魔法の練習を終えた私とアイエフはプラネテューヌを出て
ラステイションに戻ってきた。その足でそのままリビートリゾートに向かう。
入口でネプギア達と合流を果たしたのでリビートリゾートの探索を開始する。
余談ではあるがこの場所も日によってモンスターが変化する区域の1つとのこと。
最近観測され始めたようで変化後のモンスターが他とは段違いの強さを誇るらしい。
モンスターが変化している日はギルドによって1日中立ち入りが禁止されている。
禁止されていなければ通常通りなので探索は自由に行うことができる。
「それで、ターゲットのシーハンターの特徴って聞いてるのかな?」
「羽を持ったイルカみたいなモンスターって言っていましたよ」
羽を持ったイルカ…。そんな生物までいるのか。
前回来た時はそういう生物は見なかった。ということは奥の方に潜んでいるのだろう。
私達はモンスターを蹴散らしつつリビートリゾートの奥に進んで行く。
「あれか…」
「本当に羽があるね?おじさんが言ってたモンスターはきっとあれだよ!」
「早く倒して血晶の情報をもらいに行きましょう。」
羽を持ち、赤黒い色をしたイルカが空中を浮遊している。
あれがシーハンターだろう。ターゲットを確認した私とネプギアは女神の力を使う。
今回使うのは通常の女神化ではなく特殊な方の女神化だ。
まだシーハンターはこちらを補足していないので見つかる前に使う。
ネプギアの瞳が女神化した時の瞳に私は元から銀の女神の瞳なので目立った変化は無い。
単純に能力が上昇するだけだ。今回は移行時間を短縮する目的のため使っている。
「よし…。それじゃあ倒しに行こうか」
準備が整ったので私達は武器を構えシーハンターに接近する。
今回前衛に出るのは私とネプギアとREDの3人。散開して隙を窺う。
シーハンターの主な攻撃は尻尾で叩いてくる攻撃と小さい氷の竜巻を飛ばす攻撃だ。
魔法の練習で学んだ知識を当てはめると恐らく雷属性が弱点だろう。
「ネプギア、RED。雷属性の技は使える?」
「武器に纏わせることはできますよ。使いましょうか?」
「アタシもできるよ! 嫁の提案ならやるしかないよね!」
「なら、使ってみてくれる? きっとあいつは雷に弱いはずだから。」
「わかりました。サンダーエッジ!」
ネプギアは剣を上げる。ビームソードの刀身に紫色の電撃が走り出す。
そのままシーハンターに斬撃を叩きこむ。電撃を帯びた斬撃はシーハンターの体を切り裂く。
「アタシも行くよ! ビリビリヨーヨー!」
REDが取り出したのは大きめのヨーヨー。それをシーハンターにぶつける。
直撃と同時に紫の電撃が発生してシーハンターの体内を駆け巡る。
私の予想通り雷属性が弱点のようだ。かなり効いているように見える。
「練習で覚えた魔法を早速使わせてもらうよ。クイック! シャープネス!」
緑の光がネプギアに、赤の光がREDに飛んでいく。
「なんだか体が軽くなったような…?」
「すごい! 力が湧いてくるよ! これが嫁が覚えた新しい力なんだね?」
ネプギアに使った魔法には素早さを上昇させる効果が
REDに使った魔法には攻撃力を上昇させる効果がある。
両方ともゲームに出てくる初級補助魔法である。
「回数制限があるからもう使えないけどね。このままとどめをお願いしてもいいかな」
「任せてください!」
「嫁の頼みなら喜んでやるよ!」
最初に駆けだしたのはRED。フリスビーを取り出してシーハンターに投げつける。
投げつけると同時に凄まじい速度で駆け抜けて跳躍すると
シーハンターの後ろを回って戻ってきたフリスビーをキャッチする。
そのまますれ違いざまに一閃。数秒置いて桃色の斬撃がシーハンターに直撃する。
「次は私です!」
REDに続く形でネプギアが駆け出す。シーハンターは氷の竜巻を飛ばす動作を取ろうとするが
私は銀色の銃を取り出してシーハンターに銃弾を撃ちこむ。大きなダメージにはならないが
攻撃を一時的に中断させるには十分だ。ネプギアはその隙にシーハンターに接近する。
「フォーミュラーエッジ!」
