ラステイションの街中で出会った冒険者のファルコムから宝玉を落とすという
エンシェントドラゴンの情報を入手した私達は再びプラネテューヌへと戻ってきた。
バーチャフォレストの最奥部の探索を進めるがエンシェントドラゴンはまだ見つからない。
「見つからないわね…」
「そうですね」
「ファルコムさんもあまりお目にかかれないって言ってましたからそう簡単には見つからないんじゃないでしょうか?」
「探せば見つかることもあるだろうけど、もしかしたら何か特殊なアイテムが必要なのかも…」
私は1つの仮説を立てる。戦うために特殊なアイテムが必要な場合がある。
代表的な例としてそのモンスターの好物を用意しておびき寄せるといった物があるが
ゲイムギョウ界のモンスターには好物などあるのだろうか。モンスターが植物や他の動物を
捕食しているところを見たことが無い。好きな物で釣るのでは無く特定のモンスターを
呼び寄せる効果を持つアイテムが必要になるパターンではないかと私は推測する。
「いーすんさんにでも聞いてみますか?」
確かにイストワールなら何か知ってるかもしれない。
「私が聞いてみるよ」
Nギアを取り出してイストワールに連絡を取る。
『はい』
「いきなりごめん。イストワールに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
『なんでしょうか?』
「特定のモンスターを呼び出すアイテムってあるの? 例えばドラゴンを呼び出すアイテムとか。」
『ドラゴンを呼び出すアイテム…。竜笛の事でしょうか? 確かにあれはドラゴンを呼び出す効果がありますが、呼び出せるドラゴン族のモンスター自体が危険種に分類されるので今は教会で保管されています。無闇に使っていい物ではありませんからね。竜笛が必要なのですか?』
「うん。私達、エンシェントドラゴンってモンスターを探してるんだけど中々見つからなくて。ドラゴンを呼び寄せるアイテムとかあるのかなって思ってイストワールに聞いてみたんだけど、あるんだね。それは貸してもらえるの?」
『特別な事情があるのでしたら貸し出すことはできますが…。舞さん達はどうしてエンシェントドラゴンを探しているのか聞かせてもらえますか?』
私はイストワールにこれまでの事を説明する。
『わかりました。貸し出す準備をしておきますので一度プラネテューヌの教会まで戻ってきてもらえますか?』
「わかった。すぐに戻るよ」
私達はバーチャフォレストの最奥部を後にしてプラネテューヌの教会まで戻る。
「お待ちしていました。舞さん、これを受け取ってください。」
私はイストワールから箱を受け取る。
「この中に竜笛が入っています。呼び出す場所まで行ってから箱を開いて竜笛を吹いてください。その場所に生息しているドラゴンを呼び寄せることができます。舞さんなら間違いを起こすことはないと信じていますが、扱いには注意してください」
「ありがとう。終わったらすぐに返しに来るから」
イストワールから竜笛の入った箱を受け取った私達は
再びバーチャフォレストの最奥部に向かおうとする。
『ちょっといいかな?』
「またいきなり出てきたね。今度はどうしたの?」
突然語りかけては風のように去る銀の女神。
彼女が語りかけてくるということは何か伝えたいことがあるのだろう。
『うん。実はついさっき気になる情報をもらったんだ。その関係であなたとネプギアちゃんに今すぐに覚えて欲しい技があるんだよね。急いでるのはわかってるんだけど少し時間をもらってもいいかな?』
私とネプギアに覚えて欲しい技…?何だろう。
銀の女神がわざわざそれを伝えるために私に語りかけてきたということは
これから先に進むにおいて重要な技であると予想するが…。
