世界中の迷宮の最奥部で勃発した二つの戦いは私達の勝利で幕を閉じた。
ホワイトディスクの力によって復活したキラーマシンも全て封印され
ルウィーの危機はひとまず去ったと言えるだろう。
「これで終わったの…?」
「はい。封印は無事に完了しました。私がここにいる限り、目覚めることはありません。皆さん、本当にありがとうございました。」
「よかったです。これでルウィーも平和になるですね」
「ホワイトディスク、ネプギアに力を貸してあげてくれる?」
「はい。それではこれを…。 って、あら?」
ネプギアに力の一部を渡そうとしたホワイトディスクが眩い光を放つ。
『これは…? 何が起こったのでしょうか?』
「私がもう一人? 私は今ネプギアさんに力を渡そうとしただけなんですが…」
光が晴れると二つの白いディスクがあった。
「分裂したみたいだね? 何でこんなことになったのかな?」
「極めて近い性質を持つ材料と言ってもありあわせの材料で修復したのには変わりないからその存在が不安定になっているみたいにゅ。これはこれでなかなか面白いことが起きたにゅ」
「えっ…。じゃあ下っ端が壊してくれたから分裂できたってわけ?」
「何か素直に納得できないわね。あの下っ端がゲイムキャラを壊したからこんな大変なことになったんだし…」
「結果さえよければそれでいいと思うにゅ。終わりよければ全てよしにゅ」
「まぁ、今回も無事に解決できたんだし細かいことは言いっこなしね」
「うん…。これでルウィーも平和になる…」
「あ、あのっ。分裂できたってことはもしかして…?」
「はい。これなら皆さんについて行くことができますね。それでは改めてこれを受け取ってください」
ホワイトディスクから放たれた白い光がネプギアの中に入っていく。
これで残るはリーンボックスのゲイムキャラのみとなった。
『では、私はこの地に留まり封印の維持をします。彼女達のことをよろしくお願いしますね。もう一人の私』
「はい。任されました。お礼と言ってはなんですが私が知っている銀の女神とパートナーの女神についてのお話をさせてもらってもいいですか?」
ホワイトディスクは初めて会った時に言っていた。
銀の女神だけでなく彼女が背中を預けていた
パートナーの女神、金の女神とも実際に話をしたことがあると。
「聞かせてもらってもいいかな?」
「はい。舞さんは銀の女神のことはどこまで聞いていますか?」
「パープルディスクから大体の話は聞いてるよ。後はミナから金の女神の事を示しているキーワードを聞いた。銀の女神を支える国を持たない金の女神。金の女神もこのゲイムギョウ界のどこかで生きているの?」
「そうですね。彼女は確かにこのゲイムギョウ界で生きています。いずれ彼女は舞さんの前に真の姿を現すことでしょう。銀の女神と出会う時までには必ず。」
「銀の女神と同じように姿を現せない理由があるのならその時を私は待つだけだから。金の女神ってどんな女神なの?」
「まず彼女は余程のことが起こらない限りは人前に真の姿を現すことはありません。銀の女神と一緒にいた時も魔法を使って違う姿を取っていたくらいですから。私達ゲイムキャラは女神の存在を感じることができるので違う姿を取っていたとしても女神であることを見抜くことはできましたが…」
「それは、恥ずかしがり屋ってこと…? それとも何か別の理由があるの?」
「理由としては後者の方になりますね。彼女が真の姿を現さない理由は彼女の過去にあるのです。彼女とお話をしていく内に心を許してくれたのか、彼女自身が話してくれたのです。少し長い話にはなりますが…」
ホワイトディスクはとある昔話を私達にしてくれた。
今よりはるか昔のことにはなるが、ある好戦的な女神がいた。
その女神は自分の国を持っていたが自身が所有する領土だけでは飽き足らず
他の女神の国へ武力を持って侵攻するということをしていたという。
他の国の女神達…。その中には当時の金の女神も含まれていたが
彼女達は徹底抗戦して自分の国と民を守り抜いていたがある日一つの国が陥落した。
それが金の女神が守護していた国である。ある日彼女宛てに一つの依頼が届いた。
モンスターの討伐依頼だったようだがそれを受けた彼女は国をほんの少しの間だけ離れてしまう。
