ルウィーのシェアを下げる作戦を指揮していた犯罪組織マジェコンヌの四天王の一人、
トリック・ザ・ハードを撃退した私達はルウィーの街に戻ってきた。
私は狂った女神化をした影響もあって空腹が限界に達していたので
先にネプギア達に教会に行ってもらい、街の定食屋でお腹を満たすことにした。
完全に自分勝手なお願いではあるがネプギア達は快く了承してくれた。
カウンター席についてメニュー表を見ると量が多そうな物を見つけたのでそれを注文する。
普段の私ならば外食に行っても大盛りなど注文しないのだが、今回は特別だ。
食べながら今回の戦いの反省を頭の中で行う。
あの狂った女神化は私がプレイしたゲームに似たような物が登場する。
それに関連する要素、ウイルスを制して自らの力とすることから閃いた物である。
自我を失うことは無かったとは言えネプギア達を怖がらせてしまったのは事実。
これからは使用は控えたいところではあるが、あれを使わなければならない状況が
起こらないことを祈るとともにそのような状況を招かないように気を付けなければならない。
悪い物はウイルスだけとは限らない。逆利用を試みる物の性質によっては私という存在の消失も
覚悟しなればならないだろう。すぐにその選択肢を選ぶのではなく他に本当に方法が無い時にこそ
最終手段として行使する形にしよう。やはり人を悲しませるのはよくないことだから…。
食事を終えて代金を支払い店を出た私はルウィーの教会に向かった。
トリックをこの国から追い出したことで平和を取り戻してくれることを願う。
真の平和を取り戻すには女神救出を達成する必要があるが、それも後少しだ。
「あっ、舞さん。おかえりなさい」
「ただいま。今は何をしているのかな?」
「今回の騒動の報告を終えてこれからの話し合いをしていたところよ。これでルウィーの問題も一段落すると思うわ。新型マジェコンの回収もほとんど完了したみたいだし」
「皆さん、この度は本当にありがとうございました! 二度もこの国を救っていただいて…」
「気にしないでください。最初に言ったように私達がやりたくてやったんです。あの時に舞さんが言ったように目の前の困ってる人を助けられなくてお姉ちゃん達を助けることはできませんから。色々あったけど無事に終わってよかったです」
「そうだね。でも今回の騒動の裏にいたのは犯罪組織マジェコンヌの四天王の一人だった。幹部クラスが直々に動いているってことは他の国でも何か悪さをしている可能性があるかもしれない。イストワールからは特に連絡は来ていないよね?」
「はい。今のところは他の国で何か起きたって連絡は来ていません」
「そっか。女神再救出作戦の準備は順調に進んでるとは言え、邪魔が入らないとは限らない。気を付けないとね」
女神再救出作戦の準備が整えばイストワールからの連絡が必ず入るだろう。
それまでに何が起こるかわからないのが現状だ。気を抜くことはできない。
「ラステイションで何か起きてないか気になってきたわ。念のため後で連絡を取ってみる」
「そのほうがいいと思う。敵側もかなり動きが激しくなってきているみたいだし。とりあえず各国の様子を再度確認したほうがよさそうだね」
女神再救出作戦が控えている今は各国の情勢に気を配っておく必要がある。
何か起きたらすぐに駆けつける準備くらいは整えておいた方がいいかもしれない。
「それじゃ、私達はもう行くね? 女神を救出したら改めてルウィーに遊びに来るからその時はまたよろしくね?」
「はい。本当にありがとうございました。舞さん、この子達の事をよろしくお願いします」
「任せて。二人のお姉さんを助けてルウィーに帰ってくるから」
「お姉ちゃんを助けるだけじゃないわ! 舞とわたし達であの変態をやっつけないと! あんなのを放っておいたらわたし達だけじゃなくて他の国の子ども達がひどい目にあわされるわ!」
「ルウィーをめちゃくちゃにしようとしただけじゃなくて、わたし達を操って舞お姉ちゃんに怪我させようとした…。絶対に許さない…。わたし達でやっつける…」
「まぁ…。その件については無傷で済んだからよかったけどね。でも油断できない。ふざけたように見えたけど今まで戦ったどの敵よりも強かったのは事実だから。きっとまた戦わなくちゃいけない。その時に備えてこれからもみんなでもっと強くなろう?」
「もーっと強くなってやるんだから! 舞のおかげで色々な魔法が使えるようになったもんね!」
