ギョウカイ墓場を震源地としたゲイムギョウ界全体を揺るがした巨大な地震。
何が起きているのか確かめるためにギョウカイ墓場に赴いた私達の前に現れたのは
犯罪組織マジェコンヌ四天王のマジック・ザ・ハードだった。
犯罪神の力の一部を宿したことで巨大化したワレチューを追いかけるために
私達は三年前にネプテューヌ達を単身で打ち破ったマジックに立ち向かう。
「はあああっ!」
銀の大剣でマジックに斬りかかるが手に持った鎌で簡単に受け止められてしまう。
押し返された後に即座に襲い掛かってくる鋭い鎌の一撃が私を引き裂こうとするが
「させません!」
「む…。いつの間にこれほどの力を…。あの時は見ているだけしかできなかった小娘が随分と成長したではないか」
飛び込んできたネプギアが銀と金の長剣で私に向かっていた鎌の一撃を防ぐ。
「ネプギア、後退!」
「はいっ!」
私とネプギアはマジックと距離を取る。
「逃がさん…」
マジックが左手を突きだすと赤の波動が私とネプギアに襲い掛かってきた。
「させない…。リフレクション!」
ロムが間に立って反射効果を持つ障壁を展開する。
私もそれに合わせてシェアを送ることで障壁の強度を上げる。
それによってマジックの放った波動は反射されて別の方向に飛んでいった。
「散開っ!」
今度はマジックがその場で素早く鎌を振ると私達の足元に冷気が集まる。
散開指令を出すことで回避するが私達がいた場所には鋭い氷の槍が地面から伸びていた。
「フォトンアロー!」
続いてユニの放った光属性の矢がマジックに一直線に向かって行く。
その矢はあっさりと両断されてしまったが同時に光の刃が追撃で襲い掛かる。
「忌々しい光よ…。消え去れっ!」
その光を塗りつぶすが如くマジックの体から邪悪な黒いオーラが立ち上った。
光の刃は全てそれに阻まれて消滅する。同時に強固な障壁の役割を果たしているようだ。
「七色の剣よ! 降り注ぎなさい! プリズムソード!」
ラムが放ったのは天から七色の光の剣が敵に降り注ぐ光属性の上級魔法。
直撃するかと思ったがさっきと同じように黒いオーラに阻まれて消滅させられる。
シェアの光を上書きする闇の障壁の前にダメージを与えることができない。
「簡単には通さないってことか…」
「どうした? まさかこれで終わりではないだろう?」
「勿論だよ。ロム、ラム。あれを使う時が来たよ。ディスクに魔力を込めて解き放って!」
「わかった…!」
「よーし! 何が起こるかわからないけど行くわよ!」
ロムとラムはディスクを取り出して魔力を込める。
ディスクが眩い光を放つとモンスターの形を形成する。
現れたのは何とツインサーペントとブラッドフェンリルだった。
『お呼びですか? 我が主』
『激しい戦いの匂いがするぜ! それで、俺様は何をすればいい?』
「かつての敵も今では頼もしい味方だよ。恐れずに指示を出してあげて」
「うん…。わたし達と一緒に戦ってくれる?」
「わたし達に力を貸して!」
『わかりました。私の力、存分にお使いください』
『俺様の力、受け取りな!』
ツインサーペントとブラッドフェンリルは光となってロムとラムの杖に入っていく。
杖の先端にある月に白い蛇が巻き付き、太陽が狼の頭部を模した形に変化した。
「ネプギア、もう一度斬りこむよ? あれ、行けるよね?」
「はいっ!」
「いい返事だね? ユニ、援護射撃をお願い」
「任せなさい!」
ネプギアは長剣を交差させて力を込める。
薄紫色の炎のようなオーラが現れてネプギアの体に纏わりついた。
ネプギアに合わせる形で私は銀の大剣にシェアを纏わせて迎撃態勢に入る。
「面白い…。その力を見せてみるがいい」
「言われなくても見せてあげるよ。私達の一撃を受けてみて」
「ブラッド・バースト!」
