大型ライブは無事に終了し5pb.が私達と一緒に来てくれることになった。
ファンの皆さんと交わした約束を果たして再びあの輝けるステージに戻る日を迎えるためにも
ギョウカイ墓場に幽閉された四女神を救出しなければならない。
私達は今後の方針を話し合うためにリーンボックスの教会に集まることにした。
「お疲れ様! 大盛況だったわね! あなた達のパフォーマンスも素晴らしかったわ。全てはアタクシの計画通りよ」
「途中本当に危なかったけどね…。ネプギアのひらめきがなかったら私達もどうしたらいいかわからなかったくらいだし。まぁ、結果としては大盛況に終わったからよかったとは思うけど。今度は客層をよく見て出演させる人を決めた方がいいよ」
「5pb.の後にユピテルを登場させれば犯罪神崇拝撲滅のとどめになると考えていたんだけど、まさかそれが裏目に出るとは思わなかったわ。5pb.にも迷惑をかけてしまったみたいね」
「いえ、舞さん達のおかげで最高のライブになりましたから。舞さん達について行くことになったので当分はライブはできなくなりますけど…」
「あなたの歌はこのリーンボックスだけに収まる物だけではなかったということよ。舞の問いにもファン達は盛大な拍手で応えてくれたのが何よりの証拠ね」
「ファンに5pb.と一緒にステージに戻ることを約束したからには女神達を助けてゲイムギョウ界の平和を取り戻さないといけないね。これからどうすればいいのかな?」
旅に出る前にイストワールから提示された条件。
各国の女神候補生の協力とゲイムキャラの協力を得ると言う条件は既に達成されている。
今この場には四人の女神候補生と四国のゲイムキャラが全て揃っていることになる。
後はギョウカイ墓場に乗り込んで女神再救出作戦を展開する形になるとは思うが…。
「一度プラネテューヌに帰ってイストワール様に報告しましょう」
「それからギョウカイ墓場に乗り込むのかな?」
「そういえば舞には言ってなかったわね。アンタと最初に出会ったあの場所はこことは違う次元に存在しているのよ。突入するにはプラネテューヌにある専用の転送装置が必要になるの。それの準備もあるからすぐには突入できないでしょうね」
「転送装置を動かすにはシェアが必要になるです。あの時はわたしとあいちゃんだけでしたが、今回はみんなで行くことになるので多くのシェアを集めないといけないです」
「そうなんだ…。再突入までに時間がかかるならそれまでの間は敵の動きに注意しつつ、私達も強くなっておかないといけないね。少なくとも私はあの戦闘狂と戦って勝たないといけないだろうし…」
私はゲイムギョウ界にやってきた日に戦ったあの戦闘狂のことを思い出す。
あの戦闘狂はギョウカイ墓場の番人。つまり墓守という役割をしていると思われる。
あれを倒さないと女神救出は不可能と言える。
さらに私は初戦で戦闘狂の体に僅かとはいえ傷をつけてしまっている。
そのことから相当な因縁をつけられていることは間違いないとみてもいいだろう。
「改めて考えるとまだやることはいっぱいあるね。できることはきちんとしておかないと」
「そうですね…。今度こそ、お姉ちゃんを助けないといけませんから」
「準備が整うまではシェアを集めておけばいいんじゃない? 今回のライブのおかげでシェアはある程度得られたとは思うけど、もっと集めておくに越したことはないと思うわ」
「お姉ちゃん達をこえる勢いで行きましょうよ! それくらいの気持ちでやればきっと大丈夫!」
「うん…。もっともっと頑張る。みんなと一緒に強くならなきゃ…」
「女神候補生達も気合い十分のようね。これなら大いに期待ができるわね。今日はあなた達も疲れたでしょう? もう遅い時間だから休みなさい」
チカの言葉に甘えて私達は教会の大部屋で一日休んでからプラネテューヌに戻ることになった。
私はあることを実行するために目覚ましを普段より早くセットして眠りに就く。
今回仕掛けたのは普通の振動音タイプの目覚まし。Nギアに初期状態で備え付けられている。
ネプテューヌさんのアプリを使うとみんなが起きてしまう可能性があるので使わない。
そして迎えた朝。私はみんなを起こさないように部屋を出ようと思ったが…
