Game43:鮮烈なる刃
女神候補生とゲイムキャラの協力を得るという条件をクリアして
プラネテューヌに帰還しようとしていた私達に入ったイストワールからの連絡。
犯罪組織の襲撃を受けているという西の海に浮かぶ島に向かうことになった。
「確か、いーすんさんから聞いた話ではこの辺りに小さな町があるはずなんですが…」
「もう少し先に進めばあるはずよ。このまま道なりに進んで行けばいいわ」
現在私達は森の中を進んでいる。木々の間から差し込む太陽の光があるので
見通しは悪くない。道も誰が見てもわかるようになっているのでそのまま進んで行く。
「家が見えてきたよ! あそこじゃない?」
「本当ですね。あっ、あそこにいるのはファルコムさんじゃないですか?」
私達は街の入口を守っていたファルコムの元に向かった。
「久しぶり、ファルコム。ラステイションで会って以来かな。また会えて嬉しいよ」
「舞、久しぶりだね! しばらく見ない間に随分と大人数になったじゃないか。それに何だかあの時と雰囲気が変わったね。強くなったとでもいえばいいのかな? それで舞達はどうしてこんなところに来たんだい?」
「イストワールからこの島が犯罪組織の襲撃を受けているって連絡をもらったんだ。ここってファルコムの故郷なんだよね?」
「そうなんだよ。たまたま里帰りをしていたら犯罪組織が急に町を占拠しようとしてきてね。舞達が来てくれるとは思わなかった。本当に心強いよ。今まではあたし一人だったから町を守るだけで精一杯だったけど舞達が来てくれればこの島から犯罪組織を追い出すことができそうだね」
「でも、本当にすごいですね。犯罪組織からたった一人で町を守ってたなんて…。ものすごくお強いんですか?」
「う~ん。どうかな。あたしがしてたのって町にちょっかいを出そうとしてくる敵を追い払ってただけだからね。それなりに鍛えてはいるけど、一概に強いとは言えないよ。それに強さには終わりが無いからね。あたしより上の強さを持ってる奴らもこのゲイムギョウ界にはたくさんいるんだよ」
「それでも十分すごいとは思うけどね。今はどういう状況なの?」
「実はこの町から少し離れたところにダンジョンがあってね。ノーコネディメンションって言うダンジョンなんだけど犯罪組織はそこを拠点にしているみたいなんだ。その拠点を叩けばこの島への侵攻を諦めると思うよ」
「シンプルでわかりやすいにゅ。つまりそこにブロッコリー達で乗り込んでその拠点を潰してやればいいってことにゅ」
「あたしは町を守らないといけないから舞達とは一緒には行けないんだけど、頼んでもいいかい?」
「うん。そのつもりでこの島にやってきたからね。それにファルコムの名前を聞いてあの時に宝玉の事を教えてくれた恩を返したいと思ってたから。今度は私達がファルコムを助ける番だよ。それじゃ、行ってくるね」
ファルコムにいったん別れを告げて私達はノーコネディメンションに向かう。
「こんなダンジョンもあるんだね…」
ノーコネディメンションに侵入した私は恒例と言える観察タイムに入る。
壁と思われる部分には複雑な数字の羅列が浮かんでおり、不規則な動きを繰り返している。
さらにどのような原理かわからないが壁を動く光が集まって図形を形作っては消えていく。
太陽の光は差し込んでこないが内部は普通に明るい。これまでに訪れたダンジョンとは
また一味違う雰囲気を醸し出していた。
続けて生息しているモンスターの情報を纏めてみる。
世界中の迷宮でラムと一緒に倒したモンスターと似たモンスター。
髪は黄緑ではなくてピンク色。やはりその姿はどこかで見たような気がしてならない。
続けて捕捉したのは棒で作られたかのような薄っぺらい感じのモンスター。
見た目が若干違うタイプが合計で三体確認できる。
そして注意しなければならないのはフェンリルの亜種と思われるモンスター。
緋色の毛皮を備えたその生物はフローズヴィトニルと呼ばれる危険種である。
こちらは頭数が多いので危険種を刺激しないように注意しながらモンスターを倒していく。
ワープポイントを使ってさらに奥へと進むと新たなモンスターを確認した。
過去に私とネプギアの女神の力を封じたM-3カスタムの色違いの機械型モンスター。
戦ってみたが普通に攻撃してくるだけで女神化を封じる力は持っていないようだ。
このダンジョンは過去に戦ったモンスターと似たタイプのモンスターが多い。
その証拠にラステイションで戦ったテコンキャットと記念すべき初クエストの相手だった
スライヌの同型のモンスターがいる。戦闘力は以前に戦ったそれを上回るようだ。
