超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game126:舞踏会の終幕

ファントムハートが差し向けた強敵達が守護女神達に討伐され、残る敵はファントムハートのみとなった。極限女神化状態の舞と女神喰い(ハード・イーター)の死闘は最終局面に突入。吹き荒れる強烈な力の余波が教会の壁を粉砕。外の景色が舞とアリアの視界に映る。空は分厚い黒雲に覆われ、光は未だに届かない。この黒雲を打ち払い、この地に光を呼び込む方法は唯一つ。女神喰い(ハード・イーター)に勝つことだ。

 

私は拳に銀色の炎を纏わせる。極限女神化状態の時は濁った銀色の炎。極限女神化は狂女神化の状態から二段階目の女神化を発動させた状態で、身体能力の極限強化に加えて痛覚の遮断・弱攻撃の無効化などの効果が付加されるが、一度発動すると自分の力を使い切るまで解除ができない。足に力を込めると一気に駆け出してファントムハートとの距離を詰め、プリズムハートの連撃をお見舞いする。

 

「シルヴァーテイル! ブレイクザッパー!」

 

手数重視の八連撃から繋げる防御破壊の五連撃。ファントムハートの邪気を帯びる黒剣に防がれ、直撃は取れなかったが私の攻撃はまだ終わらない。銀の炎を纏わせた拳の一撃、マイ・ナックルを叩き込む。ファントムハートは吹き飛ぶが、即座に体勢を立て直した。

 

「流石は極限に到達した女神の力だ…!」

 

ファントムハートの気配を背後に感じ取る。次の瞬間に繰り出されたのは神速の突き。プリズムハートを仕舞い、極限女神化で強化された感覚を最大限に使い回避に徹した。続けて濁った緋色の炎を纏わせた拳の一撃が襲い来る。それを濁った銀色の炎を纏わせた拳で受け止めると再び衝撃波が吹き荒れ、教会の壁が崩れた。

 

「私に勝つにはまだ足りないかな…」

 

「まだ余裕があると言うの…?」

 

未だに不敵な笑みを崩さない彼女に一抹の不安を感じる。本当に私の攻撃が効いているのか怪しい。銀の大剣と銃を召喚。右手に大剣。左手に銀の銃を持ち、再び駆け出した。

 

「ブレイズブレイク! ヴァリアブルショット!」

 

跳躍から銀の炎を纏わせた大剣の一撃を叩き込む。極限女神化状態の今ならシエルと同じように片手で持ち上げて振ることができる。これは回避されたが、追撃で銀の銃から特大のシェアの光弾を発射。ファントムハートは体から邪気を放出。それが強固な障壁となって私の攻撃を阻む。

 

「温いよ。私が本当の暴力と言う物を見せてあげる。体に刻み込むといい」

 

ファントムハートの姿が消失。気が付いた時には彼女は私の目の前にいた。彼女の両手から放たれた黒い波動が私の体を貫通。凄まじい衝撃が体を駆け巡ると私は一気に吹き飛ばされる。

 

「これは私が過去に受けた痛みの一部に過ぎない。世界に認められなかった女神候補生の心の痛み。彼女の存在を喰らった私はそれを実感した。君にわかるかい? 彼女の心の痛みが」

 

「なら、私は彼女の魂を救済してみせる…!」

 

私の言葉を聞いた瞬間、彼女の体から放たれる殺気と邪気がさらに強い物になった。

 

「緋色の刃よ。我が敵を断ち斬れ! 緋王烈刃!」

 

濁った緋色の光の刃が襲い来る。何とか回避に成功したが、体が重い。

 

「金の女神のことはあの時に救済した癖に、何故緋色の女神のことは救済しなかったのかな? 彼女の苦しみは世界に言わせればその程度の物だと言うのかい? 本当なら君達に救済者(メシア)を名乗る資格は無いよ」

 

(あなたは犯罪神の記憶から私の何を知ったの?)

 

「銀の女神は世界の救済者。世界が危機に陥った時に現れる最強の守護女神さ。世界の害悪となる私と犯罪神を始末したら君達は用済みの存在となり世界の狭間に強制送還される。次の害悪が現れる時まで人の身と戦い以外の記憶を失いゲイムギョウ界を守護する概念となる。君達は戦いの連鎖から逃げられないよ? 銀の女神となった君が元の世界に帰るのは無理な話さ。世界の意志に抗うと言うなら話は別だけど」

 

(お前の話が真実だとしても、私は絶対に諦めない。私は舞を元の世界に帰してあげたい。このまま元の世界と別れさせるわけには行かないの!)

