超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神   作:ミオン

71 / 132
Game69:結晶の女神

ギョウカイ墓場の地下に広がる洞窟の最奥部に到達し

アンチクリスタルの採掘を無事に完了した私とシエルの前に

再び姿を現した女神の亡霊、ファントムハート。

 

彼女は女神を喰らう魔剣ゲハバーンの話を私達に語る。

それだけでは終わらず、シエルが何故女神化するとドラゴンになるのか。

その理由が隠されたとある守護女神の物語を語り出そうとしていた。

 

「さて、この物語を語る前に君に質問させてもらおうか。君は銀と金の女神と出会う前の記憶は持っていない…。そうだよね?」

 

「確かに私はアリア達と出会う前の記憶がない。当時の私の頭の中に明確に残されていたのは人としての名であるシエルと女神としての名であるクリスタルハート。生きる上で必要な知識と女神についての知識。敵との戦い方…。どうして私は今この世界にいるのかはわからない。アリアと同じ、目を覚ました時にはこの世界にいた。女神化するとドラゴンになってしまうことも含めて今までは心の中で気にしないようにしてきたからね」

 

「まぁ、世の中には知る必要のないこと、知らない方がいいことだってある。私だってこの物語を知ったのは君の力を奪ったからさ。あれから長い時間をかけて物語の断片を頭の中で繋ぎ合わせて漸く完成したんだよね。これは私だけが持っていても意味のない物だからね。だから話してあげるよ。それはこことは違う次元のゲイムギョウ界のお話…」

 

私達が今いるこの世界は超次元ゲイムギョウ界と呼称されるようだが、

超次元とは全く異なる別の次元にもゲイムギョウ界は確かに存在しているらしい。

既に滅びを迎えた世界もあれば、まだ残っている世界もあると言う。

 

ファントムハートが語るのは既に滅びを迎えたある次元のゲイムギョウ界の物語。

では、このゲイムギョウ界では何が行われていたのか? その答えは戦争である。

 

今の超次元ゲイムギョウ界と同じ、四つの国を四人の守護女神が守護していた世界。

だがその守護は偽りでしかなかった。四人の女神はゲイムギョウ界の覇権を賭け

毎日争いを繰り広げる状態だったのだが、ある日その中の一人が戦いを放棄した。

 

自分達が争いに身を投じ続けた結果を彼女はその眼で見たからである。

日に日に減少していく国力、貧困層の増加、モンスター被害の拡大…。

本来自分が守護するべき国を離れた結果を目にした彼女は自分の役割を思い出した。

だが、不在の期間があまりに長すぎたというべきか、国民の女神に対する信仰心は

完全に薄れつつあった。残りの三人の女神にも訴えたが聞く耳を持たない始末。

 

彼女は決意した。失った物を取り戻してみせると。

手始めにモンスター討伐からこなしていくことにした。

ギルドに大量に寄せられている討伐依頼を次々と片付けていく。

 

そんな毎日が続いていたある日、彼女の下に一つのクエストが届いた。

内容はとあるモンスターの調査だった。討伐ではなく調査という点が気になったが

彼女はその依頼を受ける。調査対象のモンスターはドラゴン種だった。

 

ドラゴンが生息しているダンジョンに向かうと確かにそのドラゴンはいた。

青空の色をそのまま投影したような体色で大きな翼と鋭い鉤爪を持っている。

調査のために近づくと当然のように警戒されるが何故か襲いかかってはこなかった。

その体を観察すると鋭利な武器で斬られた傷が残っており蒼い光が漏れ出していた。

誰にやられたのかはわからないが回復魔法でその傷を治療する。

 

傷を治療したことが功を奏したのかそのドラゴンは女神に懐いたようだった。

これには彼女も驚きを隠せなかったようだが、頭を下げてきたので優しく撫でると

嬉しそうな鳴き声をあげる。それが彼女とドラゴンとの最初の出会いだった。

 