金の女神が不在で守りが手薄になっていた国にその女神が率いる軍勢が攻め込み
金の大地は一日で陥落した。彼女が帰ってきた時にはもう自分の国は無くなっており
自分を信仰してくれていた国民は誰一人として残っていなかったという。
この日から彼女は国を持たぬ女神となった。
彼女宛てに届いた依頼は金の女神を国から引き離し守りを薄くするためのダミークエスト。
届いた依頼は全てその日のうちに片づける彼女の行動心理を逆手に取った罠だったのだ。
国を奪われて信仰の力であるシェアも得ることができない。彼女は日に日に弱って行った。
シェアエナジーが遂に尽きて消滅すると思われたその時に銀の太陽が彼女の前に降り立った。
自分と同じ女神の瞳を持つ少女は金の女神に手を差し伸べる。
どうして助けてくれるのかと聞いたところ銀の瞳を持った少女はこう答えたという。
『私は生まれた理由もわからないし、女神なんてどういうものかよくわかってないけど、あなたに出会ってその理由がわかった気がする。きっと私はあなたを助けるために生まれてきたんだよ。それ以外に違う理由があるかもしれないけど私はあなたと出会ってそう思った』
彼女は最初から国を持たない女神だった。気が付いた時にはこのゲイムギョウ界にいて
旅の中で金の女神と出会ったのだと言う。これが金の月と銀の太陽が最初に出会った時であった。
それから銀の女神と一緒に旅を続けることになった金の女神は決意を固めた。
私の全てを持ってこの少女を支えようと。私に僅かに残された輝きで彼女を照らしてみせると。
国を奪われた金の月と国を持たない銀の太陽はそれからは二人でゲイムギョウ界中を旅した。
金の女神はその時から魔法で自分の姿を変えて銀の女神の側にいたと云う。
クエストを受注してモンスターを狩ったり、時には二人で頼まれた物を採取をしたりと…。
様々な経験を通してお互いに鍛えあうことで二人の強さは飛躍的に上昇していった。
金の女神も弱っていた時と比較して強くなったが彼女にはできないことが一つあった。
それが女神化である。当初は銀の女神が分け与えてくれたシェアを使って存在を維持していた。
分け与えた分はクエストをこなして取り戻せばいいだけだから気にしないでと彼女は言っていた。
金の女神の体にあった銀の女神のシェアは力を取り戻す過程で金の女神のシェアへと変わり
女神化を発動するには十分なシェアになったが。彼女の心に残されていた傷は大きく
女神としての力を最大限に引き出す女神化の行使が押さえつけられていた。
銀の女神は付きっきりで彼女の女神化の練習に付き合うがそれでも女神化はできなかった。
付き合ってくれた彼女に申し訳なく思うが銀の女神はまた頑張ればいいと励ましてくれた。
それから月日が経ちある出来事が起こる。
金の女神の国を奪った女神が残った国の女神に公の場で宣戦布告をした。
これ以上他の女神の国を奪わせるわけにはいかない。
決意を新たに固めた金の女神と銀の女神は国を賭けた戦いに参戦する。
金と銀の女神の二人と残った女神達は金の女神の国を奪った女神と対峙した。
まだ奪い足りないのか彼女は満たされない表情をしている。
それを許すことができなかった金の女神は女神化を行使しようと試みるが
その女神は彼女の傷口を抉る言葉を発した。国を奪われたのはお前が弱かったからだと。
騙されるお前が悪い。強い者が弱い者を蹂躙して何が悪いのだと言い放った。
金の女神はその言葉に戦意を喪失しかけるが銀の女神がそれを支えてくれた。
彼女に応えるのは今しかない。彼女だけを照らすのではない。このゲイムギョウ界
その物を明るく照らす月になってみせる。その決意のもと彼女は真の姿を取り戻した。
金の女神、ゴールドハートの再臨。それにより戦況が一気に逆転し、勝利への道ができる。
金と銀の光はその道を一直線に駆け抜けて戦いに勝利をもたらした。
その戦いが終わった後、二人は世間から隠れて過ごしていたらしい。
金と銀の女神は魔法で姿を変えてそれからもゲイムギョウ界を旅して
困っている人達を助けていったという。これがホワイトディスクが語ってくれた昔話だった。
「以上で話は終わりです。彼女とお話をすることは何度かあったのですが、最後に彼女が教えてくれたのが自分の過去でした。」