雷を纏わせたビームソードで素早く5回連続で斬りつける。
「続けていきます。雷神剣!」
それに続ける形で突きを繰り出す。シーハンターの胴体に深く突き刺さると同時に
小さな雷がシーハンターの体に直撃する。その体が地面に落ちると光となって消滅した。
シーハンターと遭遇する前の雑魚敵との戦いでも気になっていたのだが
ネプギアは時折私がプレイしたゲームの技を使うようになっていた。
ネプギアの剣技はそれによって幅が広がり強化されている。
「これで討伐完了だね。ネプギア、また新しい技を使うようになったの?」
「初めてハード・リンクをした時からですけど、知らない剣の技の名前と動作が戦っている時に頭の中に流れてくるようになったんです。再現できると思ったら使うようにはしていますね。動きすら再現できそうにない剣の技も中にはあったりしますけど…。そう言う舞さんも魔法を使えるようになったんですか?」
「回数制限つきだけどね。さっきみたいな補助魔法なら2回まで。攻撃魔法はアイエフと一緒に使えば1回だけ使えるよ。この制限をいつか完全に無くすことが目標かな。ネプギアにも驚いたよ。使えそうな剣技があったらどんどん使ってみるといいよ。それもネプギアの力になると思うから」
「わかりました。舞さんに負けないように頑張ります!」
「ありがとう。戦闘力なら既に負けてる気はするけどね。と言うことで私はネプギアに引き離されないように頑張るよ」
お互いに認め合って高みを目指すのはなんだかいい気分である。
私がしていたゲームにもそんな人達がいた。いつかネプギアと本気で戦ってみたい。
ネプギアは相手をしてくれるかわからないけど、お互いの強さを知るという意味でも
一度くらいは本気でぶつかり合う機会があってもいい気がする。
「とりあえずこれでお仕事しゅーりょーだね! マイの新技も見せてもらったし、REDちゃんはもう大満足だよ!」
「期待に応えられたようでよかったよ。報告に行く?」
「そうですね。思ったよりも早く済みましたから時間的にもまだ余裕がありますよ」
シーハンターを討伐した私達は街に戻って報告に行こうとするが…。
「ちょっと待ってください! あそこに誰か倒れてるです!」
コンパが向かった先にいたのは…。
「ちゅ~…。もう動けないっちゅ…」
何と大きな灰色のネズミだった。ここまで大きなネズミを目にするのは初めてだ。
その体には傷が多数残っている。モンスターに襲われたのだろうか。
「ネズミ…? 怪我してるみたいだね」
「うわ。でっかいネズミ。そんなのほっといて先に行ったほうがいいんじゃないの?」
「ダメです。怪我しているのに見過ごすことはできないです。今治してあげますからね」
コンパは応急処置の道具を取り出す。さしずめコンパの医療キットと言ったところか。
「私も手伝うよ」
私とコンパはネズミの手当てをする。私はネズミに包帯を巻いてあげた。
医療キットの中にある薬の種類や効果がわからないので
私に手伝えることはこれくらいしかなかった。
「ちゅ…。ここはどこっちゅ…?」
「あ、目が覚めたみたいだね。怪我してたけど大丈夫?」
「無事に目が覚めてよかったです」
目を覚ましたネズミにとりあえず言葉をかける。語尾にちゅがつくようだが
普通に会話は成立しそうだ。この世界は人以外の生き物でも人の言葉を話すみたい。
「…!?」
目が覚めたネズミと目があった瞬間、銃を発砲したかのような音が響いた気がした。
その目にハートの模様が浮かんでいるように見えるが私は幻覚を見ているのだろうか…。
「どうしたの? なんかぼーっとしてるけど大丈夫?」
「どうしたですか? ネズミさん。まだ傷が痛むですか?」
ネズミは私達の声に反応して気を取り戻す。
「ちゅ…。あ、あの…。お名前はなんというでちゅか?」
「私はコンパっていうです。よろしくお願いしますね」
「私は神奈 舞だよ。よろしくね」
このネズミの名前は何と言うのだろうか。
「コンパちゃん…。マイちゃん…。ちゅー!」
私達の名前を復唱すると大声を上げて凄まじい速度で走っていく。
その姿はあっという間に見えなくなった。一体何だったのだろうか…。