ラムの杖から赤い魔力光が放出されて私達の体の中に入り込む。
体の底から力が沸き起こるのを感じ取ったところで私とネプギアは駆け出した。
マジックは迎撃しようと黒いオーラを私達に向けて放とうとするが…。
「させない! バニッシュフレイムッ!」
武器を銃に変えたユニが放ったのは火属性の弾丸。
マジックの鎌に両断されてしまうが今度はその場から火柱が立ち上る。
ジェネラルドラゴンの攻撃を元にして私とユニで改良を加えた特殊な弾丸の一つ。
続けて斬りかかるのはネプギア。さらに上昇した身体能力で高速の剣舞を繰り出す。
マジックはその剣舞をも鎌を巧みに使うことで捌き切るが諦めるネプギアではない。
「続けて行きます! 女神剣舞・第二楽章、受けてみてください!」
さらに速さを増した銀と金の剣舞がマジックに襲い掛かる。
マジックが防ぎ切れていない斬撃は僅かとは言え障壁にダメージを与えていた。
「やってくれるな…。素晴らしい剣舞と言ったところだが、限界が近いのではないか?」
今のネプギアの状態はネプギア自身の体力を継続的に消費することで維持されている。
鍛練によって維持できる時間は増えているが、それでも消耗が激しいことには変わらない。
「それはどうでしょうか? 私は一人じゃないんですよ?」
「ネプギアちゃん…! これを受け取って! ライフチャージ!」
ロムの杖から放たれた水色の光がネプギアの体の中に入り込む。
本来ならばこの時点で体力が尽きて息が上がってしまうところではあるが
ロムが使った魔法の効果でネプギアの体力は自動的に回復するようになるのだ。
ネプギアは再度マジックに斬りかかるが鎌の一撃が来ることを見切って距離を取る。
マジックの鎌の一撃は空を切るだけに終わった。そのまま突撃したら両断されていたところ。
「舞さんっ!」
「メテオドライブ!」
隙ができたマジックに大剣の一撃をお見舞いする。
跳躍から銀のシェアを込めた大剣で縦斬りをお見舞いした後に横に薙ぎ払う技。
これでもまだ障壁を破るには至らなかった。
「あぐっ…!」
マジックに首を掴まれ、そのまま持ち上げられてしまう。
その手に邪悪なエネルギーが集まると私を巻き込んで大爆発を起こした。
「舞さんっ!」
「どういうことだ…。零距離からの攻撃を直に受けてまだ立つと言うのか…」
「言った、でしょ…。この体が消えてなくならない限りは、あなた達に抗って見せるって…!」
パーカーワンピは零距離で受けた爆発の影響で破れてしまっていた。
「まだ、終わらないよ…。ネプギア、来て!」
「は、はいっ!」
「この体じゃ私主体のハード・ユニゾンは無理だけど、その逆なら…」
駆け寄ってきたネプギアの手をしっかりと握って残ったシェアの力を解放する。
私の体は銀色の光の粒子となってネプギアの体に溶け込んで行く。
「これは…」
ネプギアの髪と瞳は美しい銀色に染まる。その手には舞が使っていた大剣。
服装はセーラーワンピから舞のプロセッサユニットに変化した。
これが舞が秘密裏に編み出していたハード・ユニゾン・リバースである。
通常は舞の体にネプギア達が融合する形だがそれを単純に逆転させたハード・ユニゾン。
自分の体が動かなくなった時の手段として使うためにアリアと共に開発していたのだ。
「行きます…!」
ネプギアの姿が一瞬で消える。
「なっ…!」
「絶氷の剣、その身に刻んでください」
大剣から放たれる強烈な氷の魔力が作り出した結晶がマジックを拘束する。
背中のプロセッサユニットに力を込めて跳躍するとそのまま特大の斬撃をお見舞いする。
「セルシウスキャリバー!」
氷の精霊の力を宿した大剣の一撃は確かにマジックに直撃した。
「これでも、通りませんか…?」
「いや、見事な一撃だった。これを見るがいい」
マジックが纏っているプロセッサユニットの翼部分が壊れていた。
