リーンボックス特命課に所属するケイブを仲間に加えた私達。
ケイブに紹介してもらったリーンボックスの教会の近くの宿屋で朝を迎える。
「さて、早速これからリーンボックスの教会に向かって仕掛けに行こうと思う。ネプギア、ユニ、ラム、ロム。準備はいいかな?」
「はい! 大丈夫です!」
「アタシも問題ないわ」
「わたしもオッケーよ!」
「大丈夫…」
「頼もしい返事をありがとう。それじゃあ昨日最後に打ち合わせたとおりに進めていこうか」
外に出る準備を整えた私達は宿屋を後にしてリーンボックスの教会に向かった。
「はあ…。今日もこの姿で過ごさないといけねぇのか…。 自分で言うのも何だけどアタイにこういうのは向いてねぇと思うんだけどな…」
「おはようございます! チカさん!」
「うわっ! ビックリした…。じゃなかった。あっ、おはようございますネプギアさん」
「頼まれた通りガペイン草原のモンスターを一掃してきたから報告しようと思ったのだけど、昨日は中々会えなくて報告ができなかったわ。でもよかった、また会えて。教会の近くの宿屋を取って朝早く来たかいがあったわね」
「あぁ…それでこんなに朝早くから来てくれたんですね?」
「ねぇ、一つ聞いてもいいかな?」
「はい。何でしょうか?」
「リンダって名前に心当たりはない?」
「ぎくっ…。えっと、聞いたことはないですね…。あなたのお知り合いの方でしょうか?」
「うん。プラネテューヌで初めて会った時から何かと因縁のある相手でね。昨日のライブ会場で悪さをしようとしてたんだ。チカは何か知らないのかなって思ったんだけど。そっか、知らないのか…。初めて出会ったあの時から始まって散々懲らしめてあげたのにこの国でもまた悪事を働いているみたいでね? 何とか捕まえて懲らしめようと思ったんだけど…」
「最初は私と舞さんで懲らしめたのが始まりでしたよね? あれから何度も私達の前に出てきて旅の邪魔をするから本当に困ってるんですよ。下っ端だからって登場回数が多すぎると思います。お姉ちゃんと昔にやったゲームでもここまで登場回数が多い敵役は滅多にいなかったですよ」
「アタシはラステイションでソイツに初めて会ったんだけど、アタシのことをクソガキとか言って喧嘩を売ってきたから舞とネプギアと一緒に懲らしめてやったわ。あの時のアイツの顔を思い出したら笑えてくる。女神が三人!? わけわかんねーんですけど! とか言ってたわね」
「モノマネが上手いわね。わたしはルウィーでロムちゃんをユーカイしたからステッキで殴って吹き飛ばしてあげたわ。ロムちゃんをユーカイした罪は重いのにあれだけで済ませてあげたことにむしろ感謝してほしいくらいよ」
「みんなといっしょに戦おうとしたらすぐに逃げていった…。すごくカッコ悪かった…。ルウィーではひきょうな手を使ってたけど舞お姉ちゃんに負けてた…。わたしが戦っても勝てると思う…」
昨日寝る前に行った打ち合わせの通りにリンダに対する挑発を行って行く。
「…」
「あぁ、ごめん。私だけじゃなくてネプギア達にも因縁がある相手なんだよ。いや~本当にしつこいよね? 私がこれまでプレイしてきたゲームにもここまで何度も邪魔してくる奴なんて指で数えるくらいしかいなかったよ。犯罪組織の下っ端ってやっぱり大変なんだろうね。同情するよ」
「テメェの同情なんているかよ! この暴力女神! さっきから黙って聞いていれば女神候補生どもと調子に乗りやがって! あっ…」
その言葉に教会の中が沈黙に包まれる。
「どうやら私の予想通りだったみたいだね。黙って聞いてたから効果がないのかなって思ったけど、やっぱり乱暴なところは変わらないみたいだね。やっと尻尾を見せてくれて嬉しいよ。リンダ」
「テメェ…! 最初からわかってやがったのか!」
「いや、怪しいとは思ってたけどチカと会ったことがなかったから確証が掴めなくて言い出せなかっただけだよ。ケイブから聞いた話で私の予想は確信に変わったけどね。教祖と言う身分を利用しての犯罪神崇拝の規制解除か…。頭も回るようになってきたみたいだね。それとも尊敬する上司の命令だったりするの? まぁ、この際どっちでもいいんだけどね。さて、本物のチカの居場所を吐いてもらおうかな」
私は銀の銃をチカに変装したリンダに突きつける。
「クソッ…! 完璧に騙せたと思ってたのに…! だが、暴力女神! テメェの質問に答えてやる義理はねぇよ! 目的のほとんどは達成済みだ! ここはトンズラこかせてもらうぜ!」
変装を解いたリンダは自慢の逃げ足でその場を後にしようとするが
ただで逃がすわけには行かない。
「ペイント弾、発射!」
私は銀の銃にあらかじめ装填しておいたペイント弾をリンダに向けて撃つ。
昨日のライブ終了後にショップに寄って購入した色素をユニから貰った
