超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game122:解き放たれる女神の力

舞の記憶から再現された強敵と対峙する守護女神達。マガツキュウビに立ち向かうのは四人の女神候補生。戦闘の指揮を執るのはネプギア。しなやかな体躯から放たれる強烈な攻撃を捌きながら確実にダメージを与える。舞とのハード・リンクによって得た知識があるので女神候補生達が優勢だが、最後まで油断はできない。目の前の邪悪な存在の持つ凶悪な能力に警戒を強める。

 

「女神剣舞《業炎》!」

 

「ラーヴァストライクッ!」

 

ネプギアの剣舞とユニの銃撃が炸裂。二人の攻撃には火属性とシェアの力を融合させた炎属性が付与されている。守護女神が行使するシェアの力は積み重ねる鍛練の中で神属性と呼称されるようになった。既存の属性と融合させることでさらに強力な属性に進化させることができる。ネプギアは頭部、ユニは胸部に攻撃を集中。舞から流れてきた記憶通りであれば破壊することができるからだ。破壊できれば攻撃がさらに通るようになる。

 

二人の攻撃を受けたマガツキュウビは怯むが、体勢を立て直した直後に三本の尻尾から無数のレーザーを放ってきた。それは複雑な軌道を描きながら襲い来る。

 

「ハード・プロテクション…!」

 

「プリズム・スターズ!」

 

ロムの防御魔法が全員の体を包み込み、放たれたレーザーを防いだ。勿論それだけで終わりではない。ラムの攻撃魔法が発動。太陽の杖を振ると様々な色をした星型の魔力弾が降り注いだ。全体的な魔法の適正の高い白の女神候補生(ホワイト・シスターズ)だが、ロムは防御魔法を初めとした支援系魔法。ラムは火力及び手数重視の攻撃系魔法の適正が特に高い傾向にある。体から放たれる邪気がさらに強烈な物になったのを感じ取ったネプギアは蒼い光の玉を打ち上げる。

 

「わかったわ!」

 

「はなれる…」

 

「りょーかい!」

 

ネプギアが打ち上げた蒼い光の玉は散開命令の合図。マガツキュウビの体から放出される邪気が上空に収束。黒い球状の物質が生成されると同時に体内のシェアが急速に奪われる。その場を全速力で離脱して交戦ポイントの変更を行う。

 

実際のゲームでは体力の上限を削り取るという恐ろしい効果を持つ。対抗策は速やかにその場から離れること。ゲイムギョウ界のモンスターという形で再現された結果、守護女神のシェアエナジーを搾取する効果に変化している。さらに性質の悪いことに距離を取ったのにシェアエナジーの搾取は止まらない。吸収速度は弱まったが、徐々に体内のシェアエナジーが減少しているのだ。

 

「リターン・コール!」

 

ネプギアの体から放たれた薄紫色の光の玉が戦場に飛ぶ。別々の方向に散開したユニ達がネプギアの元に現れた。巨大ワレチュー迎撃戦の際にセレナとユニゾンした舞が使用した魔法で戦場の仲間を発動者の下に呼び寄せる効果がある。幸い、女神化はまだ維持できる余裕があるのでシェアエナジーの残量に気を付けながら攻撃を再開。シェアエナジーを搾取する黒球は怒りで活性化した際に生成されるので再度生成される前に可能な限りダメージを与える。戦場を黒球で埋められる前に倒さなければならない。

 

「行きますっ!」

 

ネプギアは双剣を上に掲げ交差させると薄紫色の炎が体にかかる。双剣の奥義である鬼神化発動の合図。さらにロムの自動回復魔法とユニの鬼神弾が上乗せされる。マガツキュウビはネプギアの接近を察知して体に一瞬だけ力を込めると強烈な体当たりをお見舞いしてきたが当たらない。双剣術の極意は止まらない怒涛の連撃にあるのだ。攻撃後に生じる僅かな隙に連撃を叩き込み、次の攻撃が来る前には回避行動に移ることを意識。行動速度の加減が非常に重要で遅いのは勿論駄目なのだが、逆に早すぎるのも駄目である。これについては日々の鍛練と実戦経験の積み重ねで身に付ける必要がある。

 

「その攻撃は使わせないわ! シャイニングレイン!」

 

マガツキュウビの尻尾に力が収束するのを先に感じ取ったラムが魔法を放つ。それは白い光の雨を降らせる威力重視の魔法。尾毛が壊れ、壊れた部分から黒い瘴気が噴き出した。まだ弱っている気配は見られない。

 

「少しだけ動きを止める…。プリズム・チェーン!」

 

