黒い宝玉に導かれて私達が降り立ったのは私がゲイムギョウ界にやってくる
前の日にしていたゲームに登場する戦場の一つ、原生林だった。
私とネプギアはクエストのターゲットであるランドクイーンに立ち向かう。
同じ場所には固まらないように分散して攻撃を加えることでダメージを与えていく。
ちなみに攻撃を当てると血の代わりに青い光が出てくる。
ランドクイーンがゲイムギョウ界のモンスタ-であることを示しているのだろうか。
「耳を塞いでっ!」
「は、はいっ!」
ランドクイーンに攻撃を加えていくと大きく力を込めて咆哮する動作に入る。
私はネプギアに指示を送ると同時に距離を取って耳を塞ぐ。
「…っ!」
ランドクイーンの咆哮が炸裂する。耳を塞がずに至近距離で受けると
耳の鼓膜が破れかねないとまで言われる大音量だ。
そしてこれは同時に怒り状態になった時に繰り出す動作である。
その証拠にランドクイーンの口からは炎が漏れ出していた。
「ここからだね…」
ランドクイーンは力を込めて強烈な炎を放つ。
強烈な炎が水辺を焼き尽くし凄まじい水しぶきが上がる。
「うわっ!」
完全に避けきったと思ったが私とネプギアの服に火がついてしまったので
その場で転がって消火する。この場所が水辺であることが幸いした。
火傷状態は放置しておくと大変なことになる。
「今度はこっちの番だよ! ネプギア、翼を狙って!」
「わかりました!」
私とネプギアはランドクイーンの翼に集中攻撃を叩きこむ。
ランドクイーンが大きくのけ反って翼についてある爪が砕け散る。
翼爪を破壊されて怒ったのかランドクイーンは尻尾を振り回して攻撃してくる。
長くしなやかな尻尾の一撃は側面に張り付いていた私とネプギアを捉える。
「うあっ!」
「きゃあっ!」
尻尾に吹き飛ばされたが何とか体勢を立て直す。
「あれっ…? 目が霞んできました…」
「ネプギア、デトキシンを使って…!」
ネプギアと私はここに来る前にショップで購入したデトキシンを使う。
ランドクイーンの尻尾と背中の棘には強力な毒が仕込まれている。
ゲイムギョウ界のモンスターの中にも毒の攻撃を使用するモンスターはそれなりにいるらしい。
デトキシンの効果によって体内に撃ちこまれた毒素を除去する。
「あっ、楽になりました! ランドクイーンの尻尾に毒があるんですね?」
「そういうこと。気を付けてね。特にあの攻撃には…」
ランドクイーンは足に力を込めて2歩下がるとそのまま宙返りを行う。
これがランドクイーンの象徴と言える攻撃、サマーソルトである。
距離を取っているので大丈夫かと思ったがなんと攻撃と同時に岩を飛ばしてきた。
「わっ! 危ないね…!」
直撃は回避できたが私は驚きを隠せなかった。
サマーソルトと同時に岩を飛ばしてくる攻撃は限られた特殊な個体しか使わない。
交戦経験はあるのだが、動きを観察する限りではその個体とは思えなかったのだ。
「これは最後まで油断できないね。ネプギア、今度は尻尾を狙いに行くよ」
次に狙うのは強力な毒を含む棘を備える尻尾。
炎ブレスの隙に素早く背後に回り込んで攻撃を加えていく。
「ラジカルセイバー!」
ネプギアの強烈な斬撃がランドクイーンの尻尾を捉える。
その斬撃は固い甲殻を難なく斬り裂いて尻尾を切断した。
尻尾の先部分が地面に落ちるとそれは光となって消滅する。
断面からは青い光が漏れ出していた。
「ナイスカットだね」
その連携に続く形で私は少し段差になっているところから跳躍して
ランドクイーンの翼めがけてジャンプ攻撃を繰り出した。
「モンスターライドだよ! ネプギア! 離れて!」
エンシェントドラゴンとの戦い以来となるモンスターライドである。
転倒したランドクイーンの背中に飛び乗って棘に注意しつつ銀の短剣を連続で突き刺す。
体を奮わせて私を振り落とそうとするがそう簡単には落とされない。
繰り返して短剣を突き刺すとランドクイーンは再度転倒する。
「頭を狙って!」
「行きます! ラビットラッシュ!」
ネプギアの高速の剣舞がランドクイーンの頭を捉える。
手数重視の攻撃のため一撃の威力は低いが弱点に直撃した場合は別だ。
ダメージが入っていることを示す青い光がかなり漏れ出している。
「さらに背中の棘をもらうよ! 瞬迅槍!」
私は転倒したランドクイーンの背中に向かって力を込めた刺突を繰り出す。
その一撃に背中の甲殻が砕け散った。これで棘の脅威はなくなる。
起き上がったランドクイーンには確かな変化が表れていた。
「あれ? 何か様子がおかしいですよ?」
ランドクイーンはこちらに近づいてくるのだが足を引きずっている。
「後少しだね。このまま最後まで気を抜かずに行こうか」