それから彼女は仕事が終わるとドラゴンの元に向かって楽しい時間を過ごす。

今日はどんなモンスターを退治してきただとか些細な出来事をドラゴンに聞かせる。

彼女の言葉を理解しているのか言葉に合わせて相槌を打つので会話が成立しているようだ。

失った信仰心、シェアは彼女の努力の賜物と言ったところか、回復傾向に乗る。

 

この調子で結果を積み重ねれば戦いを終わらせることも夢じゃない。

そう思えるようになってきたがその思いは崩れ去ることになる。

 

戦いを放棄した女神の言葉を無視し続けた三人の女神は未だに争い続けていた。

四人のうち一人が抜けたと言っても終わることのない争い。それでも彼女達は止まらない。

ゲイムギョウ界の覇権を取りたいという野心に呑まれ争い続ける。

 

争いを続けていく中で三人の内の一人がこんなことを言いだした。

このまま戦い続けて自分達が滅びることになれば覇権はあの女神の物になると。

戦う気が無いならばこのゲイムギョウ界から永遠に退場してもらおう。

狂気とも言える歪んだ選択をした守護者達は早速行動を開始する。

 

水面下で停戦協定を結んだ女神達は連合軍を作ってその女神の国に攻め込む。

結果は火を見るより明らかだった。美しい都市は破壊され、残骸だけが残る。

怨むならば守護女神戦争を放棄した女神を怨めと言い、凶刃を振るう。

 

彼女は涙を流しながら必死に停戦を呼びかけるが狂った女神達には届かない。

自分の選択がこの結果を招いてしまったのか…。深い絶望に呑みこまれる。

狂った女神達の前に彼女が守護していた国は一日で陥落したのであった。

 

彼女が守護していた国が陥落していたことを知らないドラゴンは

毎日来てくれていた彼女がばったりと来なくなったことに疑問を感じていた。

ドラゴンは彼女と言葉を交わす内に人の知識を身に着けていたようで

彼女が来なくなった理由を自分の頭の中で必死に考えてみる。

 

彼女の身に何かあったことまで理解したところで空から彼女を探してみることに。

ドラゴンはゲイムギョウ界の空を舞う翼を広げて大空に飛び立った。

 

持ち前の飛行能力を生かして空から大地を見渡すと陥落した都市が視界に映る。

人の気配は感じなかったので高度を下げるとそのまま大地に降り立つ。

人より遥かに発達した感覚を用いて周囲の様子を探る。

 

嗅覚は血の匂いを、聴覚は吹き抜けるどこか悲しい風の音を捉えていた。

都市の跡地はモンスターの棲家でもあるようで我が物顔で闊歩している。

幸い自分に襲いかかってくるモンスターはいないようなのでそのまま歩を進める。

何となくだが、彼女がここにいる。そんな気がしたので再び感覚を研ぎ澄ます。

 

風の音に紛れて人の声が聞こえてきた。今にも消えてしまいそうで弱々しい声。

それを辿っていくと今度は自分の嗅覚が懐かしい匂いを捉える。

共に過ごした彼女の匂いであることを理解したドラゴンはその場所に向かう。

 

その場所だけ周りと比較すると酷く破壊されていた。匂いはここから出ている。

瓦礫を器用に手で掴んで退ける。人間ならば苦労するところではあるが

ドラゴンの腕力を持ってすればこの程度は造作もないことだ。

 

瓦礫を退けると遂に会いたかった彼女の姿を捉えたのだがその体は傷だらけだった。

爪で傷つけないように慎重に体に触れると彼女は閉じていた目を開ける。

人の言葉を話すことはできないが彼女の言葉は理解できる自信があったので耳を傾ける。

 

彼女は確かにこう言ったのだった。「私を食べて…」と。

その言葉を最後に彼女の体は光となって一つの大きな空色の結晶になった。

何がどうなったのか理解できなかったが彼女の願いを叶えるために結晶に食らい付く。

一片の欠片すら残さない。彼女が残してくれた物を最後まで味わうように咀嚼する。

 

