ラステイションから出るリーンボックス行きの定期便に乗り遅れてしまった私達。
乗り遅れた定期便が最終だったため明日までラステイションに留まることになった。
明日まで何もせずに時間を潰すというのはもったいないということで
まずはラステイションのギルドに向かうことになった。
「そういえば、ユニと初めて会ったのはここだったね」
「そうね。そこまで昔のことじゃないのに何だか懐かしいわ。あの時にアンタ達と出会えてよかった…。ネプギアと本気でぶつかって、最後にアンタの話を聞いてアタシは自分の答えを出すことができた。アタシが本当にやりたいことを見つけることができたのよ」
「私はあまり手は出してないけどね。一番頑張ったのはネプギアだよ」
「あの時に舞さんが一緒にいてくれたから私はユニちゃんと手を取り合えた。だから一緒に旅ができるようになったんだと思います。舞さんって頼りになるお姉ちゃんのような感じがします」
「まぁ、ネプギアやユニ、ロムやラムみたいな妹は欲しいとは思うけどね。一人でゲームするよりかは楽しいだろうし」
私は一人っ子だ。逆に姉とかいたらそれはそれで嫌かもしれない。
年上の権力でゲームやテレビを占領されたらたまったものではない。
だから求めるなら妹だね。私と同じくらいのゲーマーに育ててあげないと…。
「特別クエスト掲示板ってフリークエストの掲示板の横にある掲示板かな?」
「そうね。あそこに緊急クエストと特定人物指定クエストがあがっているわ。早速見に行きましょう。」
特別クエスト掲示板を確認すると緊急クエストのほうは1件あがっている。
内容はミッドカンパニーで観測されるジュジンコウキというモンスターの討伐。
ユニから聞いたのだがミッドカンパニーはラステイションの海沿いにある廃工場で
かつてはラステイションの機械生産を担っていた工場の一つだったそうだが
現在は廃工場となってモンスターの住処と化しているとのこと。
機械系のモンスターが多く観測される傾向があり、それらの中で最も強いのが
シュジンコウキというモンスターだそうだ。ノートに簡単ではあるが纏めておく。
次に特定人物指定クエスト。こちらは緊急クエストと違って何件か上がっている。
誰にに依頼されたクエストか確認することができるので見てみる。
冥王四朗、雨宮リント、マーリョ、ルシエルと言った名前を確認することができた。
アイエフによるとどれも凄腕の冒険者達らしい。錚々たる面々に対する依頼の中に混ざっていた
私宛ての依頼書を手に取って確認する。クロはあるモンスターと戦ってもらうって言ってたけど…
「ん…? これって…」
依頼書に書かれていたターゲットはランドクイーンというモンスターだった。
私の脳裏にあるモンスターの姿が浮かぶ。あれがこのゲイムギョウ界にいるというのか…。
出現場所についてはクエストを受注した後に会いに来てくれれば説明すると書いてある。
「聞いたことのないモンスターね…。どこにいるのかしら?」
「さあ…。とりあえず受けておくよ。どうせこの後にクロに会うんだからその時に聞けばいいし」
私はクエストを受注する。本当に私の予想通りなら下手すると死ぬ危険もあるかもしれない。
だが不思議と恐怖はなかった。実際にそれと戦っていたのは体力が無くならない限り
死ぬことがない私の分身だったが自分の体で直接戦えると思うと何故かワクワクしてしまう。
クエストを受注したのでギルドを出てそのままセプテントリゾートに向かう。
ブラックディスクと会った場所まで向かうとクロがいた。
「また会えて嬉しいよ。舞。早速だけどこれを受け取ってくれるかな」
クロから手渡されたのは銀色のハンマーとランス。
それを受け取った私は太陽の杖と月の杖をラムとロムに差し出す。
「わたしにくれるの?」
「舞お姉ちゃん…。これもらってもいいの?」
「うん。二人が仲直りできた記念って言ったらおかしいかもしれないけど、ラムとロムに受け取ってほしいんだ」
「あ、ありがと…まぁ、大切に使うわ」
「ありがとう…舞お姉ちゃん」
太陽の杖をラムに、月の杖をロムに託した。ルウィーではかなりお世話になった。
杖を失っても魔法が使えないわけでは無いので特に問題は無い。
「武器を信頼できる人に託すってなんだかいいよね? 舞に使ってもらった武器たちも次の使い手に出会えてきっと喜んでるんじゃないかな?」
「せっかくもらったのに何だか申し訳ないところもあるんだけどね…。あまり武器を持ち過ぎて使わなくなるのはよくないと思ったから…」
