名前を付けてあげてほしいと言われて私は迷わずマイと入力しました。
怒り狂った墓場の守護者、ジャッジ・ザ・ハードを撃破した私達。
ゲイムギョウ界を構成する四国のシェアを集めて作り出したシェアクリスタルの力で
ネプテューヌ達を救出することができたが、私に向けられた殺気の正体を確かめるべく
再びジャッジと戦った場所に向かうとマジック・ザ・ハードがその姿を現す。
その隣には以前戦ったトリックとブレイブの姿もあった。
マジックは私達がジャッジを倒した時点で流れがマジェコンヌ側に傾いていると言う。
それは言い換えれば犯罪神マジェコンヌの復活が近づいているということだった。
それに加えてマジックが教えてくれたのは銀の女神を捕らえている者の情報。
今のゲイムギョウ界に本来存在しないはずの者が銀の女神を捕らえていると言う。
マジックが亡霊と呼称したその存在に勝って銀の女神を救出しなければならない。
マジックの忠告を聞いた私はギョウカイ墓場の入口に作られていた転送ポイントに向かった。
地面に描かれた紫色の魔法陣の上に乗ると来た時と同じ光に包まれる。
光が晴れると私はプラネテューヌの教会に戻ってきていた。
「帰ってこれた…」
「舞さん、一体何があったんですか? 皆さんが無事に戻られたと思ったら舞さんの姿が見えなかったので本当に心配したんですよ?」
「ごめん。どうしても確かめたいことがあって。ネプテューヌ達は?」
「ネプテューヌさん達は部屋で休んでいます。シェアクリスタルの力で動けるようにはなりましたが、三年間もあのような場所に幽閉されていたのです。ネプテューヌさん達にはとにかく休息が必要です。ネプギアさん達にもいったん部屋に戻ってもらっていますが、皆さん、舞さんのことをずっと心配していましたよ?」
「そっか…。何はともあれ、ネプテューヌ達を助けることができたから本当によかったよ」
「はい。本当にありがとうございました。今回の作戦成功でようやく希望が見えてきたと言っておきましょうか。とりあえず皆さんに顔を見せてあげてください」
イストワールに案内されて私はネプギア達が待っている部屋に向かった。
「ただいま。みんな、心配かけてごめん。ちゃんと無事に帰ってきたよ」
「舞さん…!」
ネプギアが私に抱き着いてきた。
「あれ、ネプギアは眠ってなかったっけ?」
「舞さんがまた遠くに行ってしまう気がして…。目が覚めたんです…」
「そっか、ごめんね。ネプギアを置いて勝手にどこかに行ったりしないから大丈夫。ネプギアと私はこれからもずっと一緒だよ?」
「はい…!」
「それで、アンタはあの場所に戻って何をしていたのよ? 確かめたいことって何だったの?」
「隠す理由もないね。実はあの時に殺気を感じたの。私だけに向けられた明確な殺気をね。誰がそれを私に向けて放っていたのかをどうしても確かめたかったんだ。それでジャッジと戦った場所に戻ったら正体がわかった」
「誰だったの?」
「マジック・ザ・ハードだよ。赤い髪に大きな鎌を持った女の人。さらにトリックとブレイブもそこにいた。殺されるかと思ったけど向こうは私を殺すつもりはなかったみたい。マジック達は犯罪神の復活が近づいているって言ってた。私達がジャッジを倒した時点で流れはマジェコンヌ側に傾いているって…」
「どういうことなんでしょうか…」
「わからない。ただ言えるのは私達はもっと強くならなくちゃいけないってこと。私達が倒したジャッジはマジェコンヌ四天王の中でも最弱だったらしいけどね。残った四天王のトリックとブレイブ、そしてマジックを倒して真の平和を取り戻すためにはさらなる強さを身に着けなければならない。そのためにはまずは銀の女神を救出しなくちゃ…」
「銀の女神様、どこにいるの…?」
「この空の上だよ。マジックは銀の女神を捕らえている人物のことも言ってた。この世界に、今のゲイムギョウ界には本来存在しないはずの者だって…。マジックはそいつのことを亡霊って呼んでた」
「何よそれ…。オバケが舞に力を渡した銀の女神を捕まえてるってこと?」
「わからない。それを確かめるために私は空に上がらないといけないんだけど…」
銀の女神が捕らわれている場所に行くためには
完全に覚醒した銀翼のプロセッサユニットが必要になる。
ジャッジと戦った際はネプギアとハード・ユニゾンを使っていたので
私が普段使う銀の女神の力は解放していなかった。それ故に銀翼のプロセッサユニットが
どうなっているのか確認が取れていない。この場で解放すればすぐにわかる話ではあるが…。
とりあえず確認を取るために力を解放しようとすると私のNギアに着信が入った。
「クロから…?」
Nギアを取り出してボタンを押すとNギアの画面にクロが映し出された。
『舞。今、話をしても大丈夫かな?』
