超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game125:黄金の煌き

ファントムハートが舞の記憶から再現した四体の強敵達。最後に残ったのはクトゥルフ。邪神の呪いの力はセレナの魔力を完全に奪い、魔法の行使を封じる。奪われた魔力は一向に回復する気配が無い。手持ちの魔力の回復アイテムを使ってみたが、効果が現れなかった。開幕から完全な劣勢状態になったが、セレナの輝きが消えることは無い。金の女神と銀の女神の祝福を受けた片手剣と盾を持ち、金の大地の首都に顕現した邪神に立ち向かう。

 

『闇に沈め!』

 

最初に動いたのはクトゥルフ。空間に満ちる闇の力を収束させ、巨大な黒球を生成。クトゥルフが再度咆哮を上げると黒球が破裂。闇の波動がセレナに襲い掛かった。

 

「守護月華陣!」

 

シェアの力を使い、光の障壁を形成。闇の波動を防いだ。セレナのシェアエナジーの総量はネプテューヌ達と比較すると少ないため、シェアエナジーの残量に注意しながら次の手を思考。舞から引き継いだ記憶によるとクトゥルフの弱点は頭部にあるアリアの姿を模した銀の女神像だ。金の翼のプロセッサユニットに力を込め、銀の女神像に接近。片手剣にシェアの力と金の炎を纏わせ、斬撃を叩き込む。

 

『滅びるがいい!』

 

クトゥルフの言葉と同時に街中に設置された砲台から大量の魔力弾が放たれた。壊滅した金の大地の首都を再現したこの空間内には首都の防衛を目的に設置された魔導兵器がある。金の翼のプロセッサユニットを巧みに使い、魔力弾の嵐を回避したが、これはまだ序の口に過ぎない。次に動いたのは敵を拘束する魔力の鎖を射出する兵器。濁った金色の魔力の鎖がセレナを拘束しようと四方八方から迫る。

 

首都に設置された魔導兵器には特殊な術式が組み込まれている。本来ならば教会から伸びる魔力のパイプラインを使い、ゴールドハートのシェアエナジーと魔力を兵器に供給しないと動作しない。これは国の頂点に立つゴールドハート以外の者に魔導兵器を使わせないためにセレナの姉が作り出したシステム。

 

このようなシステムにした理由だが、セレナの姉が女神だった時代に教会の職員を装い侵入した犯罪者が兵器を勝手に使用して国民に重傷を負わせた上に建物を破壊。最終的に教会を占拠するという事件が起きた。実行犯は他国の女神の狂信者で金の女神のシェアを下げることが目的だったと供述。セレナの姉が断罪をしたが、このような事が二度と起きないように街中に設置された魔導兵器は金の女神以外の者が使うことができないようになったのだ。兵器自体を撤去すればいいのではと言う意見が出たが、有事の際に首都を守る手段は必要という意見が多かったので残った状態になっている。

 

ファントムハートがダミークエストを使い、セレナを国から遠ざけたのはこれらの魔導兵器を完全に無力化するために仕掛けた罠。クトゥルフは無機物を操る能力を持つ触手と魔力のパイプラインに流した呪いの力を帯びる自らの血液を使いこれらの兵器を操っている。それがセレナが道中に見た街を流れる赤い血のような液体。クトゥルフが言ったように、今はこの首都全体がセレナの敵なのだ。

 

セレナは迫る魔力の鎖を片手剣で切断。動きを止める訳にはいかないので、翼のプロセッサユニットの出力は高めた状態で空間内を飛び回って隙を探してみるが、魔力弾の嵐と魔力の鎖の防衛網が接近を許さない。

 

「光破刃!」

 

片手剣に金のシェアを纏わせて振ることで神属性の斬撃をクトゥルフに飛ばしたが、巨体を守るように展開された防壁に防がれてしまう。教会を遠距離からの砲撃などの驚異から守るために設置された魔導兵器。防御力は非常に高いが、砲台及び拘束兵器と同様にセレナが教会にいないと機能しない兵器。

 

『無駄だ…! 魔術を使うことができないお前がどれだけ抗ったところで我の優位は揺るがぬ…! 矮小なる存在であるお前に我を越えることなどできはしないのだ…!』

 

「私は絶対に諦めないよ。魔法を封じられても私の体はまだ動かせるから」

 

『ならば、これを受けてみるがいい!』

 

クトゥルフの体から放たれる闇の力が上空に収束。巨大な漆黒の槍を生み出した。これが対艦・対城を目的とした大規模魔導兵器『撃魔槍』。この大地が金の大地となる前から存在していたことから、遥か昔にあった大戦乱時代の物だとか、別の次元から持ち込まれた兵器なのではないかと言われている。大規模魔導兵器は何人足りとも触れることができないように光の届かない深淵に封じられた。深淵からそれを引き上げたクトゥルフはセレナに狙いを定めた。再び魔力の鎖がセレナを拘束しようと迫る。先程と比較すると数が多い。

 

「捕まるわけには…!」

 

