ラステイションの情勢を確かめるためにユニはケイに連絡を取るが、
ケイから伝えられたのは教会に私とユニに対する挑戦状が届いたという情報だった。
放置しておくわけにはいかないので私とユニは二人でゾーンオブエンドレスに向かう。
待っていたのは犯罪組織マジェコンヌ二人目の四天王であるブレイブ・ザ・ハードであった。
自分達の思いをブレイブに伝えるべく私とユニは立ち向かう。
「お前達の意志、見せてみろっ!」
ブレイブはその手に持った大剣で私達に斬りかかってくる。
かなりの速度だが何とかその一撃を回避して攻撃を加えていく。
「ペインスティンガー!」
ランスに銀色のシェアを纏わせて四回連続で刺し貫く。
ブレイブの装甲は非常に硬いと思われるが貫通攻撃ならそれなりのダメージが入るはずだ。
「舞、離れて! マルチブラスト!」
私の攻撃で続く形でユニが銃を上に向けてシェアの光弾を放つ。
数秒立つとシェアの光弾がブレイブの頭上から降り注ぎその装甲に傷をつけていく。
「ぬ…。やるではないか。俺も負けてはおれん。この胸の正義を貫くために!」
ブレイブの肩に備えられた砲塔から砲弾が発射される。
私とユニはそれを横移動で回避するが砲弾は方向転換して再度私達に向かってくる。
「…っ! ホーミング機能付きか…」
「アタシが迎撃するわ。ブレイクバレット!」
ユニの銃から放たれたのは魔力を込めることで破壊効果に特化させた弾丸。
正確な銃撃がブレイブから放たれた砲弾を撃ちぬき、爆発させる。
「見事な銃撃だ。ならばこれはどうだ!」
ブレイブは大剣に魔力を込めるとそのまま横に一閃する。
大剣を力いっぱい振ることで発生した巨大な風圧が私達に襲い掛かる。
ブレイブが込めたのは炎の魔力のようでそれを浴びるだけで焼かれるような痛みが走る。
「くうっ…!」
「やるわね…。流石マジェコンヌの四天王と言ったところかしら…」
ユニの言う通りである。ブレイブはトリックとはまた違った強さを持っている。
何度か大剣の一撃をランスで受けてみて感じたのだが
ブレイブの大剣の一撃は彼の思いが乗せられているかの如く重くて鋭い一撃である。
だが、それに屈する私達ではない。痛みに耐えて立ち上がる。
「強い意志を感じる…。まだ抗うというのか?」
「もちろんだよ。痛いけど、この体はまだ動くんだから。まだ行ける!」
「あんまりアタシ達をなめないでくれる? 例えアンタがどれだけ強くても屈しないわ!」
私とユニは体勢を立て直して再度武器を構える。
今度は私達の番だ。私達を繋ぐハード・リンクの輝きが増していく。
「面白い…! それがお前達の意志の強さだというのだな。ならば俺はそれに応えるのみ!」
「ユニ、行ける?」
「この動き、中々派手ね…。いいわ! やってやるわよ!」
私達は互いのシェアの力をさらに開放してその力を高める。
最初に動くのはユニ。特大のシェアの光弾を二発ブレイブに向かって放つ。
そのシェアに乗せる形で私は自分のシェアを込めたランスを力いっぱい投げつける。
ユニのシェアの光弾と私が投げつけたランスが混ざり合い一つの巨大な光の奔流となる。
私達の思いを乗せたその一撃はそのまま一直線にブレイブに向かって飛んで行く。
「「ジャベリンバレットッ!」」
「この力は…! ぬおおおおっ! 負けんっ!」
ブレイブは大剣で私達の一撃を受け止めてそれを押し戻そうとするが
ユニと初めての合体技をそう簡単に破らせるわけにはいかない。
シェアの力を送ってその威力をさらに増大させる。
「私達だって負けてないよ! このまま押し切るよ! ユニ!」
「私達の思いの力、その身に刻みなさい!」
負けるわけにはいかない。ブレイブに示すのだ。私達の思いを。
「「はあああああっ!」」
「この俺が押されるだと! これがお前達の意志の強さだと言うのか…!」
私達の力がほんの一瞬ではあるがその力を上回り、ブレイブは光の奔流に飲み込まれた。
