限定版の予約は厳しいですかね。とりあえず休みになったらゲーム屋に行かないと…。
プラネテューヌの街の近くにある廃工場、ダークネス60のモンスターを駆逐した私達。
イストワールから出されたノルマはこれで達成となったのでこれで自由となった。
今はネプテューヌの部屋に集まってプリンを食べている最中だ。
やはり疲れた時には甘い物がいいと改めて思う。
だからといって食べ過ぎると体重の増加を招いてしまうわけだが…。
ちなみに私はどれだけ甘い物を食べても体重が増加しない体質である。
羨ましがられることも多々あるが私の身長は伸びないし胸もずっとつるぺたのままだ。
「どの国から回ろうかな…」
私が考えているのはゲイムギョウ界の三国を回る順番である。
旅で回った順番だとラステイション、ルウィー、リーンボックスの順番になるが
また違った順番で回ってみるというのも一興とも言えるだろう。
「悩んでる舞にいい物があるよ?」
ネプテューヌが自分の机の引き出しから取り出したのは女神トランプと呼ばれる物である。
その名の通りカードの絵柄が様々な衣装を着た四女神になっているのが特徴だ。
ハートがネプテューヌ。スペードがノワール。ダイヤがブラン。クローバーがベール。
絵柄の例を挙げるならばQのカードは女神化状態で綺麗なドレスを着た絵柄である。
ちなみにジョーカーの絵柄は魔女っぽい感じのオバサン。
見つめていると時代遅れの笑い声が聞こえてきそうな気がする絵柄である。
「舞はあっちを向いててくれる?」
「わかった。見ないようにすればいいんだよね?」
私はネプテューヌの方を見ないようにする。カードを動かす音だけが響いていた。
「オッケー! こっち向いていいよ!」
ネプテューヌの言葉に振り向くと、机の上には伏せられた三枚のカードがあった。
「順番に捲っていけばいいのかな?」
「うん! 私が伏せたカードの絵柄はそれぞれノワール、ブラン、ベールってなってるから舞が引き当てた順番にそれぞれの国を回る。面白いと思わない?」
「確かに。難しく考えるよりかはいいね。じゃあ、早速やらせてもらおうかな」
私はネプテューヌが伏せた三枚のカードを順番に捲る。
その結果、一枚目がベール、二枚目がノワール、三枚目がブランとなったので
回る順番としてはリーンボックス、ラステイション、ルウィーとなった。
「最初はリーンボックスからか…。ベールは今頃何をしてるのかな?」
「きっとネトゲだよ。ベールは私以上のゲーマーだからね」
「仕事じゃないんだ…。なんか持ってたイメージと違うみたいだね。第一印象としてはおしとやかな感じだと思ってたけど」
「徹夜でゲームするのは当たり前レベルだよ? 同じゲーム好きとしては舞と気が合うんじゃないかな? 四女神オンラインっていうネトゲがあるんだけど、ベールはそれをかなりやり込んでるね。きっと今も緊急クエストが来ましたわ! な~んて言ってると思うよ」
「四女神オンラインか…。あれって今もあるんだね? 私もやってたんだけど、捕まってからは放置状態なんだよね。騎士団のみんな元気にしてるのかな?」
「私達が女神になってからできたネトゲだから、けっこう前からあるよ? アリアとベールってどっちがやり込んでるのかな?」
「う~ん。どうだろう。私は自分のパソコンが無くてネットカフェでプレイしてたから、ベールよりかは劣るんじゃないかな? 放置してると知らない間に仕様が変わってるのが困るんだよね…。新しい物を取り入れて進化していくのがネトゲだから仕方がないのはわかってるけど」
アリアの気持ちはよくわかる。私にも二年半近くやり込んでいるネトゲがあるからだ。
他のゲームの攻略の兼ね合いがあるので毎日はインしないが放置していると
知らない間に新しい仕様が実装されていて何をしたらいいのかわからなくなることが多いが
私を支えてくれる心優しい団員のみんなのおかげで最前線に立ち続けることができている。
「なら、今日これから行ってみようかな?」
今の私は女神の力を解放すれば銀翼のプロセッサユニットで空を駆けることができる。
それを使えばリーンボックスにもすぐに到着するだろう。空を飛ぶはやはり便利だと思う。
私がこれまでプレイしてきたゲームでは空を飛ぶ手段は割と終盤で手に入る物が多かった。