セレナは飛び回ることで必死に回避するが、シェアを消費し続けたことが原因で僅かな隙が生じてしまう。遂に魔力の鎖がセレナを拘束した。右足に続いて左足・右腕・左腕と四肢を拘束され、身動きが取れない状態に。魔法を使うことができれば、拘束解除の魔法で破ることができるが、魔力が無い状態では簡単な初級魔法さえ使用できない。

 

シェアの力を放出して対抗したが、呼応する形で四肢を拘束する魔力の鎖の力は増加。セレナの体を鈍い痛みが駆け巡る。クトゥルフの頭部にある銀の女神像の右手にアンチエナジーを纏った巨大な漆黒の大剣が現れた。これはクトゥルフが元から持っている武器。大剣の一閃が身動きの取れないセレナの体を直撃。

 

「あああああ…っ!」

 

『よき悲鳴よ…!』

 

クトゥルフが斬ったのはセレナのシェアエナジー。外傷はないが、凄まじい激痛が駆け巡ると同時に体内のシェアエナジーが損失。女神化が解除され、黒の着物姿に戻る。

 

「力が…! 入らない…!」

 

『まだ意識があるか…。ならば次の一撃で終わらせてやる…』

 

上空に浮かぶ撃魔槍がセレナに迫る。これを受けてしまったら終わりだ。諦めるわけにはいかないが、この状況を打破できる一手が出ない。撃魔槍の矛先は非情なる現実を体現するようにセレナの目前まで迫る。

 

『さらばだ…! 金の女神よ!』

 

「…っ!」

 

「その勝負、待ってもらおうか!」

 

『なにっ…?』

 

この場にいない第三者の声が響き渡ると同時にセレナの目前まで迫っていた撃魔槍に何者かの鋭い一閃が炸裂。撃魔槍が両断された。さらにセレナの四肢を拘束していた魔力の鎖まで断ち切る。速い。全盛期のアリアに匹敵する程の速度。

 

『何者だ…!』

 

「残念ながら、君のような悪に名乗る名前は持ち合わせていないな」

 

「そうだな…。ここは貴様が傷つけた金の女神の戦友…とでも名乗らせてもらおうか」

 

「わたしの師匠を傷つけた落とし前としてあなたの命を請求させてもらうよ」

 

『矮小なる者どもが何人いようと無駄だ…! 我を越えることなどできはしない。女神喰い(ハード・イーター)と戦っている銀の女神の命運も尽き果てる!』

 

「出来るか出来ないかの問題じゃない。私達は自分にできることをやるだけさ。それに勝負の結末は最後の時までわからない。どれほど強大な敵だったとしても、単独であることに隙はある…! 師匠に教えてもらった言葉だ…!」

 

拘束から解かれたセレナを守るように現れたのは四人の少女達。彼女達はセレナの輝きとは似て非なる黄金の瞳を持っている。大戦争が終結した後のゲイムギョウ界を巡る旅の中で出会い、確かな絆を築いた四人の少女達が自分の目の前にいる。だが、彼女達は守護女神では無い。とある力を手にしたことで背負うことになった使命を果たし、最後に永遠の眠りに就いた彼女達がこの場に現れた理由はわからない。

 

「どうして、あなた達が…?」

 

「残念だが、説明している時間はない。私達がお前を守る。今の内に態勢を立て直せ」

 

銀髪の少女が展開したバリアがセレナの体を包み込む。彼女の手には眩い輝きを放つ金色の長剣と銀色の盾。背には銀の片翼。頭には金の王冠がある。

 

「ありがとう…! 何とかしてみるよ…!」

 

『無駄な足掻きを…! 纏めて消し去ってやる…!』

 

「無駄かどうかはやってみないとわからない物だよ?」

 

茶髪の少女の両腕と両足に装着されているのは銀色の籠手と脚甲。背には銀色の大剣を背負い、金色の光の翼が顕現している。

 

「師匠の時間はわたし達が稼いであげる! 今回はお代が無料の特別サービスだよ!」

 

金髪の少女の背に装着されているのは金色のビット。右手には銀色の砲身を持ったバズーカを持っている。

 

「この戦いが私達の最後の戦いだ。後悔は残さない。人生最高の戦いにしよう」

 

黒髪の少女の手にあるのは金と銀の二挺拳銃。右肩の辺りに浮遊しているのは黒い砲身の小型レールガン。各々の特殊武装を展開した四人の少女達は散開。クトゥルフと魔導兵器の狙いをセレナから自分達に向けさせる。セレナは彼女達が時間を稼いでいる内に逆転の策を思考。魔法を封印され、シェアの力を削られた自分にできることは少ない。思考の末に一つの解がセレナの頭の中に浮かび上がったので実行する。

 

『こ、これは…!』

 

異変に気付いたのはクトゥルフ。黒い大剣に纏わせたアンチエナジーが離れ、セレナの元に集まる。それだけではない。この空間内に満ちる邪気を初めとした負の力がセレナの元に集まっていた。セレナの心と体が負の力に満たされ、新たなる覚醒の鼓動が始まる。手始めに空を覆っていた黒雲が一掃され、空を禍々しい血色に染める。

 

