ワレチューと協力関係を築いたことで有力な情報を入手することができた。
マジェコン製造工場を破壊すれば私達に有利な状況を作り出すことができるはずだ。
ネプギア達にその情報を伝えたところで早速ワレチューの言っていた場所に向かう。
「まさかラステイションにマジェコンの製造工場があるなんて…。でもその情報は信頼できるのかしら? 舞が持ってきた情報を疑いたくはないんだけど…」
「これまで私達と敵対していたワレチューから得た情報だから嘘の情報かもしれないって疑いを抱いてしまうのは仕方ないよ。でも、私はワレチューのことを信じてるから」
「いざ来てみたけど製造工場なんてどこにも見当たらないわよ? 舞が言った通り見えないようにする仕掛けが施されてるのかしら? 確か舞がプレイしたゲームの中にそんな仕掛けがあったわね?」
「うん。終盤の方に出てくる空に浮かぶ要塞に周囲の景色に溶け込む迷彩機能があったよ。隠れてる場所は空間が歪んでるから外側から攻撃を加えて解除して突入したね。セレナ、この辺り一帯を魔法でサーチできる?」
「できるよ。舞とのハード・リンクで覚えた魔法でサーチしてみようか」
セレナは魔法の詠唱に入る。フィールドに点在する街やダンジョンの探索と
落ちているアイテムを見つけ出すための機能をセレナが魔法として再現した物だ。
実際のゲームでは自分を中心とした円の部分しかサーチすることができないが
セレナの魔法は一つのダンジョン内をまるごとサーチできるほどの範囲を誇っている。
「ワイド・エリアサーチ!」
隠された物を見つけ出すセレナの広域探索魔法が私達がいるエリア全域をサーチする。
「なにかあるね…。舞、私から見て北西の方角に魔力弾を飛ばしてみて」
「やってみるよ。ブライトショット!」
シェアを光属性の魔力に変換してからそれを銀の銃に込めて放つ魔力弾。
魔力弾はそのまま直進して消滅すると思われたが隠れている何かに直撃して消滅した。
私の魔力弾が当たった場所は一見すると何もないように見えるが
接近してよく観察すると視界に映る景色が歪んで見えていた。
「どうやら当たりみたいだね。ユニ!」
「任せなさい。パワーポイント!」
今度はユニが持っている銃から小型のミサイルを模した弾丸が打ち出された。
物を破壊することに特化した弾丸なので直撃するとそれなりに大きな爆発が起きる。
それを五発連続で撃ちこむと迷彩障壁が解除されてマジェコン製造工場が現れた。
「本当にあったのね…。こんな大規模な工場をいつの間に作っていたのかしら?」
「きっとノワール達が捕まって国が混乱していた隙に乗じて作ったんだと思う。ご丁寧にバレないように迷彩障壁までつけてるくらいだから、この工場を落とせば…」
「マジェコンの流通を一気に止めることできるってわけね」
「これは久々の大仕事になるわね。突入して中を調べてみましょう」
私達は現れたマジェコン製造工場の中に突入する。
侵入者を撃退する目的で配置されているのか多数のモンスターが工場内を徘徊していた。
それらを始末しながら工場の奥に進んで行くと巨大な機械がたくさんある場所に出る。
「すごい…! 見たことのない機械がいっぱい! 舞さん、見学していきませんか?」
「確かにすごい設備だけど、マジェコンの製造に使われているのがもったいないね…。ノワール、この工場を別の物を生産するための工場として再利用するのはどうかな?」
「それはいい考えね。この工場を押さえたらすぐに取り掛からせてもらうわ」
「ということだからネプギア、工場見学はまたの機会にしようね」
「はっ…! 機械を見てまた勝手に舞い上がってました…。ごめんなさい!」
「ネプテューヌだけでなく、ネプギアの扱いまで手馴れてるのね…。舞には本当に恐れ入るわ。よかったらラステイションで私の秘書官をやってみない?」