行ける場所が一気に増えることで中々ラスボスの所に乗り込めなかったのはいい思い出だ。
現在の時刻はお昼前。クエストには朝から取りかかることになったのだが
中々起きようとしないネプテューヌの耳元で優しくプリン作ってあげる…。って囁いたら
すぐに目を覚ましたのが面白かった。コンパの指導の下で手作りのプリンを作ったのだが
特に失敗することなく作ることができたのでネプテューヌに食べさせてやる気を出させる。
家事スキルは元の世界でもお母さんの指導の下で上げていたのでそれが役に立ってくれた。
その結果としてネプテューヌは美味しいと言って食べてくれたのでよかったと思う。
作る側としては美味しいと言ってもらえることが何にも勝る喜びなのだと実感した。
それから私とアリアはリーンボックスに向かうためにプラネタワーの屋上から飛び立つ。
ネプテューヌ達とは帰ってきてから遊ぶことになった。
破損していたアリアのプロセッサユニットも直ったようで一緒に飛べるようになった。
戦闘力はアンチクリスタルの牢獄に捕らわれていたこともあって低下した状態なのだが
それでもアリアは強い。空を飛んでいるとリーンボックスの街が私達の視界に入ってきた。
プラネテューヌを出てから時間はまだ一時間も経っていない。
これならちょっとコンビニへ行ってくる的なノリで遊びに行けそうだ。
さらに何かあった時にもすぐに駆けつけられるのでメリットが非常に大きいと言える。
「到着っと…。空を自由に飛ぶのって気持ちいいよね?」
「でしょ? それはゲイムギョウ界の空を舞うための翼で今は舞の翼なんだから。舞の行きたいところがあればその翼で飛べばいい。今の舞ならどこまでも飛べるはずだよ」
「この力を貸してくれたアリアには感謝しないといけないね? 本当にありがとう。とりあえず教会に行ってみようか?」
私達はリーンボックスの教会に向かう。教会の扉を開けると…。
「誰かと思ったら舞とアリアじゃない。よく来たわね」
「いきなり来てごめんね? 先に連絡とか入れといたほうがよかったかな?」
「別に構わないわ。ベールお姉様は部屋にいるんだけど…。まぁ、口で説明するよりかは見てもらった方が早いわね。案内するわ」
私達はチカに案内されてベールの部屋に入る。
かなりの広さを持つ部屋には大画面のテレビ、大きなテーブルにふかふかのソファがある。
特に目を引くのはたくさんのフィギュアが綺麗に収納されているガラスケースと
壁に貼られているポスター。見る限りでは男の子同士が抱き合っているようだが
深く関わらないほうがよさそうな気がしてきたのでこれ以上は突っ込まない。
「ん? ベールはどこにいるのかな?」
部屋を見渡すがベールの姿はどこにもない。
「こっちよ」
チカが示した先にはまた別の扉があった。どうやら隣の部屋に繋がっているようだが
この先にベールがいるのだろう。私とアリアはその扉を開けて中に入っていく。
「暗いね…」
扉を開けた先の部屋は薄暗い空間が広がっていた。
部屋の中にはゲームの攻略本などが散乱している。足の踏み場がないと言うわけでは無いが
足で踏みつぶさないように注意しながら進むと大型パソコンの前にベールの姿があった。
黒いヘッドホンがその両耳を塞いでいる。画面に向き合うベールの表情は真剣その物であった。
「懐かしいゲームの画面…。それに一目見る限りでは相当やりこんでるね。しかも緊急クエスト中だし…。これは邪魔しちゃいけないよ。さっきの部屋で待ってたほうがいいと思う」
アリアが言うには重要な局面のようなのでここはその言葉に従った方がいいと思った。
ボス戦などの重要な局面で邪魔されることほど嫌なことは無いのだ。
ここは終わるまで待つのが賢明な判断である。
「凄かったね…。ネプテューヌの言葉通りだった」
「聞いていたのね。あれがベールお姉様の普段の姿。溜まってた仕事がある程度終わってPCを起動したらずっとあの状態なの。捕まってた間に発売されたゲームも買いに行くって言ってたからある意味大忙しの状態よ。せっかく来てもらったのに申し訳ないわね」
「いや、大丈夫だよ。私達はゲームして待ってるから」
「ゲームに集中してるところを邪魔するわけにもいかないからね」
