防衛隊の人から血晶の情報を入手した私達はセプテントリゾートに到着した。
リビートリゾートと似たような構造をした場所だ。辺りに巻貝状の建物がある点も同じ。
生息しているモンスターには当然違いがある。チューリップの色違いで
青い花を持ったモンスターに青い幽霊のようなモンスターがいる。
青い幽霊のようなモンスターにはリボンがついているタイプと
ついていないタイプがいる。これは性別の違いを表しているのだろうか。
そして入口からそう離れていない広い場所には羽を持ち、明るめの緑色の体を持つ
イルカが浮遊していた。防衛隊の人が言っていた危険種ドルフィンだろう。
「ここは迂回したほうがいいよね」
私達はドルフィンとの接触を避けるために迂回する道を選択する。
ドルフィンのいる場所を通り抜ければすぐに奥に行けるようだが
危険を冒してまで無理に突破する必要もないというのが理由である。
モンスターを倒しながら奥に進んで行くと小さいネコ型のモンスターを発見した。
その数は3体。これがターゲットのテコンキャットで間違いないだろう。
今回も敵に補足される前に特殊な女神化を行う。ネプギアと話し合った結果
急な不意打ちなどが発生しない限りはなるべくこの女神化を行うことで
移行時間の短縮を目指そうと言う結論にたどり着いた。
「よし、準備完了」
「私も大丈夫です。早く倒してゲイムキャラの情報をもらいに行きましょう!」
「二人の準備も終わったことだし、一気に畳み掛けるわよ」
私達は武器を構えてテコンキャットに攻撃を加えようとする。
「ケイが言ってたモンスターってあれね。さあ、覚悟しなさい!」
私達が来た方向とは逆の方向から別の人物が現れる。
「ユニ、久しぶりだね」
「ユニちゃん? どうしてここにいるの?」
「ネプギアに舞!? アンタ達もここに来てたのね…」
ラステイションの女神候補生であるユニが現れたのだ。
「ユニちゃんも血晶を探しに来たの?」
「そうよ。ケイに頼まれてね。どうやらアタシたちはここで出会うように仕組まれたようね。あいつがいきなり頼みごとをアタシにしてきた時点で何かあるとは思ってたけど。舞、アンタは気付いていたの?」
「まあね。ここに来る前にケイに教えてもらったからユニが来ることは知ってたよ。このタイミングで出会うとは思わなかったけどね」
「はぁ…。アンタ達に示す答えもまだ用意できてないのに余計なことをしてくれたわね。ねぇ、急な提案で悪いけど、血晶をかけて勝負をしてみない?」
「勝負?」
「ケイから話を聞いているなら次にアタシが何をしようとしているのかわかるでしょ? だから、今のアタシはアンタ達の敵よ。血晶がアンタ達の手に渡るのを黙って見ているわけにはいかないの。血晶が欲しければアタシより先にあいつを倒して手に入れることね」
「そういうことか…。その勝負受けるよ。血晶は私達がもらうけどね。」
「させると思ってるの? アタシの実力をもう一度その目に焼き付けてあげるわ」
「ユニちゃんも舞さんも何を言っているんですか? 3人で協力すれば…」
ネプギアの言う通り3人で協力するのが一番いい方法ではあるが
ここは勝負を受ける必要がある。ユニが次に起こす行動のためにも
勝負を通してお互いに気を高めておいたほうがいいと思ったからだ。
「この勝負を受ける理由は後になればわかるよ。だからネプギア、今はユニより先に血晶を手に入れよう。私に力を貸してほしい」
「わかりました。血晶をユニちゃんより先に手に入れてみせます! ゲイムキャラの情報が後少しでもらえそうなんだから、ユニちゃんには渡さないよ!」
ネプギアも火がついてきたようだ。私も気合いを入れ直す。
「ふん。威勢の良さだけは褒めてあげるわ。それじゃあ行くわよ!」
私達は武器を構え直してテコンキャットに攻撃を加えていく。
その様子を離れた場所から見ていた人影があった。
「へへっ。面白そうなことしてんじゃねぇか。あの暴力女神」
犯罪組織マジェコンヌが誇るマジパネェ構成員のリンダがいた。
「あの時の礼も兼ねてもっと面白い状況にしてやるよ。思う存分暴れやがれ! 暴力女神をぶっ潰せ!」
リンダはディスクを私達が戦っている場所に投げる。
ディスクから漆黒の光が飛び出しテコンキャットの体を包み込む。
漆黒の光に包まれたテコンキャットは目が血のような赤に染まり狂暴化する。
「パワーとスピードが増してる…? さっきの黒い光の仕業みたいだね」
「離れたところに下っ端がいたわ。きっとあいつの仕業よ」
アイエフが言う方角を見ると、確かにその場所にリンダの姿が確認できた。
「大切な勝負に水を差すなんて、本当にやってくれるね」
私は狂暴化したテコンキャットの攻撃を回避しながら呟く。
「少し怒った。新技いくよ」