「完全に避けきれなかったということか…。お前達はまだ成長を続けると言うのだな…。いいだろう。アレは既にゲイムギョウ界に降り立っている。止めたいのならば向かうがいい」
「…」
ネプギアの服装がプロセッサユニットから元のセーラーワンピに戻る。
そのまま仰向けに地面に倒れるところだったがそれは一人の人物によって防がれた。
「ネプギア、大丈夫?」
「あっ…。お姉ちゃん…」
ネプギアを受け止めたのは女神化状態のネプテューヌだった。
「もう戦う力を取り戻したのか。あのまま眠っていればよかったものを」
「舞のおかげでね。それにやられっぱなしは性に合わないのよ」
「十分に戦える分のシェアは既に回復していますわ。舞さんは私達のことを気遣って後続部隊に回してくれていましたの」
「三年前に受けた借りはキッチリ返させてもらうぜ!」
「お前達と続けて戦ってもいいが、お前達の妹と銀の女神の継承者に手痛い一撃をお見舞いされたのでな。ここは退かせてもらうとしよう。銀の女神よ、お前とはいずれ必ず戦うぞ?」
「望むところだよ。私の大切な友達を傷だらけにした報いは受けてもらうから」
「舞と同じくいい気迫だな。再び舞と共に私の前に現れる時を楽しみにしておくとしよう。それまで生き延びてみせるがいい」
その言葉を最後にマジックは闇の中へと消えていった。
「行ったみたいね…。ネプギアの髪が銀色に変わってる…。これは一体…?」
「アリアが教えたあの技を早速使うなんて、それだけアイツは強かったってことか…」
「ハード・ユニゾン・リバース…。舞ちゃんがそれを行使せざるを得ない状況に追い込まれたってことだよね…」
「舞さん、どうして返事をしてくれないんでしょうか…?」
「どういうことよ? 舞はアンタと融合してるんでしょ?」
「うん…。心の中で呼びかけても舞さんの声が聞こえないの。ハード・ユニゾンなら意志の疎通ができるはずなのに…」
「今の舞はネプギアちゃんの中で眠りに就いてる状態だね。舞と一緒に編み出したハード・ユニゾン・リバースの代償がそれだよ。融合の解除はネプギアちゃんの意志ではできない。舞が目を覚ませば自動的に解除される。それまでは待つしかない。その代償を知った上で舞はネプギアちゃんとそれを行使した。だから舞が出てきても怒らないであげて」
「わかりました。そういえば、ノワールさん達も女神化しているみたいですけど、もう大丈夫なんですか?」
「まあね。とりあえず元の姿に戻らせてもらうわ」
ネプテューヌ達は女神化を解除して元の姿に戻る。
「ふぃ~! やっぱりこっちの姿の方が気が楽だよ。あの女の人は逃げて行ったけど、ネプギア達が追い返したってことだよね? 流石は舞と私達の自慢の妹だよ!」
「みんなの力を借りても撃退するだけで精一杯だった…。あの一撃が通らなかったらまたやられるところだったよ…」
「それでも十分すごいって! 三年前に私達が勝てなかった相手だよ? あれ? もしかして私、ネプギアに戦闘力でも負けちゃってる…? だとしたらこれは見過ごせない事態だよ!」
「舞と一緒に毎日頑張って積み上げてきた結果でしょ。今の舞達の実力が私達を上回っているというのは今回の結果を見る限り明らかじゃない。悔しいけどね」
「お姉ちゃん、もう女神化できるようになったの?」
「ええ。舞があの時に分けてくれたシェアとこれのおかげでね」
ノワールが取り出したのは合同鍛練の際にできたアンチクリスタルだった結晶。
ユニが持っているのと同じ黒色の結晶の色は無色透明になっている。
「実はこれには面白い性質があるのよ。それに気づいたのはほんの少し前だったけどね…」
ノワールがシェアの力を結晶に注ぎ込むとその色が再び黒に戻った。
「また黒くなったよ…?」
