ホワイトディスクを修復するための材料を無事に入手した私達は
早速ルウィーの教会でホワイトディスクの修復作業を開始した。
最初はブロッコリーが修復をしてくれるのかと思っていたが
自分達で頑張れと言われたのでネプギアを筆頭に作業を進めていくことになった。
私達はミナに事情を話して教会の広い部屋を借りる。
ブロッコリーが持っていた攻略本に書かれていたのは
ゲイムキャラのディスクを構成する物質に極めて近い性質を持つ材料を使用して
ディスクを修復するという方法だった。攻略本に書かれた手順に従い作業を進めていく。
まずはロムの鞄からホワイトディスクの破片を取り出して机の上に置く。
次にレアメタルとデータニウムを容器に入れて火の魔法で溶かしてよく混ぜ合わせる。
火の魔法を使ったのはラム。容器ごと燃やし尽くしてしまわないように微調整を行って溶かす。
溶かしたらそれをロムがかき混ぜる。この時に力を入れ過ぎないようにと
攻略本に書かれていたのでロムは力を抜いて優しくかき混ぜていく。この溶液が
ディスクの破片を接合させる接着剤の役割と後に生じる僅かな隙間を埋める役割を果たす。
続いてユニがピンセットと溶液を使ってディスクの破片を一つ一つ丁寧にくっつけていく。
拾い集めた全ての破片をくっつけても最後には僅かな隙間が残ってしまう。
そして私とネプギアでその残った僅かな隙間に慎重に溶液を足して隙間を埋めることで
修復作業は終了となる。元の形を取り戻したホワイトディスクは明るい光を発する。
「う…。ここは…? 私はあの時に消滅したはず…」
「本当に復活した! やっぱり嫁達はすごいね! REDちゃん感動した!」
「本当に直ったのですね。私がわかりますか?」
「ルウィーの教祖…。直ったとはどういうことですか?」
「私達みんなで修復することができたんですよ。上手くいってよかったです」
「そうだったんですか…。本当にありがとうございます。皆さんに復活させてもらったとは言え、私が一度消滅したということは…」
「はい。キラーマシンの封印が解けてしまいました。次元の扉は今も開いた状態になっています。急ぎ再度の封印を施さなければなりません。あなたを物のように扱って心苦しくはありますが、このままではルウィーという国がなくなってしまいます…」
「一刻を争う事態にそのような気遣いは無用ですよ。ネプテューヌと交わした誓いを果たし、ルウィーを守る。それが私に与えられた使命ですから。女神候補生達と銀の女神の後継者に頼みがあります」
「封印の場所までの護衛だよね? 私達が必ずホワイトディスクを元の場所に連れていくよ。それを邪魔する障害があってもみんなの力で越えてみせる。そうだよね?」
「はいっ!」
「任せなさい!」
「頑張る…!」
「ロムちゃんとわたしがいれば問題ないわ!」
「皆さん、本当にありがとうございます。今代の女神候補生はこれほどまでに頼りになる存在なのですね。それを改めて認識しました」
ホワイトディスクが復活した今、後は世界中の迷宮に乗り込んで再度封印を施すのみだ。
「ブロッコリーもついていくにゅ」
「ブロッコリーさん。これから行くのはすごく危ないところですよ? キラーマシンだってどれだけいるかわからないですし…」
コンパの言う通り今の世界中の迷宮は並みのダンジョンとは比較にならないほどの
危険地帯と化している。ラムと一緒にデータニウムを取りに行った時は
特に問題は無かったが今度は最奥部まで向かう必要があるのだ。
リンダが復活させたキラーマシンが障害になることは間違いないだろう。
「わかってるにゅ。ブロッコリーも戦う手段はちゃんと持ち合わせているにゅ。だから問題はないにゅ」
「本人がこう言ってるんだし、いいんじゃない? 人手は多いに越したことはないし」
「そうだね。せっかくこう言ってくれてるんだから、一緒に来てもらおうか。改めてよろしくね。ブロッコリー」
「こちらこそ、よろしくにゅ」
新たな仲間であるブロッコリーを加えて私達は封印を施すため世界中の迷宮に向かう。
世界中の迷宮に侵入した私達は内部の状況を見て驚きを隠せなかった。