武器をしまって両手に力を込める。銀色のシェアの光が集まり大きくなる。
さらに溜めることもできるがテコンキャットが突撃してきたので最大までは溜めない。
「パワーショット!」
両手に溜めたシェアの力を放出する。銀色のシェアの気弾がテコンキャットを貫く。
敵を吸い込みその能力を自身の物にして戦う、ピンクで丸いヒーローの技のほんの一部。
体を貫かれたテコンキャットは光となって消滅したがその後に血晶は残されていなかった。
「外れか…。後はネプギアに賭けるしかないね」
残るテコンキャットは2体。それぞれネプギアとユニが相手をしている。
「これでとどめです!」
ネプギアはビームソードでテコンキャットを切り裂くと
力を込めた自身の拳で2回殴る。かなりのパワーがあるようで鈍い音が響く。
技名を付けるならギア・ナックルと言ったところか。ネプギアが倒した
テコンキャットも血晶を落とさなかったのか消滅した後には何も残っていなかった。
「これはアタシの勝ちでよさそうね。トリコロールオーダー!」
銃弾を3回連続で発射する。的確な射撃は全てテコンキャットの体に命中した。
最後のテコンキャットが消滅した後には血のように赤い色をした結晶が残されていた。
これが私達が探していた血晶で間違いないだろう。ユニの手に渡ってしまったことにより
この勝負は私達の敗北と言うことになるが、このほうが状況はいいかもしれない。
「チッ…。あの程度のモンスターじゃ暴力女神の相手は務まらねぇってか…。今日のところは見逃しておいてやるよ」
リンダはその場を後にする。
「血晶は確かにいただいたわ。この勝負はアタシの勝ちね」
血晶をその手に収めたユニが言う。負けるのはやはり悔しいところがある。
「そんな…。せっかくここまで来たのに…」
普通ならこれで終わりだが今回はそうではない。
「泣いてるところ悪いけど、本当の勝負はここからよ。さあ、立ちなさい、ネプギア」
「えっ…? どういうこと?」
「こういうことよ。はああああっ! アクセスッ!」
ユニの体が光に包まれる。プロセッサユニットを纏い
エクスマルチブラスターを携えてブラックシスターが再臨する。
「アタシと戦いなさい。ネプギア。手加減無しの全力でね。アンタがアタシに勝つことができればこの血晶をあげるわ。どう?」
「あんたは何を考えているの? またいきなりそんなことを言い出すなんて」
私はユニがどうしてこの勝負を提案したのか知っているから
問題はないが何も知らない場合は状況が飲み込めなくなるのは当然と言える。
「ネプギアと一対一で戦いたいだけ。アタシは知りたいの。アタシとネプギアは一体何が違っているのかをね。それを知らないといけないのよ。あの時に出せなかった答えを出すためにもね」
「どうする? ネプギア。私なら立ち向かうところだけど、ネプギアは諦めるの?」
「…! 諦めたくないです。その勝負、受けて立ちます!」
ネプギアは涙を拭い、立ち上がる。
「さあ、アンタも女神化しなさい。手加減なんかしたらその時点でこの勝負は無しよ。そんな半端な気持ちを持っているのならアンタの手を取ることなんて絶対にできない。だから、全力で来なさい!」
「うん。舞さんと…。みんなと一緒に強くなってお姉ちゃんを助け出すって誓ったんだから! 今度は負けないよ!」
ネプギアは抑えていたシェアの力を解き放つ。ユニと同じくプロセッサユニットを纏い
マルチプルビームランチャーを携え、パープルシスターが再臨した。
互いに全力を出す準備を終えたところで二人はぶつかり合う。
私達は離れてその様子を見る。二人の真剣勝負は一言で言えば凄まじい。
これが女神同士の一騎打ち…。一言で言うと戦いのレベルが違う。私は肌でそう感じた。
「舞、あんたこうなることを知ってたわね」
「まあね。ケイが仕組んでいたとはいえ、これはユニが望んでいたことだからね。私達にできるのはあの戦いを見守ることだけだよ」
「そうだったんですか? でもギアちゃんは知らなかったですよね。どうしてこの勝負を受けたですか?」
「ユニに勝って血晶を手に入れたいと言う思いもあるとは思うけど、そこにユニの本気に応えてあげたいって気持ちが重なったことでこの状況が生まれたのかな。私の勝手な推測だけどね。ネプギアが相手の事を思いやる優しい子だっていうことはコンパもアイエフもREDもよくわかってるでしょ?」
「マイの言う通りだよ! この展開、見てるこっちまで熱くなってくるよ! 一対一の真剣勝負はやっぱりいいよね! 二人とも頑張れー!」
「そうね。あの子は自分よりも他人を大切にする。誰に似たのかしら?」
「普通に考えるとねぷねぷですかね? 舞さんの言う通り、ここは見守るです。終わった後は私が2人を治すです」
「その時は私も手伝うよ。2人の勝負もいい感じになってきたかな?」