「この結晶は一定量のシェアを保存しておくことができるみたい…。これに女神化する分のシェアを保存しておけば今の私達でも女神化を行使することができる…」
「じゃあ、これからはお姉ちゃん達も一緒に戦えるの?」
「動けるだけのシェアは既に回復してあるから大丈夫よ。女神化はこれを使えば少しの間だけど行使できるから戦う上では特に問題は無いわ」
「本調子ではないとは言え、いつまでも前線に出ないわけにも行きませんからね。これからは私達も一緒に戦いますわ。遠慮せずに頼ってくださいな」
ゲイムギョウ界を守護する四女神が戦線に復帰した瞬間であった。
「あっ! 大きくなったネズミを追いかけないと…! ゲイムギョウ界が壊されちゃう!」
「えっ? ネズミがゲイムギョウ界を壊すってどういうこと?」
犯罪神の力の一部を取り込んで巨大化したワレチューが
ゲイムギョウ界に向かったことをネプテューヌ達に説明する。
「犯罪神の力とはまた物騒な話だね。セレナ、あの魔法は使えるの?」
「浄化魔法かな? 原典が無くても使えるようにはしてあるけど効果があるかは保証できないよ。まあ、試してみる価値は十分にあるけどね」
「使えるならそれで十分だと思うよ。早くゲイムギョウ界に戻って状況を確認したほうがいいね。街に向かってたら急いで止めないと!」
「あの、舞さんは戻ってくるんですよね?」
「大丈夫だよ。今は無理だろうけど舞はすぐに戻ってくる。信じて待ってあげてほしい」
「わかりました!」
ネプギアが動けるようになったところで急いで転送ポイントに戻る。
「いーすんさん! 大きいネズミが出ませんでしたか?」
「ネプギアさん!? その髪と瞳の色は…。それに舞さんの姿が見えませんね…?」
「舞さんは私の中にいます。その影響で私の髪と瞳の色が変化しているみたいなんです…」
「詳しいお話を後で聞かせてもらう必要があるようですね…。ネプギアさんの言った巨大なネズミですが先ほどリーンボックスのガペイン草原に現れたとの連絡が入りました。その体から漏れ出している邪悪なエネルギーを浴びたモンスターが次々と汚染されて狂暴化しているようです。街まではまだ距離がありますがこのまま放置しておくと街に甚大な被害が出る恐れがあります。帰ってきて早々申し訳ありませんがすぐに現地に向かって対応に当たっていただいてもよろしいでしょうか?」
「わかりました! すぐに向かいます!」
「あっ、ネプギアちゃん達は前に出ないほうがいいよ。私達があの巨大ネズミまでの道を作るから力を温存しておいて。わかってるとは思うけどその状態でダメージを受けたり無茶な力を行使すれば中にいる舞にもダメージが行っちゃうからね。それにネプギアちゃんには頼りになるお姉さん達がいるでしょ?」
「ふっふ~ん。私の妹の邪魔をするなら斬り捨てるだけだよ~!」
「この辺りで名誉挽回と行かせてもらおうかしら!」
「久しぶりの戦い…。腕が鳴るわ…」
「障害は私の槍で貫くのみですわね。この機会に運動不足を解消させていただきますわ」
「作戦の内容だけど私とシエル、ネプテューヌ達で先行するよ。ネプギアちゃん達はセレナと一緒に後続組に入ってもらう。汚染モンスターを蹴散らして巨大ネズミの所に辿り着いたら隙を作ってセレナの浄化魔法を撃ちこむ。この流れで行こうか。それとシエル、どっちがたくさん汚染モンスターを狩れるか競争しようか」
「うわ、また唐突だね? その勝負受けて立つよ!」
「この二人は相変わらずだね…。時間もあまり残されてないから早速作戦を開始しようか?」
「はいっ!」
「わかったわ!」
「うん…!」
「オッケー!」
巨大化したワレチューの進行を食い止めるため、ネプギア達はガペイン草原に向かう。
マジックを撃退することはできたがマジェコンヌとの戦いはまだ始まったばかり。
激しい戦いの予感はまだまだ消える気配がないのであった。