ギョウカイ墓場で捕まっていた間に溜まってしまったネプテューヌの仕事。
イストワールが示したノルマの分だけクリアしてゲームとトークを楽しんだ私達。
この平和な日常がずっと続いてほしいことを願って次の日を迎える。
「さて、今日の仕事のノルマですがギルドでクエストをこなしてきてください。現時点でこなしていただきたいクエストを纏めましたのでこちらをクリアしていただければ後は自由にしていだだいて構いません」
「これをクリアすれば今日は自由なんだ! いーすん、嘘じゃないよね?」
「はい。あなたがきちんと仕事さえこなしてくれれば何も言いませんから。元気いっぱいのネプテューヌさんならこれくらいは朝飯前ですよね?」
「ふっふ~ん。主人公の力、見せてあげるよ! すぐに終わらせて舞と遊ぶ時間をいっぱい作っちゃうからね!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、油断はしないようにね?」
「舞の言う通りよ。元気なのはいいけどあまり調子に乗らないこと。怪我でもしたら舞と遊べなくなるわよ」
私達はイストワールからクエストの一覧を受け取ってギルドに向かう。
今回私達に課せられたノルマは討伐クエストが三件あるが油断はできない。
「そういえば、仕事でふと思い出したんですけど、アイエフさんってプラネテューヌの諜報部で働いているんですよね? まだお仕事は続けられてるんですか?」
「ええ。ただ、マジェコンヌが出て来てからは半休止状態と言ったところ。最近は諜報部の仕事よりかはクエストでお金を稼ぐことが多くなってきたわね。諜報部にはオトメちゃんとかネバランちゃんとか私以外にもたくさん人がいるから私が半休止状態になっても特に影響はないわね」
「諜報部ってどんな仕事するの? やっぱりスパイ活動とか?」
「一般的な諜報活動が主な業務になるわね。他国の極秘情報を盗んで来たりだとか、嘘の情報を流して混乱させたりとか…。一言で言うなら悪い仕事ってことになるけど、マジェコンヌが出て来てからはそっちの対応に追われてるのよ。今ではみんな各地を回って犯罪組織の動向を探ったり、情報の収集に努めているわ」
「なるほどね。例えばの話だけどこの世界で就職するなら私はどんな職業に就くことになるのかな…。この世界に来る前もそうなんだけど自分の本当にやりたいことがまだ見つからないんだよね。今はマジェコンヌを倒して平和を取り戻すという目標があるけど、それが終わったらどうしようかなってふと考えちゃった…。流石に無職は嫌だからね…」
将来は自分の本当にやりたい仕事に就きたいものである。
目標が出来ればその実現に向かって努力を積み重ねればいいだけなのだが
その目標を定めるのが大変なのだ。闇雲に頑張りを重ねてもあまり意味は無いと思う。
「舞の昨日の仕事っぷりも中々だったわよ。もし諜報部を選ぶなら歓迎するわ。ゲイムギョウ界のありとあらゆる事情には精通できるんじゃないかしら? 私もマジェコンヌが現れてからは各地を回ったから各国の事情にはかなり詳しくなったわ。もし最後にこの世界を選ぶのならしっかり考えて自分の答えを出しなさい。人生相談なら聞いてあげるから」
「ありがとう。その時は頼りにさせてもらうね」
「舞さんならナースも似会いそうです。もし目指すならわたしがお手伝いするですよ?」
「そういえばコンパはナースなんだよね? 確か看護学校に行ってたんだっけ?」
「はいです。お勉強は大変でしたけど、頑張ったですよ? 怪我をして困っている人がいたら治してあげたいって気持ちを忘れずに勉強を続けたら目標のナースになれたです」
「すごいなぁ…。そういうのは本当に憧れるよ。自分がしたいことを見つけてそれを現実にする…。口で言うのは簡単だけど、これほど難しいことはないんだよね。コンパは私達についてきてくれてるけど本来は病院勤務なのかな?」
「そうです。ただ今は長期休暇をもらっている状態です。マジェコンヌを追い払ってゲイムギョウ界の平和が戻ったら病院での勤務になるですね。平和になっても怪我する人はたくさんいるです。そんな人達の力になりたいです。舞さんにもやりたいこと、見つかるといいですね?」
「うん。見つかるといいな、私の本当にやりたいこと…」
最終的にどちらの世界を選択することになってもそれは変わらない。
自分の本当にやりたいことを見つけて残りの人生を楽しまないと…。
「私も事実上の無職だからなぁ…。昔のセレナみたいに国を作るなんて難しいことはしたくないんだよね…。でも、舞と一緒なら作ってもいいかもしれないね? それはそれで面白くなりそうな気がする」
セレナは自身の国である金の大地を守護していたが、アリアは元から国を持たない女神だ。
自由な性格ではあるが一度作ると決めたらあっさりと実現させてしまいそうなところがある。