「うん…。舞お姉ちゃんやネプギアちゃん達と一緒に頑張る…」
「その意気だよ。私も負けてられないね」
私達はルウィーの教会を後にする。
ルウィーはこれでひとまず大丈夫だろうが他の国が心配だ。
「ユニ、連絡を取ってみたら?」
「そうね。やってみるわ。自分からアイツにかけるのは癪だけどね…」
ユニは通信端末を取り出して連絡を入れる。
アイツと言うのはケイのことで間違いないだろう。
「えっ…? 今プラネテューヌにいるの? うん。それで?」
「何かあったのかな?」
ユニは通信端末を私に差し出してきた。
「ケイが舞と話をしたいって…」
「私と…? はい、もしもし?」
『やあ、久しぶりだね。また君と話せて嬉しいよ。早速だが、君に伝えたいことがある』
「何かな? まさかラステイションで何か起きたの?」
『いや、直接的な被害が出たわけじゃないが、実は先日ラステイションの教会に一通の手紙が届いたんだよ。中を読んでみたら挑戦状のようだったが…。どうやら先方は君とユニの二人をご指名のようだ。ブレイブ・ザ・ハードという名に心当たりはあるかい?』
「ブレイブ・ザ・ハード…? 似た名前なら聞いたことがあるけど…。トリック・ザ・ハードっていう奴がいて犯罪組織の四天王の一人だったよ。そのブレイブから挑戦状が来たってこと?」
『ああ、手紙にはゾーンオブエンドレスで待っていると言う一文だけだったが、このまま放置しておくとラステイションに危害を加える可能性も否定できない。諸々の事情で先日からプラネテューヌにお邪魔させてもらっているんだが、僕は今ここを離れることができないんだ。君とユニの二人で一度確かめて来てほしい。危険なことは承知しているが君達にしかお願いができない。頼まれてくれるかい?」
「いいよ。私とユニで行けばいいんだね。それでケイは私達に何を提供してくれるのかな?」
『やはり君は面白い。そう言ってくると思っていた。そうだね。君達があの時に集めて来てくれた宝玉と血晶を覚えているかい? あれを使って作り出した物を君と候補生達に提供しよう。最も今それを準備しているところなんだけどね。この先に控える女神再救出作戦の役に立つものとだけ言っておくよ』
「それは期待できそうだね。私とユニがそっちに戻るまでにしっかり完成させておいてくれると嬉しいかな」
『その点に関しては期待してくれて構わないよ。君とユニの二人なら無事に戻ってきてくれると信じている。頼んだよ、舞」
「やっと私の名前を呼んでくれたね。わかった。それじゃ、切るね」
ケイとの通信を終了して端末をユニに返す。
「アタシと舞でゾーンオブエンドレスに行けばいいのね? なら、さっさと行きましょう。どんな奴か知らないけどラステイションに、お姉ちゃんの国に悪さをしようとするなら絶対に許さないわ」
「というわけで私とユニはラステイションに向かうことになったからみんなは先にプラネテューヌに戻っておいてくれる?」
「舞さんとユニちゃんだけで行くんですか?」
「うん。相手が出してる条件はきちんと守ったほうがいいからね。もしそれを破って全員で乗り込んだりすれば何をするかわかった物じゃない。それを教会に送り付けてきた奴の名前がトリックと似た名前だったからマジェコンヌの四天王の一人だと思う。危険なのはわかってるけど、このまま放置しておくわけにもいかないからね。ユニと一緒にちゃんと戻ってくるから待っていてほしい。約束するよ」
「わかりました。舞さんとユニちゃんが戻ってくるのを待っていますから!」
「わかってる。それじゃ、いったんここでお別れだね。ユニ、行こうか?」
「ええ。ゾーンオブエンドレスの場所は知ってるから案内するわ」
私とユニはネプギア達と別れてラステイションのゾーンオブエンドレスに向かった。
ゾーンオブエンドレスはラステイションの街から出て北東の方角にあるダンジョン。
リビートリゾート、アイリス草原と同じくここ最近になってモンスターの変化が
観測され始めたダンジョンだがその変化は滅多に起きない物なので問題は無いようだ。
内部はノーコネディメンションの雰囲気によく似ている。
出現するモンスターには違いがあるのでここで纏めておくことにしよう。
確認できるのは球体状の体を持った機械型のモンスター。
それに加えてテコンキャットと同型のモンスターと爆弾の姿をしたモンスターがいる。
危険種はバーチャフォレストの最奥部にいたフェンリスヴォルフが確認できた。