「ネプギア、ちょっといいかな?」
「はい」
「今、銀の女神と話をしてるんだけど、私とネプギアに教えたい技があるって…。時間を少しもらいたいというお願いを受けたんだけどいいかな?」
「銀の女神様が…? 私はいいですけど、何でしょうか? 銀の女神様が舞さんと私に教えたい技って。」
「それは私も気になるわね。これから先の役に立つ物なんじゃないの?」
「きっとそうですよ。舞さんとギアちゃんにそれを覚えてもらってから行くとより安心できるです」
「ということで時間は取れそうだけど、何をすればいいの?」
『まずはバーチャフォレストまで行ってくれるかな? 詳しいことはそこで説明するよ。』
私達はバーチャフォレストに再び向かう。ネプギアの案内でモンスターがいない
広めの場所に着いた。秘密の場所のようで技の練習にはもってこいの場所ではないだろうか。
ネプギアが言うにはお姉さんが教会を抜け出して隠れる場所は必ずここだそうだ。
「言われた通りに来たけど、あなたの声って私にしか聞こえないんだよね? どうやってネプギアにその技を教えるつもり?」
『私の言葉を代わりにネプギアちゃんに伝えてもらう形になるかな。なんかパシリみたいで申し訳ないところはあるんだけど…』
「それは構わないよ。どういう理由があるのか知らないけど、あなたは私にしか語りかけることができない状態にある。なら私はその橋渡しをするよ。そういうのは別に嫌じゃないから、遠慮なく頼ってよ。困った時はお互い様でしょ?」
『ありがとう。やっぱりあなたは優しいね。それじゃあここはお言葉に甘えて頼らせてもらうよ。少し説明が長くなるけど、伝えてあげてほしい。それじゃあ、説明を始めるね?』
銀の女神が説明することを上手くネプギアに伝えなくてはならない。
彼女の声は私にしか届かないのだから私はその役目を果たすだけだ。
『まずはネプギアちゃんに質問するね。ネプギアちゃんは女神化が使えるようになって強くなったとは思うけどそれを封じる相手が出てきたらどうする?』
銀の女神の言葉を間違えないようにネプギアに伝える。今の彼女の言葉は私の言葉でもある。
さらに彼女は私に語りかけている時は私を通して他人の声を聞くことができるらしい。
「えっ…? そんな相手がいるんですか?」
『例えばの話だよ。そう言う相手が現れてもおかしくはないよね? 女神化の力は確かに強力だよ。私だって昔はガンガン使ってたから。でもね? 私が今のネプギアちゃんの敵だったらこうするよ。相手のそう言った特殊な能力を無効にする手段、または物を作り出す。つまり女神化を封じる方法を生み出すってこと。そこでネプギアちゃんには今からある技を覚えて欲しい』
女神化を封じる…。女神は通常の状態でもそれなりの強さを発揮できるとは思うが
やはりその真価は女神化という力の行使にあるとは思う。
莫大なシェアの力を解き放ち自らの能力を一気に高める女神化。
私のは借り物で不完全だからそれほど強い効果ではないけど…。
「何をすればいいんですか?」
『女神化ではあるんだけど、ネプギアちゃん達が普段使っている女神化とは少し違うかな。何が違うのかと言うと力の使い方だよ。私達女神はその身に秘められたシェアの力を外に放出してそれを身に纏うことで体が大きくなったり、武器をより強力な物に変化させたり、プロセッサユニットと呼ばれる物を装備する。女神化を封じる敵はシェアの力を放出して変化を生み出すまでの過程の妨害をするの。私も過去に何度か出会ったことがあるんだけどね。それを回避するための女神化の方法を今からネプギアちゃんに教えるからそれを実践して自分の物にして』
ネプギアやユニが使う女神化と少し違う女神化とはどういう物なのだろうか?
