超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

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Game46:変態と言う名の紳士

アイリス草原から帰還した私達はルウィーのシェアを下げていた原因をミナに報告する。

国内に流通した新型マジェコンの回収は教会の職員を総動員させて行うことになった。

 

だが私達にはまだやらなければならないことがある。

新型マジェコンを流通させてルウィーのシェアを奪う作戦を指揮している

犯罪組織の四天王の一人、トリック・ザ・ハードを見つけて倒さなければならない。

 

話し合いの結果、休息を取ってからアタリー湿原に向かうことになった。

ミナの情報ではアイリス草原を抜けた先にあるということなので

休息を取った後はルウィーの街を出て再度アイリス草原に足を踏み入れる。

 

先ほど訪れた時とは違い、急いでいないので周囲の様子を観察しながら進む。

一年中雪が降ることで白のイメージが強いルウィーであるが

アイリス草原の周辺は街の周辺と比較すると気温が高く随分と暖かいようだ。

 

生息しているモンスターの情報を簡単に纏めておくことにする。

確認できるのはサッカーボールに乗ったウサギと赤色の向日葵のようなモンスター。

それに加えてルウィー国際展示場で見た二足歩行の猫型モンスターの色違いがいる。

 

注意しなければならない危険種は背中から木を生やしている大型のカメ。

それはモリガメと呼ばれるモンスターである。入口から近い広場にいるが

こちらから攻撃を加えない限りは襲ってこないので下手に刺激しないように進む。

 

余談ではあるがこの場所も最近観測され始めたモンスターが変化する区域の一つである。

ラステイションのリビートリゾートと同じく変化している日はギルドによって封鎖される。

ただしギルドがその実力を認めた最強クラスの冒険者達に限っては普通に出入りが可能だ。

 

モンスターを倒しながら奥に進んでアイリス草原を抜けると今度はアタリー湿原に入る。

プラネテューヌのバーチャフォレストの最奥部と似た雰囲気の場所だ。

アタリー湿原もアイリス草原と同じく気温が高いようで雪は残っていない。

外と比較するとモンスターの数がかなり多い。人が近づかない場所なので

ミナの言う通り、身を潜めるにはもってこいの場所とも言える。

 

「ここにいるのかな?」

 

「直感ですけど怪しい雰囲気を感じますよ。奥に進んでみましょうか」

 

「そうね。これだけモンスターが多くて人が近寄らない場所なら隠れ家にはもってこいだと思うわ。それにしてもロムとラムも舞と繋がったのね。後はアタシだけか…」

 

「大丈夫…。ユニちゃんにもきっとできると思う…」

 

「ネプギアでわたし達の順番で来たってことは次がユニの番じゃないの?」

 

「そうであることを願うわ。あんまり引き離されるのは好きじゃないから。発現したらそれを一気に挽回する勢いで追いついて…。いや、追い越してやるからアンタ達、覚悟しておきなさいよ」

 

「私もユニとハード・リンクを発現させたら銃の扱いをしっかり練習しないといけないね。銃の扱いはユニの方が上だからお世話になると思うよ」

 

「その時は任せなさい。あの時の約束を忘れたりしないから。アタシに教えられることはきちんと教えてあげるわ」

 

ユニとハード・リンクを発現させたら様々な銃の技が習得できるだろう。

ネプギアの場合は近接戦闘、ラムとロムは魔法といったように戦い方が明確に分かれている。

剣技、銃技、魔法。発現した暁に見事な三拍子が揃うと思うだけで楽しみになってくる。

 

アタリー湿原に生息しているモンスターの数は多いが頭数が多いのはこちらも同じ。

同じ場所に大人数で固まらないように分散してモンスターを蹴散らしていく。

 

段ボールを被ったカエルやドット絵のような姿のモンスターがいる。

さらに奥に進むと生息しているモンスターにも違いが現れ始めた。

 

奥に生息しているのはナスに細い手足が生えたモンスター。

その見た目からダイコンダーの親戚だと思われる。ナスビンダーと言ったところか。

 

