私とネプギア達にイストワールから提示された新たな依頼。
それは環境保全区域の海に大量発生したタコの捕獲であった。
海に入るために必要な水着をショップで購入して早速現地へと向かう。
現地に到着してから係員の人の案内に従って建物に入ると厳重な持ち物検査から始まる。
最初に水着を中に入れた鞄と身に着けていた髪飾りなどのアクセサリーを
全て外してかごに入れてベルトコンベアに乗せる。
これは持ち込みが禁止となっている武器類等が鞄に入っていないかのチェック。
続いて通るのは四角い形のゲート。今度は普段から身に着けている物のチェック。
髪飾りなどのアクセサリーはこのゲートを通る前に外しておく必要がある。
ちなみにこの時に武器を粒子状にして体の周りに漂わせていると警報音がなる仕組み。
全員の武器は全てプラネテューヌの教会に置いてきているので問題は無い。
「なんだか、私が暮らしていた世界のことを思い出すなぁ…」
「舞さんが暮らしていた世界にもこういうのがあるんですか?」
「うん。飛行機って言う空を飛ぶ乗り物があってね。それに乗る時はさっきみたいな持ち物検査があるんだ。機内に持ち込みができない物が鞄の中にあったり、ゲートを通る時に金属製の物を身に着けていたら音がなって止められたりするから」
「へぇ…。舞が暮らしていた世界には色々な物がありそうね。行けるのなら一度行ってみたいわ」
「あはは…。それができればいいんだけどね。帰る方法を探すためにはまずこの世界の真の平和を取り戻さなくちゃいけない。今は束の間と言った状況だからね。向こうも近い内に何か仕掛けてくるとは思う。その時はみんなで頑張ってまた平和な日々を取り戻そうよ」
「そうね~。今はいっぱい遊べるからいいけど、あいつらがまた出てきたらみんなで遊べなくなる…。それは嫌だわ。わたし達と舞の邪魔をするなら容赦しないんだから!」
「今のわたし達があるのは舞お姉ちゃん達と出会えたから…。わたし達の大切な時間を壊そうとするならみんなでやっつける…!」
「そうだね。とりあえず今は私達にできることを積み重ねていこう。焦らず、私達のペースでね? さて、持ち物検査もクリアしたところで早速体を洗って水着に着替えようか」
持ち物検査をクリアした私達は用意された脱衣所に入って準備をする。
着ていた服と下着を脱いだら脱衣所内に備えつけられているシャワールームへ。
シャワーから出る冷たい水が私の体を濡らしていく。ルーム内に洗剤があるので
それを使って髪から始まり体をしっかり洗って行く。何だか朝にお風呂に入っている気分だ。
それが終わったら水着に着替える。私は何を買ったのかと言うと紺色のスク水である。
何故このゲイムギョウ界にこれがあるのか不思議に思ったのが細かいことに
突っ込んでいたら身が持たないのでそのまま購入する形となった。
理由は年齢の割につるぺたな私にはお似合いの代物だと思ったから。
海に突入する準備が整ったところで外に出ると私達の視界に映ったのは…
「うわぁ…。確かにタコが大量だね…」
イストワールの言った通り、空から色とりどりのタコが大量に降ってきている。
大きさは小さいが見渡す限り相当な数がいるようでこれは苦戦しそうだと思った。
これ以上数を増やされるといつまでたっても終わらないので早速捕獲作業を開始する。
「よーし! これで10匹目! 舞さん、そっちはどうですか?」
「私は20匹目だね。タコにしては小さいから割と簡単に捕まえられるよ」
ネプギアが着ているのはストライプ柄に華やかな黄色のリボンがついたビキニ。
髪飾りは十字キーではなく、向日葵の髪飾りをしているので可愛い。
「もうちょっと気持ち悪いのを想像してたんですけど、カラフルで可愛いですね?」
「それは言えてる。と言うか赤色以外のタコを自分の目で始めて見た気がする…」
「うん。可愛い…。一匹くらいお持ち帰りしちゃダメ…かな?」
ロムの水着はピンク色に白い花柄の模様があしらわれたワンピースタイプの水着。
さらに麦わら帽子を身に着けているので海に咲く花と言った感じの可愛さがある。
「ロムの言う通りかも。珍しい色のタコとかいたら是非お持ち帰りしたいよね」
現状は赤・青・黄・緑の四色のみだが珍しい色のタコもいるかもしれない。
どうやら墨は吹いてこないようなので水着に引っ付かれないように素早く頭を掴む。
「こ、こら! なに水着に引っ付いてんのよ! 離れなさいよ!」