「その武器をどうするかは舞の自由なんだから気にしなくていいよ。ハンマーを戦斧に変えるときは柄についてるボタンを押せばいいからね」
「やってみてもいい?」
「うん。試してみて」
私はハンマーの柄についている赤いボタンを押す。
ハンマーの球体の部分が光に包まれる。その光が晴れると斧の形に変化していた。
「これはすごいね…。うまく使い分けたいところかな?」
斧形態は敵を断ち切る切断攻撃。槌状態は敵を叩き潰す打撃攻撃と使い分けることができる。
ここにランスが加わることで敵を刺して貫く貫通攻撃ができるようになった。
同じボタンを押すと槌状態に戻るようだ。形態が変わるまでの間は僅かではあるが
隙が生じるので変えるタイミングには注意したいところではある。
「ありがとう。大切に使わせてもらうね。それともう一つ聞きたいんだけどいいかな?」
「うん。何かな? 今答えられることならいいんだけど…」
「クロが出したクエストを受注したんだけどランドクイーンってどこにいるの?」
「もう受けてくれたんだ。ならちょうどよかった。舞にこれを渡しておくよ」
クロが私に差し出したのはどす黒い色の宝玉だった。
「なにこれ…?」
「これがランドクイーンがいる場所まで舞を導いてくれる。ただ、そこに行けるのは舞自身と舞が選んだ人。二人だけなんだ。ランドクイーンのところに行きたいと強く念じてくれればその宝玉が舞とその人をランドクイーンがいる場所に連れていってくれるよ」
「ふ~ん。じゃあまたの機会に使わせてもらうね」
「舞が戦いたいと思った時に使ってみてほしい。その戦いはきっと舞とその人にとって力になると思うから。頑張ってね? 舞達はこれからリーンボックスに向かうんだっけ?」
「実はラステイションから出てるリーンボックス行きの定期便に乗り遅れちゃってね…。それが最後だったから明日までラステイションに留まることになったんだ」
「そっか。まぁ、たまにはゆっくり休むのも大事だと思うよ。無理しすぎるとよくないからね」
「今日は本当にありがとう。また会おうね」
「また会おう! 頑張ってね、舞!」
クロと別れた私達はセプテントリゾートを後にしてラステイションの街に戻る。
前回ラステイションを訪れた際にネプギアとユニを休ませるために取ったホテルに入る。
ここからは自由時間となったので私はNギアを取り出してゲームを進めていく。
前回の続きからなのでCランク解放クエストのターゲットであるフェニックスを倒しに行く。
熱を持った翼を羽ばたかせて熱風を飛ばしてくる攻撃を始めとして
炎を吐いてきたりと中々に手ごわかったが勝利することができた。
クリアするとドロップクラッシュと言う技が使えるようになった。
サマーソルトキックで敵を浮かせて真上から剣を叩きつける技である。
私なりの方法で再現できるようにまた練習をしておこうと思った。
解放されたCランククエストの一覧を見てみる。
ヘビータンク、ガルダ、ドルフィンなど新しい大型モンスターを始め
これまで戦った中・大型モンスターを二体同時に相手にするなど
やり応えのあるクエストが揃っている。これはこれで面白いと思った。
途中に食事とお風呂を挟んで寝る時間までゲームをやり続ける。
その結果、Bランクの解放クエストが出現するところまで進めることができた。
次のターゲットはキラーモシーンという機械型モンスター。
名前はキラーマシンと似ているようだが同じようなモンスターなのだろうか。
キリのいいところまで進んだのでセーブをしてゲームを終了する。
寝る前にNギアでダウンロードしたあるアプリの機能の中にある目覚ましを仕掛けて
私は眠りに就いた。朝は苦手だがこれを使えば起きられる気がしたのだ。
『時間! 時間だよ~! 起きろ~! お~いっ!』
朝になって寝る前にNギアのアプリで仕掛けた目覚ましが鳴る。
「う~ん…。起きればいいんでしょ…?」
目を覚まして目覚ましを止める。
『起きた? 今日は何して遊ぶの?』
このアプリはネプギアのお姉さんであるネプテューヌさんと遊ぶことができるアプリである。
何気にこのアプリをダウンロードして初めてネプテューヌさんを見た。
お姉さんと言うこともあってやはりネプギアに似ている。ネプギアより身長は低いが。
私が借りているパーカーワンピと色が違う物を着ていて髪にはネプギアと同じ十字キーの
髪飾りが二つある。Nギアをゲームの合間にいじっている時にたまたま見つけたアプリだ。
画面をつついたり、Nギアを振ったり下に向けたりすると様々な反応を示してくれる。
