紫と黒の女神候補生同士の一騎打ちはネプギアの勝利で幕を閉じた。
私達が駆けつけるとその場所は戦闘の影響で荒れており
女神化を解いたネプギアとユニがその場にいた。
ネプギアはビームソードを支えにしてなんとか立っている状態で
砲撃に飲み込まれたユニは仰向けに倒れていた。
服は破れてはいないのだが武器の損傷が大きい。
ネプギアのビームソードの刀身を形成している光は今にも消えてしまいそうなほど弱々しく
ユニの銃はその銃身から煙が吹き上がっており、もう使えそうになかった。
「コンパ、ユニを診てあげて」
「はいです!」
コンパは医療キットを取り出してユニの下へと向かう。私はネプギアに近づく。
「舞さん…。私、勝てたんですか…?」
「うん。よく頑張ったね。ネプギアの思いはユニに伝わったんじゃないかな」
「よかった…です」
ビームソードの刀身を構成する光が完全に消滅する。
支えを失ったネプギアは私の方に倒れ込んでくる。私はネプギアを受け止めた。
どうやらビームソードも戦いの影響で破損してしまったようだ。
「あっ…。ごめんなさい…」
「気にしなくていいよ」
私はネプギアに肩を貸してそのままユニの元へ向かう。
ネプギアは歩くことはできるようなので休息を取れば治るだろう。
「…」
コンパの手当てを受けながらユニは雲一つない空を見上げていた。
「気分はどう?」
「悔しい…。負けたんだから当然よね。わざと負けてあげたのよって言いたいところだけど。本音を言うならネプギアと本気でぶつかり合えてよかった。今まで見えてなかった物が見えてきたの。そんな気がするわ」
「何かわかったことがあるの?」
「アタシとネプギアは何が違っていたのか…。それは単純な強さだけじゃない。仲間がいるってことだと思ったの。アンタ達と初めて出会った時のこと、覚えてる?」
「うん。クエストに一緒に行こうって誘ってくれた時だよね?」
「あの時アタシはいつも1人でクエストに行っているって言ったけど、それだけじゃないの。それ以外にもね、アタシは鍛練をする時も別の事をする時もずっと1人ぼっちだった。そんなアタシに比べてネプギアにはアンタを初めとする仲間がいるんだってことに気付いたのよ。それがアタシとネプギアの違うところだって」
「ユニちゃん…。ユニちゃんはもう1人じゃないよ。これからは私もいるし、舞さんもいる。コンパさんにアイエフさん、REDさんもいる。みんなで一緒に行こうよ」
「その答えを出す前に。舞、アンタに聞きたいことがあるんだけどいい?」
「何かな? ユニが欲しい答えを示せるかはわからないけど。いいよ」
「アンタは自分が憧れている人がいたらその人みたいになりたいって思うのは間違いだと思う?」
ユニは私に質問する。ユニが憧れている人はお姉さん、ノワールさんのことだろう。
このラステイションを守護する女神で自身の姉ともなれば憧れを持つのは当然と言える。
「私は間違いじゃないと思うよ。私だって憧れている人は何人かいるし、その人みたいになりたいって思ったこともある。でも、1つ間違えてはいけないことがあるの。それはどんなに努力を積み重ねてもその人にはなれないってことかな」
「…? どういうことよ?」
「ユニはノワールさんにはなれないってことだよ。これは目標とした人を目指す上では間違えちゃいけないことなんだと思う。だから自分にできること、自分が得意なことを伸ばしていく。そうすればたとえ能力的に劣っていても憧れの人の隣に立つことくらいはできるんじゃないかな。私はそう思っているよ」
「アタシにできることを頑張る…」
「そう。ユニも自分ができることを精一杯頑張ればいいと思うよ。自分1人ではできないことなら、私達が協力する。私達は仲間に、友達になれるんじゃないかな? 私から言えるのはこれくらいだよ。どう? 答えは出せそう?」
「そうね…。やっぱりアンタの存在はかなり大きいみたいね。ネプギア、手を出しなさい」
「…? これでいいの?」
ネプギアはユニに言われるままに手を差し出す。
ユニはネプギアの手に先ほど手に入れた血晶を置きその手をしっかりと握る。
「これがアタシの答えよ。舞のおかげでかなり素直になれた気がするわ」
「ユニちゃん…!」
「これは一緒に来てくれるということでいいのかな?」
「今のアタシにできること。それはアンタ達に協力することよ。だから一緒に行ってあげるわ。自分にできることから始めればいいんでしょう?」
本気でぶつかり合うことでお互いに見えてくる物もきっとある。
それを実感させられた瞬間だった。
