新たにセレナが加わってくれたことでネプテューヌの仕事はさらに捗るようになり
今日の朝の仕事も普段通りに午前中に終わらせることができた。
仕事を終わらせた私とネプギアはプラネテューヌにやってきたベールから
第五回四女神オンラインファン感謝祭コスプレイベントの参加依頼を受ける。
参加者にはイベント限定アイテムのダウンロードコードの配布があるので
私にとっては恥ずかしい思いをしてでも参加する価値のある物ではある。
衣装はベールが用意してくれるとようだが、どんな衣装なのだろうか…。
四女神オンラインのコスプレイベントとなると
実際のゲーム内に登場する職業の衣装を着る形になると思われる。
ネプギアの言った通り、露出が多い衣装もあるのもまた事実である。
どの職業の衣装を着ることになるかは現時点では私にも予想はできない。
まだ始めたばかりの私は自分の職業以外の衣装はあまり見たことが無いからである。
ここで簡単に説明をさせてもらうとしよう。
四女神オンラインは自分の使う武器に応じて職業が決定される。
最初は普通の剣士や銃士、魔法使いなどから始まるが自分のレベルを上げたり
設定されている条件を満たせば上位職と呼ばれる物に派生させることができるのだ。
ちなみに私の実際のゲーム内での職業は剣士である。
私の場合はこれを起点として様々な上位職に派生させていく形になる。
銀翼騎士団の団員に教えてもらった例を挙げてみると剣士から派生させる上位職には
代表的な物でロイヤルナイト、ダークナイトと呼ばれる物があるようだ。
職業は自由に変更できるので数ある職業の中から自分にあった物を見つけ出すのだ。
私も剣士だけに留まることなく他の職業も極めてみたいと考えている。
その目標を達成するには途方もない時間が必要だが頑張ることにする。
「さて、ロムとラムもそろそろ来るかな…?」
机の上に昨日ショップで購入したアイテムを出して不足が無いかを確認していると…。
「やっほー! 舞、来たわよ!」
「舞お姉ちゃん、来たよ?」
「今日は来てくれてありがとう。早速だけどロム、これを受け取ってくれるかな?」
ロムに手渡すのはヒールポッド五個とデトキシン五個。
回復魔法は使うことはできるがそればかりに頼るわけにもいかない。
ロムは肩にかけている赤色の小さな鞄にそれを入れると代わりに別のアイテムを取り出す。
「これは…?」
「ミナちゃんに持っていきなさいって言われた…」
ロムが鞄から取り出したのは青い液体が入った小瓶。その数は六個。
「これはSPチャージだね。ロムちゃんやラムちゃん、セレナみたいに魔法を主軸にして戦う人達が使うアイテムだよ。魔力切れになった時に飲めばある程度の魔力を回復することができる。魔力切れになるほど魔法を使うことってかなりの強敵と当たらない限りはあまりない気もするけど持っておいて損は無いと思うよ?」
「私は上級魔法や複合魔法を構築する時にお世話になったかな。戦闘だけじゃなくて魔法の練習をする時にも役に立つ物だからね。またショップで買っておくよ」
つまりゲームで例えるならばMP回復アイテムということだ。
アリアが言ったように魔力切れになることは余程の強敵と当たらない限りは無い。
特に私とロムの場合は魔力とは別にシェアの力があるが戦場では何が起こるかわからない。
魔力切れで戦えないなどの言い訳は実際の戦場では通用しない。
「三個ずつに分けておこうか。魔力切れにならないように注意しないといけないね」
「うん…。気を付ける…」
私は魔法よりかは物理攻撃が主体だがこれから魔法を使う機会も増えてくるだろう。
回数制限が軽くなったとは言えまだまだ改善の余地が多い状態なのだ。
「ロムちゃんと一緒に倒しに行くモンスターってどんなモンスターなんですか?」