私とネプギアは攻撃を加えていくがその中でおかしな点に気が付いた。
ランドクイーンの体力は動きを見る限りでは後少しなのは間違いないのだが倒しきれない。
何か超強力な一撃を叩きこまないと倒すことができないのだろうか。
瀕死と言ってもその強力な炎と突進に加えて滞空状態からの強襲攻撃までお見舞いしてくる。
ダメージは購入したヒールポッドでリカバリーを取るがこのままではジリ貧になる。
「きっと何か条件があるね…。でも、どうすればいい…?」
『ここはまた新しい力を見せつける時じゃないかな? 倒せない敵にはまだ使ってない新しい力を使えばいいんだよ』
久しぶりとも言える銀の女神の声が私の頭の中に響く。
「何をしろっていうの?」
襲い来るランドクイーンの攻撃を回避しながら銀の女神に問う。
『新しい女神化だね。ネプギアちゃんと手を繋いで内に秘めたシェアの力を解き放ってみて。今の舞とネプギアちゃんならできるはずだよ。自分を信じてやってみて』
「わかった! ネプギア! 来て!」
「舞さん、何か方法を思いついたんですか?」
「うん。私と手を繋いでシェアの力を同時に解き放つの。それでランドクイーンにとどめを刺すことができるはず」
「わかりました!」
銀の女神に言われた通りに私とネプギアは手を繋いで内に秘めたシェアの力を解き放つ。
銀と紫のシェアの光が私とネプギアを包み込み、新たな女神化が発現する。
シェアの光が視野に入ったランドクイーンは後退して距離を取る。
私の銀色の髪はネプギアと同じ薄紫に変わる。
武器はランスからネプギアが女神化した時の可変式の武器に変化していた。
服装はネプギアのプロセッサユニットに変化していた。
さらに私の隣にいたはずのネプギアの姿が消えている。
体の内からは凄まじい力が溢れて来て、暖かい感じがする。
「これは…」
(舞さん、私達どうなったんですか?)
頭の中にネプギアの声が響く。ここから出せる結論は一つだ。
「どうやら私達、一つになったみたいだね。この状況を整理する前にまずはランドクイーンを倒そう。話はそれからだよ」
(はいっ!)
ランドクイーンは何が起こったのかわからないようで首を傾げているが
考えるのを止めたようで私の方に向かって突進してくる。
「これで決めさせてもらうよ。リミッター解除!」
私は剣に力を込めると正面からランドクイーンに突撃する。
繰り出すのはギョウカイ墓場で見たネプギアの最大の一撃だ。
ランドクイーンの突進が直撃する寸前で頭に剣撃を叩きこみ怯ませる。
その怯みから一撃、二撃と連続で加えてのけ反らせると即座に銃形態に変える。
シェアの弾丸を六発撃ちこんだら今度は自分のランスを取り出してその体を貫く。
最後にシェアで構成された最大出力のビームをランドクイーンにお見舞いする。
「プラネティックディーバ!」
後ろを振り向くとランドクイーンは大爆発に飲み込まれる。
爆炎が晴れるとランドクイーンは力なく大地に倒れ伏してその活動を停止した。
しばらくするとその体は光となって消滅した。
(勝てましたね! 舞さん!)
「クロが言ってた私の力になるってこういう意味だったのか。結果としては新しい力を手に入れることができたからよかったけど。これどうやって戻るのかな?」
元に戻る方法を考えていると周囲の空間が歪み始める。
私の記憶から再現された空間が消滅すると私達は再びガペイン草原に戻ってきていた。
『元に戻る時は戻りたいって頭の中で思えばいいだけだよ』
銀の女神の言葉通りに頭の中で元に戻りたいと思うと私の体が光に包まれて
隣にネプギアが現れる。服装と髪の色は通常の状態に戻っていた。
「ネプギア、大丈夫だった?」
「はい。なんだか私が舞さんの中に入ってたみたいですね。いきなりだったから驚いちゃいましたけど…」
「私も驚いた。こういう女神化もあるんだね?」
『これがハード・ユニゾンだよ。ハード・リンクとあの時に教えた特殊な女神化からさらに派生させる女神化。維持できる時間は従来の女神化と比較すると短くなっちゃうからさっきみたいに強い敵にとどめを刺す時に使うといいと思うよ』
「ハード・ユニゾンか…。そう言えば久しぶりの登場だったけど元気にしてた?」
『うん。元気なんだけど、舞と話をできる機会が少なくなってきたかな。この際に言っておくよ。私は今ある人物に閉じ込められてるの。まだシェアは残ってるから消滅することはないんだけど、力をほとんど封じられてるから今はこうして舞と話をする機会を作るだけで精一杯かな。今回ももう時間みたい…。頑張って、舞!』
銀の女神の声はそれから聞こえなくなった。私は空を見上げる。
彼女に会うにはルウィーで倒れた時に銀の女神と会話したあの場所へ。