「うわぁ…。すごいことになってるよ! でも動いてないね? 故障してるのかな?」
キラーマシンの数は確かに多いのだがどれも動いていない。
休眠状態に入っているのかわからないがここを通らないと最奥部には行けない。
「あいちゃん。こういう時ってどうするのがいいです?」
「そうね…。下っ端がやったみたいに思いっきり殴らないと動かないのなら、なるべく音をたてないようにこっそり通り抜ければ大丈夫なんじゃない?」
「ここで立ち止まってるわけにも行かないから、慎重に進むしかないんだろうけど怖いね…」
「動き出してもやっつけたらいいじゃない! わたしとロムちゃんがいればさいきょーなんだから!」
立ち止まっていては何も進まないので慎重に通り抜けることになった。
足音は完全に消すことはできないが可能な限り足音を小さくして
キラーマシンの横を通り抜けていく。首尾よく進み、第二階層に入る。
「今のところは動き出さないみたいですね…。このままいけるでしょうか?」
「最後まで油断しないように。後、ネプギア。そういう発言はなるべく控えた方がいいよ」
「舞の言う通りよ。フラグを立てないでくれる?」
第一階層と同じ要領で慎重に進むが、その途中で迫力のある機械音が聞こえてきた。
どうやら休眠状態に入っていないキラーマシンがいるらしい。
「今の音は起動音みたいだね」
「見つかっちゃった…?」
「流石に全部が寝てるってわけじゃないみたいね。急いで通り抜けるわよ」
「残念ながら、無理みたいにゅ」
私達の進行を阻むように一体のキラーマシンがいた。
どうやら感知されてしまったようでその赤い目が私達を睨んでいるように見える。
襲いかかってくるかと思ったがそのキラーマシンは突然大きな警報音を鳴らす。
「侵入者…。警告。警告…」
その警報音を聞きつけたのか他のキラーマシンが次から次へとやってくる。
さらに近くで休眠状態に入っていたキラーマシンも機械音とともに目覚めて
私達の行く手を遮る。あっという間に包囲されてしまった。
「くっ…」
「ちょっと! どうするのよこれ!」
流石にこの数を相手にするのは不可能だ。一体だけなら何とか倒せるかもしれないが。
何か突破口はないか思考していると、突然何かが飛んでくる音がした。
飛んできたのは蒼い棘のような結晶。それがキラーマシンの体に突き刺さると
今度は同じ方向から蒼白い光弾が飛んでくる。光弾が結晶に当たると爆発を起こす。
キラーマシンの体はそれだけで焦げ付いていた。相当な威力があると見て取れる。
「何…?」
光弾が飛んできた方を見るとそこには1体のドラゴンがいた。
エンシェントドラゴンに似た骨格のようだが明らかに違う点がいくつか見受けられる。
全身が純白の甲殻に覆われておりその隙間からは蒼い光が漏れ出していて
背中の棘と両手に備わっている巨大な爪は蒼く発光しており光輝く結晶のようにも見える。
さらに背から生えている一対の純白の翼には不思議な紋様が浮かび上がっていた。
『聞こえるか? 我の声が聞こえていたら手を挙げてほしい』
銀の女神が私に語りかけてくる時と同じように私の頭の中に女性の声が聞こえてきた。
私はドラゴンの方を向いてその声の言う通りに手を挙げる。
『この鉄屑共は我が抑えておく。お前達は先に進むがいい』
「わかった。ありがとう。みんな、行くよ!」
「えっ? 舞さん、あのドラゴンは何を言ってるんですか?」
「ここは抑えておいてやるから先に進めって…。銀の女神と同じように私の頭の中に直接語りかけてくるみたい。それに、あのドラゴンの瞳をよく見て」
ドラゴンの紅い瞳には私達と同じ女神の印が浮かんでいた。
銀の女神と関係する存在なのだろうか。だが今はそれを直接聞くことができる状況ではない。
「あのドラゴンも女神だって言うの…?」
「わからない。ただ、あのドラゴンが私達の敵じゃないのは間違いないよ。彼女が作り出してくれた好機を無駄にしないためにも早く先に進んでキラーマシンを封印しよう」
私達は最奥部へと駆け出す。その場には白いドラゴンとキラーマシンの大群が残った。