ユニの協力を得ることができたのはこれからの大きな一歩になるだろう。
コンパの治療も無事に済んだので私達はセプテントリゾートを後にする。
後はケイに宝玉と血晶を渡してゲイムキャラの情報を入手するだけだ。
ラステイションの街に帰ってきた私達は
ネプギアとユニを休ませるためホテルの部屋を取った。
満員だったらどうしようかと思ったけど空いてる部屋があったのでよかった。
ネプギアとユニはベッドに寝転がるとすぐに眠り始める。それだけ疲れていたのだろう。
今の2人には休息が必要だ。二人の寝顔は幸せそうに見える。
「私がケイに情報をもらってくるからみんなは二人の様子を見ていてくれる?」
「わかったわ。ネプギアとユニの事は私達に任せて行ってきなさい」
アイエフがそう言ってくれたので
私は部屋の鍵を預かり宝玉と血晶を持ってケイの下へと向かう。
「やあ、どうやら無事に素材を集めてくれたようだね。一人で来たのかい?」
「まあね。何があったかは知っているとは思うけど私が一人で聞きに来ることにしたよ。先にこれを渡そうかな」
私は宝玉と血晶をケイに手渡した。
「確かに受け取ったよ」
「何に使うの? もしかして超強力な武器とか作るの?」
「それは完成したら君にも知らせよう。その時のお楽しみにしておいてほしい。お楽しみは最後まで取っておくのも悪くはないだろう?」
「まぁ、そうだね。それで、どうしようか? 先にそっちから話す? 私の事を話してもいいけど」
「まずは君達が欲しい情報を提供させてもらうとしよう。ゲイムキャラの居場所だったね。彼女は君達が先ほどまでいたセプテントリゾートにいるよ。正確な場所はこの地図に書いてある通りだ」
私はケイからセプテントリゾートの地図を受け取る。星のマークがついている場所がある。
ここにラステイションのゲイムキャラがいるのだろう。後は実際に会ってみるだけだ。
「それと君に忠告しておこう。ゲイムキャラに会ったとしても素直に要求が飲んでもらえるとは思わないほうがいい」
「ん…? パープルディスクと違って堅物ってことかな。ケイがそこまで言うってことは説得するのは難しそうだね。そこはなんとか交渉を進めてみるよ。次は私の番だよね? とは言っても何から話せばいいのか」
「多少の長話になっても構わないさ。君の思うままに話してほしい。」
「わかった。それと最初に言ったとは思うけど話せることは少ないけどね。私自身が理解しきれていないところもたくさんあるから」
銀の女神に本来いた世界からゲイムギョウ界に呼び寄せられたということから始まり
銀の女神に力の継承者に選ばれたことで銀の女神の瞳が発現してしまっていること。
後世には伝わっておらずその存在を知るのはゲイムキャラぐらいであること。
彼女は今もゲイムギョウ界のどこかで生きていて時折私に語りかけてくること。
不完全ではあるが銀の女神のプロセッサユニットの展開ができること。
銀の女神が使っていた女神と心を通わせることで発現するハード・リンクのこと。
今の私に話せることを全て話す。
そこそこ長話になった気はするがケイは真剣に聞いてくれていた。
「なるほど。まさかそんな女神がいたとはね。君が話してくれたことは本当に興味深いね。本物に会えるのなら是非とも会ってみたい。そう思えたよ」
「私も会ってみたいよ。ここに来るまでにいろいろ助けてもらったし。銀の女神がどこにいるのかはわからないけど、女神の救出を目指して進んでいけばどこかで会えるかもしれないって考えてる。私をこのゲイムギョウ界に呼び寄せたのはこの世界の危機を察知して独自に行動を起こしたということらしいからね。私は銀の女神に会わないといけない。だからネプギア達と一緒にこの先に進むんだ」
「そうか。ならば僕は君達の健闘を祈っているよ。ノワール達を助け出してこのラステイションに戻ってきてくれることを」
「期待に応えられるように頑張るよ」
「さて、君と銀の女神の情報をもらったことだし、これを受け取って欲しい」
ケイは私にあの時に見せてくれたゲームソフトを差し出す。
「確かに受け取ったよ。これがこの世界のゲームソフトか…」
「ちなみにそのゲームだが君に今渡したのは前に説明した通りノワールをモデルにした少女がパッケージに写っているけど、これ以外にも他の3国の女神をモデルにした少女がパッケージになっている物もあるんだ。つまり、全部で4種類あるということだね。今のゲイムギョウ界の現状の中で全て入手するのは中々難しいとは思うが、君ならできると思う。是非この先の旅に役立ててくれ」
「うん。ありがとう、ケイ。それじゃあ私は行くね」
