ルウィーのゲイムキャラであるホワイトディスクと出会った私達。
封印の維持とネプギアのお姉さんとの約束のためこの場所を離れることができない
彼女に力の一部を貸してもらおうと話を進めていたその時に乱入者は現れた。
「なっ!? 暴力女神! なんでここにいるんだよ!」
「リンダが大きな声で電話してたのを私の仲間が聞いてたんだよ。信頼できる上司からの電話なのか知らないけど、大事な話をするなら場所だとか、声の大きさを調節するとか考えた方がよかったんじゃないかな? まぁ、リンダが大きな声で電話してくれてたからその情報を元に今回も先回りさせてもらったよ」
「き、汚ぇ…。それが女神パーティのやることかよ…! それはどうかと思うぜ…」
「通りかかったロムを誘拐した悪党に言われる筋合いはないんだけどね。それに利用できる物は利用しないと。これまで散々邪魔されてきたんだからそれくらいはしてもいいでしょ?」
「というか舞の言う通り、大声で話してたアンタが完全に悪いわね。あんな大声で話してたら私達がマークしていなくても街の誰かが聞いてたはずよ」
「アタシ達がここにいるからにはゲイムキャラには手出しさせないよ! もう諦めて帰ったらどう?」
「調子に乗りやがって…! だが、やっぱりお前らは考え方が甘ぇよ! なんでこっちが遅れてきたと思う?」
「それなりの準備をしてきたとでも言いたいの? 何が来てもアタシが仕留めてあげるけど」
「わたしも…。ルウィーをあぶない目にあわすなら許さない…」
「ご名答! そら行け、モンスターども! 暴力女神のパーティをぶっ潰せ!」
リンダがディスクを投げるとディスクから出てきた光がモンスターの姿を形成する。
セプテントリゾートで戦ったテコンキャットに似ているがその数が問題である。
正確な数はわからないが軽く見積もっても10体以上は確実にいる。
「モンスターがこんなにたくさん…! これは多すぎです…!」
「テメェらはそいつらと遊んでな! その間にアタイはゆっくりと目的を果たさせてもらうぜ」
「…!」
リンダはそう言うと鉄パイプを構えてホワイトディスクがいる場所に歩き始める。
このままではホワイトディスクが破壊されてしまう…。私はリンダの下へ向かおうとするが
リンダが呼び出したモンスター達が行かせまいとその行く手を阻む。
「くっ…」
「まずいわね…。舞、まずはこいつらをなんとかするわよ!」
「わかった…」
私達はリンダが呼び出したモンスター達に立ち向かう。私は銀の女神の力を解放する。
攻撃力や防御力はは周囲のモンスターより高いようだが体力はそんなに多くないようだ。
事実、強めの攻撃を数回当てるだけでそれは光となって消滅したのだから。
完全に足止めに特化したタイプと言える。何とか全てのモンスターを倒したが…。
「終わりました! あれ、ゲイムキャラはどこに行ったんですか?」
「いません! どこにも…!」
「まさか…」
私達が全てのモンスターを倒し終え、ホワイトディスクがいた場所に目を向けると…。
「いるわけねぇだろう? テメェらがモンスターどもの相手をしている間に片づけさせてもらったからな! いい気味だぜ! 暴力女神!」
自信満々に言うリンダの足元を見るとそこには白いディスクの破片が散らばっていた。
「…」
私は背中のプロセッサユニットに力を込めると
無言のままリンダのいる場所に飛び、そのまま拳で殴ってリンダを吹き飛ばす。
「痛ぇな! 何しやがる暴力女神!」
「黙って…」
私は怒鳴り散らすリンダを一蹴するとホワイトディスクの破片を集める。
バラバラにされておりとても元に戻せそうにない。それだけ酷くやられている。
「マイ、どう…?」
「駄目みたい…」
「舞さん…。」
「舞があそこまで怒るなんて…。アンタ、覚悟はできてるんでしょうね。今日と言う今日は絶対に許さないわよ!」
「暴力女神が勝手にブチギレるのは知ったこっちゃねぇが、そんなことを言っている暇があるのかねぇ…。ちょうどいい。この国のゲイムキャラが封印してた奴がお出ましのようだぜ?」
リンダがそう言うと空間が歪み出して大きな穴ができる。
そこから現れたのは機械型の大型モンスター。
左手には斧が、右手には先端に棘の付いた球体が付けられた武器が握られている。
「な…。なによコイツ」
「コイツこそゲイムキャラによって次元の狭間に封じられていた殺戮兵器。キラーマシンだ!」
「何これ!? 敵のくせにカッコイイ!」
「アンタは何を言ってるの! ゲイムキャラが封印していたのはこいつだったってわけ?」
「1体だけでも暴力女神を始末するには十分だが、こいつらが大量に蘇ればルウィーなんざあっという間に制圧できるぜ! 手始めに最初に出てきたお前に記念すべき初指令を与えてやるよ! そこにいる銀の瞳をした暴力女神をぶっ潰せ!」
リンダがそう言うとキラーマシンが襲ってくるかと思ったがまるで動く気配がない。