「そうだね。改めて説明させてもらおうか。今回、ロムと倒しに行くのはツインサーペントだよ。前にネプギアと一緒に倒したランドクイーンと同じように私が過去にプレイしたゲームの敵になる。実際に登場するゲームは別物だけどね」
「サーペントってことは蛇だよね? ツインってことは二体いるのかな?」
「本体から伸びてる蛇が二体いるからまずはそれを何とかする必要があるね。潜行能力を封じないと本体に攻撃を当てることができないから」
「せんこーのうりょくって?」
「地面に潜ることができる能力だよ。ツインサーペントの本体は常に地中に潜んでる。だから背後からの攻撃を受けないように注意しないといけない。本体が潜んでる位置は特定できるけど地中から引き摺り出すには私達に攻撃してくる二体の蛇に攻撃を加えればいいよ。弱点や無効にする属性も特にないからロムも好きな魔法を使ったらいいよ」
「うん…。舞お姉ちゃん、デトキシンを買ってたけど、毒があるの…?」
「正解。私達に攻撃してくる蛇の牙には毒がある。ロムは魔法で治せるとは思うけどデトキシンの方を優先して使ってくれるかな? 毒のことで注意してもらいたい点はまだあるんだけど、それは実際に見て貰わないと説明が難しいからその時に教える。ロムは離れた位置から魔法で攻撃してもらうことになるけどなるべく同じ位置には固まらないでね? 動き回る形にはなるけど同じ位置に留まったままだと狙われやすくなるから」
「わかった…。舞お姉ちゃんと一緒に頑張って強くなる…!」
ランドクイーン戦と同じように敵の体力を瀕死まで削ったらハード・ユニゾンを試みる。
ネプギアと行使することができたのだからロムとも行使できるはずだ。
「その意気だよ。さて、行く前にロムとラムにお願いしたいことがあるんだけどいいかな? これとは全く関係ない話なんだけど」
私はロムとラムにベールから受け取ったチラシを見せる。
「コスプレイベント…? 何だか面白そうね!」
「舞お姉ちゃんは参加するの…?」
「参加するよ。さっきベールから参加してほしいってお願いされてね。私とネプギアで参加することになったんだけど、ロムとラムもよかったら参加してみない?」
「いいわよ。わたし達に言わせればシェアを集めるチャンスじゃない。ねぇ、ロムちゃん?」
「うん…。ルウィーのシェアを集めればお姉ちゃんも元気になる…」
クエストをこなすだけではなく、各国で開催されるイベントに
積極的に参加するのも信仰心であるシェアを集める上で必要だと言える。
「ロムとラムは参加ということだね。ユニの方にも連絡を入れてみようかな」
「ユニちゃん、参加してくれるといいんですけど…」
「都合が悪い時もあるからね。一応話だけは聞いてもらおうよ」
私はNギアを取り出してユニに連絡を入れる。
『どうしたの?』
「忙しいところごめんね? 時間いいかな?」
今日の夜に開催されるコスプレイベントのことをユニに説明する。
「という話をしてたんだけど、どうかな?」
『恥ずかしい恰好はしたくないっていうのがアタシの本音なんだけど、アンタ達が参加するって言うならそれに便乗させてもらうわ』
「ありがとう。今日の夕方にプラネテューヌに来てもらってもいいかな? それからリーンボックスに向かおうと思う」
『わかったわ。それと一つ聞きたいんだけど、プラネテューヌの教会に泊めてもらうことってできる? ほら、明日はアタシの番でしょ? 帰ってからまたプラネテューヌに行ってもいいんけど、泊めてもらえるなら明日の準備も併せてできるから効率がいいかなって思ったのよ』
「ちょっと聞いてみるね? 後でもう一回連絡を入れるよ」
ユニとの通信を終了する。
「イストワール、今いいかな?」
「はい。何でしょうか?」
「今日は候補生全員で教会にお泊りしてもいいかな?」