弾丸を開発する際に使用する空のカートリッジに詰め込んだ弾丸である。
ショップで売っていた色素を適当に詰め込んだので変なにおいもおまけでついている。
「うわっ! やりやがったな! 暴力女神!」
私に怒鳴り散らしながら持ち前の逃げ足でリンダは逃げていった。
その服から零れ落ちた色素とにおいを頼りにリンダの後を追いかける。
「ここに逃げ込んだみたいだね…」
「アンダーインヴァース…。面倒なところに逃げ込んだわね」
リンダを追いかけてたどり着いたのはリーンボックスの南端にある地下洞窟。
アンダーインヴァースと呼ばれる場所であった。地底からあふれ出すマグマによって
洞窟内部は高温になっている。ケイブの話によると炎系のモンスターが多いらしい。
「とりあえず中に入ってみようか。リンダはこの中にいるはずだよ」
私達はアンダーインヴァースの中に突入する。
「だいぶ走ったな…。それにしてもあの暴力女神! 変な弾丸をアタイに当てやがって…。これ洗わねーと取れねぇじゃねーか! クソっ! 何かあの暴力女神に一泡吹かせる手はねぇのかよ…。あっ、なんでこれのことを忘れてたんだ…。こいつを使えばあの暴力女神に仕返しできるぜ!」
リンダは自分がいた通路に何かを仕掛けるとさらに奥に逃げていく。
行く手を阻むモンスターを蹴散らして奥に進んで行くが未だにリンダの姿が捕捉できない。
「いないにゅ。どこに逃げたにゅ?」
「一本道だったから途中で見失うはずはないわね。ということは…」
「さらに奥に逃げたってことね? さっさと奥に進むわよ」
「そうだね。早く捕まえてチカの居場所を吐かせないと」
私が先陣を切って先に進もうとすると私の足が床に仕掛けられた何かを踏んづけてしまった。
「…っ! みんな走って!」
私は大声で言う。その言葉に私以外のみんなが走り出す。私はその場を動かない。
私が踏んだのは床に仕掛けられたトラップだったのだ。踏む前に気付けなかったのは痛い。
私とネプギア達はそのトラップが作り出した障壁に完全に分断されてしまう。
後ろも障壁で塞がれてしまい閉じ込められてしまった。
「舞さん…!?」
「やられた…」
私を閉じ込めた空間の中にスライヌが次から次へと現れる。
あっと言う間に私を取り囲んだスライヌは一斉に私に飛びついてくる。
「うあっ…」
スライヌに飛びつかれた私は体にかかるスライヌの重量に膝をついてしまう。
さらに何匹かのスライヌは私のパーカーワンピの隙間から中に入り込んでくる。
変な感覚が私の体を駆け巡り武器を出すことすらできない。
「や、やめて…。気持ち悪い…。変なところに入ってこないで…!」
「舞さん、今すぐ助けます!」
ネプギア達は障壁に攻撃を加えていくが障壁の強度が高く中々破壊することができない。
その間にも私の体はスライヌ達に蹂躙されていく。ゼリー状の体が私の体を覆い尽くしていく。
意識がどんどん遠のいていく…。まだ倒れるわけにはいかないのに…。限界が近づいていた。
「も、もうダメ…」
私は遂に意識を手放してしまった。視界が暗闇に染まり何もわからない。
「いい加減に壊れてください!」
怒ったネプギアの攻撃に遂に障壁が砕け散る。
舞のいた場所には大量のスライヌによって山ができていた。
完全に飲み込まれてしまったようで舞の姿を確認することはできない。
「舞さんから離れてください!」
ネプギア達は攻撃を加えてスライヌの山を崩していく。
なんとか全てのスライヌを倒すことができたが…
「舞お姉ちゃん、いない…」
「どこにいったのよ!?」
全てのスライヌを倒したが舞の姿はどこにもなかった。
舞がいた場所に残されていたのは舞が身に着けていたパーカーワンピと下着だけだった。
「何かしら?」
ユニがパーカーワンピの不自然な点に気付いた。一部だけ不自然に盛り上がっている。
パーカーワンピの中に何かいるのだろうか…。ユニがパーカーワンピを掴んで上げると…
「ぬら…」
「えっ?」
舞が身に着けていたパーカーワンピの中から一匹のスライヌが出てきた。
弱っているように見えるそのスライヌの頭部には銀の太陽の髪飾りがついている。
さらにネプギアから現れた紫色の光がそのスライヌとネプギアを繋ぐ。
ネプギアと舞がM-3カスタムとの戦いで発現させたハード・リンクの光であった。
「このスライヌ…。舞さんです」
「本当なの?」
「はい。あの時に私と舞さんを繋いでくれた暖かい光…これはハード・リンクの光です」
「舞さんがスライヌになっちゃったです?」
「信じられないけどそうみたいね…。そのスライヌの頭についてる髪飾りは舞が付けていた物よ」
「そんな! 何とかして元に戻せないの!?」
「難しいと思うにゅ。それ以前にこの現象自体が意味不明だにゅ」
「あれだけの数のスライヌに襲われたのが原因と言うこと…? でも人間がスライヌに変わるなんて…」