「う~ん? 舞さん、こんなに朝早くにどこに行くんですか…?」
「あっ、起こしちゃった? よかったら一緒に来る?」
「はい…」
寝ぼけ眼のネプギアを連れて部屋を出る。朝早いこともあって教会内は静まり返っている。
顔を洗い髪を整えて準備をしたら教会の外に出る。街には少ないが人が出てきていた。
「ごめんね? こんな早くに起こしちゃって」
「いえ。何だか舞さんがどこかにいってしまう感じがして目が覚めちゃったんです。舞さんは何をする気なんですか?」
「それってハード・リンクの影響だったりするのかな…。 まぁ、ネプギアには後で来てもらおうと思ってたからちょうどよかったんだけどね」
「どういうことですか?」
「私が朝早く起きたのは短い時間だけど朝練をするためだよ。基本動作とか簡単な技の練習くらいしておこうかなって思ったから。元の世界の友達も学校の部活動で朝練をしてたからね。朝は誰にも邪魔されないから練習し放題って楽しそうに言ってた。再救出作戦が迫ってるからほんの少しだけでも練習しておこうと考えたんだ。そしてネプギアを呼び出そうとした理由だけど、この前クロから受けたクエストのことを覚えてる?」
「はい。確かランドクイーンってモンスターでしたよね?」
「うん。今日はそいつにネプギアと二人で挑戦しようと思う。クロからもらった宝玉を使えば私とネプギアでそいつのところに乗り込めるみたいだからね」
「そうだったんですか…。舞さんはそのモンスターのことを知ってるんですか?」
「心当たりはあるよ。だから事前にできる準備はきちんとしておこうと思う」
私とネプギアはショップに立ち寄って回復アイテムを購入する。
ヒールポッド10個にデトキシン6個を購入してそれぞれ半分ずつ持つ。
ヒールポッドは本来ショップに並んでいなかったようだが
誰かが過去に企画書を提出したらしくそれ以来ショップに並ぶようになった。
それからは各国の冒険者達もお世話になるようになったとのこと。
「さて、後はガペイン草原に行って軽く体を動かそうかな」
私とネプギアはリーンボックスの街を出てガペイン草原に向かう。
朝早い時間とは言ってもモンスターが闊歩していることには変わりないので
それらを蹴散らして戦闘前に体をしっかりと動かしておく。
今回の戦いで私が使う武器はランス。盾が無いのが心もとないがそれでもやるしかない。
「ネプギア、準備はいいかな?」
「はいっ!」
私はネプギアと手を繋ぎ、もう片方の手に黒い宝玉を持って願う。
ランドクイーンの元に連れていって欲しいと。
宝玉から黒い光があふれ出し、私とネプギアを新たな戦場に導く。
光が晴れるとそこは私にとっては見覚えのある光景だった。
青空が広がっていてその空をピンク色の鳥たちの群れが飛んでいる。
辺りには水たまりがいくつかあって色々な植物が繁茂している。
鳥以外の生物は今のところ確認できない。
「まさかここに自分の足で立てるとは思わなかったよ」
「舞さん、ここは一体どこなんですか?」
「ここはね、原生林って呼ばれる場所だよ。私がゲイムギョウ界に来る前にしてたゲームに出てくる場所の一つなんだ。ということはターゲットはあいつで間違いないね。あの宝玉は私のゲームの記憶を抽出して再現されたこの場所に私とネプギアを連れてきたってことになるのかな」
「舞さんがしていたゲームの…。舞さんはこういうところで戦っていたんですか?」
「実際に戦ってたのは私じゃないけどね。体力が尽きない限り死ぬことはない私の分身だよ。だから、今回は下手をすれば死ぬ危険もあるかもしれない。でもね、私は今すごくワクワクしてる。おかしいとは思うかもしれないけど、自分の体であいつと実際に戦えると思うと楽しみで仕方がないんだ。ネプギアと一緒にあいつに勝てれば私達はさらに強くなれると思う」
「舞さんと一緒に…」
「うん。ゲームでは一人の時が多かったけど、今は隣にネプギアがいる。私達なら勝てると思うよ。それじゃあ、そいつがいるところまで行ってみようか」
私達は特殊な女神化を使って準備を整える。
使えなかったらどうしようかと思ったが特に問題なく使うことができた。
「舞さん、髪が銀色に変わっていますよ」
「本当に?」
長い髪を後ろから持ってきて確認すると確かに黒色から銀色になっていた。