「スライヌを見ると変な気分になるね…」
リーンボックスで私が体験したスライヌ化は記憶にしっかりと焼きついている。
なるべく視界に入れたくないと思っていたのだがスライヌが私の視界に移ると変化が現れる。
「わっ!?」
スライヌを視界に入れた途端に体が紫色の煙に包まれる。
「ぬら~」
私は再びスライヌになってしまっていた。
「えっ!? 舞さんがまたスライヌになっちゃいましたよ!」
「あの時に治ったんじゃなかったの?」
シエルから受け取った青い錠剤で確かに治療したはずなのに
再び登場した舞スライヌに誰もが驚きを隠せなかったが…
「ぬ、ぬら~」
なんと舞スライヌは離れた場所にいる別のスライヌに自ら近づいて行く。
「ぬらっ!」
「ぬらっ! ぬらら?」
「ぬららら。ぬら~?」
「ぬら~! ぬ、ぬら!」
何と舞スライヌはそのスライヌと会話を成立させているようだった。
「舞さん、あのスライヌに何か聞いてるみたいです」
「スライヌと会話してるって言うの?」
「舞お姉ちゃん、スライヌになってもすごい…」
しばらく見守っていると舞スライヌが戻ってきた。
「ぬ~ら~」
舞スライヌの体が再び紫色の煙に包まれる。
煙が晴れるとそこには元の姿に戻った舞がいた。服はきちんと着ている。
「ふぅ…。どうやらスライヌ化は完全に治ってなかったみたい…。スライヌになるのと元の体に戻るのは私の意志でできるみたいだけど。呪いみたいな形で定着してるのかな」
「さっきスライヌに何か聞いてましたよね? 何を聞いていたんですか?」
「最近このダンジョンで怪しい人を見なかったか聞いてたんだ。スライヌになると他のスライヌと会話できるのかなって思って試してみたらヒットしたよ。ネズミのフードがついたコートを着た人がこの奥で何かしてるみたいって言ってた。ここから導き出せるのは一つしかないよね?」
「下っ端ね…。あれだけ懲らしめられたのにここでも悪事を働いているのね…」
「それがリンダの厄介なところでもあって強いところでもあるよ。まぁ、リンダがここの指揮を取っているなら懲らしめて追い出せばいいだけだね」
特殊な女神化を発動して準備を整えてさらに奥に進む。
ノーコネディメンションの最奥部に到達すると。リンダの姿を確認することができた。
いきなり攻撃を仕掛けるのもどうかと思ったので気付かれないように近づいて様子を窺う。
「あーっ! イライラする! あんな小さな町一つ潰すのに何日かかってやがる! あんまりモタモタしてたらまた暴力女神に邪魔されるじゃねーか! せっかく現場の指揮を任されたってのに使えない部下ばっかりでイライラしてくるぜ…」
相当にイラついているようだがあの町はファルコムが守っている。
簡単に落とせないのは当然と言ってもよい。
「ふ~ん。今回は現場の指揮をしてるんだね? 部下が使えないなら指揮官自らが手伝ってあげたらいいんじゃないかな? 少なくとも愚痴を言い続けるよりかはいいと思うけど」
「なっ! 暴力女神! また邪魔しにきやがったか!」
「それはこっちのセリフだよ。ネプギアのお姉さん達を救出する準備を進めようとしたらこれだからね。まぁ、そう簡単に本拠地に行かせないって計らいだとは思うけど…」
「あれだけ舞に懲らしめられてるのにまだ出てくるのね…。正直言って見飽きてきたんだけど…」
「現場指揮ってことは出世されたんですね? おめでとうございますー。でもそれだともう下っ端さんって呼べないですね」
「それはすごく困るよ! 何て呼べばいいのかわかんないじゃん!」
「出世しても今まで通りに下っ端って呼んでやればいいと思うにゅ。それはそれで面白いにゅ」
「ということは部下の皆さんからも下っ端って呼ばれちゃうんですよね? 下っ端さんとか下っ端係長、さらに出世したら下っ端課長とかになるんでしょうか?」
「うわぁ…。アタシは絶対に嫌だわ。出世してもそんな呼ばれ方されたら屈辱しかないじゃない。というか完全に部下にいじられて終わりでしょ…」
「あははは! カッコ悪いわね! それはそれで面白いからわたしとしてはいいけど!」
「かっこ悪い…。朝にやってるアニメに出てくる悪い人の方がかっこいいと思う…」
「テメェら…。相変わらずの減らず口を叩きやがって…。いつまでも調子に乗ってんじゃねぇぞ! 出ろ、リュウオウ! こいつらをぶっ潰せ!」
ネプギア達にバカにされて怒ったリンダはディスクを取り出して放り投げる。
ディスクから放たれた光が集まりモンスターの姿を形成する。
「今度はすごいモンスターを出してきたね」
呼び出されたモンスターはドラゴンタイプの大型モンスター。