実はこのドラゴンの好物は奇しくも結晶だった。

彼女が持っていた暖かい光を放つ結晶を初めて食べた時からは特に好きになった。

全て咀嚼し終えると変化が起きる。まず頭の中に彼女の記憶が流れ込むと続いて

体内から凄まじい力が湧いてくるのを感じ取る。同時に力の使い方も流れ込んできた。

さらに蒼色の結晶が頭部を始めとする各部位に現れると女神龍は空に向かって咆哮する。

 

大切な人を奪われた女神龍の怒りの咆哮はゲイムギョウ界の空に響き渡る。

女神龍はその場から飛び立つとそのままどこかに飛び去って行った。

 

それから時が流れ未だに終結していない守護女神戦争に一人の人物が乱入する。

争い続けてきた三人の女神は彼女の姿を見て驚きを隠すことができなかった。

何故なら、彼女の姿は自分達が国ごと消滅させたはずの守護女神だったのだから。

戦場に舞い戻った彼女は戦いを終わらせに来たとだけ言うと武器を構える。

 

女神の亡霊だと喚き散らすが、黙ってやられるわけにもいかないので応戦することに。

だが、今の彼女は以前の彼女ではない。シェアの力を解き放ち、女神化を行使する。

光の中から現れたのはプロセッサユニットを纏った存在ではなかった。

女神龍クリスタルハートの降臨。その赤い瞳には女神の印がしっかりと顕現していた。

 

彼女はあの時のドラゴンと一つになり新たな女神として再誕したのだが

そんなことを知る由もない女神達は状況が呑みこめずに混乱する。

三人の内の一人が乱心して大剣で斬りかかるがそれは愚かな行為。

 

女神龍の体が光に包まれると腕と足の蒼い結晶が鋭い刃のような形に変化する。

クリスタルハートの固有能力の適応化。相手の使用する武器や特性に応じて

常に有利になれるように自身を強化する力の顕現だ。

 

攻撃を仕掛けてきた女神の武器とプロセッサユニットを粉砕すると頭を鷲掴みにする。

結晶の力を利用して女神のシェアを強引に吸収してやると悲痛な叫びが聞こえてきた。

最後まで残さずに吸いつくすと女神の肉体は光となって消滅するのであった。

同じように残った女神もシェアを強引に吸収してその存在を抹消する。

 

何故女神龍がこのような荒業をやってのけたのかと言うと理由はある。

彼女がドラゴンに与えていたのは自身のシェアで作り出したシェアクリスタル。

体の各部位に現れた蒼い結晶はそれと最後に喰らった彼女の命の結晶が融合した物。

シェアクリスタルはシェアを放出する性質を持つ結晶なのだが女神龍の結晶は違う。

独自の進化を遂げたのか逆の性質であるシェアを吸収する性質を併せ持っていたのだ。

 

狂った女神達を消滅させたことによって守護女神戦争は終結する。

彼女が願っていた戦争の終結は成し遂げられたのだが世界の崩壊は既に始まっていた。

モンスターは汚染化によってそのほとんどが凶暴化。自然や人間を見境なく喰らう。

もはや女神龍の力だけではどうにもならないほど崩壊は進んでいたのである。

 

女神龍は世界の崩壊という現象を前にしてある場所に向かう。

それはとある古塔の頂上。誰がいつ、何の目的で建造したのかわからない。

彼女の記憶から知ったことなのだがこの地にはある伝承が残されていた。

 

数百年に一度、黒雲に覆われた頂上に陽光が差しこめた時に次元の扉が開かれる。

女神龍は塔の頂上でその時を待った。待ち続けた結果、その時が遂に訪れた。

現れる次元の扉。正確には渦のような物なのだがその中にある物を投げ入れる。

女神龍が投げ入れたのは彼女の記憶から作り出した空色のシェアクリスタル。

 