続けて現れたのは馬に羽を生やしたかのような奇妙なモンスター。

見た目の通りに馬鳥と呼ばれているらしく、この辺りに生息している馬鳥は

通常の個体と比較して太っている個体が多いため、デブ馬鳥と呼称するらしい。

 

さらに黒い体を持った大きな蜘蛛。猛毒を持っているようで注意が必要とのこと。

攻撃に当たらないように注意して空振りさせた後の隙に攻撃を叩きこんで倒す。

 

最後に離れた行き止まりの場所にセプテントリゾートにいた

ドルフィンの亜種と思われるモンスターを確認した。チェックの模様が体に入っている。

その名はドリームドルフィン。夢イルカの別称を持つ危険種である。

様々なモンスターと一気に遭遇したのでノートに纏めるのが大変だと思った。

私達は遂にアタリー湿原の最奥部に辿りつく。そこにいたのはリンダと見たことのない人物。

 

それは人物と呼ぶよりかは生物と呼称したほうが正しい気がする。

黄色の巨体に短い手足を持ち口からはだらしなく舌を垂らして座っている。

怪しげな黄緑色の眼光が私と手を繋いでいるロムとラムを捉えていた。

 

「まさか、ここまでやってくるとは思わなかったぞ」

 

「あなたがトリック・ザ・ハード?」

 

「いかにも! 犯罪組織マジェコンヌが四天王の一人よ。お前は銀の女神の継承者だな! 先ほどの事はこやつから聞いた。それを聞いて吾輩は思った。お前の実力を認めざるを得ないと…」

 

「どういうこと…?」

 

「お前は操られた幼女達を傷一つつけることなく元に戻したそうではないか! 傷つけたのならば見下げ果てた奴と思うところだが、その点については吾輩は素直にすごいと思ったぞ! お前も我が同志なのだな!」

 

「えっ、それは違うと思うけどな…。私はあなたの同志になったつもりはないよ? もしかしてロムやラムみたいな小さな女の子が好きなの?」

 

「その通り! この世に幼女に勝る物など存在しないと言っていい。年齢二桁以上はババアと呼ぶところだが、お前は特別に名前で呼んでやろう! 名前はなんという?」

 

予想通りであった。守備範囲の狭さにも驚いたが

小さい女の子が好きな人のことを世間ではこう呼ぶ。ロリコンと…。

確かにロムやラムくらいの女の子は私も可愛いと思ってるけど…。

 

「神奈 舞だよ。幼女が好きならどうしてこんなことをしたの? あなたがルウィーのシェアを奪ったことでロムとラムがどれだけ辛い目にあったかわかってるの?」

 

「マイか。その名前覚えたぞ。我が同志マイよ。確かに幼女を傷つけたという事実は認めよう。だが、吾輩はあいにくと犯罪組織の一員なのでな。ゲイムギョウ界を支配して全ての幼女を吾輩の物にするためにはこうするしかなかったのだ! 女神がいないゲイムギョウ界はあと一歩で我らマジェコンヌの物になるのだ! 無駄な抵抗はやめたほうがいいぞ?」

 

「断る。とにかく、あなたにはルウィーから出ていってもらうから。シェアを奪ってロムとラムを苦しめた罪は到底許せるものじゃないよ」

 

「むう…。だがいいだろう! お前のその力を吾輩に示してみるがいい! 幼女達を守り抜いたその力をな! 吾輩も本気でお前と幼女達の相手をしてやろう!」

 

「望むところっ!」

 

私達は犯罪組織マジェコンヌの四天王のトリック・ザ・ハードに立ち向かう。

今回使うのは瞳だけを変化させる特殊な女神化ではなく通常の女神化である。

 

「先手は撃たせてもらうぞ!」

 

トリックは凄まじい速さで舌をラムとロムに向かって飛ばしてくるが…

 

「させると思ってるの?」

 

私はロムとラムの前に立ちハンマーでトリックの舌を弾き飛ばした。

だが、予想以上に舌の攻撃の威力が大きいようだ。何とか軌道をそらすことができたが

腕が痺れてしまっていた。舌であれだけの威力が出せることに驚きを隠せない。

 