エンシェントドラゴンとは骨格と大きさが違っているようにも見える。
ゴツゴツした褐色の甲殻が全身をしっかり覆っているようだ。
「どうだ! 暴力女神!」
「確かにすごいモンスターだと思う。だからと言って負けるつもりはないけどね」
私達は武器を構えてリンダが呼び出したリュウオウに立ち向かう。
基本的に前衛に出るのは私にネプギアを筆頭とした候補生だ。
今回私が使うのはハンマーを変形させた戦斧である。
リュウオウは私達に向けて炎の竜巻を飛ばしてくる。
女神化により上昇した身体能力を駆使して竜巻を潜り抜けて攻撃を加えていく。
「固いね…」
リュウオウの堅い甲殻に阻まれて効果的なダメージを与えることができない。
今回も弱点属性で攻めるのが有効と言えるだろう。
「ロム、ラム。氷の魔法をお願い!」
「まかせなさい! 行くわよロムちゃん!」
「うん…。お姉ちゃんに最初に教えてもらった強い魔法…」
ラムとロムは二人で同時に魔法を発動する。心が通い合っているからこそできる技だ。
魔法の才を持つ二人から放たれるのは氷の合体魔法の一つである。
「「アイスコフィン!」」
リュウオウの真下から鋭利な氷の槍が現れてその体を貫く。
私はそれによってできた隙を見逃さずにネプギアと接近して追撃を加えようとすると
リュウオウは鋭利な爪で私達を引き裂こうとしてくる。だが問題は無い。
「させないわ! アイシクルバレットよ!」
ユニが銀の銃から氷の魔力が込められた弾丸を六発連続でリュウオウに撃ちこむ。
速射の機能か何かついているのか知らないが凄まじい速さで放たれた銃撃が攻撃を中断させる。
「次は私の番です! 凍ってください!」
ネプギアはリュウオウに接近すると銀の長剣を地面に突き刺して力を込める。
ラムとロムの魔法でその場に残った氷の魔力を利用する攻撃だ。
「守護氷槍陣です!」
ネプギアを守るように氷の槍が地面から現れてリュウオウの体を貫く。
やはり氷属性が弱点のようでかなり効いているように見える。
「私もそれに続こうかな。雪月花を見せてあげる! 氷月翔閃!」
その場に残った氷の魔力を戦斧に纏わせて三日月を描く形で振る。
生成された三日月の氷の結晶と一緒に敵を切り裂くように一閃を加える技だ。
連撃を受けたリュウオウの体力はかなり弱っているようだがまだ油断はできない。
仕返しとばかりにリュウオウは高熱のガスをその体から排出して私達を焼き払おうとする。
すぐに距離を取ったので焼き払われずには済んだが範囲が広い攻撃なので厄介だ。
「なかなか手強いね。でも後少しで決めれると思う。ネプギア、あれ行こうか?」
「あれですね? わかりました!」
手を繋いで内に秘めたシェアの力を解放する。私とネプギアが一つになっていく。
ランドクイーンとの戦いで発現したハード・ユニゾンのお披露目である。
「ネプギアはどこにいったの?」
「私の中にいるよ。この姿を維持できる時間は短いから一気に決めさせてもらう。みんなには後でちゃんと説明するからね」
(舞さん、この技はどうですか?)
記憶を共有したネプギアからとある剣技の動作を受け取る。
これは私の好きな剣術の奥義の中でもトップクラスに入る物だ。
「やってみる価値はあるね。クイック!」
素早さを上げる魔法をさらに上乗せする。ハードユニゾンを行使している状態だと
身体能力は格段に跳ね上がっているがこれからネプギアと使う剣技は速さが大事なのだ。
「行くよ! 閃け、鮮烈なる刃!」
上乗せした魔法の効果によって限界まで到達した速さでリュウオウの体に斬撃を叩きこんで行く。
攻撃動作に移ろうとしているようだがもう遅い。次の瞬間には別の場所に移動して
さらに斬撃を叩きこんで行く。ここからは速度を落とすことなく同じような動作を繰り返す。
「無辺の闇を鋭く斬り裂き、仇なす物を微塵に砕く!」
剣舞はまだ終わらない。止まることのない斬撃にリュウオウの体は斬り裂かれ
ダメージを与えていることを示す青い光が私達の剣舞を美しく彩る。
そろそろとどめを刺す時だ。最後に背後からすれ違いざまに一閃を加える。
「漸毅狼影陣っ!」
本家には及ばないとは思うがハード・ユニゾンの力で可能な限り再現した
秘奥義を受けたリュウオウは力なく地面に倒れ伏して光となって消滅する。
「私達の勝ちだね」
(はいっ!)
ハード・ユニゾンを解除すると私の中に入っていたネプギアが隣に現れる。
隠しておいた新技を披露したわけだがユニ達に質問攻めにあうことは間違いない。
私とネプギアは勝利の喜びの中で何と弁解しようか考えていた…。