スライヌになってしまった舞。
舞スライヌはかなり弱っているように見える。
「ぬら…」
「舞さん、かなり弱ってるみたいです…。どうすればいいんでしょう…?」
「チカを助けましょう。本物のチカを助けて事情を説明すれば教会に匿うことができるわ」
「それじゃ、奥に進んで下っ端を叩き潰せばいいんですね?」
「ネプギア…。アンタ、かなり怒ってるわね…。まぁ、アタシも人の事を言えないけど」
「はい。舞さんをこんな目に合わせた下っ端を許すわけには行きません。舞さん、少しだけ我慢していてくださいね?」
ネプギアは舞スライヌを抱える。舞が着ていたパーカーワンピと下着は
畳んでラムとロムの鞄に入れてもらうことになった。
ネプギアは両手が塞がった状態なのでユニとラムとロムが率先して前に出て
行く手を阻むモンスターを蹴散らしていく。
「あれ? あそこに誰か捕まってるよ? 下っ端が変装してた人じゃないの?」
アンダーインヴァースの奥にたどり着いたネプギア達は縄で縛られている人物を発見した。
「あれは…。チカ!」
ケイブがすぐに駆け寄ってチカを拘束していた縄を外す。
「う…。ケイブ? 助けに来てくれたみたいだけどアタクシはもうダメみたい…最後にベールお姉様のお顔を見たかった…」
「そんな…! 諦めないでください!」
「チカの戯言を真に受ける必要はないわ。いつものことだから。死にかかっているように見えるかもしれないけど気のせいよ。全く問題ない」
「ひ、ひどい…。アタクシはこんなところに捕まってたのに…。げほっ、ごほごほ…」
「確かにケイブの言う通りみたいね…。病弱に見えなくもないけど…」
「でも捕まってたから体は本当に弱ってるです。舞さんのこともありますから早く安静にできる場所に運ばないと…」
「これでひとまず目的は達成できたわ。教会に戻りましょう」
「無理よ…。アタクシはもう一歩も動けない…。だからアタクシの事はもう置いて行って…」
「いつまでもふざけていると本当に置いて行きますよ。私達の友達を助けるためにはあなたの力が必要なの」
「つれないわね…。わかったわよ。歩けばいいんでしょう? 歩けば!」
チカの救出に成功したネプギア達は
アンダーインヴァースを後にしてリーンボックスの街に戻る。
舞スライヌを人目につかないように舞が着ていたパーカーワンピで隠して教会に向かう。
「事情は大体把握したわ。それと先ほどは見苦しいところを見せたわね。改めて自己紹介をさせてもらうわ。アタクシがこのリーンボックスの教祖、箱崎チカよ。しっかりと覚えておきなさい」
ネプギア達はチカに事情を話して舞スライヌを匿う部屋を提供してもらった。
今はコンパがつきっきりで様子を見ている状態である。
「さっきとまるで様子が違うわね。病弱なのはキャラ作りなの?」
「これはチカの悪い癖なのよ。見逃してあげて。それと普通の人より体が弱いのは本当だから」
「あなたが本物のチカさんなんですよね? どうして私をリーンボックスに呼んだんですか?」
「プラネテューヌの女神候補生が各国のシェアを回復させていると言う噂を聞いたのよ。まさか他の国の女神候補生が一緒にいるとは思わなかったけどね。女神不在のこの国にはうってつけかと思って。それと既にシェアを少し回復してくれたようね。感謝するわ」
「いえ。私は自分にできることをやっているだけですから」
「あなたを呼んだ理由はシェアの回復をお願いしたいだけではないの。本題はこっち。あなたは三年前にベールお姉様達と一緒にギョウカイ墓場に行ったでしょう? ベールお姉様はあれからどうなったの?」
「今もギョウカイ墓場で捕まっています。私はアイエフさんとコンパさん。舞さんに助けられてここに立っています」
「そう…。マイってあのスライヌになった子ね?」
「はい…。なんとか元に戻す方法はないんでしょうか?」
「難しいわね。人間がスライヌに変わるなんて話を聞いたことがないもの。自然に戻るのかすらわからないわ」
「そうですか…。チカさんはこの国のゲイムキャラのことを知っていますか? 私達はギョウカイ墓場に捕らわれた女神を助けるために旅をしているんです。後はこのリーンボックスのゲイムキャラの協力を得ることができればもう一度ギョウカイ墓場に突入することができます」
「なるほどね…。他国の女神候補生やゲイムキャラが一緒にいるのはそういうことなのね。その質問に対する答えだけど知っている…。いや、知っていたが答えね」
「えっ…? どういうことですか?」
チカはリーンボックスのゲイムキャラのことについて話し始める。
その口から語られたのはリーンボックスのゲイムキャラが
犯罪組織の手に落ちたと言う事実であった。
はい。やってしまいました。
反省は…していません。後悔なんてあるわけない…。