この本気の戦いが終わったらユニは答えを出してくれるのだろうか。
私は戦いを見守りながら想像する。私はユニに一緒に来てほしいと願っていた。
「くっ…。中々やるじゃない。あの時よりも強くなってるわね」
「それはユニちゃんもだよ。やっぱりユニちゃんは強いね」
ネプギアとユニの体にはお互いの技でできた傷がついていた。
「でも、アタシは負けないわ! まだまだ終わらないわよ!」
「私だって負けないよ! ユニちゃんに勝ってみせる!」
ネプギアとユニは武器を構え直す。
「くらいなさい! トリコロールオーダー!」
テコンキャットとの戦いで見せた銃弾を3発連続で発射する技だ。
ネプギアは背中のプロセッサユニットに力を込めて素早く横に移動して回避する。
「今度は私の番だよ。ラジカルセイバー!」
ネプギアはユニに近づき、マルチプルビームランチャーを勢いよく振り上げて叩きつける。
エクスマルチブラスターの大きな銃身で防がれるが威力は大きいのでユニは後退する。
「やるわね。なら、これはどうかしら?」
ユニはネプギアから距離を取りエクスマルチブラスターを構えてチャージを開始する。
「ブラストストライク!」
エクスマルチブラスターから青く太いレーザーが放たれる。
ネプギアは回避しようとするが放たれたレーザーはネプギアの右側面を掠める。
レーザーはネプギアの背中にある羽を模したプロセッサユニットの右側を打ち抜いていた。
ネプギアは地面に着地する。浮遊はもう使えない。使ったところで不安定な状態なまま
浮遊すると格好の的になってしまう。そう判断したネプギアは次の行動に移る。
「まだ…! 終わりじゃない!」
ネプギアは足に力を込めて駆け出す。これまでは背中のプロセッサユニットを使い
ユニの銃撃を回避してきたがそれはもう使えない。軌道を変えて走り回ることで
銃撃を回避しようとするがユニの正確な射撃はネプギアを捉える。
「っ…!」
被弾する度に痛みが走りネプギアの表情が歪む。それに耐えながら駆け抜ける。
「ソニックキャリバー!」
ネプギアはユニに斬撃を叩きこむ。その斬撃は回避されて空を切ったが
斬撃よりほんの少し遅れる形で淡い紫色の斬撃が飛び出した。
飛び出した斬撃はユニに直撃する。直撃を受けたユニは苦痛に表情を歪めた。
回避に特化しているのかユニのプロセッサユニットは防御が少し低いようだ。
「やってくれたわね…。羽を叩けばアタシの勝ちで終わると思ってたのに。これがアンタの全力ってわけ?」
「負けるわけにはいかないから。ユニちゃんの本気に応えるためにも。今の技は本当は私の技じゃないけど、舞さんから教わったような物だよ。」
「なるほどね。わかった気がするわ。アタシとアンタ。一体何が違うのか」
「えっ…?」
「アタシは次の一撃に全てを込めるわ。これはアタシが目標にしてる人の技よ。これを受け切ってみなさい」
ユニはエクスマルチブラスターを構えると再びチャージを開始する。
銃身に炎の魔力が集まっていく。さらに周りの空気が熱気で僅かに歪んでいるようにも見える。
「私も次の一撃に全てを込めるよ。ユニちゃん」
ネプギアはマルチプルビームランチャーを構えてユニと同じようにチャージする。
銃身にシェアの力が集まっていく。二人がチャージを完了したのは同時だった。
「バニシングバスター!」
「最大出力! ライジングバスター!」
エクスマルチブラスターとマルチプルビームランチャーから放たれた砲撃が激突する。
ぶつかり合う2つの砲撃は互いに一歩も引かない状態で拮抗している。
「「はああああっ!」」
ネプギアとユニは声を張り上げる。こうなった以上はどちらが先に降参するかだ。
「このままじゃ…。」
ユニの砲撃がネプギアの砲撃を押し返そうとしていた。
ネプギアは必死に抵抗するがユニの砲撃が徐々に自分の方に迫ってくる。
限界を迎えようとしていたネプギアの脳裏に仲間の顔が浮かぶ。
犯罪組織との戦いで何もできなかったことのトラウマで弱音を吐いていた
自分をいつも支えてくれていた仲間がいた。そして誓ったはずだ。
自分にできることを全力でやり抜く。そして捕らわれた姉を絶対に助け出して見せると。
共に強くなろうと誓いを立て、大切なことを教えてくれた人の顔が脳裏に浮かぶ。
「私は…」
「そんな…。押し返されてるっ…」
今度はネプギアの砲撃がユニの砲撃を押し返し始めた。
「もう2度と負けるわけにはいかない! はああああっ!」
ネプギアの砲撃はユニの体を飲み込んだ。
「ここまでね…」
ユニは砲撃に飲み込まれる直前にそう呟いた。
その表情はどことなく満足しているようにも見えた。
女神候補生同士の一騎打ちはネプギアの勝利で終幕を迎える。
離れた場所で戦いを見ていた私達は2人の下へと駆けだした。