「行っちゃったね。まぁ、元気になったみたいでよかったよ」
「元気になってくれれば何も言うことはないです。また会えるといいですね」
「普通に人の言葉を喋ってましたね…。あのネズミ…。何だったんでしょう」
「モンスターか何かだったのかしら。まぁ、あまり深く気にしても意味はないわね。コンパ、舞。街に戻って報告に行くわよ」
「あっ、ごめん。すぐに行くよ。コンパ、行こう」
「はいです」
コンパはネズミが去って行った方角を時折見ていた。
あのネズミが気になるのだろう。確かに手当てをした直後に凄まじい速さで
去っていったネズミを見ると本当に大丈夫なのか気になるところではある。
私達は街に戻って報告をするため、リビートリゾートを後にした。
「か、可愛い…。天使っちゅ! コンパちゃんとマイちゃんマジ天使!」
舞達が去った後、灰色のネズミは頬を赤く染めて叫んでいた。
リビートリゾートから帰還した私達は防衛隊の人にシーハンターを討伐したことを報告する。
「おっじさーん! 言われた通りシーハンターを倒してきたよ! 早く血晶の情報を教えて!」
「お、おじさん? 私はまだ二十代なんだよ? おじさんはやめてほしいかな…」
「どう呼んだって別にいーじゃん! 早く教えてよ!」
REDにおじさん呼ばわりされた防衛隊の人は嫌そうな顔をする。
私の友人のお兄さんが男は二十歳を超えるともうおじさんなんだよと言っていた。
「わかったよ…。私が血晶を見たのはセプテントリゾートと言う場所だ。そこに生息しているテコンキャットというモンスターが落とした物だと思われる」
「テコンキャットってどんなモンスターなの?」
「ネコ型の小型モンスターさ。だがその力は周りのモンスターより上だから気を付けたほうがいい。それともう1つ。セプテントリゾートには危険種のドルフィンというモンスターが生息しているから見つけても手は出さないことだ。君達は腕に自信があるようだけど、ドルフィンは強さのレベルが違う。見た目はシーハンターの色違いだ」
「わかった。気を付けるよ。教えてくれてありがとう」
「ありがとうございます! 早速向かいましょう!」
ネプギア達は走り出すが、私はその場に留まる。
「行かないのかい?」
「ケイ。あなたが防衛隊に情報を教えるように指示を出してたんだね。」
「どうしてわかったんだい?」
「ただの勘だよ。なんかそんな気がしたから少しこの場に留まってみただけ」
「なるほど。君は本当に面白い。そんな君に先に教えておくよ。彼が君達に教えた情報は既にある人物の耳にも入れてある。あの子もセプテントリゾートに向かっているところだろう。」
「ユニだね…。あれから調子はどう?」
「いつも通りにクエストをこなしてシェアの回復をしてくれているよ。ただ、君達に示す答えはまだ準備ができていないようだけどね。そしてあの子はある時こう言っていたよ。ネプギアさんと本気で戦いたいとね…。ネプギアさんと自分は一体何が違っているのか。その答えが知りたいそうだ」
「なるほどね。これはまた一波乱起きそうな気がしてきたよ。この状況を作り出したのも計算の内ということかな?」
「確かにここまでは僕の計算の範疇だ。だが本当にわからないのはこの先だよ。ユニが最後にどういう答えを出すのか。君はどう行動するのか。予想できないことばかりさ。そして僕はこう思っている。君とネプギアさんとユニが手を取り合い共に戦えばノワール達を助け出すのも夢じゃないとね」
「…」
ユニの協力は女神救出には必要不可欠だ。ここで協力が得られなくても
まだチャンスはあるのだろうが、できれば一緒に来てほしい。私はそう願っていた。
「さて、長話もここまでにしておこう。君も早く向かうといい。仲間を待たせるのは感心できないね」
「そうだね。必ず血晶を持って帰ってくるから情報の用意はしっかりしておいてね。私の情報もその時に提供するから」
「楽しみにしているよ」
私はケイと別れて走り出す。ケイが作り出したこの状況。
波乱の予感がするが何が起きたとしても私は私自身にできることをするだけだ。