「え~。舞は私専属の秘書になるべきだよ! できる妹のネプギアに加えてそこに舞が入ってくれればプラネテューヌはゲイムギョウ界最強の国になるよ! 主人公の私が言うんだから間違いないって!」
「私も舞さんがお姉ちゃんの秘書になってくれたら嬉しいです!」
「あはは…。誘ってくれるのは嬉しいけど、流石に国の運営に関わる仕事については考えさせてほしいかな…。責任が大きすぎる仕事も考え物だからね。仮にやるとしても教会で数年研修を積ませてほしいところだよ」
アリアとネプテューヌの言葉を聞いて考え直すと割と選択肢は多い気がしてきた。
最も本格的に将来を考えるのは真の平和を取り戻してからの話にはなってくるが…。
アイエフの仕事の話から将来に関わる話に発展したがこれも大事なことである。
自分の答えはきちんと出したいと思いながら歩いているとギルドに着いた。
「懐かしいな…。セレナやシエルと一緒にたくさんのクエストをこなした日々が甦ってくるよ」
「私も懐かしく感じるよ。ここで四人で受けたスライヌ討伐から私の戦いは始まったから」
懐かしい思い出に浸りながらも、今回イストワールに頼まれたクエストを再度確認する。
基本的に女神に依頼されるのは討伐クエストが主だ。危険種の討伐が含まれることもある。
今回の仕事でこなすクエストは討伐クエストが三つ。
ターゲットはゴーストガール、ゴーストボーイが各五体ずつ。M-3が二体。
最後に危険なシャンプルが一体。こちらは危険種であるが比較的弱めのモンスターらしい。
いずれもプラネテューヌの街の近くにあるダークネス60というダンジョンに生息している。
「あっ、ギルドカードを更新してもいいかな? 捕まってたからずっと放置したままなんだ」
「こっちの世界にもあるんだね?」
ギルドではギルドカードという物を作ることができる。
作ることは強制ではないが、ギルドカードには自分が倒したモンスターの数や
クリアしたクエストの数がランクごとに記載される。いわば自分の実力を示す物なのだ。
危険種を何体も討伐したり、高難度クエストを多くクリアすればギルドに評価される。
ギルドの評価を得ることができれば、報酬がギルドから追加で上乗せされたり
特定人物指定依頼掲示板にも名前が上がる機会が増えてきたりするらしい。
アリアはギルドの窓口で更新の手続きを済ませる。窓口の人がかなり驚いていたようだが…。
「これでよしと…。放置してるとモンスターの討伐数やクリアしたクエストの数が記録されなかったりするからね。これからはちゃんと更新しないと…。クエストでシェア集めをするしかない私にとってはたくさんの思い出が詰まった物なんだよ?」
「何だか受付の人が驚いてたみたいですけど、何かあったんですか?」
「私のカードの記録を見たからだろうね。更新の時にお戻りになられたのですか?って言われたから。セレナとシエルと一緒に無双してた頃は上位危険種や接触禁忌種もたくさん討伐したからね。今の状態で挑んだら確実に失敗するだろうけど…」
「見せてもらってもいい?」
「いいよ。よかったら舞も作る? 受付の人に言えばすぐに作ってくれるよ? 書類を書くだけだから」
「一応作っておこうかな。ギルドにはこれからもお世話になるだろうし」
私は受付に行ってギルドカード作成の手続きをする。
アリアの言う通り、簡単な書類の記入を済ませるとカードを受け取る。
当然のことだがモンスター討伐数は0。クリアしたクエストの回数も0の状態である。
ちなみにアリアのギルドカードを見せてもらったのだが一言で言うと凄まじい。
クリアしたクエストの回数は各ランクで1000回を超えている。
モンスターの討伐数は雑魚モンスターについては500体を超えている種類がほとんど。
さらに通常の危険種が300体、上位危険種が150体、接触禁忌種は100体前後。
これはモンスターごとの数字である。アリアの無双っぷりが顕著に表れているカードだった。
私もここまでは行けなくてもそれなりの記録を残していきたいと思った。
戦いの記録を残していくのも悪くない。それも大切な思い出の一つなのだ。
私達はギルドを出てダークネス60に向かう。
ダークネス60はプラネテューヌの街の近くにある廃工場である。
ゲイムギョウ界で最も技術が進んでいるプラネテューヌだが現在の状態に至るまでの
過程で取り残されてしまった場所なのだろうか。今ではモンスターの住処と化している。
内部は薄暗いが外から太陽の光が差し込んでいる場所がいくつかある。
雑草がいたるところに生えていてドラム缶や機械の部品が残された状態になっている。
時の流れに取り残されたというのが辺りを観察してみて思った感想だ。
私達はモンスター討伐を開始する。
私とアリア、ネプギアは特殊女神化状態。今回使用する武器は短剣である。
まずはゴーストガールとゴーストボーイ。姿を消す能力を持っているようだが
攻撃動作に移る時などは姿を現すのでその隙を見逃さずに攻撃を叩き込んで倒していく。