ユニが着ているのは黒色の布地にカラフルな星模様が入った水着。
言い換えるなら夜空に星を散りばめたようなデザインである。
「取ってあげる。動かないでね」
ユニの水着に引っ付いた黄色のタコを引きはがす。
強引にやると水着まで外れてしまう恐れがあるので力加減が重要だ。
「ふう…。助かったぁ…。ありがとう、舞」
「あっ、そっちにもう一匹いったー」
タコの接近を知らせるラムが着ているのはオレンジ色に白い花柄の模様が
あしらわれたワンピースタイプの水着。明るいラムの雰囲気にあった色だと思う。
またユニを狙っているようだったのでその間に立つと私の水着の胸部分に引っ付いてきた。
「絶壁でごめんね? 大人しくお縄についてもらうよ?」
引っ付かれるとくすぐったい感覚には襲われるが取り乱さずに落ち着いて引きはがす。
五人がかりで次々と捕獲するがその数は中々減らない。
「本当にすごい数ですよね…。網の上に載せたり、同じ色のタコを四つ並べたら消えたりしないんですかね?」
「それで消せたら面白いんだけどね。それにしても減る気配が無いね…。泣き言を言ったところで状況が変わるわけないけど…」
「これだけ多かったら捕獲した内の何匹かをタコ焼きにして食べてもいいんじゃない?」
「それいいわね! タコ焼き大好きだから、久しぶりに食べたくなってきちゃった!」
「わたしも…食べたい…」
「じゃあ終わったらみんなでタコ焼きパーティしようか!って言いたいところだけど本当に午前中に終わるのかな? まだまだ空から降ってきてますよ?」
「確かに…。って何かタコが一斉に集まってきたね? 反撃のつもりかな?」
「すごーい! タコのハンギャクだー! わたし達も負けないわよ!」
「うん…! みんな捕まえる…!」
タコ捕獲作戦はそれから数時間続き、私が最後のタコを捕獲したところで終了となった。
ちなみに最後に捕まえたタコの体はなんと銀色。ちょうど100体目のタコだった。
悪戦苦闘しながらも捕獲したタコをケージに全てぶち込んで係員に引き渡す。
これにてイストワールからの依頼は終了となった。
プラネテューヌの教会に帰還した私達はイストワールに報告する。
「皆さん、お疲れ様でした」
「思った以上に苦戦したね…。あのタコって食べられるの?」
「食べられるとは思いますよ? どうしてそんなことを聞くんですか?」
「いや、終わったらタコ焼きパーティでもしようかなって話をしてたから、あれだけ大量にいてなおかつ食べられるのならタコ焼きにしてみんなで食べたいってことになって…」
「なるほど…。そう言うことでしたらあちらの係員に連絡を入れてみましょうか」
イストワールは先ほど私達が行ってきた場所に連絡を入れて係員に事情を説明してくれた。
「どうだった?」
「今回の報酬という形で用意するということでお話がつきました。今日の夕方に舞さんと候補生の皆さんは勿論、他に誘いたい人がいれば是非一緒に来てほしいとの返答を頂きました」
「そっか。じゃあ今日の夕方はみんなでタコ焼きパーティだね」
タコ焼きパーティの開催が決定したところで冷蔵庫にあるプリンを取り出して食べる。
やはり一仕事した後は甘い物がいい。体に染み渡るこの感覚がいいのだ。
プリンを食べたらユニと部屋に行って午後からのクエストの準備を進める。
「さて、次は午後からのクエストの準備だね。ユニ、これを受け取ってくれる?」
ユニに手渡したのはヒールポッド5個と獄炎の指輪。
「ありがと。ジェネラルドラゴンは確か火属性の攻撃を使うのよね?」
「うん。近接戦闘だけじゃなく、炎を操る能力に長けてるからね。特に注意してほしいのが背中の逆鱗と呼ばれる場所がある。ここは弱点でもあると同時にその内部には膨大な熱エネルギーが蓄えられている。これを壊すと強力な炎攻撃を繰り出してくるから注意が必要だよ」
「ってことはその部位は狙わないほうがいいのかしら?」
「そうなるね。もしかしたら破壊して討伐すれば何かいい物がもらえるかもしれないけど。破壊するとその部分は弱点じゃなくなるから…。ギリギリまで体力を減らしてから狙ってみようか」
実際のゲームでは部位破壊をすることで貴重な素材を入手することができるのだが
ランドクイーン戦・ツインサーペント戦では素材は入手できていない。
ゲームの再現モンスターと言う形なので固有素材は持ち合わせていないのだろうか。