「話してくれてありがとう。金の女神のことが知れてよかった。本人にはいつか会えるんだよね?」
「はい。舞さんが銀の女神の力を継承していることは当然知っているでしょう。彼女は必ず舞さんの前に真の姿を現してくれるはずです」
「じゃあ私はその時を待つだけだね。この先に進んでいけばいつか会える。そう信じるよ。」
金の女神の過去を教えてもらいホワイトディスクの力を借りることができた私達は
世界中の迷宮を後にする。道中あの白いドラゴンがキラーマシンを抑えてくれていた
場所を通ったがそこは凄まじい戦いの跡が残っていた。
黒こげになったブロックが辺りに散乱しており
さらに壁が完全に消し飛んでいる箇所がいくつも見受けられる。
私達が通った時には誰もいなかったので彼女はこの場から去ったのだと予測する。
彼女も銀の女神と金の女神。二人の女神と何か関係を持っているのだろうか。
私達は無事にルウィーの教会へと帰還する。教会に入るとミナが出迎えてくれた。
「皆さんのおかげでルウィーは救われました。本当にありがとうございます…!」
「私達は自分にできることをしただけだよ。そうだよね?」
ネプギア達は無言で頷いてくれた。ロムの誘拐事件から始まって色々なことがあったけど
最終的にホワイトディスクの力も借りることができたのでこれ以上無い成果と言える。
「それでももう一度お礼を言わせてください。本当にありがとうございました! もう皆さんは次の土地に旅立たれるのですか?」
次の目的地は雄大なる緑の大地リーンボックス。
ルウィーで成すことも全て完了したので早速向かおうと言いたいところだが…
「実はまだやらなきゃいけないことが残ってるんだよね…。ラム、始めようか?」
「ようやくね! それじゃあ、ついてきなさい!」
「えっ…。舞さんとラムは何を…?」
「帰る途中に舞さんが話してくれたんですけど、これからラムちゃんとゲームで勝負するみたいです。前からラムちゃんと約束をしていたみたいで…」
「舞が勝てばラムは私達と一緒に来る、負ければラムの言うことを何でも聞くって賭けをしているみたいね」
「ラムちゃん… 舞お姉ちゃんのことまだ嫌ってるのかな…?」
「そんなことが…。」
「舞らしいところなんじゃない? ゲームで勝負をしようなんて」
「そうですね。私達も見に行くです?」
「見たい! 見たい! 嫁と嫁のゲームでの真剣勝負!」
「面白そうだにゅ。ブロッコリーたちも見に行くにゅ」
舞とラムのゲーム対決を観戦することが決まった瞬間であった。
私が案内されたのはラムとロムの部屋。
桃色や水色と言った明るめの色の家具が配置されていてソファや本棚の空きスペース、
タンスの上にはウサギなどの可愛らしいぬいぐるみがたくさん並んでいる。
私の部屋のテレビより大きい画面を持つテレビの前には白いゲーム機が置かれている。
私もこれと似たような物を持っていた。最近は携帯機が主流なのであまり手を出していない。
そのゲーム機の側面を見るとW11-Uと書かれていたが突っ込んだら負けだと思った。
さて、勝負するゲームについてだが全てラムに一任してある。
ラムはゲームがたくさん入った棚をじっくりと見て選別を行っている。
どんなゲームが来ても全力で立ち向かうのみだ。私にも多少は苦手なジャンルがあったりするが
自分で持ちかけた勝負なので苦手な物が来ても逃げることはできない。
「よし! 決めたわ!」
ラムがゲームを持って私のところに来る。ラムが持ってきたゲームは3つ。
大乱闘ゲイムキャラクターズ。女神パーティ。ポシェットモンスター。
どこかで聞いたことのあるタイトルだがこちらも突っ込んだら負けだろう。
「どれも面白そうだね? どれから行こうか?」
「あんたが決めればいいわ。どこからでもかかってきなさい!」
「わかった。じゃあ最初はこれにしようかな」
私が最初に手に取ったのは大乱闘ゲイムキャラクターズ。
ラムがテレビとゲーム機の電源を入れてゲームディスクを挿入する。
いよいよ、約束していた勝負の始まりだ。ここから先は気を抜くことなど許されない。
銀の女神の継承者とルウィーの女神候補生がゲームと言う舞台で本気でぶつかり合う。
果たして舞はこの勝負に勝つことができるのだろうか…。