「ロム、これを鞄に入れておいてくれる?」
「わかった。舞お姉ちゃん、怒ってる…?」
「うん。何かに当たったところで状況が変わるわけじゃないのにね。でも、今回は流石に抑えきれない…」
回収したホワイトディスクの破片をロムの鞄の空きポケットに入れさせてもらった。
私は太陽と月の杖を取り出すとリンダと向かい合う。キラーマシンはまるで動く気配がない。
「ご自慢の殺戮兵器は故障かな? 今日の私は久しぶりに本気で怒ってるから調子に乗った分は覚悟してもらうことになるけど」
「ちょ、ちょっと待て…。おい動けよ! キラーマシン! キラーマシーンさーん!」
リンダはキラーマシンを呼ぶがまるで動く気配がない。
「茶番は終わりってことでいい?」
「ふざけんな! ここまで来てこんなオチがあってたまるかよ! 動け! 動きやがれ!」
リンダは手に持った鉄パイプでキラーマシンを殴る。
アナログテレビの画面が砂嵐になった時に本体を叩くのがいい例だ。
これを実際にした人は多いのではないだろうか。
リンダが鉄パイプでキラーマシンを殴ると
迫力のある起動音が鳴り響きその体が動き始める。
「おっ、動いた! 動いたぞ! さぁ、今度こそ暴力女神をぶっ潰せ!」
「そんな方法で動くのかと突っ込みたいところだけど、相手をしてあげる」
「アンタ、本気で怒ってるみたいだけど油断は禁物よ?」
「わかってる。こんなポンコツにやられるわけにはいかないからね」
私はキラーマシンを見据えると再度体に力を込める。
それと同時にうっすらと紅いオーラが視界に入った気がした。
幻覚を見ているのか、それとも本当に私の体から出ているのかわからない。
きっと私は自分の気持ちをコントロールできていないのだろう。
私の行動の邪魔をするなら叩き潰すのみ。そんな気持ちが私の心を埋め尽くしていた。
これが本気で怒っているということなのかな…。私自身、怒るということが
あまりないのでよくわからなかったりもするのだが…。
キラーマシンはリンダの指令を聞いたのか私に向かってくる。
ネプギア達が攻撃を加えるが相手は機械のため効いているのか今一つ判断がしづらい。
「金と銀の色を見て思い出した。これを使わせてもらうよ…」
本来であれば私の魔法は消費が大きいため攻撃系統であればアイエフの補助がついたうえで
1回という回数制限があるが、今は目の前の敵さえ叩き潰すことができればいい。そう思った。
私は太陽の杖と月の杖を交差させ、詠唱を開始する。暴走や失敗は覚悟の上でしている。
「舞…。アンタ本気で…」
私はさらに銀の女神のシェアの力を上乗せしていく。まだ足りない。
私が今しようとしているのはあるモンスターの攻撃を魔法で再現することだ。
「手伝う…。舞お姉ちゃんだけにつらい思いはさせたくない」
女神化したロムが私の隣に立ちサポートしてくれる。後は時間だけだ。
イメージを記憶から引き出してそれを形にして相手に叩きつける。
「みんな、お願い。後少しだけでいい。時間を稼いで」
私の一方的なお願いではあるがネプギア達は不満を言うことなく動いてくれた。
キラーマシンは両手の武器を振り回し抵抗する。そして遂に解き放つ時が来た。
「これで終わりにしようか。みんな、離れて!」
私は交差させた太陽と月の杖を合わせて前に突きだす。
「アルゴルストームッ!」
雷と氷が混ざった巨大な竜巻が発生してキラーマシンの体を飲み込む。
竜巻の中では強烈な吹雪とそれに付加する形で凄まじい落雷が何度も落ちる。
竜巻が収まるとキラーマシンという存在は残されていなかった。
吹雪で凍り付いたブロックと落雷で真っ黒に焦げたブロックが
その場に残されているだけであった。
「…」
その状況を確認した私の視界が暗闇に染まる。私はそのまま意識を手放してしまった。
「舞お姉ちゃん…!」
「舞さん…!」
「ちょっと! しっかりしなさいよ!」
舞はその瞳を閉じたまま目を覚まさない。
「嘘だろ…。あのキラーマシンが倒されるなんて…。だが、これで終わりだと思ったら大間違いだぜ!」
新たなキラーマシンが空間にできた穴から出現する。ホワイトディスクが
破壊されて封印が解けたことにより開いたままになっているようだ。
「そんな…。舞さんが倒したばかりなのに…!」
「これはシャレにならないわよ…!」
「ピンチ…」
「くっ…。舞が倒れた今、このまま戦ってもジリ貧になって全滅するだけだわ。一度撤退するわよ! ネプギア、舞を背負ってあげて!」
「は、はい!」
「逃げるのか? アタイは止めないぜ? どのみちお前らの旅はもう終わりさ。ゲイムキャラが封印していたキラーマシンが全て復活すればルウィーもこのゲイムギョウ界も終わる! それまで無様に逃げ回るといいぜ!」
「むっかー! 覚えてなさいよ! マイの代わりに今度はアタシがアンタをブッ飛ばしてやるんだから!」
「アイツの安い挑発に乗ってるんじゃないの! さっさと行くわよ!」