ロムの杖から現れた七色の光の鎖が四肢に巻きついて動きを封じる。動きを止められる時間は約七秒。それだけでも十分な時間。ネプギアは頭部に斬撃を叩き込み、ユニは胸部を狙って銃撃を撃ち込む。二人の攻撃の前に頭部と胸部に亀裂が走った。尾毛の時と同じように亀裂からは黒い瘴気が噴き出した。体に傷を付けられたことに対する痛みなのか、怒りなのかはわからないが、マガツキュウビは天に響き渡る程の咆哮を上げる。

 

壊れた箇所から噴き出した黒い瘴気は戦場の大気と結合。それと同時に何と女神化が強制的に解除されてしまった。身を守護するプロセッサユニットが消失。普段の服装に戻ってしまう。

 

「女神化が…」

 

「どうなってるのよ…」

 

「シェアはまだ残ってるのに…」

 

「ここにいるだけで嫌な気分になるわ…」

 

これがどのような原理なのかはわからないが、守護女神との戦闘に特化した能力であることだけはわかる。シェアを強引に搾取する黒球に加えて女神化を封じる瘴気の展開。壊れた箇所からは依然として黒い瘴気が噴き出している上にシェアエナジーの搾取は止まらない。ネプギア達が舞の記憶を引き継いでいることはファントムハートも当然知っている。彼女がこちらの行動を読み越した上で仕掛けた罠であるのは間違いない。

 

「どれだけ厳しい状況に追い込まれても、わたしは諦めない…!」

 

「諦めなければ活路は見出せる…。アイツに教えてもらったことよ」

 

「みんな頑張ってる…。私達だけがあきらめるのはだめ…」

 

「まだわたし達の体は動かせるわ。勝った気にならないでよね!」

 

ネプギア達は武器を構える。不利な状況に追い込まれたとしても絶対に諦めない。もうひとりの姉でもある銀の女神から受け継いだ不屈の心。残ったシェアの力を全身に行き渡らせて身体能力を強化。女神化時には劣ってしまうが何もしないよりかはマシだ。

 

「火炎裂空ですっ!」

 

「メガ・ファイア!」

 

ネプギアは剣に炎を纏わせると空中で前方に回転しながらマガツキュウビの体を斬る。さらにラムの放った火の魔法が続き、足元から噴き出した火柱がその体を焼きダメージを与える。マガツキュウビは体に力を込めて回転すると巨大な竜巻を引き起こして反撃。直撃は何とか避けたが強烈な風圧に押されてしまう。

 

「負けないわ! ガーディアン・フレイム!」

 

「ディザスターヒート…!」

 

ユニはアサルトモードの銀の銃から炎の魔力を込めた七発の散弾を放ち、ロムは月の杖を頭上で回転させると炎の魔力砲撃を三連続で照射。火属性が弱点なので効果は抜群だ。ネプギア達の連撃が効いたのかマガツキュウビは黒い障壁を自分の周囲に展開。さらに障壁から極太のレーザーを周囲に放ち、ネプギア達の接近を許さない。障壁が解除されるまで待つ。再度攻撃を加えようとしたところで体から僅かに蒼い光が漏れ出しているのに気が付いた。動きを観察してみると、ふらついているので弱ってきているようだが、まだ戦いは終わらない。マガツキュウビは再度怒りによって活性化。シェアエナジーを搾取する二個目の黒球を生成。

 

最初に戦っていた戦域は未だに黒球に押さえられている。二個目の黒球の生成によって戦場の三分の二が押さえられた。ネプギア達は残された安全な戦域に移動。次に生成される前に倒さなければならない。シェアエナジーの吸収速度はさらに加速。体から力が抜け、息が切れ始めた。

 

「何か…この状況を逆転できる方法は…」

 

ネプギアは必死に考える。このままではシェアエナジーが尽きてしまう。相手は瀕死状態だが、弱った自分達を喰らうだけの余裕は残っていると思う。確実にここで決めなければならないのだが、残念ながら大技である秘奥義とエクセドライブの行使に要するシェアエナジーはもう残されていない。

 

『あるよ』

 

頭の中に声が響いた。

 

「この声は…?」

 

『失敗したらお終いだけど、それを使う勇気はある?』

 

「失敗するつもりなんてありません。絶対に成功させて見せます!」

 

『その意気だよ。じゃあ、早速始めてみようか』

 

ネプギアの目に映る景色が灰色に染まった。

 

「あれっ…?」

 

『今はわたし達以外の時間が止まってる。さあ、誓約を立てる時だよ』

 

「誓約…ですか…?」

 

ネプギアの頭の中に情報が流れ込む。対象の攻撃を受けないノーダメージ。一定以上のダメージを与える。鬼神化の使用禁止。ラッシュ系統技の使用禁止。女神化禁止。体力及び魔力の減少。身体能力の大幅低下。アイテムの使用禁止。対象に規定数以上攻撃など。これらは戦闘の際に自分の行動を制限するための誓約。