『それじゃあやり方を教えるよ。まずは普通に女神化をしてくれる?』
「わかりました」
ネプギアは女神化する。これはリンダとの戦いで見せたパープルシスターの姿。
『それは普通の女神化だよね? ここから実践開始だよ。今度は元の姿に戻って、もう一度女神化をしてもらうんだけど、その時に意識してほしい点があるの。それが力の使い方だよ。女神化をする時は一気にシェアの力を放出するけど、それはダメ。体の外に放出される一歩手前で保留し続けてほしい。例えるならコップに水を限界まで注いで、その水を一滴たりとも零さないように保ち続けるといった感じかな。難しいとは思うけどやってみて』
ネプギアは女神化を解除すると目を閉じて集中する。
「…」
私達は黙ってネプギアを見守る。
「…っ!」
ネプギアが苦しそうな表情を浮かべる。シェアの力が体から漏れ出さないように
必死に止めているのだ。かなりの集中力が求められるだろう。
それから少し経つと何かが弾け飛ぶような音が響く。
『ネプギアちゃん、目を開けてみて』
「はい…」
私が伝える銀の女神の言葉にネプギアは閉じていた目を開ける。
「ネプギア、あんたその瞳…」
「女神化した時の瞳になってるですよ。でもギアちゃんは元の姿のままです。どういうことですか?」
アイエフとコンパが言う。二人が言った通り
ネプギアの瞳は女神化した時の物に変化していたが
服装はセーラーワンピのままで武器もビームソードのままである。
だが、今のネプギアから感じ取れる力は女神化した時に匹敵するくらいだ。
『こんなに覚えが早いなんて、教える側も嬉しい限りだよ。それじゃあ説明をさせてもらうね。私がネプギアちゃんに教えたのはシェアの力を放出する一歩手前で保留をし続けることで体内でその力を爆発させる特殊な女神化だよ。通常の女神化と違って変化するのは瞳だけ。武器は変化しないし、プロセッサユニットも展開されないけど、身体能力は通常の女神化と同じくらいに跳ね上がるよ』
「ネプギア、どんな感じなの?」
「不思議な気分です。体が軽くて体の底から力が漲ってきます。女神化した時と似たような気分なんですけど、いつもと少し違う感じですかね?この状態まで持ってくるのに時間もかかりましたけど、上手くできてよかったです」
『その状態に移行するまでの時間は練習を重ねれば短くすることもできるから頑張ってね』
次は私の番か…。ネプギアは頑張って成功させたのだから私も頑張らないと…。
早速私もそれに挑戦する。結果としては成功したのだがそれに至るまでに何度か失敗した。
銀の脚甲とグローブは銀の女神が女神化した時に発現するプロセッサユニットの一部だそうだ。
グローブや脚甲のどちらかだけが発現したりと不安定な状態だったが練習を重ねるうちに
ネプギアと同じように1回で成功するところまで持っていくことができた。
ゲームをする時とはまた違ったベクトルの集中力がいる。まだまだ不安定な状態の力だ。
使いこなすには練習あるのみ。と言ったところだろう。私も頑張らなければ。
『それじゃあ、私はこれで。喋り過ぎた気もするけどいいか…。それじゃあ、また会おうね』
銀の女神の声が聞こえなくなった。どうやら繋がりが切れてしまったようだ。
「これは大きな力を得たわね。さぁ、もう一度バーチャフォレストの最奥部に向かうわよ」
「うん。今度は宝玉を持って帰らないといけないね」
私達はそのままバーチャフォレストの最奥部に進む。
周囲のモンスターを蹴散らして広い場所を確保する。
「それじゃ、開けるよ」
私はイストワールからもらった箱を開ける。
中にはドラゴンの顔を模した笛が入っていた。
「準備はいいかな?」
アイエフ、コンパ、ネプギアは無言で頷く。それを確認した私は竜笛を吹く。
竜の咆哮を彷彿とさせる迫力のある音色が辺りに響き渡る。
すると何かが羽ばたく音が聞こえた。その音は徐々にこちらに近づいてくる。
そして1体のドラゴンが大地に降り立つ。巨大な翼を持ち、逞しく発達した腕と脚。
危険種エンシェントドラゴンの登場だ。ドラゴンを初めて実際に見た私は気持ちが昂る。
「やっとお出ましね。絶対に逃がすんじゃないわよ」
「はいです!」
「はいっ!」
「わかってる。宝玉はいただくよ。覚悟してね」
私達は姿を現したエンシェントドラゴンに立ち向かう。
これを打倒して宝玉を無事に手に入れることはできるのだろうか…。