「うん。どうしたの?」
『これまで黙ってた私自身のことを舞達に話す時が来た。今からネプギアちゃん達と一緒にセプテントリゾートまで来てもらうことはできるかな?』
「私は大丈夫だけど…。ネプギア達に確認を取ってみるね?」
「どうしたんですか?」
「クロが今からセプテントリゾートに来てほしいって…。自分の事を話したいって言ってる。私は今から向かおうと思うんだけど、ネプギア達は行けそうかな? クロは私とネプギア達に来てほしいって言ってる」
「クロさんが…? わかりました! 行きます!」
「アタシも行くわ。ラステイションで会った時から気になってたのよね…」
「ラムちゃんと私を助けてくれたあの杖をくれた人…。気になる…」
「来てほしいって向こうが言ってるんでしょ? なら、行くしかないじゃない!」
「ありがとう、みんな。それじゃ、クロに伝えるね」
私はクロに今からネプギア達と一緒に向かうことを伝える。
『ごめんね? 我儘言って…』
「気にしないで。それじゃ、今からネプギア達とそっちに行くから」
『うん。待ってるよ』
クロとの通信を終了し、私達はセプテントリゾートへと向かう。
ちなみに今は夜である。昼間は雲一つない青空が広がっているセプテントリゾートだが
今は夜空に星達が輝いていて波の音だけが静かに響いている。
「来たよ…」
「こんな夜遅くにごめんね。来てくれてありがとう」
前回会った時と変わらず黒いコートに身を包みフードで顔を隠しているクロ。
スライヌ討伐の際の剣と盾から始まって色々な武器をくれた恩人と言ってもよい。
自分の事を話すということは謎に包まれたその素顔を見せてくれるのだろうか…。
「話してくれるんだよね?」
「うん。私の友達も呼んでる。もう少しで来るはずだよ。空を見てごらん」
その言葉に私達は星空を見上げるとこちらに向かってくる存在が視界に入る。
流星の如く空を凄まじい速さで駆け抜けると大地に降り立つ。
それはルウィーで私達を助けてくれた女神の瞳を持つドラゴンだった。
『久しいな。銀の女神の継承者よ』
初めて出会ったあの時と同じように私の頭の中に語りかけてくる女性の声。
「あなたがクロの友達…? あなたは一体何者なの…?」
『ふむ。この姿では話がしづらいな…。いつもの姿に戻らせてもらうとしよう』
ドラゴンの体が光に包まれてその光が晴れると一人の少女が現れる。
「あ、あなたは…。シエルさん!?」
「久しぶりだね。ネプギアちゃん。また会えて嬉しいよ。初めましての人は初めまして。私の名前はシエル。女神としての名はクリスタルハートって言うんだ。女神化すると何故かドラゴンになって口調も変わっちゃうんだけど、あれも私だからよろしくね?」
「クリスタルハート…」
「お姉ちゃんやアタシ達以外の女神は始めて見たわ。それにものすごく強い力を感じる…」
「さて、この場にいる女神は私やネプギアちゃん達だけじゃないよ。舞ちゃん、女神の力を解き放ってみて。あなたのその輝きを彼女に見せてあげて。ここまで言えばわかるよね?」
「うん。行くよ…!」
シエルの言葉に促され私は銀の女神の力を解放する。私の黒髪が銀色に変わると
これまでに発現した銀の女神のプロセッサユニットが装着される。
脚甲・グローブ・翼・王冠・鎧。最後に残ったプロセッサユニットが目覚める。
小さな銀翼がシェアの光に包まれると大きな銀の翼に変化した。真の姿を獲得した
その銀翼は銀色の太陽を連想させるかのような冷たくも美しい輝きを放っていた。
「何度見ても綺麗だね…。私はこの輝きに救われたんだよ?」
私の女神化に呼応するようにクロの体が光に包まれる。その光の色は金色。
光の中から私と似た形の金色のプロセッサユニットを纏った存在がその姿を現した。
美しい金の輝きを放つ長髪は風に靡いていて、
太陽の髪飾りと対を成す月の髪飾りがついている。
私やネプギア達と同じ女神の瞳を持った彼女は
ゲイムギョウ界を明るく照らすかの如く神々しい光を纏って大地に降り立った。
「きれい…」
「本当にお月様みたい…」
「この場合は初めましてと言った方がいいのかな? それがあなたの真の姿なんだね?」
「改めて自己紹介させてもらうよ。私の名はセレナ。女神としての名はゴールドハートだよ」
「クロさんが、金の女神様だったんですか…!」
「だからあの時にブラックディスクはアンタにこのラステイションの守護を任せたのね…」
「そういうことになるね。舞とネプギアちゃん達は私のことをどこまで知ってるのかな?」
「ホワイトディスクから過去を聞かせてもらった。国を奪われて、銀の女神と出会ったんだよね?」
「そこまで聞いてるなら話は早いかな。私は戦いが終わってからあの子と一緒に旅を続けてた。シエルとは旅の途中で出会ったんだよ。シエルと出会ってからは三人で平和を取り戻したゲイムギョウ界を旅してたんだけど、それはある人物に壊されたんだ…」