「構いませんよ? あぁ、そういえば舞さんと候補生の皆さんにお願いしたい仕事があったのを思い出しました。明日の朝にその説明をしたいので私としては泊まって行っていただけると嬉しいです」
どうやら明日も忙しい一日になりそうである。
ユニに再度連絡を入れてその旨を伝えると準備をして夕方に向かうとの返答を貰った。
「これでよし…っと。じゃあ私達も行こうか? ロム、準備はいい?」
「大丈夫…」
「舞さん、ロムちゃん、頑張ってください!」
「ありがとう。行ってくるね?」
私はロムと手を繋いでもう片方の手に黒い宝玉を持ってランドクイーンの時と同じように願う。
宝玉からあふれ出した黒い光が私とロムをツインサーペントの元に導く。
「ここが舞お姉ちゃんがしてたゲームに出てくる場所…?」
「うん。ギロ湿原って場所だよ。ちょうどここは入口だからまずは準備をしようか」
私とロムは意識を集中させて特殊女神化状態になる。
ネプギアと訪れた原生林と同じく水辺を渡る必要があるので
脚のプロセッサユニットだけが自動展開される形となった。
戦闘準備が完了したらロムと手を繋いで湿原の奥に進んで行く。
空は分厚い黒雲に覆われて雷の音が聞こえる。黒雲の影響で昼なのか夜なのかわからない。
ツインサーペントがいる場所へ行くには少し進んだところにある吊り橋を渡る必要がある。
「ん…? こいつも再現されてるんだね?」
「気持ち悪い…」
吊り橋の前に緑色の不定形の生物がいる。道を塞いでいるようだ。
「グリーンスライムだね…。ロム、攻撃魔法をあいつに放ってみて。何でもいいから」
「わかった…」
ロムは月の杖を構えて詠唱を開始すると足元に赤色の魔法陣が現れる。
「揺らめく焔、猛追! ファイアボール!」
ロムから放たれた五発の火の玉がグリーンスライムに直撃してその体を焼く。
黒こげになったグリーンスライムは光となってそのまま消滅した。
火の玉を撃ちだす初級魔術だが熟練度を上げると最大十発まで撃ちだすことができる。
詠唱時間も初級魔術と言うこともあってかなり短いので使いやすい。
グリーンスライムは基本的に物理攻撃ではダメージを与えられないが
魔法攻撃に対して極端に弱い性質を持つので魔法で攻撃すればいい。
上位種になると分裂したり魔法を反射したりと面倒な性質があるので注意が必要である。
吊り橋を渡ると離れ小島とも言える場所に着いた。
大きな木が一本あるくらいで他に特徴が無いエリアだが、邪悪な気を感じる。
ターゲットのツインサーペントがこの場所にいるのは間違いない。
「何かいる…」
ロムもどうやらその存在を感じ取っているようだ。
歩を進めると突如地面が揺れ始める。
「…!」
地面から二体の蛇が姿を現した。
現れた蛇の頭部の甲殻は片方が金色、もう片方は銀色。
さらに紅と蒼に不気味に輝く目が私とロムを捕捉する。
現れた二体の蛇は地面に噛みつく。これは直接私とロムを狙っているわけではない。
数秒立って蛇が地面から離れると蛇が噛みついた場所に小さな毒沼ができていた。
「あの毒沼に入らないように気を付けて。毒を受けたらデトキシンを使ってね」
「わかった…。あの蛇を何とかすればいいの?」
「あいつの頭を叩き潰せば本体が姿を現すから、それを叩く形だね」
二体の蛇は私達にかかってこいと言わんばかりに口を動かすと再び地中に消えた。
私はハンマーを取り出して構える。叩き潰して欲しいのならそれに応えるまでだ。
地面から土煙が上がっている場所がある。あの位置に本体が潜んでいるのだが
今の状態では攻撃を加えることができない。まずは二体の蛇を何とかしなければ。
「ロム、行くよ!」
「うん…! 舞お姉ちゃん!」
銀の女神の継承者と白の女神候補生が挑むのはこの湿原を支配する嗜虐者。
過去の私が操る分身が従えていた双頭の蛇を討伐して新たなる力を得るために私達は駆け出した。