「効いたのかしら…?」
「まだ油断しちゃダメだよ。勝負は最後までわからないから」
私達は光が晴れるまで警戒を解かないようにする。
「見事だ。まさかこれほどの力を持っていたとはな…。完全に俺の読みが甘かったと言うことか…」
光が晴れるとブレイブがその姿を現す。ダメージを与えられなかったのかと思ってしまったが
胸についている黄金の獅子の目に傷がついていた。どうやらダメージは通ったようだ。
「私達の勝ち…でいいのかな?」
「どう? アタシ達の思いはわかったかしら?」
「ふっ…。ふはははは!」
「何がおかしいのよ!」
「いや、おかしいのではない。嬉しいのだ。お前達のような強い意志を持つ存在と巡りあえたことがな。だが、悲しいと言うべきなのか。お前達の掲げる正義と俺の掲げる正義は明確に違うようだ…」
「悲しいよね。同じだったら一緒に共闘することだってできるかもしれないのに…」
「アンタ、その姿もそうだけど悪役ってキャラに見えないわね。本当に敵なのか怪しく見えてくるくらいだもの」
「面白いことを言う。確かに志が同じならばお前達とはよき友になれたのかもしれぬな…。だが俺はこの胸の正義を貫くためにお前達を倒さなければならない…。お前達の名を教えてくれないか?」
「神奈 舞だよ。銀の女神の継承者」
「ユニ。ラステイションの女神候補生よ」
「舞とユニか。その名前覚えたぞ。こちらも改めて自己紹介をさせてもらう。我が名はブレイブ・ザ・ハード! 犯罪組織マジェコンヌの四天王にして女神の統治に抗う者だ! 今日の所はこれで引かせてもらうとしよう。次に会う時にはお前達はさらに強くなっているのだろうな…。楽しみで仕方がない。その時にはさらに強い意志を持って挑んでくることだ」
「うん。次に会う時はみんなが一緒だからね。私達二人だけじゃないから」
「アタシ達は一人じゃないのよ。舞のおかげでアタシはそれを知ることができた」
「うむ。その力強い眼差し。これが銀の女神の継承者と今代の女神候補生ということか。トリックを打ち破ったことにも納得がいく。次に会う時が楽しみだ。さらなる強さを身に着けて再び俺に挑んでくるがいい。舞、ユニよ!」
ブレイブは私達に力強く言うとその場を後にする。
「やったね。ユニ」
「うん。ようやく舞とハード・リンクが発現したのね…。いろんな技の動きがアタシの頭の中に流れてきたわ」
「私もユニと繋がることができてよかった。これで私達はまだまだ強くなれる」
「そうね。アイツ…ブレイブを倒すにはもっともっと強くならなくちゃいけないのよね。それこそ、ネプギア達とお姉ちゃん達を超える勢いで」
「まぁ、そんなに焦る必要は無いと思うけど、これから一緒に頑張って行こう」
「舞には本当に助けられてばかりよね。ブレイブの問いにアタシは答えられなかった。舞がいたからアタシはあの時答えることができたのよ」
「あんな質問をいきなりされたら誰だって戸惑うと思うよ? 逆に私が先に聞かれてたら答えられなかったかもしれないし。でもブレイブにああ言った以上はお姉さん達を助け出してそれで終わりってわけにはいかないね」
「そうね…。貧しい子供達を助けるなんてそう簡単にはできないと思うけど、舞と一緒なら何だってできる気がするわ。ネプギア達の力も借りれば不可能じゃないわよね?」
「うん。今すぐには無理だけど一つ一つ結果を積み上げていこうよ。そうすれば、きっと大丈夫。さぁ、帰ろうか。プラネテューヌに。まずはお姉さん達を助けないとね」
「ええ。舞と出会えて本当によかったわ」
「私もこの世界に来てユニと出会えて本当によかったと思ってる」
ブレイブ・ザ・ハードを撃退した私達はゾーンオブエンドレスを後にする。
二人で手を繋いでプラネテューヌまで帰る。状況はどうなっているのだろうか。
「ただいま~」
ユニと二人でプラネテューヌの教会へと帰ってきた。
中に入るとネプギア達だけではなく各国の教祖が全員揃っていた。