「む…。流石だな。それでこそ我が同志よ!」

 

「ネプギア、ユニ!」

 

「はいっ! ファンタジックスター!」

 

「フルフラットッ!」

 

ネプギアの流れるような剣舞による八連撃とユニのシェアの光弾の連射がトリックに直撃する。

 

「ぐふっ…。だが、この程度で吾輩の体に傷をつけたとは思わないことだ!」

 

ネプギアとユニの攻撃によってトリックの体には確かに傷がついたが

その傷が勝手に修復されていく。どのような原理かわからないが自己再生能力があるようだ。

 

「フレイムストーム…!」

 

「サンダーボルトよ!」

 

ロムから放たれた炎の旋風とラムから放たれた雷撃が直撃するがやはり効果が薄い。

傷をつけることはできるのだがすぐに回復されてしまう。

 

「幼女の一撃…。むしろ心地よいと言ってもよいぞ! 幼女のためなら死ねる自信はあるが、今はその時ではない! これでもくらうがいい!」

 

トリックはそう言うと長い舌を凄まじい速さで横に振って私達を薙ぎ払う。

強力な自己再生能力に加えてリーチが長く素早い舌の攻撃に苦戦を強いられる。

 

「くっ…! これが犯罪組織マジェコンヌの四天王の強さ…」

 

「この程度は序の口に過ぎないぞマイよ! お前にとっておきの一撃をお見舞いしてやろう!」

 

トリックは再び舌を凄まじい速さで降る。その軌道に沿うように現れた

紫色の光が私の中に入り込んでくる。それと同時に私の女神化は強制的に解除されてしまった。

この体内を食い荒らされるような嫌な感覚には覚えがある。

 

「対女神用のウイルス…。リンダが使ってたのより強い…!」

 

シェアの力が食い荒らされ力が入らない。あの時に使った魔法で浄化しようとするが

以前より強力なウイルスに魔法を発動する分の力まで食い荒らされ発動することができない。

 

「舞さん…!」

 

「無駄だぞ! そのウイルスは一度体内に入ったら最後、高速で体内のシェアを喰らい尽くす! 全てを食らい尽くすまで止まらん!」

 

「だからって諦める理由にはならないよねっ…!」

 

ラムとロムは自分で邪悪な力を克服した。私より小さな子があそこまで頑張っていたのだ。

ここで倒れるわけにはいかないのだが予想以上に早いウイルスの侵蝕に対抗する手段がない。

 

「あっ…!」

 

私の脳裏にある光景が浮かぶ。あれを実演できるかどうかは私次第だ。

私がゲームの中で戦ってきた奴らと違って力に任せて暴れるのではない。

大事なのはきちんと制御できるかどうかだ。この状況を突破するための一手にかける。

 

ウイルスが全身に回ったことで舞は地面に力無く倒れ伏す。本番はここからだ。

倒れた舞の体からはウイルスの輝きとも言える紫色のオーラがあふれ出す。

それから数十秒経つと舞はなんと再び女神化を行使して立ち上がった。

 

「ふふふっ…」

 

女神化をした舞は不気味な雰囲気を醸し出していた。

その体から放たれる銀色のシェアの輝きは曇りのない輝きではなく濁っている。

さらに舞の瞳は銀色ではなく、鮮血のような赤色に染まっている。

 

「な、なんだと! どういうことだ!」

 

「舞さん、どうしちゃったんですか…?」

 

「あははっ…。そんなに騒がないでくれるかなぁ…。説明はするから一回でちゃんと聞いてよね」

 

「アンタ、一体何をしたの…?」

 

「今の舞お姉ちゃん、怖い…。どうしちゃったの?」

 

「いつもの舞はどこに行ったのよ…」

 

「あーあ、やっぱりみんなを怖がらせちゃったか…。この一手を実行しようと決めた時に覚悟はしてたんだけどね…。私が何をしたか答えてあげる。体内に入り込んだウイルスを逆に利用したの。対女神用のウイルスが持つ喰らう力をそのまま私の力に変えたとでも言えばいいのかな。そのおかげで力は湧いてくるけど、ものすごい空腹感が襲ってくるけどね…。あ~お腹空いた…」