「ダメだよ! 舞は私専属の秘書になる予定なんだから! ノワールには渡さないよ!」
「はいはい。喧嘩はストップ。それも将来の選択肢に入れさせてもらうね」
諜報部・ナース・ネプテューヌ専属の秘書・アリアと国を作る・ノワールの秘書官。
私の将来の選択肢にまた一つ新たな物が加わった瞬間であった。
「ねーねー。この工場を再利用するってことは壊しちゃダメなの? アタシ、壊す気満々だったんだけど…」
「それ私も思った! 再利用するにしても私達のシェアを下げる原因であるマジェコンを作ってる工場なら遠慮せずに壊せると思ったのに!」
「バカなこと言わないの。警報装置や監視カメラの類の物はセレナが工場内をサーチした限りでは無いみたいだけど、設備を壊して騒ぎを大きくすれば新型マジェコンを持って逃げられるだけよ。それでまた工場を作られたりしたら流通が止められなくなるわ」
「工場の指揮を執っている奴を懲らしめて工場全体を一気に停止させるのが最善手ね…」
「指揮を執っているのって工場長なのかな?」
「舞の話ではあの下っ端がこの工場の指揮を執ってるみたいにゅ。調子に乗ってる下っ端を懲らしめてやれば万事解決にゅ」
「リンダは私が懲らしめるから手を出さないでね。最後に戦った時からどれだけ強くなってるのか気になるところではあるけど…」
特殊な女神化を発動して迫る因縁の戦いに備えたところで工場の奥に進んで行く。
「おら、造れ造れ! そこ! 手を休めるんじゃない! もっとキリキリ動きやがれ!」
マジェコン製造工場の工場員達に指示を飛ばしているのは舞の因縁の相手でもあり
犯罪組織マジェコンヌが誇るマジパネェ構成員のリンダであった。
「あと一歩でこのゲイムギョウ界は我々マジェコンヌのモンだ! 少しでも犯罪神様の信仰を集めて我々に逆らうあの暴力女神どもをブッ潰すんだよ!」
「うおおおーす!」
リンダの指示を聞いた工場員達の士気が高まると作業速度が一気に上昇する。
私はリンダの背後に近づくと工場員のフリをしてわからないことをリンダに尋ねてみた。
「すみません。ここの作業はどうすればいいのでしょうか?」
「ああ? そこは昨日教えたばかりだろうが! こんな簡単な作業を何で覚えられねぇんだよ!って…。 げえっ! 暴力女神! 何でここにいやがる!」
「その乱暴な対応は現場を指揮する上司としてはどうかと思うよ…。マジェコンの製造工場がここにあるって情報が私の友達から入ってね。早い話がこの工場を押さえにきたってわけ」
「マジェコンを作る工場なんて迷惑極まりないにゅ。おとなしく観念するといいにゅ」
「舞に懲らしめられる前に尻尾撒いて無様に逃げればいいんじゃない?」
「調子に乗りやがって…! 暴力女神が来たからって逃げる理由にはならねぇよ! むしろ好都合だ! テメェをここでぶっ潰してやる!」
「そのセリフは聞き飽きたかな…。それに私は言ったよね? 私達の邪魔をするなら何度でも懲らしめてやるって…。時間も惜しいからさっさと始めようか?」
「望むところだ! 暴力女神!」
この世界に来て五戦目となる私とリンダの因縁の戦いが始まった。
今回の私の武器はラステイションで最後に使って以来となる二挺拳銃。
ユニに渡していた銀の銃の片方を一時的に借りている形だ。
「フロート・ウェポン!」
私が発動した魔法の効果によって銀の銃は私の手から離れて浮遊した状態になった。
浮遊した武器は私の意志で自由自在に操ることができる。セレナから教わった魔法の一つ。
空いた両手にさらに武器を握れば攻撃の幅は一気に広がる。
例えば二つの剣を浮かせた状態で空いた両手に別の剣を握れば四刀流になるのだ。
実戦では初めての運用ということで今回は両手は空いた状態になっている。
「テメェの顔もいい加減に見飽きてきたぜ。その綺麗な顔をぶっ潰してやる!」
リンダが武器である鉄パイプを振りかざして襲い掛かってきた。