「あらら、私達が最後なのかな?」
「舞さん、ユニちゃん!」
「待たせたわね。舞と一緒に帰ってきたわよ」
「どうやら、これで全員が揃ったようですね」
「そうですね。舞さんもユニちゃんもロムちゃんもラムちゃんもみんな一緒です!」
「アタクシ達教祖まで揃うなんていつ以来かしら? というかアタクシ達が全員揃った時なんてあったかしら?」
「いえ…。無かったと思います。女神候補生とゲイムキャラが全員揃っているのに私達が揃わないのは流石によろしくないかと…」
「それで、今は何の話をしているのかな? もしかして準備が整ったの?」
「舞とユニを待っていたところだよ。流石に君たち抜きで話を進めるわけにはいかないからね。舞、これを受け取って欲しい。これが僕から君と候補生達に提供する物だ」
私はケイから受け取ったのはブレスレット。
「これは…?」
「君達に以前集めて来てもらった宝玉と血晶を使って作り出した物さ。シェアクリスタルの力を増幅させる効力がある。これを使えば負のエネルギーが多いギョウカイ墓場でも普段通りの実力を問題なく発揮できるはずだ」
「プラネテューヌに来てたのはこれを作るためだったってわけ?」
「その通り。当初はラステイションのみで行動を起こす予定だったんだけどね。女神再救出作戦を前にして犯罪組織の活動が活発になってきてそうも言ってられない状況になったからイストワールに連絡を取ってプラネテューヌにお邪魔させてもらったというわけさ」
「そういう事情がありまして、他の皆様より先にお越しいただいて増幅装置の最終チェックとその他の準備にもご協力してもらっていたんですよ」
「そうだったんだ…。準備のほうはどんな感じなのかな?」
「後はシェアクリスタルだけです。明日の朝には完成する予定ですので、完成すれば皆さんにはギョウカイ墓場に赴いて女神再救出作戦を実行していただきます」
「いよいよか…」
「はい。できる限りのことは全てやりました。失敗が許されない作戦ですが、皆さんならそれを成し遂げて帰ってきてくれると信じています」
「うん…。ということは私はあいつと戦わないといけないってことか…。今になって緊張してきたよ」
このゲイムギョウ界に最初にやってきた時には歯が立たなかったが
今の私ならばあの戦闘狂とも互角にやり合えるとは思う。
それでも、怖い物は怖い。ネプギアがあの時にシェアクリスタルを使ってくれたから
私は生き延びることができた。下手をすれば肉片にされていたところである。
「舞さん、大丈夫ですよ。舞さんは一人じゃないんです! 私達みんながついてるんですから!」
「ありがとう。少し気分が楽になったよ。最初と立場が逆になっちゃったね」
自分には何もできなかったと落ち込んでいたネプギアを励ましていた時が懐かしい。
それに私には女神を救出してもやらなければならないことがあるのだ。
あの戦闘狂に殺されるわけにはいかない。銀の女神に会うためにも生きて帰るんだ。
「ネプギアだけじゃなくてアタシ達にも頼りなさいよ! アンタに助けてもらったお礼、まだ全然返してないんだから!」
「そうよ! 舞とわたし達が揃って初めて本当にさいきょーになれるんだから!」
「うん…! 今度はわたし達が舞お姉ちゃんをいっぱい助ける…」
「みんな…ありがとう…!」
「ふふっ、本当に皆さん頼もしくなりましたね。これも舞さんの力なのでしょうか?」
「いや、私はただ、みんなが仲良くなれるように自分にできることをしてきただけだよ。それにネプギア達は元々原石みたいなものなんだよね。一緒に頑張ってきてよくわかった。頑張れば頑張った分だけネプギア達はその輝きを増していく。私も銀の女神からもらったこの輝きを大切にしたい」
「舞さんと最初に出会った時が本当に懐かしいですね。今日はもうゆっくり休んでください。私もこれから最後の調整に取り掛かります」
「うん。そうさせてもらうよ」