変化前のモンスターはそれほど強くないようで私とユニだけで十分突破できる。
爆弾の姿をしたモンスターは爆発に巻き込まれないように距離を取って銃撃で打ち抜く。
最奥部に辿りつくとある人物が私達を待ち構えるように巨大な剣を構えて立っていた。
印象としては戦隊物に出てくるロボットに近い感じがする。パッと見では敵役には見えない。
その巨体は機械で構成されていると思われるが胸にはゲーム機を咥えた黄金の獅子がついていて
赤と青、金と銀の各部の装甲が美しい輝きを放っている。
「来たか…。待っていたぞ」
「アンタがブレイブ・ザ・ハード?」
「いかにも。挑戦状を送ってお前達をここに呼び寄せたのは俺だ。まさか本当に二人で来るとは思わなかったが、その方がいいとも言えるな。銀の女神の継承者に黒の女神候補生よ。戦う前にお前達に聞きたいことがある」
「何かな?」
「何故我らマジェコンヌの統治を受け入れようとしない? マジェコンヌの統治ならば誰もが等しくゲームを楽しむことができると言うのに。我々に逆らおうなどと言った考えは捨てたほうが身のためだぞ」
「お断りよ! アンタ達がやってることはただゲイムギョウ界を混乱させているだけじゃない! お姉ちゃん達をギョウカイ墓場に幽閉して…! アンタ達はこのゲイムギョウ界を支配することが目的なんでしょ? そんな奴らの支配を受け入れるなんて嫌に決まってるでしょう!」
「私もユニと同じ考えかな。これまで見たマジェコンヌの悪事は到底見過ごせるレベルじゃなかったよ。みんなを不幸にしてシェアを奪う。そんなことをする組織の統治の元で心からゲームを楽しむなんてできないと思うけどな。欲しいゲームがあるなら自分できちんと手に入れればいい。少なくとも私は不正な手段で手に入れたゲームなんかで楽しみたくなんかない。それに約束したからね。女神達を助けだしてみせるって。だからあなたには屈しないよ」
「抗うか…。それもよかろう…。ならばもう一つお前達に問わせてもらう。ゲームを手に入れることができない子供達はどうなる? お前達はそのような子供達に無償で手を差し伸べることができるか?」
「そ、それは…」
「その戸惑いが貴様の答えとみていいのだな。それが女神の統治ではどうにもならない決定的な物だ。女神は国をよりよく発展させると言う名目でシェアを集め、その力を強化していくがその過程で見過ごしているのが貧困な子供達の存在だ。そのような子供達を救おうとせず、ただ国をよくすればそれでいいと思っているような女神達の統治を受け入れるわけには行かぬ。マジェコンヌの統治ならばそのような子供達でもゲームを楽しむことができるのだ。お前はどうだ? 銀の女神の継承者よ」
「確かにお金が無ければゲームを買うことなんてできないよね。でも、間違った方法で手に入れたゲームを子供達に広めようとするのは見過ごせない。ゲームが出来なくて困っている子がいるのならマジェコンヌに頼らなくても私が助けてみせる。今すぐには無理だし、それを成すことが簡単じゃないことだってわかってる。でも私は一人じゃない、みんなと力を合わせればきっと大丈夫。私はそう信じてる」
「舞…」
「女神だって完璧じゃないんだから、ブレイブの言うような問題が出てくるのは当然だと思う。みんなで協力して一つずつ結果を積み上げていけばいいんだよ。だから、お姉さん達を助けたら一緒に頑張ろう? そして示せばいいよ。女神の統治が間違っていないことを」
「アンタってやっぱり大人よね。まだまだ未熟で子供のアタシとは大違い。アタシはまたアンタのおかげで自分の答えを出すことができたわ。ブレイブ、アンタを舞と一緒に倒してお姉ちゃん達を助け出す! それがアタシの答えよ。マジェコンヌの統治は絶対に受け入れないッ!」
「なるほど…。ゲームを愛する者故の答えと言ったところか。その意気やよし。だが、世の中には思いだけではどうにもならんこともあるということをその身に刻んでくれよう! 来るがいい! 銀の女神の継承者、黒の女神候補生よ! その思いを俺に示して見せろ!」
「望むところだよ! ユニ、準備はいい?」
「ええ! アクセスッ!」
女神の力を解放した私とユニは武器を構える。私が今回使うのはランス。
さらに私の体から黒の光が現れて私とユニを繋ぐ。ハード・リンクの発現だ。
新たな繋がりを得た私とユニはブレイブ・ザ・ハードに立ち向かう。
二人目の犯罪組織マジェコンヌの四天王を相手に勝利を掴むことはできるのだろうか。