「なら、代わりと言ってはなんだけどいい物があるわ。ちょっと待っていてくれる?」
少ししてチカが持ってきたのは大きめのノートパソコン。
「アタクシもこれで四女神オンラインをしてるのよ。自分のアカウントを持っているのならそれでログインして遊んでくれて構わないわ」
「アリア、四女神オンラインをやってたって言ってなかった?」
「うん。ログインしてみようか?」
アリアは自分のIDとパスワードを入力する。
「よかった。私のアカウント生きてたよ。久しぶりだから何だかワクワクしてきた」
チカとベールがいつも使っているというサーバーを選択して開始する。
「とりあえず挨拶だけでもしておこうかな? 誰かいればいいんだけど」
挨拶は現実世界のみならずネトゲの世界でも大事な物である。
チャットでやり取りをする形になるのだが基本的な挨拶については
定型文があらかじめ設定されているのでそれを選択するだけで挨拶ができる。
インした時には時間に応じてこんにちは、こんばんわ。
パーティに入る時はよろしくお願いします。クエスト終了時にはお疲れ様でした。
これくらいは最低限しておいたほうがいいと私は思う。
『こんにちは!』
アリアが使ったのは騎士団のみに入力したメッセージを送信するチャット。
それ以外には個人に送信するタイプと全体に送信するタイプがある。
『ア、アリア様!?』
『お戻りになられたのですか!?』
『まあね。みんな元気だったかな?』
『勿論です! 私達はアリア様がお戻りになることを信じていましたから!』
『嬉しいことを言ってくれるね。でも何も言わずに長期間前線を離れてみんなに迷惑をかけたのは事実。迷惑をかけた分はこれから頑張って返していくから…! また、よろしくね?』
『全てはアリア様のために!』
なんという慕われっぷりだろうか。
これがアリアが四女神オンラインの世界に作り出した騎士団。
団長であるアリアを筆頭に歴戦の強者と呼べる高レベルプレイヤーが集っている。
「興味本位で試しに作った騎士団がここまで大きくなるとは思わなかったけどね…。覚えてくれてる人達がいる幸せを感じたよ。舞もよかったら入る? 歓迎するよ?」
「私が入っても邪魔にならないかな…? これだけの高レベルプレイヤー達で構成されてる中に初心者が入るのはちょっと…」
「なら、見せてあげるよ。私と一緒にゲームの世界で戦う仲間たちの素晴らしさを」
『クエスト中の人もいるとは思うけど、聞いてほしい。復帰早々だけど、私は新しい仲間をこの騎士団に招きたいと考えている!』
『アリア様が直々にお招きするとは…。どのような方なのでしょうか?』
『私やみんなと同じゲームを愛する人だよ。私の大切な友達』
『ならば私達はその方が入団されたら全力でサポートするということでよろしいでしょうか?』
『よくわかってるね。新人さんや困ってる人達には優しく丁寧に…だよ? これを忘れないでね?」
『了解! 私達はその方の入団を心待ちにしております!」
『わからないことがあれば私達が力になります。是非ともお越しになってください!』
『これから共に楽しめると思うだけでワクワクしてきましたよ!』
アリアの言葉に応える騎士団の皆の心は一つになっていた。
「どうかな? これが私達の答えだよ?」
「本当にみんないい人達なんだね? わかった。お世話になるよ」
「やった! これでゲームの中でも舞と一緒だよ! アカウントを作らないといけないね?」
「そうだね。作り方を教えてくれる?」
「勿論だよ! そのためにはいったんログアウトしないとなんだけど…」
アカウントを作るにはログアウトをしてから公式サイトの新規作成から入る必要があるのだ。
『アリア様、一つお耳にいれておきたいことがあるのですが…』
『何かな?』
『復帰のタイミングがよろしかったと言うべきでしょうか。明日のメンテナンスが終了したら女神フェスが開催されます。アリア様がご不在の間は不参加という形でこれまで通してきましたが、お戻りになられたということなので今回の女神フェスは参加を提言したいのですが如何でしょうか?』
『あらら…。そこでもみんなに迷惑をかけてたんだ…。なら、答えはもう決まってるよ。参加して久しぶりに皆で大暴れしちゃおうか!』