私達は各自で自由行動ということにした。私は何をしているのかというと
このプラネテューヌを象徴する建造物とも言えるプラネタワーの屋上に来ていた。
夜空に輝く星達とプラネテューヌの街の光が幻想的な雰囲気を作り出している。
私は星空を見上げて自分の気持ちを落ち着かせていた。
「舞さん、こんなところでどうしたんですか?」
「イストワール…。それにパープルディスク達も一緒なんだね?」
「お隣、よろしいでしょうか?」
「うん」
イストワール達が私の隣にやってくる。
「いよいよ、明日なんだよね?」
「はい…。最終調整も済んで後は明日を迎えるだけとなりました」
「緊張されているのですか…?」
「うん。失敗が許されないのはわかってる。今まで何とか戦い抜いてきたけどギョウカイ墓場で待ち構えているのは私が殺されそうになった相手だからね」
「だが、お前はその時と比較して強くなったのだろう? あまり気にし過ぎると仲間にまで心配されてしまうのではないか?」
「確かに…。みんな優しいからね。この世界に来てみんなと出会えて本当によかったと思ってる。でも私にはまだ会わなきゃいけない人がいる。いや、助け出さなければならない人がね」
「銀の女神ですか…? 彼女が姿を現さないのは…」
「この空の上に捕まってるみたいなんだ。一体誰が銀の女神を捕らえているのかはわからないけど、ネプギアとハード・ユニゾンを発現させたときの会話で言ってたよ」
「犯罪組織ではないんですか?」
「なんとなくだけど違う気がする。それとはまた別の何か…。そこに行ってそれを知るためには翼が必要なんだよ。ゲイムギョウ界の空を舞うための翼がね」
「舞さんの女神化は不完全な物だと聞きました…。今はどういう状況なのですか?」
「多分、残っているのは翼だけだと思う。翼のプロセッサユニットは確かにあるけど小さくて浮くことしかできないからね。銀の女神が言うにはもっと大きく空を舞うための翼があるんだって。それを発現させたらここからゲイムギョウ界の空の上に飛び立とうと思う。だから、明日は絶対に生きて帰らないといけないんだ」
「そうですか…。先ほども申し上げましたが舞さん達ならネプテューヌさん達を助け出してこの教会に戻ってきてくれることを信じています。ネプギアさん達と一緒に旅立って私が提示した全ての条件を見事にクリアした貴女ならば」
「私達がこうして集まることができたのも貴女達のおかげなのですよ。だから自分を信じてください。今の貴女ならどこまでも行けるはずですよ」
「ありがとう。少し気になったんだけどイストワールとパープルディスク達って知り合いなの?」
「まぁ、そうですね。一応古くからの友人と言っておきましょうか。といっても私は彼女達と違って銀の女神や金の女神との面識はありません。会ってみたいと思っています。このゲイムギョウ界に舞さんを呼んだ彼女に。そして会ってお礼が言いたいです。ありがとう。と…」
「イストワール…。うん。私もお礼を言いたい。この世界に私を呼んでくれてありがとうってね」
「もう夜もだいぶ更けてきましたね。そろそろお休みになってください」
「うん。そうさせてもらうよ。イストワールはまだ休まないの?」
「もう少しだけここで…。舞さんともっとお話をしたいところではありますが、我儘を言うわけにも行きませんからね。よかったら女神達を助け出したらまたここで夜にお話をしませんか? 舞さんとお話をしたいのは私だけではありません。彼女達もそれは同じなのです」
「わかった。それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい。舞さん」
私はプラネタワーを後にすると教会の部屋に戻って布団に入る。
いよいよ明日だ。女神再救出作戦が実行される。
あの戦闘狂を倒してネプギア達のお姉さんを絶対に助け出して見せる。
みんなで生きて帰るんだ。またみんなで笑って過ごせる明日を迎えるために…。