 

「罪の無い一人の少女を巻き込んだ愚かな女神の綺麗事に過ぎないね。君達の綺麗事は聞き飽きた。君を世界ごと喰らってあげるよ。冥土の土産に受けるといい。彼女の痛みを。世界に認められなかった者の苦しみを!」

 

ファントムハートは私との距離を詰めると両手を突き出した。彼女の両手から黒い波動が放たれ、再び私の体を貫通。先程の物を上回る強烈な一撃だ。

 

「まだ、立つのかい?」

 

ファントムハートの問いに答える前に私は地面に倒れる。

 

「ま…だ…だよ!」

 

「きゃはははっ! 君にはどうやら無理だったようだね? 彼女の魂を救済するにはこの痛みを受け入れなければならないよ。世界に愛され、本当の痛みを知らない君達がこれを受け入れることができるわけがない! さあ、君を喰らう時だ。世界はこの日を持って私の物になる!」

 

ファントムハートの左手に黒い顎が現れる。女神喰い(ハード・イーター)の力の具現。彼女は私の元に歩み寄る。あれを受ければ終わりだ。

 

「動け…っ! お願い…動いて…! 私の体…!」

 

力を入れるが私の体は動かない。痛みは感じないけど、私の体が限界を迎えたみたいだ。

 

「さよならだ…! 銀の女神(シルバーハート)!」

 

女神喰い(ハード・イーター)の力が私に牙を剥いた。喰われると思った時に彼女の体に何者かの一撃が直撃。薄紫色の輝き。私はこの輝きを知っている。

 

『この勝負、まだ終わらせるわけには行きません!』

 

「誰かな…? この舞踏会の邪魔をするのは…」

 

私の視界に映ったのはモノクロ色のセーラーワンピを纏ったパープルシスターだった。右手にはマルチプルビームランチャーが握られている。

 

「ネプ…ギア…?」

 

「紫の女神候補生…! まさか君が来るとはね…。なら、メインディッシュの前に君を喰らうとしよう。どの道、全員喰らうことに変わりはない。早いか遅いかの違いだからね」

 

ファントムハートは矛先をネプギアに向け、一気に詰め寄るが、今度は間に紫の閃光が割り込む。

 

『わたしの妹と親友に手は出させない!』

 

続けて現れたのはモノクロパーカーワンピを纏ったパープルハート。紫電を帯びた太刀でファントムハートの左手の黒い顎を止めていた。

 

「紫の女神候補生に続いて紫の女神と来たか…。何が起きているのかな…? 君達は既に奴らとの戦いで消耗し切っていると思ったけど…。だが、君達が来たからと言って戦況が変わるとは考えられないね。既に勝敗は決しているような物だよ」

 

『それはどうかしら? わたしは知っているわ。親友(マイ)の心の強さを…!』

 

『わたし達のお姉ちゃんの心は簡単には折れません!』

 

紫の女神姉妹の言葉を聞いた瞬間。ファントムハートは背後から気配を感じ取る。

 

「まだ、立ち上がるかい?」

 

「私は…まだ参ったとは…言ってないよっ…!」

 

(お前に負けて終わるのは嫌だからね…!)

 

「ふふっ…。君達の絆の力とやらには驚かされるばかりだね。その快進撃はここまでにしてもらおうか。君達の仲良しごっこは見飽きた。三人纏めて喰らってあげるよ!」

 

ファントムハートの左手に顕現する黒い怪物の顎は最高の獲物を見つけた喜びを象徴するかのように激しい咆哮をあげる。先に動いたのはファントムハート。黒い顎とプリズムハートが激突。凄まじい力がかかる。

 

「っ…!」

 

「諦めるといい。君達に今の私を越えることはできないのさ」

 

プリズムハートを押し切ったファントムハートの黒い顎が私の胸を貫いた。

 

「あああああっ!」

 

『舞…!』

 

『舞さんっ…!』

 

体内のシェアの力が一気に損失。私の体が銀色の光の粒子に変わると、黒い顎に捕食される。プリズムハートは地面に落ちた。

 

「素晴らしいよ。これが世界に愛された者を喰らった感覚か…。さあ、次は君達の番だよ…」

 

ファントムハートは紫の女神姉妹に矛先を向けたが、彼女の左手の黒い顎に異変が起き始めた。

 

「な…! 馬鹿な…! 全部喰らいきれなかったというのか…?」

 

突然ファントムハートの左手の黒い顎が銀色の光を放ち、輝き始めた。溢れだした銀色の光の粒子は再度集結。神奈 舞の姿となるが、彼女の体は半透明になっていた。

 

「はあ…! はあ…!」

 

「神奈 舞という存在の搾りかすに過ぎない君に何ができる?」

 

「これが私の最後の抵抗だよ…! 決めてあげる…!」

 

私はプリズムハートを上に掲げると不安定な存在の維持に使っている残されたシェアの力を全て放出。銀色のシェアの光が彼女の邪悪な力を完全に打ち払った。その流れに乗せて最後の抵抗の秘奥義に繋げる。

 

