合う。空の牢獄で初めて戦ったあの時とは比較にならない程の強大な力だ。彼女の言葉を受け入れることになるのは癪だが女神になっていなければ、これだけで蹂躙されていたと思う。

 

「随分と面白い剣を使っているじゃないか。さっきから叩き折るつもりで攻撃を加えてはいるけど、まるで折れる気配が無い」

 

「当然だよ。プリズムハートにはこの世界のみんなの思いが込められている。あなたと犯罪神を倒すための剣だから。あなたの本体も攻撃が通じない思念体だよね? 絶対に逃がさないよ」

 

「察しがいいね。スカーレットハートの体は私がこの世界で活動するための器に過ぎない。君を喰らったらこの器は用済みさ。ボロ雑巾のように捨てるだけ。さあ、まだ私達の舞踏会は始まったばかり。存分に踊ろうじゃないか」

 

ファントムハートは黒い剣に濁った緋色の光を纏わせると凄まじい速度の突きを放つ。何とか直撃を回避するが肉眼で見切ることの難しい神速の剣閃の前に苦戦を強いられる。直感で避けているようなものだ。

 

「…っ!」

 

「ほらほら。休む暇はないよ? 反撃したらどうだい?」

 

私の頬に傷が刻まれる。このまま彼女の猛攻を許すわけには行かない。私は痛みに耐えながら僅かな隙を見切って反撃の剣舞を繰り出した。ファントムハートの連撃を一瞬だけ止めると、空いている左手にシェアを纏わせて拳の一撃をお見舞いする。攻撃を受けたファントムハートは後退した。これがネプギアのギア・ナックルの動作を流用したブレイク技。名付けてマイ・ナックル。

 

「ふふっ…!」

 

「何がおかしいの?」

 

それは最初の戦いに時に見せた物と同じ不敵な笑み。

 

「殴られたのは久しぶりだからね。最後に殴られたのは君と本気で踊った時かな? あれから随分と長い時が経った物だ」

 

『いい加減に本気を出したら? この期に及んで手加減をするなんてふざけてるにも程があるよ』

 

「君達を壊してしまうわけにはいかないからね。未来の自分の器を自分で破壊することほど滑稽なことはない。だが、君達が望むのならば別だ。着いて来れないなんて泣き言は言わないでよ? バースト・モード発動!」

 

ファントムハートの体から発せられる邪気の濃度が増した。彼女の姿が消えたと思ったら既に距離は詰められていた。彼女の蹴り技が私を吹き飛ばそうとするがそれを黙って受ける私達では無い。

 

「はあっ!」

 

対抗して蹴り技を放つ。これを放ったのは私の意識ではない。私の中にいるアリアの意識だ。アリアがファントムハートを挑発した際に体の主導権を握る意識を入れ替えたのだ。アリアが表の時は銀の太陽の髪飾りが2個になってネプギアの髪飾りと同じような感じになる。互いの蹴り技が衝突しただけで周囲に凄まじい衝撃波が発生する。

 

「あはははっ! 本当に懐かしい! 君と踊ったあの時と同じだ!」

 

「忘れたい思い出だよ…! お前と全てを賭けてぶつかり合ったあの日のことは」

 

四人の女神がスカーレットハートと戦った最終決戦は緋色の大地全体が戦いの舞台となったと言われている。女神同士の戦いに割り込める者は同じ女神のみ。戦争の果てに散った命の数は数えきれない程だ。守らなければならない民達の命の奪い合い。終わることのない悲しみの連鎖。当時の女神達の心が壊れなかったのは奇跡なのかもしれない。彼女達が決死の思いで未来を繋いだことで今のゲイムギョウ界があるのだ。

 

「銀星の軌跡…! エクストリーム・スターズ!」

 

七つのシェアの輝きを帯びたプリズムハートを使っての十五連撃の突き技。

 

「忌々しい輝きだ…! 私の色に染めてあげる。スカーレット・フルール!」

 

ファントムハートの反撃。濁った緋色の剣閃と銀の剣閃がぶつかり合い、互いの体に傷が刻まれる。鮮血が舞い飛び、体に走る痛みが激しさを増した。私達は痛みに表情を歪めてしまっているが、対するファントムハートは変わらない。お互いに距離を取ったのは同時だった。

 

ダメージが入っているのは間違いない。不敵な笑みを崩さないところを見ると能力を使って痛覚を遮断している可能性が高い。その気になれば痛覚を遮断できないことはないけど、実行するにはあれを使う必要がある。

 

『アリア、代わって。あれを使うよ』

 

「使わざるを得ないか…。舞の体と心は私が守ってみせるよ…!」

 

私は女神化を解除。服装がパーカーワンピに戻る。ポケットから出したのは赤色の錠剤。飲み込むと凄まじい不快感が私の体を駆け巡る。錠剤の中に含まれているのは女神化阻害ウイルス。

 

「はあああああっ!」

 

自分の体内にウイルスを取り込み、その力を喰らって女神化を発動する。赤い錠剤は狂女神化を強引に発動させるために開発した錠剤。この時の為に用意したドーピングのような物と言っていい。狂女神化状態ならば痛覚をある程度遮断することができる。

 

「狂女神化と来たか。本当に君は面白いよ! 最後にはあの女神化を発動する気かい?」

 

「それを使わなければならないのなら躊躇わない。お前を倒すまで解除しないよ」

 

「私が死ぬまで…に訂正したほうがいいと思うけど…。まあ、体が残っていれば私の器にすることはできるからいいか…。さあ、続きと行こうじゃないか」

 

「私の全てを賭けてお前を消し去る! 女神喰い(ハード・イーター)っ!」

 

守護女神達が凶敵と対峙する中で銀陽の女神と女神喰いの戦いはさらに加速する。この戦いの先にある結末はまだ誰も知らない。女神達が最後に到達する終着点まで後少し。

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