例えば画面をつついた場合は『わっ! びっくりした!』とか
『子ども扱いは釈然としないな~』といった台詞を喋ってくれる。
ネプギアに聞いたところネプテューヌさんは女神化をすると印象が一気に変わるらしい。
喋り方はクールになって大人の女性の感じになり、身長もネプギアより高くなる。
それに加えて胸も大きくなるとのこと。女神化のすごさを改めて認識させられた。
「みんなと一緒に必ず助けてみせるからね…」
ゲームやこのようなアプリで見ることはできても現実の世界においては
四女神はギョウカイ墓場に幽閉されてしまっているので会うことはできない。
顔を洗ったり髪を整えるなどの準備をして再度ラステイションの定期便乗り場に向かう。
そういえばルウィーでリンダと戦った際に現れた銀の太陽の髪飾りは
どうやらプロセッサユニットではないようであれから常に出現した状態になっている。
ネプギアがしている十字キーの髪飾りと同じように左上のほうにつけたままにしている。
私だってこれでも女の子なのだから髪飾りくらいのオシャレはしてもいいと思った。
定期便乗り場に着いた私達は衝撃の事実を目にする。
電光掲示板を見ると全ての便が欠航になっているのだ。
昨日のような乗り遅れを避けるために随分と早く来たのだが
おかしいと思った私達は係員にどういうことかを聞いてみることにした。
「リーンボックスでなにかあったの?」
「それが、昨日リーンボックスに向かった最終便でトラブルが発生しまして、船は全損、復旧の見通しが立っていないんですよ」
「きっと下っ端とあのネズミの仕業だよ! 私達をリーンボックスに行かせないように妨害してるんだよ! むかつくー!」
「REDの言う通りみたいね…。昨日の今日で定期便が全部欠航になるなんて普通に考えてありえないわ。なんとかできないの? アタシ達は急いでリーンボックスに向かわないといけないんだけど…」
「ユニ様…。困っているのは我々も同じなのですよ。これでは仕事になりませんからね。あっ、そうだ! もしユニ様と皆さんがよろしければお力を貸していただけませんか?」
「何をすればいいのよ?」
「はい。実はこちらのターミナルにも故障中の船が一隻残っておりまして、リーンボックスに向かった便が復旧するまではそれで代行しようと言う意見が出ているのですが…」
「直すのに足りない物があるです?」
「そうなんです。それをなんとか手配していただくことができれば皆さんをリーンボックスまでお送りすることができるようになります」
「それを持って来ればタダで乗せてくれるにゅ?」
「勿論。それくらいのサービスはさせていただきますよ。船を直すのを手伝ってくれた人から料金を追加で取るなんてことはしません。お願いしてもよろしいでしょうか?」
「やるしかないみたいだね」
「わたし達にかかればすぐに集まるでしょ!」
「うん…。それしかないなら頑張って集める…」
船を修復するための部品を集めることが決定した。
リーンボックスで何が起きているのかわからないが急いだ方がよさそうだ。
「ありがとうございます。必要な部品ですが、錨、帆、船首像の三つですね。確かギルドのクエストで船の部品を調達することができたはずです。それではよろしくお願いしますね」
「クエストの報酬に設定されているってことか…。ついでにシェアの回復もできるからいいね。早く集めに行こうか」
私達は再度ギルドに向かう。ギルドの係員に船の部品を調達できるクエストを紹介してもらい
手分けしてそれをこなしていく。ラステイション周辺に生息するモンスターから
採取できる素材を取ってくるものが多かったがあまり時間はかからなかった。
「これで、全部かな?」
「おお! 助かりました! 少しお待ちいただいてもよろしいですか? すぐに取り付け作業を開始しますので」
作業服を着た男達がやってきて部品の取り付け作業を開始する。
流石プロと言ったところなのか作業は思った以上に早く終了した。
「これで出航できます。もうすぐにリーンボックスに向かわれますか?」
「はい! お願いします!」
「わかりました。それでは皆さん、船に乗り込んでください」
私達は船に乗り込む。
「向こうでアイツらがなにかヤバいことをしていなければいいけど…」
「その時は、全力で阻止すればいいだけだよ。また調子に乗ってくれた分はしっかり返していかないとね」
私達を乗せた船はリーンボックスに向かって行く。
雄大なる緑の大地ではどんな出会いと戦いが私達を待ち受けているのだろうか…。