「響け! 集え! 全てを滅する刃の糧!」

 

プリズムハートで彼女の体を連続で斬り裂き、最後にプリズムハートに込められた世界中のシェアエナジーを解き放つ。シェアエナジーの奔流は邪悪な女神の亡霊の体を飲み込む。

 

「ロスト・フォン・ドライブ…!」

 

「馬鹿…な! この私が搾りかす如きに負けるなんて…! うああああっ!」

 

ファントムハートを飲み込んだシェアエナジーの奔流は緋色の大地の空の黒雲を打ち払い、光を呼び寄せた。教会の割れたステンドグラスから差し込む光に照らされながら、私は意識を手放した。最後に聞いたのはパープルハートとパープルシスターの私を呼ぶ声。私はこれで消えたのかな。もう少しこの世界の日常を謳歌したかったけど、残念ながらここまでみたい。

 

『目覚めなさい。神奈 舞。アリア…』

 

私達を呼ぶ声に目を開ける。私達の視界に映るのは真っ白な空間。

 

「誰…?」

 

「この場所は…」

 

『あなたの大切な人達が目覚めの時を待っています…』

 

「私達はあれからどうなったの…?」

 

『あなた達の体は無事ですよ』

 

「それは私と舞はまだ生きることができるということ?」

 

『はい。あなた達に死なれては困るので少々強引な手段を取らせていただきました…。ですが、この次は無い。今のあなた達の死は超次元ゲイムギョウ界の消滅と同義となりました。あなた達に死ぬことは許されません。これから先の未来、犯罪神という脅威を乗り越えた先にはさらなる脅威が超次元ゲイムギョウ界を襲うことでしょう。それらはこの次元だけに留まる物では無い。それらの脅威から世界を守るためには更なる力を得る必要があります』

 

「これは大変な役割を背負ってしまったみたいだね…。元の世界にお別れを言いたかったけど、難しいかな…? それと私達は今の脅威の犯罪神を越えたら強制的に世界の狭間に送還されると聞いたけど、これはどうなの?」

 

『元の世界に帰るのはあなた達が更なる力を得れば可能でしょう。それがいつになるのかはあなた達次第…。あなた達が紡いだ守護女神達との絆の力があれば実現は可能かと。強制送還については、確かに今までは女神喰いの言う通りでしたが、金の女神を筆頭とする者達の強い思いがあなた達を世界に繋ぎ止めているようなので、当面の間は無いかと思います。強き思いは今代の女神達にも受け継がれていると見受けました。彼女達があなた達の存在を望む限り、あなた達は現実の世界に顕現し続けることができる。どうやら、目覚めの時のようですね。あなた達の進む未来に希望があることを祈っています』

 

「本当にありがとう…! 途方の無い道だけど、みんなと一緒に頑張るから…!」

 

私達の視界が光に包まれる。次に視界に映ったのは知らない天井では無い、知っている天井だった。私が身に纏っているのはモノクロパーカーワンピでは無い、病衣だった。二度目の入院という現実を受け入れたところで自分の状態を再確認する。

 

「アリア、いる?」

 

私が呼びかけると私の体の中から銀色の光の玉が現れ、アリアの姿になる。姿は今までと変わらない小さい状態。さらに胸に奇妙な違和感を感じたので病衣を捲ると心臓に当たる部分に銀色の結晶が埋め込まれていた。手を触れると暖かさと鼓動を感じると共にあらゆる知識が頭の中に書き込まれる。どうやらこの銀色の結晶は私の心臓みたいだ。他の書き込まれた知識については後で整理したいところかな。

 

「遂に人間卒業か…。これからは強い気持ちを持って生きないといけないよね」

 

「永遠と言うのは苦痛の牢獄と言うからね…。私は最後の時まで舞の傍にいるよ。それが私にできる償いだからね。元の世界に帰ることのできる方法が残ったから本当によかったよ…」

 

厳密に言うと元の世界に帰ることができるのは最初で最後の一度のみだ。それは共に絆を紡いだ守護女神の力が合わさることで初めて実現できるようになる。どの道、私自身の力を上げないと術式の構築自体ができないので実現は当分先になると思う。

 

「さて、胸の結晶を除いたら体に異変は無いから、教会に帰りたいところだけど…」

 

「流石に勝手に出ると騒ぎになると思うから、誰か呼ぼうか」

 

アリアがナースコールのボタンを押したら、驚きの速さで看護師の人が来た。そのまま再検査に連行される。検査の結果は胸の結晶部分を除いて異常無しの健康体だったので退院させて貰えることになった。先生がイストワールに連絡を入れていたので、近い内にネプギア辺りがお迎えに来ると思う。今回の戦いの果てに大きな宿命を背負う形にはなったけど、私はこの世界を生き抜いてみせる。それは私とアリア(シルバーハート)の新たなる誓いとなった。

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