 

「ウイルスの力を自分の物に変えただと! そんなことがありえるのか!」

 

「私もできるとは思ってなかったよ? まだ完全に制御できていないけど、苦し紛れの賭けを実行したことには変わりないからね。さぁ、続きと行こうか…今度は終わらせてあげるよ」

 

ロムとラムと私を結ぶハード・リンクの輝きが増した。

私は事実上のウイルス感染状態だがハード・リンクは記憶の共有なので特に問題ない。

完全に私の力で無害にするまでは近づかないでほしいと言いたいところではあるが。

 

「この魔法…」

 

「わたし達にできるのかしら?」

 

「自分を信じてやってみようよ。ネプギアとユニは離れた場所から私にシェアを送ってくれる?」

 

「わかりました!」

 

「アタシの大事なシェアを貸してあげるんだからちゃんと決めなさいよ!」

 

ネプギアとユニのシェアが私に送られてくる。

ここからは連携技を繋げていくことで美しく締めくくる必要がある。

 

「レイ…!」

 

「グランドダッシャー!」

 

ロムが作り出した白い光の玉がトリックに飛んでいき、無数の光線を発射する。

それに続く形でラムが魔法を解き放つと大地に秘められた破壊の力がトリックに炸裂する。

 

「まだ終わらないよ! ロム、ラム! その流れで続けていくよ!」

 

私はネプギアとユニから受けとったシェアの力を解放する。

その流れでロムとラムも自身のシェアの力を解放すると、様々な色のシェアの光弾が

大量に生成されて四方八方から物凄い速度でトリックに襲い掛かる。

 

「「「プリズミックスターズ!」」」

 

「だめぇぇぇぇ!」

 

トリックは悲痛な叫びをあげてその光に飲みこまれる。

光が晴れるとボロボロになったトリックがその場にいた。傷が再生する気配はない。

 

「幼女…最高ぉぉぉぉ…!」

 

「わたし達の勝ちでいいの…?」

 

「そうだね。当の本人はロムとラムの魔法にボコボコにされてご満悦みたいだけど…」

 

「そんなっ…。トリック・ザ・ハード様が…!」

 

「勝負はやってみなければわからないんだよ。でも確かに強かった。今まで戦ってきたどの相手よりも…。これだけの強さを持つ敵が後三人もいると思うとぞっとするけどね」

 

「ぬぅ…。本気の幼女達と我が同志はここまで手強いとは思わなかった…。一瞬死んでしまうかと思うくらいヤバかったが、世界中の幼女達のため吾輩は死ぬわけには行かないのだぁ!」

 

「アンタみたいな変態はお断りよ! さっさとルウィーから出ていって!」

 

「ぐふぅ。幼女に罵られるのも悪くは無いな…。そうだ吾輩は変態だ。変態と言う名の紳士なのだ! 仕方がない! 今日のところは引かせてもらうとしよう! また会える日を楽しみにしているぞ! 幼女女神達! そして我が同志マイよ!」

 

そう言うとトリックはその場から逃走した。リンダもそれを追いかける形で逃げていく。

今回の騒動もこれで収束するだろう。女神化を解除して気持ちを落ち着かせる。

 

 

「舞さん、体は大丈夫なんですか…?」

 

「うん。もうウイルスも無害になったから大丈夫。怖がらせてごめんね? なんか口が悪くなってたと思うけど、少し暴力的になっちゃうところがあるみたい。今回限りになるとは思うけどね。というか本当にお腹空いた…」

 

間抜けな感じの音が私のお腹から鳴り響く。

普通なら恥ずかしがるところかもしれないがもはやどうでもよかった。

 

犯罪組織マジェコンヌの四天王の一人であるトリック・ザ・ハードを

ルウィーから追い出した私達はアタリー湿原を後にする。

 

四天王自らが指揮を取っていたと言うことは敵の動きも激しくなってきているということだ。

今回の騒動はこれにて解決となったが油断ができない状態が続いている。

厳しい戦いの予感はまだまだ収まる様子がなさそうであった。

 

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