血色の空に浮かぶのは黄金の満月と白銀の太陽。神々しさと禍々しさを持った太陽と月の光の下。彼女は大地に君臨する。纏っているプロセッサユニットは普段の金色から漆黒色に変化した。奪われたシェアの力を空間内に満ちる負の力を使い代用。狂女神化から極限女神化に一気に派生させたのだ。吹き荒れる力の波動が邪神を守る障壁を粉砕した。

 

『我が恐れを抱いているだと…!』

 

「世の中に絶対は無いよ。認めたら? 今の私を恐れている現実を」

 

『認める物か…! 生命力を削って維持している付け焼刃の力などに…!』

 

「だが、この場にいるのは私だけではない。忘れてはいないかな。私には仲間がいるってこと」

 

セレナの元に四人の少女達が舞い戻った。自分と同じ黄金の瞳を持った少女達との絆はセレナの心の中で生き続けている。セレナが着けている三日月の髪飾りは彼女達からの最初で最後のプレゼント。

 

「次の攻撃で決めるよ。覚悟はいいかな?」

 

『戯言は聞き飽きた…! 身の程を知るがいい…!』

 

邪神の咆哮が響き渡ると同時に五人の少女は駆け出した。最初に攻撃を加えるのは銀髪の少女と茶髪の少女。黄金の力を纏わせた片手剣と大剣の一閃が邪神の触手を断ち斬る。

 

『ぬっ…!』

 

次に動いたのは黒髪の少女。銀と金の二挺拳銃から放たれる銃撃の嵐が邪神を怯ませると極限女神化状態のセレナが飛び込み、胴体部分に連撃を叩き込む。残っている触手に狙いを定めると次の攻撃に移る。魔導兵器の妨害が入るが金髪の少女の背中にあった金色のビットがセレナの周囲を守るように飛び、放たれる魔力弾と拘束用の鎖を迎撃した。彼女の支援を受けたセレナは速度をさらに上げて残った邪神の触手を全て断ち斬る。

 

邪神との戦いを終わらせる時。大剣にアンチエナジーを再度纏わせてセレナを薙ぎ払おうとしたが、セレナは回避。最後にアリアの姿を模した女神像の首元に一閃。女神像の首から上が吹き飛び、地面に落ちると光となって消滅。切断面からは蒼い光が噴水のように噴き出した。

 

『馬鹿…な…! あり得…ない…!』

 

クトゥルフの巨体が大穴に沈み、光となって消滅した。セレナは地面に降りると極限女神化を解除。解除と同時に一気に襲い掛かって来た疲労と痛みがセレナの体を駆け巡る。倒れかけたが、銀髪の少女がセレナの体を持つ。

 

「ありがとう。あなた達とまた会えるとは思わなかった…!」

 

「お前と銀の女神には助けられてばかりだったからな。お前達から受けた恩はこの程度で返しきれる物ではない」

 

「本来なら生きている内に返したかった…。それがアタシ達の一番の後悔さ」

 

「師匠にはお金では返せない借りがいっぱいあるからなあ…」

 

「最後にお師匠様の背中を守ることができました。これほど嬉しいことはありませんよ」

 

「あなた達と過ごした思い出は絶対に忘れないよ。これが本当に最後のお別れ…になるのかな?」

 

セレナの瞳から一筋の涙が流れる。

 

「お前の思い出の中で私達は生き続けるさ。最後に一つだけお前に伝えておきたいことがある」

 

「今代の女神達に試練の時が近づいているみたいだ。最終的にどうなるのかはわからないけど」

 

「場合によってはあの時代がまた来る可能性があるよ」

 

「試練をクリアできるかどうかは今代の女神様の力にかかっています…」

 

四人の少女達の言葉を聞いたセレナの脳裏に二つの単語が浮かぶ。

 

『転換期』と『空白期』。

 

大戦争終結から現代に至るまでの間に実際に存在した二つの時代。セレナが体験したのは大戦争後に起きた一度だけだが、再び未来に起きる可能性は確かにある。セレナは彼女達の言葉を胸に刻み、決意する。

 

「この戦いが終わったら一度ネプテューヌ達と話をしてみるよ」

 

「今は頭の片隅に留めておけばいい。常に気を張っていたら肝心な時に参ってしまうからな」

 

「試練をクリアできることを祈っているよ。あの時代の再来は避けたいからね」

 

「師匠達なら何とかできると思うな。手助けできないのが心苦しいけど応援してるから!」

 

「どうやらお別れみたいです。お師匠様と今代の女神様達の未来に幸せがありますように…!」

 

四人の少女達は光となって消滅した。直後に女神の亡霊が生み出した空間が崩壊。元の中央広場に戻された。ネプギア達と合流したセレナは彼女達と一緒に緋色の大地の教会内で戦っている親友の無事を祈る。『転換期』と『空白期』。この戦いを終わらせて平和を取り戻したとしても世界は守護女神達に試練を与えるに違いない。だが、みんなの力を一つに合わせれば不思議と何とかなる気がした。




これを書き始めて一年か。月日が経つのは本当に早い…。記念作品という形でネプ子と舞の絡みを書きたいな。
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