「何があったんですか?」
「私達の前に現れたのは本当に亡霊と呼べる存在だった。あいつは確かに消滅したはずなのに…。私達の前に突然現れたあいつは私とシエルの力を奪ってあの子をゲイムギョウ界の空の上に作り出した牢獄に閉じ込めた。私は女神化はできるけど本来の力が出せない…。あの子が捕まってる場所に行くことすらできないんだ…。悔しいけどね…。それはシエルも同じ。シエルは今の状態でも十分強いけど、シエルの本来の力もまだあいつに取られたままなんだ…。そしてあの子が捕らわれたことに乗じる形で現れたのが…」
「マジェコンヌってわけ…?」
「うん。でもあの子は捕らわれた状態である術を行使した。それを使うことで別の世界の人間を呼び寄せて自分の力を渡すって言う荒業を見事にやってのけた。そして継承者に選ばれてこのゲイムギョウ界に呼び寄せられた人間が舞、あなただよ」
「捕らわれた状態で行使するなんてすごいね…。でもどうして私だったのかな?」
「あの術は本当に無茶苦茶なところが多かったみたいだから、理由を追及しようと思うと収拾がつかなくなるかな…。ただあの子はゲームが本当に好きだった。この世界に住むクリエイター達の手によって新しいゲームが次から次へと生み出されるこのゲイムギョウ界を心から愛していた。舞のゲームが好きな気持ちとあの子の気持ちが何かの拍子で結びついたんじゃないかな? 私はそう考えてるよ」
「仮にそうだとしても本当にお礼を言わなくちゃいけないね。たまたま選ばれただけかもしれないけど、この世界に来て、たくさんの仲間が、友達ができた。今では私の大切な宝物だよ」
「そっか。あの子に話してあげたらきっと喜ぶと思う」
「私もいっぱいお話をしたいな。それで銀の女神が捕まってる場所に行くには力を解放して空に上がればいいのかな?」
「うん。その翼を使ってプラネタワーの屋上から飛べば行けるはずだよ。でも、舞の前に立ちふさがるのは過去の私が勝てなかった相手…。今まで舞が戦ってきたどの敵よりも強いと思う。そいつと舞は一人で戦わなきゃいけない…」
「あなたが勝てなかったってことは相当な強さを持ってるんだろうね。でもセレナ。一つだけ間違ってるよ。私は一人じゃない。例え離れていても私達の心は繋がってる。そうだよね?」
「はい…! 一緒には行けなくても舞さんには私達がついてます!」
「そうね。銀の女神を助けて戻ってくるって信じてるわ。舞がいてくれたからアタシ達はここまで来れた。お姉ちゃん達を助けることができた…!」
「うん…。舞お姉ちゃんとわたし達はずっと一緒だもん…。だから信じてる…」
「そうよ。舞はさいきょーなんだから。オバケなんかに負けないわ!」
これが私が今までの旅で得た最も大切な物。ネプギア達と紡いだ絆である。
不思議と自信がついてくる。私達ならどこまでも行けるはずだ。これから先も…。
「ふふっ。舞ちゃんとネプギアちゃん達は本当に仲がいいんだね。セレナ、舞ちゃんならきっと大丈夫だよ。あの子を牢獄から救い出して二人で帰ってきてくれるはずだよ」
「舞は本当に強くなったね。初めて出会ったあの時が懐かしいよ」
「初めてのスライヌ討伐の時だよね。確かに懐かしいなぁ…。私は明日の朝に空に飛び立つよ。銀の女神を助けて二人で帰ってくる。約束する」
「うん。お願い…!」
決意を固めた私はセレナとシエルに誓いを立てる。
二人の大切な友達を…。私に大切な物をくれた銀の女神を絶対に助けてみせると。
そしてセレナとシエルに別れを告げて私達はプラネテューヌの教会に帰還する。
私達は部屋に戻るとそのまま眠りに就く。そして太陽が昇り、朝を迎えた。
「…」
私は今、プラネタワーの屋上で銀の女神の力を解放して空を見上げていた。
銀の女神を助けに行くことは帰ってから全員に話したのでみんなが見送りに来てくれた。
「舞さん、これを受け取ってください」
ネプギアから手渡されたのは銀の長剣。それに続くようにユニからは銀の銃。
最後にロムとラムからは太陽と月の杖を受け取るとそれを粒子化して
体の周りに漂わせることでいつでも展開できるようにしておく。
「舞さん、銀の女神様と一緒に二人で帰ってきてください…!」
「さっさと助け出してきなさい。離れていてもアタシ達は舞と一緒よ」
「舞お姉ちゃん、頑張って…!」
「わたし達がついてるんだから!」
「ありがとう…! それじゃ、行ってくるね!」
私が成すべきことはただ一つ。銀の女神を捕らえている存在を倒して二人で帰ってくること。
交わした約束を守るために私は銀翼を羽ばたかせてゲイムギョウ界の空へ飛び立った。
今回は色々と一気に詰め込みました。
これからもこの作品を読んでくれたら嬉しいです。