つまり空に浮かぶ雲の上まで行かなければならない。
銀の翼のプロセッサユニットがパワーアップすれば行けるはずだ。
私がゲイムギョウ界の空を舞う翼を手にした時、その時こそ銀の女神に会いに行く時なのだ。
「閉じ込められてるか…。一体何者なんだろう…」
「舞さん、銀の女神様とお話をしていたんですか?」
「うん。さっきネプギアと一つになった特殊な女神化はハード・ユニゾンって言うみたい。それと銀の女神は誰かに閉じ込められてるみたいなんだ。」
「えっ…? じゃあ銀の女神様はどこにいるんですか?」
「このゲイムギョウ界の空に浮かぶ雲の上に捕まってるみたい。私の翼のプロセッサユニットがパワーアップすればきっとそこまで行けると思う。だから今は強くならないといけないね」
「そうなんですか…。私も舞さんがそこに辿りつけるようにお手伝いしますね」
「ありがとう、ネプギア。さぁ、帰ろうか。流石にもうみんな起きてるだろうし」
「はいっ!」
ネプギアと手を繋いでリーンボックスの街へと帰る。
今回の戦いを通してよりネプギアとの絆が深まった気がした。
「アンタ達、どこに行ってたの?」
「なんか目が覚めちゃったからガペイン草原まで軽く練習しに行ってたんだ」
本当はネプギアと一緒にランドクイーンと戦っていたのだが練習をしていたことにした。
ネプギアにもこのことはまだみんなには内緒にしておこうということで話はつけてある。
ハード・ユニゾンは次のボス敵が出てきた時にお披露目させてもらうとしよう。
「そうなんですか~。なんだかギアちゃん嬉しそうですね? 一緒に行ってたですか?」
「うん。ネプギアを起こしちゃって。せっかくだから一緒に練習してたんだ。これからは朝早く起きて少しだけ武器の練習しようと思う。朝に強い人は練習に付き合ってくれると嬉しいかな」
「アタシでよかったら付き合ってあげてもいいわよ」
「舞お姉ちゃんと一緒に練習…。頑張らなくっちゃ…」
「わたしにも頼りなさいよ! 魔法の練習ならロムちゃんと付き合ってあげるから」
「ありがとう。これからプラネテューヌに戻るんだっけ?」
「そうですね。いーすんさんにも報告しないといけませんから」
プラネテューヌに帰還することになったその時
Nギアに着信が入ったようで振動音が聞こえてきた。
「私じゃないね。ネプギアじゃないかな?」
「あっ。本当ですね。いーすんさんからみたいですね。はい、もしもし」
『ネプギアさん? 今どちらにいらっしゃいますか?』
「リーンボックスにいます。最後のゲイムキャラの力を借りることができたので一度プラネテューヌに戻ろうかって話になっていたところです」
『そうでしたか。本当によくやってくれました。各国の女神候補生とゲイムキャラが集まった今、早速、女神再救出作戦の準備を進めたいところではあるのですが…』
「何か問題でもあるの?」
『プラネテューヌに帰る前に向かってもらいたい場所があるのです。実は厄介な事態になっていまして…』
「何かあったんですか?」
『実はプラネテューヌの西の海に浮かぶ島が犯罪組織の襲撃を受けているんです。現時点では犯罪組織側が何か大きな動きを見せたという報告は上がっていませんが…』
「西の海の島? 確かあそこには小さな町があったはずだけど…」
「そこを襲ってどうするつもりなんだろ? 何か目的があるのかな?」
『憶測ではありますが、プラネテューヌ国内に犯罪組織の活動拠点を築こうとしているのではないかと…。回復傾向にあるシェアの奪取を目論んでいると思われます』
「相変わらずやることがいやらしいにゅ。また下っ端が一枚噛んでいると思うにゅ」
「リンダがまた悪事を働いているなら私達で懲らしめるだけだよ。そこに向かって犯罪組織を追い払えばいいのかな?」
『お願いしてもよろしいでしょうか? 今は現地の方が一人で応戦してくださっています。彼女の救援に向かってください』
「わかりました! その応戦してる人って誰なんですか?」
『ファルコムさんです。実は私とは随分昔の話にはなりますが面識がありまして…。あの島にある町は彼女の故郷なんですよ』
「ファルコムが…」
ラステイションで宝玉と血晶を探していた時に出会ったことを思い出す。
あの時のファルコムのアドバイスがあったから宝玉を手に入れることができたと。
別れて以来会うことができていなかったのであの時の恩を返すチャンスと言えるだろう。
私達はリーンボックスを後にしてプラネテューヌの西の島へと向かう。
犯罪組織もギョウカイ墓場への再突入は容易にはさせてくれないようだが
私達の邪魔をするのならみんなの力で懲らしめて平和を取り戻すだけだ。