「わかったわ。その部位破壊って言うのはやっぱり重要だったりするのかしら?」
「いい質問だね。ジェネラルドラゴンは頭部と左腕の籠手が破壊できる。破壊した部位は攻撃がさらに通り易くなるから狙う価値は大きいよ。万全を期すならば破壊して防御を崩してから戦うのが得策かな」
「後は氷属性の弾丸よね。言われた通りに用意してきたから半分を舞に渡しておくわ。わかっているとは思うけど最初の7発分は先に装填しておいた方がいいわよ。敵に見つかってからだと遅いわ。舞がしてたゲームでもそうだったと思うけど銃を扱う上では事前の準備が大切よ」
ユニの言う通りである。銃使いは戦闘前の準備をしっかりしておく必要があるのだ。
戦うモンスターに応じて有利な弾丸を持ち込むのは勿論、弾切れした時に弾丸を用意する
開発技術も要求される。私やユニは実弾だけではなく魔力やシェアを込めることもできるが
一流の銃使い達はそればかりに頼ることなくその辺りの準備をきちんとしているのだ。
「やっぱり本物の銃使いに言われると説得力があるね。そう言えばユニ、今までの戦いで女神化した時に銃の形を変えてる時があったよね? あれって…」
「最初は連射特化の銃身だったんだけど、舞とハード・リンクしてから合わせて三つの銃身が使えるようになったわ。連射を除いて狙撃特化と威力重視の銃身がね。基本は連射特化型にしてるわ。三つの中だと一番扱いやすいから。後は朝の鍛練で弓も加わったから幅が広くなったわね」
「なるほど。早くも私がプレイしたゲームに出てくる物を自分の物にしたってことか…。私もユニの技を覚えさせてもらわないと…」
「最近は特殊な銃弾の開発にも手を伸ばしてるのよ。また暇ができた時に銃の練習も兼ねて付き合ってくれたら嬉しいわ。アタシも実戦を通しての方が教えやすいから」
「それは喜んで協力させてもらうよ。さて、時間もいい感じになってきたし、行ってみようか?」
「いよいよってわけね。舞がゲームの中で戦ったモンスターか…。どれだけの強さを持っているのかしら…」
「これを二人で乗り切れば私達は新たな高みに辿り着くことができる。この先の未来に待っている戦いを勝ち抜くために頑張ろうね」
「わかったわ…! アタシは準備オッケーよ!」
「それじゃ、行くよ!」
黒い宝玉が私とユニをジェネラルドラゴンが待つ戦場へ導く。
そこは止まない雨が降り続く平原。ギロ湿原と同じく空は分厚い黒雲に覆われている。
「今度は嘆きの平原か…」
「あの竜巻のせいなんでしょうけど、風が強いわね…」
ユニが指し示すのは平原の中央に発生し続けている巨大な竜巻。
平原の中央部はまるで隕石が落ちたかのようにえぐり取られている。
竜巻の発生点を中心としてドーナツ状に広がっている戦場だ。
遮蔽物等は一切なく見通しはいいので戦いやすいのだが
複数の敵と交戦する際は分断がしづらいという欠点がある。
「まさか、これを使えるとは思わなかったよ」
私の右手に握られていたのは世界を喰い荒らす荒ぶる神々を喰らうための武器だった。
刀身の部分には銀の短剣が、銃身の部分には銀の銃が変化したのかユニと同じ
回転式弾倉を持った連射特化の銃身になっていた。さらに銀色のシールドまでついている。
銃形態にして確認するとユニに貰った氷結弾が装填された状態になっている。
「アタシも女神化していないのに銃の形が変わってるわ…。仕様なのかしら?」
ユニの方を見ると女神化した時の銃形態に変化している。
どうやらこれが今回のクエストで適用される仕様のようだ。
「ジェネラルドラゴンは奥に進めば出てくるはずだよ。早速行ってみようか」
私とユニは特殊女神化を使い、スタート地点とも言える高台から飛び降りて平原を進む。
周囲を警戒しながら半周ほど進んだところで足を止めて竜巻が発生している方を見る。
竜巻の中から一体のモンスターが姿を現す。
西洋の竜と人を掛け合わせたかのような姿を持っていて
鋭い鉤爪と左手の巨大な籠手、背中には逆鱗と呼ばれる突起物がある。
姿を現したそれは私とユニを視界に捉えると左手に炎を宿して咆哮する。
「こいつが…。ジェネラルドラゴン…!」
「強敵だよ。でも私とユニの二人なら勝てると思う。私達の全力をアイツにぶつけてやろう!」
「わかったわ!」
私とユニは第三の試練のターゲット、ジェネラルドラゴンに立ち向かう。
破壊の限りを尽くす亡国の真竜が銀と黒にその牙を向き、戦いが開始されるのであった。