女神龍の力と願いが込められた希望の欠片は次元の狭間を彷徨う。

気の遠くなるような長い時を経てそれが落ちたのは超次元ゲイムギョウ界。

その空色のシェアクリスタルから誕生した女神がシエルなのだという。

 

女神龍は彼女と出会った世界に残り、最後には次元の崩壊と共に消滅した。

シエルはドラゴンと一つになった別次元の守護女神クリスタルハートの子孫。

女神化するとドラゴンになってしまう理由は彼女が誕生するまでの経緯にあったのだ。

これがファントムハートが語った守護女神の物語である。

 

「「…」」

 

私とシエルは言葉を発することができなかった。

守護女神達の争いが最後に招いたのは次元の崩壊。

 

ネプテューヌ達もシェアを巡って争いをしていたことがあったようだが

和解せずに争い続けていたらこの次元も同じ末路を辿っていたのかもしれない。

 

「聞いてる君達に言わせれば私が勝手に作り出した夢物語かと思うだろうけど、私と同じような女神達は別の次元にはいくらでもいる。欲しいものがあればどんなに卑劣な手段を使ってでも自分の物にする。私に言わせれば国だってオモチャの一つにしか過ぎない。この次元の女神達は随分と偽善者が多いよね。私の邪魔をした金と銀の女神もそうだし。自分が欲しい物を力ずくで奪うことの何が悪いって言うのさ…。考えるだけで虫唾が走るよ」

 

「大切な人や物を奪われる気持ちがあなたには理解できないんだね?」

 

「その通り! そんなに大切だって言うなら奪われないようにすればいいだけじゃないか。奪われた時に泣き喚かれても困るだけだよ。守るだけの強さを持ってない奴が悪いのさ。だから私は奪い続ける。欲しいと思った物はどんな手段を使ってでも手に入れる。それを邪魔するなら容赦はしない。完膚なきまでに叩き潰す。私に刃向かったことを後悔させるくらいにね」

 

「なら私はあなたを倒してシエルとセレナの力を取り返すだけだね。それと前にも言ったと思うけど私は絶対にあなたのオモチャにはならないから」

 

「きゃはははっ! そうこなくちゃね! 最初に言ったけど、今日は君達をたまたま見かけたから様子を見に来ただけだからね。次に会う時が楽しみで仕方ないよ。私達のゲームはまだ始まったばかり。舞、君は最高のオモチャになる。その時は私を存分に楽しませてよ。精々死なない程度に頑張るといいさ」

 

その言葉を最後にファントムハートは空間に溶け込むように消えていった。

 

「相変わらず狂った奴だよね…。どういう風の吹き回しであの話をしたのかは知らないけど自分のことが知れてよかったと私は思ってる。舞ちゃんはどう思った?」

 

「ファントムハートが現れたのは予想外だったけど、シエルのことが知ることができてよかったと思ってる。生まれ方が特殊だったとしても私の友達であることは変わらないよ。それに私だって別の世界から来たからある意味似た者同士かもしれない」

 

「ふふっ。そうかもしれないね。この世界に来れてよかったよ。先代のクリスタルハートにお礼を言いたいけど、それはこれから精一杯生きることで返していきたいな」

 

「きっと先代のクリスタルハートも喜ぶと思うよ。目的も達成できたからプラネテューヌに帰ろうか」

 

「そうだね。私ももっと上を目指さないと…。鍛錬の相手ならいつでも受けて立つからこれからは遠慮せずに私にも頼ってね」

 

「なら早速明日からお願いさせてもらおうかな?」

 

「うん! 舞ちゃんやネプギアちゃん達の力になれるように私も教えられるところはしっかりと教えていくからね!」

 

ファントムハートとの再会と言う予想外の出来事もあったが

無事に目的を達成した私達はプラネテューヌの教会に帰還する。

 

過去に囚われずに今を精一杯生きること。

それは簡単なようで難しいことかもしれないが

私も自分を生んで育ててくれた両親への感謝の気持ちを忘れずに

これから精一杯生きていきたいと改めて思った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。