敵の数は多いが数が多いのはこちらも同じ。分散してその数を減らしていく。
ネプテューヌと一緒に戦うのは今回が初めてだがやはりその戦闘力は目を見張る物がある。
重量のある大剣を軽々と扱い、攻撃範囲の大きさを活かして敵を薙ぎ払って行く。
続いて私達の前に現れたのは機械型モンスターのM-3。
私とネプギアの女神の力を封じたM-3カスタムはこれを改良した物ということになる。
犯罪組織が開発した機動兵器の初期型に当たるが今の私達にとっては強い敵ではない。
それを迎撃するのはプラネテューヌの女神姉妹である。
ネプテューヌは剣を突きだすと、そのままM-3に突撃する。
一撃、二撃と加えてその体を浮かせると最後に強烈な一閃をお見舞いする。
「一閃! な~んてね」
これが本家のクリティカルエッジである。
M-3の体は真っ二つに両断され消滅する。
「次は私の番ですね。バリアスライドです!」
ネプギアはシェアの力で作り出したバリアを纏い流れるような動作で斬撃を入れていく。
M-3は背中のパーツを飛ばして攻撃してくるが、ネプギアを守るバリアの前には無力である。
以前よりも強力なシェアの力を纏った長剣の一撃はその体を難なく斬り裂き消滅させた。
「ネプギア、本当に強くなってるね~。ところでずっと気になってたんだけど、なんで女神化した時の瞳になってるの?」
「これはアリアさんから教えてもらった特殊な女神化だよ? お姉ちゃんも試してみる?」
「おぉ! それはすごそうだね! やり方を教えてくれないかな?」
ネプギアがやり方を説明するとネプテューヌは目を閉じて集中する。
何かが弾けるような音が響くと同時にネプテューヌはその瞳を開く。
その瞳には女神の印が浮かび上がっていた。当時の私やネプギアを上回る速度での移行である。
これが天才という物なのだろうか。ネプテューヌのスペックはかなり高いようだ。
「力が溢れてくるわね…」
特殊女神化状態になったネプテューヌは姿はそのままなのに
喋り方が普段の状態から女神化後の状態に変化している。
「こうも簡単に習得してくれるとはね…。流石はネプギアちゃんのお姉ちゃんと言ったところなのかな? 私としては嬉しい限りなんだけど」
「なんか、いつもの姿でその口調だと違和感があるね?」
「そうかしら? まぁ、仕様みたいなものよ。これが私なの」
「いーすんさんやノワールさん達に見せたら面白いことになりそうですね」
「このねぷねぷも面白いです! ずっとその状態でいたらどうですか?」
「そうね。仕事をする時にそれを使ったら苦にならないんじゃないの?」
「せっかくの提案だけど遠慮しておくわ。普段と違う女神化といっても疲れることには変わりないもの。さあ、残りのモンスターを倒してさっさと帰りましょう」
最後に残ったのは危険なシャンプル。
小さいウサギのようなモンスターで一見弱そうに見えるのだが
その見た目からは想像できない力を秘めているのだ。
ちなみにアリアの情報によるとさらに強力な個体として
超危険なシャンプルと超絶危険なシャンプルと呼ばれる個体がいるらしい。
見た目は通常のシャンプルと特に変わらないのだがその力は凄まじいとのこと。
危険なシャンプルと遭遇した私達は背後から攻撃を加えていく。
危険種は一度攻撃を加えるとしつこく追い回してくるのが共通する特徴だ。
逆にこちらから攻撃を加えなければ何もしてこないのだが周辺のモンスターより
強いことに変わりは無いのでこうしてギルドから討伐依頼が出されることも多い。
基本的には体当たりを主軸とした攻撃なのだが試しに防御態勢でそれを受けてみると
攻撃の重さに驚きを隠せなかった。この小さい体のどこにそんな力があるのだろうか…。
危険種の強さを再認識したところで連携による攻撃を加えていく。
攻撃力のみならず体力と防御力も周りのモンスターと比較して高いようだが
まだ危険種の中では弱い方ということもあって割とすぐに弱りだした。
「これで決めるわよ。舞、行けるかしら?」
「勿論。行くよ? ネプテューヌ」
私とネプテューヌは同時に駆け出す。
「最初は私からだよ。牙連蒼波刃!」
踏み込み切りを繰り出し、そこから繋げる斬撃の衝撃波によって敵を追撃する奥義。
それにネプテューヌが続く。最後を飾るのは勝利の刃である。
「はあああっ! ビクトリィースラッシュ!」
ネプテューヌは凄まじい速度で危険なシャンプルに接近するとすれ違い様に剣を振り抜く。
数秒置いてV字型の斬撃が危険なシャンプルの体を斬り裂き、消滅させた。
「障害排除…。ミッションコンプリートよ…」
全てのターゲットを討伐した私達はダークネス60を後にする。
クエストを繰り返していけばシェアも上がるし、いい訓練にもなる。
この流れでみんなと一緒にこれからも頑張って強くなりたいと私は思った。
とりあえず帰ったらみんなでプリンを食べることから始めるとしよう。