どうやら解放時の新しい姿を得たことによって特殊な女神化の方もパワーアップしたようだ。
「舞さんの髪って普段から綺麗ですよね。それが銀色になってさらに綺麗になってます」
「ありがとう。嬉しいよ。銀色って何気に一番好きな色だったりするんだけどね」
特殊な女神化をするとプロセッサユニットの脚甲だけが自動的に展開されて
私とネプギアの足に装着される。これは私の予想だが上のほうにある水源から流れてくる水が
靴に入ってこないようにするためだろう。俗に言う親切設計と呼べる物だと思う。
ランドクイーンがいる場所は足元に水が常に流れている場所なので
普通の状態だと靴に水が入って動きにくい場所になる。
私はネプギアと手を繋いだまま記憶を頼りにランドクイーンがいる場所に向かって行く。
その場所の入口に着いたところで武器を出して準備を整える。
「私の記憶が確かならこの奥にいるよ。ここから先は注意したほうがいい点が四つあるから説明しておくね。まず一つ目。これはどの戦いにおいても重要だと思うけどやられそうになったら無理せずに逃げることだよ」
「でも倒さないと帰れないですよね?」
「まぁ、そうなるけど。ピンチになったらいったん離れた場所に避難して体勢を立て直すのも時には必要だからね。本当にまずいと思ったら逃げることも立派な戦術だよ。私がしてたゲームに出てくる人がこんなことを言ってた。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ不意をついてぶっ殺せってね。だからその点は意識しておいてほしいかな。これが一つ目だよ」
「わかりました。他にはどういう注意が必要ですか?」
「残り三つはモンスターの攻撃についてかな。私が合図したら耳を塞いでほしいことと、尻尾の攻撃に当たったらさっきショップで買ったデトキシンをすぐに使ってほしいこと。後、ランドクイーンは火の攻撃を使うはずだからそれにも注意してほしい。もし火が体についたらその場で転がればすぐに消火できるからね。攻撃について気を付けてほしい点はこの三つだよ。どうかな? 行けそう?」
「大丈夫です」
「それならよかった。なら、行ってみようか」
打ち合わせを終えた私達はさらに奥に進む。
私達が侵入した場所は深い霧に覆われている。
全く見えないわけではないが、水源から流れ出る水の音が静かに響いていた。
「何もいませんね…?」
「いや、いるよ。どうやらお食事中のようだけどね」
流れ出る水の音に混ざる形で何かを咀嚼する音が聞こえてくる。
私達の存在を感知したようでその生物はゆっくりとこちらに近づいてきた。
自然に溶け込む深緑の甲殻に大きな翼、背中と長い尻尾の先についた大きな棘。
「来るよ!」
その生物は大きな咆哮を上げて突進してくる。
私とネプギアはハード・リンクを発動してその突進を横に飛ぶことで回避する。
続けて尻尾を振りかざして攻撃してくるがそれを跳躍で回避して距離を取ると
さらに私達がいる方向に火球を放ってくる。直撃はしなかったが水面に当たったことで
凄まじい水しぶきが上がる。それによってこの場所を覆っていた霧が晴れていく。
「ネプギア、大丈夫?」
「はいっ。これがランドクイーンですか…。ゲイムギョウ界にこんなモンスターがいたなんて…」
ランドクイーンは私達の方を向いて体を奮わて威嚇行動をしてくる。
「どうやらやる気満々みたいだね。食事タイムを邪魔されたんだから当然の反応か…」
私はランスを、ネプギアは銀の長剣を構えてランドクイーンと向かい合う。
実際に自分の体で向かい合うと物凄い緊張感が体を駆け巡る。
これに勝つことができれば私とネプギアはさらなる高みを目指すことができるだろう。
今回はネプギアと一緒だが、ユニ、ラム、ロムと二人でこのようなモンスターと戦う機会も
この先に待っているかもしれない。私達はまだまだ強くなれるはずだ。
女神達を救出してゲイムギョウ界に真の平和を取り戻すためには乗り越えなければならない。
「ネプギア、行くよ!」
「はいっ! 舞さん!」
銀の女神の継承者とプラネテューヌの女神候補生は陸の女王に立ち向かう。
かつて舞が操る分身が倒した敵を二人の力で倒すことはできるのだろうか…。