私はケイにお礼を言うと教会を後にしてホテルの部屋に戻った。
アイエフから預かっていた部屋の鍵を開けて中に入る。
「おかえり。どう? ゲイムキャラの情報はもらえたの?」
「ばっちりだよ。セプテントリゾートにいるって。地図ももらってきたから」
「これでゲイムキャラさんに会いに行けるですね」
「そうだね。ネプギアとユニはまだ起きそうにない?」
私が部屋のベッドに視線を移すと二人はまだ眠っていた。
「まだ起きそうにないよ。流石にこんなに気持ちよさそうに寝てるところを起こすのはアタシにはできないかな…」
「うん。私にもできないから。まぁ、二人が起きるまで待とうよ。その間に私達も休めばいいだけだし」
「そうね。あの二人が起きるまではしばらくの休息ね。舞、あんたは休まないの?」
「寝れない理由ができちゃったんだよね。私は二人が起きるまでこれをしないといけないから」
私はケイからもらったゲームを取り出して見せる。
「あの時のゲームソフトですね。今からやるですか?」
「もちろん。アイエフ、イヤホンとか持ってたりする?」
「あるわよ。これを使いなさい」
私はアイエフからイヤホンを借りる。Nギアに繋いで自分の耳に当てて準備は完了だ。
「ねぇねぇ! マイがゲームしてるところを見ててもいい?」
「いいよ。ただ、私はゲームをしている間は話しかけられても答えられないからその点はよろしくね」
私はそう言うとゲームソフトを取り出してNギアにセットする。
久しぶりのゲームと言うこともあって気持ちは昂ってはいるが表情には出さない。
だが、ここからは私のターンだ。それだけは言っておこうと思う。
起動するとオープニングムービーから始まりタイトル画面に入る。
ムービーと同時に流れている曲は誰が歌っているのだろうか。
私が聞いたことが無い声なのでわからないが、今度ケイにでも聞いてみようかな。
ニューゲームを選択してキャラクターメイキングに進む。
服装は勿論、髪型や肌の色に加えて瞳の色まで変えることができるようだ。
ちなみに私が過去にやっていた物とは違って露出が多い服装ではない。
髪型は黒のツインテール。瞳はユニと同じ赤。
肌の色は初期設定のままにして、服装は黒色のドレスで決定する。
ゲイムギョウ界にようこそ!というメッセージが流れて次に進んで行く。
ゲームの舞台は私達が今いる重厚なる黒の大地ラステイション。
教会の部屋で一人の少女が目を覚ました。寝間着姿の彼女はすごく可愛い。
「お目覚めですか…? ノワール様」
黒のスーツを着た男の子が少女に声をかける。
「ええ。よく眠れたわ。起こしに来てくれるたのは嬉しいけど女の子の部屋に何食わぬ顔で入ってくるのはどうかと思うわよ」
「すいません。ノワール様が中々起きてこなかったので…。それに伝えたいこともありましたから」
「はぁ…。まぁいいわ。それで、伝えたいことって何よ?」
「実はギルドの方からノワール様にいくつか依頼が入っているんです。」
「女神になったばかりの私にはちょうどいいわね。いいわ。早速引き受けていきましょう。着替えるから部屋から出て行ってくれる?」
「わかりました。準備ができたらまた呼んでください。それでは、失礼します」
ロード中の画面へと切り替わる。どうやらロードにかかる時間は短いようだ。
ロードの時間が長いとそれがイライラの原因になることも少なくはない。
ロードが終了するとギルドに着いていた。服装は私が最初に選んだ黒を基調としたドレス。
どうやら自由に操作できるようなので私は少女を動かして受付の人に話しかける。
「お待ちしておりました。ノワール様。こちらがクエストの一覧です」
ギルドの受付の人が言うとクエストの一覧が現れる。
このゲームのクエストは下からE・D・C・B・A・Sという難易度表記がされており
今はEランクしか受けることはできない。ここから上のランクを目指す流れだろう。
Eランクのクエストは5個あるがどれも内容を見ると採取や雑魚モンスターの討伐ばかり。
とりあえず順番に消化していこう。二人が起きるまでにどこまで進められるだろうか。
二人が起きたら次はラステイションのゲイムキャラに会いに行かなければならない。
そこに行くまでに戦闘もあるだろうからこのゲームからある程度技を拝借したい。
私はそんなことを考えながら再びゲームの画面へと意識を集中させた。
考えた結果このような展開になってしまったので
ユニにはこの時点から一緒に来てもらうことになりました。
彼女にも舞さんと一緒にこれから頑張ってもらおうと思います。