 

『どれを選ぶのかは自由だよ』

 

迷っている時間は無い。ネプギアは今の自分に残された力で達成できそうな物を選択。主目標に一定以上のダメージを与える。鬼神化の使用禁止。対象に三十回攻撃を当てる。合計で三つの誓約を選択するとネプギアの左手首に黒い光を放つ腕輪が装着された。

 

「…っ!」

 

腕輪が装着された瞬間、強靭な鎖に体を縛られたかのような感覚が駆け巡る。

 

『制限時間は三十秒。誓約が完全にクリアされた時はわたしが合図するから』

 

時が動き始めたと同時にネプギアはマガツキュウビに向かって駆け出した。ユニ達はいつの間にかネプギアの左手首に装着されている黒い腕輪に驚きを隠せなかったが、思考を切り替えてネプギアの援護に回る。

 

「はああああっ!」

 

最初にネプギアは双剣による連続攻撃を叩き込み、回数を稼いだ。鬼神化時と比較すると速度・威力は劣るが手を休めない連続攻撃で規定の回数をクリア。残るは主目標に対する一定ダメージのみ。残り時間は十五秒。ユニの銃撃が、ロムとラムの魔法がネプギアの背中を支える。援護を受けたネプギアは弱点の頭に攻撃を加える。残り時間が十秒を切った。

 

「届けっ!」

 

強き意志を乗せたネプギアの攻撃が当たると同時に左手首に装着された黒い腕輪が外れた。外れた黒い腕輪は地面に落ち、光となって消滅した。

 

『ここからはわたし達の反撃(ターン)。一気に決めるよ!』

 

ネプギアの視界に声の主の姿が映る。薄紫色の髪を持ち、モノクロ色のセーラーワンピを纏った自分自身。瞳には女神の印が発現している。それは紫の女神の妹(パープルシスター)の姿だった。彼女が光となって体の中に溶け込むと体の底から力が湧き上がる。さらにネプギアの背中から薄紫色のシェアエナジーが放出され、光の翼を形成した。あまりの輝きの強さにマガツキュウビは後退。

 

ネプギアは一気にマガツキュウビとの距離を詰めた。その行動速度は既に神速の域に到達している。ネプギアはマガツキュウビの攻撃を何と完全に無力化していた。百を優に超える怒涛の乱舞を体に叩き込む。薄紫色のシェアの輝きが彼女の剣舞を彩る。舞い散る桜のような美しき剣舞。

 

「女神剣舞《千本桜》!」

 

ネプギアの剣舞を受けたマガツキュウビは最後に天を仰ぎ、大地に倒れ伏した。その体は光となって消滅する。同時に背中のシェアエナジーの放出が止まると力が抜けたのかネプギアはふらついていた。倒れる前にユニがその体を支え、ロムとラムが残った魔力を使い回復魔法をかける。マガツキュウビを討伐したことによってシェアエナジーの搾取は止まったが既にかなりの量のシェアエナジーが奪われていた。

 

ネプギアの体の中から薄紫色のシェアの光が現れる。それは力の発動前にネプギアの視界に映ったパープルシスターの姿となった。プロセッサユニットは纏っていない、モノクロ色のセーラーワンピを纏った彼女の雰囲気は舞に似ている。

 

「わたしがもう一人…?」

 

「アンタは…ネプギアなの…?」

 

「女神化した時のネプギアちゃん…」

 

「ネプギアはここにいるのに…。まさかオバケとかじゃないわよね…?」

 

『オバケではないけど、似たような物かな。女神化前と女神化後。同じ空間に二人のわたしが存在しているのは本来ならあり得ないこと。詳しいお話はこの戦いが無事に終わってからにしようよ』

 

周囲の空間が歪み始める。ファントムハートの能力によって再現された偽りの世界が消滅。元の中央広場に戻ってきていた。まだネプテューヌ達は戻っていない。教会がある方角からは激しい戦闘音が鳴り響いている。二人の銀の女神とファントムハートが戦っている音だ。加勢したいところなのだが、シェアエナジーを搾取された今の状態ではあの戦いに入ることはできない。自分達にできることは舞とアリアを待つことだ。

 

「舞さん…」

 

『わたし達の心は繋がってる。絶対に負けないよ』

 

隣に顕現しているパープルシスターの言葉に心の中の靄が晴れた。ファントムハートが差し向けた強敵と戦っている姉達。そのファントムハートと戦っている舞とアリア。誰も欠けずに戻って来ることを祈りながら待ち続ける。最後に待つのは最高の結末(ハッピーエンド)最悪の結末(バッドエンド)か。それが決まるのはまだ続いている四つの戦いが終わる時。

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