撤退を余儀なくされたネプギア達は世界中の迷宮から脱出する。
そのままルウィーの教会へと向かい、今回の事をミナに説明することになった。
「そうですか…。キラーマシンが…。それに舞さんまで…」
舞は未だに眠ったままだ。目を覚ます気配がまるでない。
「舞さんはどうして目を覚まさないんですか?」
「自分に行使できる範囲を無視した魔法の行使はその体のみならず、精神にも多大なダメージを与えます。舞さんが目を覚まさないのはその魔法の行使が原因でしょう」
「あの時の舞は完全に怒っていたわ。アタシには怒りに任せて魔法を放ったように見えた。でも舞は魔法の回数の制限を自分にかけていたんでしょ?」
「ええ。私と初めて魔法の練習をした時に決めたのよ。魔法は使えたんだけど消耗が大きいから戦闘中に倒れないようにって。舞はそれを守りながら魔法の練習をしていたわ。でも、怒りがその制限を破ってしまったのね」
「舞お姉ちゃん、どうすれば起きるの?」
「自然に起きるのを待つしかありません。回復には時間が必要です。それと、皆さんが戦ったキラーマシンのことですが…」
「あれは一体何なんです? 舞さんが倒したのにすぐにまた現れたですよ?」
確かにあの時、舞はキラーマシンを倒したがその後すぐに別のキラーマシンが姿を現した。
「キラーマシンは遥か昔にこのルウィーで誕生した犯罪神が作り出したとされる殺戮兵器です。その戦闘力は実際に戦った皆さんに今さら説明するまでもないでしょう…。舞さんが倒した後に別のキラーマシンが現れた理由ですが、このルウィーには数十体、あるいは数百体のキラーマシンが封じられていると云われています。ゲイムキャラが破壊されたことによって封印されていた次元の扉が開いた状態になっているようですね」
「冗談でも笑えないわね…。舞が戦えなくなった今、アイツらを相手に私達には何ができるのかしら?」
「ゲイムキャラさんも壊されちゃいましたし…。」
「彼女の存在が消えた今、封印の再構成は不可能でしょうね…」
ホワイトディスクはリンダの手によってバラバラに砕かれてしまった。
修復することができるのなら、再度封印を施すことは可能かもしれないが…。
「何らかの対策を考えるしかありませんね…。幸い犯罪組織もすぐにこちらに攻撃を仕掛けてくるようには見えませんし」
「下っ端の奴、きっとキラーマシンを次から次へと復活させているに違いないわ。のんびり考えている暇はないんじゃない?」
「それでも私達にはまだ時間が残されています。何かできることが必ずあるはずです。皆さんには街の警戒や情報収集をお願いしてもよろしいでしょうか? 他国の方にお願いをするのは図々しいことだとは承知していますが…。」
「気にしないでください。私達にできることなら何でもします。その間、舞さんの事をお願いしてもいいですか?」
「わかりました。舞さんの事は私に任せてください」
ネプギア達は舞の事をミナに任せて街へと向かう。
「それで、街の警戒って言っても相手はまだ動いてないのよね?」
「でも、このままだとルウィーがめちゃくちゃになっちゃう…。それはいや…」
「そうなのよ。敵がまだ本格的な動きを見せていない以上、下手に動けないわ」
「ねぇ、下っ端に壊されたディスクって直したりできないの? マイはダメみたい…って言ってたけど」
「壊れた物を直すって口で言うのは簡単だけど、そう簡単に治ったら誰も苦労しないわよ」
「そうですよね。何かいい方法はないんでしょうか…」
パープルディスクとブラックディスクに聞いてみたが
割れてしまったゲイムキャラのディスクを元に戻せた前例が過去になかったらしい。
「難しいわね…。そんな方法を知っている人がいればいいんだけど、そう簡単に見つかるとは思えないし…」
「直せるにゅ」
「えっ…?」
自分達の背後から聞こえてきた声。その声は今確かに直せると言った。
ネプギア達がその声に振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
「ん…。ここは…。私はどうなったの…?」
意識を取り戻した舞が立っていたのは知らない場所だった。
冷たい風が舞の体に当たる。自分が今立っているのはなんと雲の上だった。
さらに天空からの陽光が差し込み幻想的な雰囲気を作り出している。
『舞の現実の体は眠ったままだよ。ここは私に最も近い場所。いつか舞が自分の力でここまで来てくれるって信じてるから。舞に伝えたいことがあるの。とりあえずこのまま私の話を聞いてもらってもいいかな?』
聞き覚えのある声が聞こえる。これまで何度も私の頭の中に語りかけ、
私を助けてくれた彼女の声。今度は頭の中に語りかける形ではなく、
この空間のどこかから聞こえている。私はそのまま彼女の声に耳を傾ける。
銀の女神が私に伝えたいこと…。果たしてそれは何なのだろうか…。