『そのお言葉を待っていました!』
『ふふっ。久しぶりの参加だから気合いが入るね。今回の女神フェスでは好きなだけ暴れることを許可するよ。参加申請をしておくから、準備をしておいてね? 申請をした後は友達のアカウント作るためにログアウトさせてもらうよ』
『了解しました!』
アリアは女神フェスの受付に話しかけると参加申請を行う。
女神フェスとは簡単に言えば騎士団対抗イベントのことである。
何をするのかと言うとクエストをクリアしてゲーム内でシェアを集めるのが目的。
開催期間中に現れる緊急クエストは大量のシェアを獲得するビッグチャンスなので
これが勝利の鍵を握っていると言ってもよい。
シェア獲得ランキングで上位に入れば女神フェス限定の様々な報酬がもらえる上に
特殊なクエストの受注権を得ることができたりする。
さらにアリアの騎士団は常に上位に入っていたという実績がある。
個人ランキングに置いても上位を占めている歴戦の強者達が集結している。
好きなだけ暴れることを許可しているので士気は最大まで高まっていると言ってもいい。
登録した後、騎士団の団員達に一言挨拶を残してアリアはログアウトした。
「なんだかすごい物を見せられた気がするわ…。ベールお姉様と互角…。いやそれ以上かもしれないわね。そこに舞が加わったらどうなるのかしら?」
「面白いことになるのは間違いないね。さて、舞のアカウントを作らないと…」
私はアリアとチカに教えてもらいながら四女神オンラインのアカウントを作成する。
基本プレイは無料だがゲームを有利に進めるための物を加える場合は別途料金が必要になる。
舞がアカウントを作っている一方、隣の部屋にいるベールは…。
「やっと緊急クエストが終わりましたわ~。今日はこれくらいにしましょうか。あら、何だか騎士団のチャットが騒がしいみたいですわね? 何かあったのかしら?」
『次の女神フェスにあいつらが参加するってよ! さっき団長が参加申請を出してたぜ!』
『マジかよ…。これはいい意味で荒れるぞ…。あいつらは並みのレベルを遥かに超えてるからな…』
『銀翼騎士団だよな…。どうやら長期間不在だった団長が復帰したらしいぞ…』
「銀翼騎士団ですか…。確か団長が不在という理由で女神フェスには参戦していませんでしたね…。団長の名前は何と言ったかしら…?」
『団長のアリア様が復帰したって私のフレがさっき言ってたよ…。これってヤバくない?』
『ああ…。団長のアリアもそうだが、銀翼騎士団の団員は全員が文句なしの高レベルプレイヤーだからな…。今まであいつらが参加してなかったのが不思議なくらいだぜ…』
「アリアってまさか…。あのアリアさんのことなのでしょうか?」
リーンボックスに帰る前に少し話をした銀の女神が同じ名前であることを思い出した。
「聞いてみる価値はあるかもしれませんね…。とりあえずここから出ましょうか」
ログアウトしたらパソコンの電源を落として薄暗い部屋から出る。
「あっ、ベール。やっと出てきたね?」
「舞さんにアリアさんではありませんか…。いらしていたのなら声をかけてくれればゲームを止めて出てきましたのに…。どうやらかなり待たせてしまったようですわね…」
「気にしないで。連絡も無しにいきなり押しかけた私にも非はあるから。いい局面だったみたいだから声をかけないでそのまま待つことにしたんだよ」
「流石に緊急クエストを邪魔する訳にはいかなかったからね。待ってる間はチカのパソコンで遊んでたから」
「そうだったのですか…。お心遣い感謝しますわ。これから何をしましょうか?」
「何も考えてなかったよ…。とりあえず適当にトークでもする?」
「ええ。舞さんとアリアさんとはお話をしたいと思っていましたから」
私、アリア、ベール。三人のゲーム好きが揃ったところで楽しいトークタイムが始まる。
ネプギア達との旅やゲームの話題を中心にして盛り上がる私達。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくのであった。
四女神オンラインの件から予定していた以上に発展してしまいました。
舞さんとネプテューヌ達の日常を描くのは本当に楽しい…。
これを読んでほんの少しでも楽しんでいただければ嬉しい限りです。