『さて、こうして戦いの場に赴いたのは何年ぶりになるか。お前達と最後に分かれた日からどれだけの時間が経ったのだろうな…? シルバーハートにゴールドハートよ…。さあ鉄屑共よ。ここから先は通さぬぞ。かかってくるがよい』
白いドラゴンはキラーマシンの大群に向かって行く。
私達は白いドラゴンの助けもあって遂に世界中の迷宮の最奥部へとたどり着いた。
「へっ。戻ってきやがったか! 暴力女神! どんな手を使ったのか知らねぇが、よくここまで来れたな! 褒めてやるよ!」
「リンダ…。うん。戻ってきたよ。こんなくだらないことを終わらせるためにね」
「寝言は寝てから言えよ。ゲイムキャラはアタイがぶっ壊した! もうキラーマシンを止めることは誰にもできねぇよ!」
「では、今すぐに止めさせてもらいましょうか。」
「なっ…! テメェは…。どうして暴力女神と一緒にいやがる!」
「みんなで協力して直したんだ。今度こそ終わりにしよう。ルウィーに入ってから調子に乗った分の借りを返させてもらうからね。」
「いいぜ。アタイもテメェをいい加減にぶっ潰してぇと思ってたところだ! こういう時のために保険をかけておいて正解だったぜ! 出てこい! ハードブレイカー!」
ハードブレイカーと呼ばれた存在が物陰から姿を現す。
キラーマシンとは違うタイプのようだが
機械の体を持ち青い翼に黄色の剣のような両腕が特徴的だ。
頭部と思われる部位には目なのか赤く発光する突起物がついている。
「出番のようだな…」
どうやら意志を持っているようだ。人の言葉を当然のように話している。
「アタイは今から暴力女神をぶっ潰す。お前は女神候補生どもを抑えてろ」
リンダがそう言うとハードブレイカーが私とネプギア達を分断する形で間に立つ。
「承知した。だが、倒してしまっても構わないのだろう?」
「負けフラグを立ててんじゃねぇよ! まぁいい。また邪魔されるのはウンザリだからな…。命令変更だ。女神候補生どもをぶっ潰せ!」
命令の変更を受理したのかハードブレイカーの頭部が赤く光る。
「舞さん…!」
ネプギアは舞の下に向かおうとするが…
「させぬ。お前達の相手はこの私だ。あの少女に加勢したければ私を倒すことだな」
「ネプギア、コイツを倒すわよ!」
「倒して舞お姉ちゃんのところに…」
「邪魔するならコテンパンにしてあげるわ!」
ネプギア達は女神化をする。
「女神の力…。見せてもらうぞ」
ネプギア達とハードブレイカーは戦闘を開始する。
「これはどういうつもり? 一対一で戦おうってことかな?」
「今までテメェと戦った時にはいつも女神候補生どもが周りにいたからな。分断させてもらったぜ? 本音を言うならアタイはアタイ自身の力でテメェをぶっ潰したいと思った…。ここまで散々邪魔をしてくれたテメェには今度こそ消えてもらうぜ?」
「残念だけどここで消えるわけにはいかない。私にはやらなきゃいけないことがあるからね。それを邪魔するなら倒すだけだよ」
私は銀の女神の力を解放して太陽の杖を握る。
今度は怒りに飲まれるわけには行かない。気持ちを落ち着かせて気合いを入れ直す。
「じゃあ、私達も全力でぶつかろうか。勝つのは私だけどね」
「勝つのはアタイだ! 暴力女神! テメェと女神候補生の旅をここで終わりにしてやるよ!」
私とリンダはほぼ同時に駆け出した。
リンダの鉄パイプと私の太陽の杖がぶつかり合い鍔迫り合いの状態になる。
「…っ!」
リンダの力は以前に戦った時よりも上がっていた。
各国のシェアは回復傾向にはあるが依然としてマジェコンヌのシェアが高い状態にある。
だがシェアの影響だけではない何かを感じたのだ。私を倒したいという気持ちが
リンダの力になっているのだろうか…。このままだと押し切られると判断した私は距離を取る。
「前に戦った時よりも強くなったみたいだね?」
「強くなってるのはテメェや女神候補生どもだけじゃねぇんだよ。この程度で終わるタマじゃねえだろう? 暴力女神!」
「よくわかってるね。敵同士じゃなかったら私達、いい友達になれたのかな?」
「テメェと友達になるなんざ、こっちから願い下げだっての! さあ、続きと行こうじゃねえか!」
「望むところ…っ!」
私は武器を握る手に力を込めてリンダの全力に応えるために駆け出した。