「プロセッサユニット、部分展開!」
私が部分展開したのは腕を守護する籠手とも言えるプロセッサユニット。
展開したら両腕を交差させてリンダの鉄パイプの一撃を受け止める。
「なっ…!」
「隙だらけだね。アクセル・ショット!」
浮遊した銀の銃からシェアの光弾が凄まじい速度で放たれるとリンダに直撃する。
「まだ繋げるよ。錬気轟縮!」
両手を突きだすと同時に銀のシェアをリンダに叩きこんで吹き飛ばす。
「このっ…! やりやがったな! お返しだ! 暴力女神!」
リンダは鉄パイプに紫色のクリスタルを仕込む。
クリスタルを仕込んだ鉄パイプを振りかざすと紫色の霧が私に纏わりついてきた。
「くっ…! やってくれるね…!」
口元を押さえて咳き込むと私の手には血がついていた。
「テメェに勝つためなら手段は選ばねぇぜ? リーンボックスでテメェに負けてからアタイはどんな卑怯な手段でも躊躇せずに使うって決めたんだ!」
「それでいいと思うよ…。戦闘に綺麗も汚いもないからね… げほっ!」
「いいザマだぜぇ! 仲間に助けを求めたらどうだ?」
「大丈夫だよ…。みんなは私を信じてくれてるから…」
ネプギア達には私がいかなる窮地に立たされても手を出さないでほしいとお願いしてある。
「そうかよ! ならもう一つとっておきをプレゼントだ!」
再びリンダが鉄パイプを振りかざす。
ドス黒い血のような色をした光が私の中に入り込んできた。
「対女神用ウイルス…! もう私には通用しないよ! はああああっ!」
入り込んできたウイルスを無力化して自分の力に変換したら狂女神化を発動する。
「いい加減、この毒も鬱陶しいっ…! 穢れを浄化せよ! リカバー!」
あらゆる状態異常を治療する魔法を発動して体内に入り込んだ毒素を除去する。
狂女神化はトリック戦で使用して以来、実は秘密裏に発動を繰り返して練習を重ねていた。
女神化を阻害するウイルス攻撃を繰り出してくるのは何もマジェコンヌ側ばかりではない。
ダンジョンに生息している野生のモンスターの中にも繰り出してくる物がいるのだ。
それらのモンスターの攻撃を受けて狂女神化の発動を練習した結果を言うと
ウイルスを介しての発動に限って戦闘後に生じるデメリットは無くすことができたが、
普段より乱暴な口調になることだけは何度行使しても直すことができなかった。
「調子に乗るのもここまでだ…! これで決めてあげるよ!」
濁った銀色のシェアを体全体に纏わせると高速でリンダの元に駆け出す。
私の拳が届く範囲に近づいたらアッパーを叩きこんでその体を宙に浮かせる。
「宿れ拳神! 轟け鼓動!」
私自身が光となってジグザグに飛びながら、リンダの体をさらに宙に打ち上げる。
「うわああああっ!」
「これでお終い! インフィニティアソウル!」
最後に真上からの蹴り技を繰り出してリンダを地面に叩きつけた。
「私の勝ちだね…!」
狂女神化を解除するとヒールポッドを使用して体力を回復する。
ハード・ユニゾンの習得戦では幾度もお世話になった回復アイテムである。
「ちくしょう…! またか…! アタイはどう頑張ってもテメェには勝てねぇのか…!」
「私は負けるわけにはいかない。そのためにできることは全部やってきたから…! 工場員達もネプギア達が確保に動いてくれてる。もう観念することだね」
「そうは行くかよ…! この製造工場はマジック・ザ・ハード様から直々に任されたんだ! テメェに負けたからって黙って引き下がるわけにはいかねぇんだよ!」
「随分とマジックにご執心なんだね。ネプギア、工場員達は?」
「はい。全員確保しました。残っているのはあなただけです」
「ちくしょう…! ここまでなのかよ…!」
「いや、まだ終わりではない。お前の決意、しかと見届けたぞ…」
リンダを守るように私達の前に姿を現したのはブレイブ・ザ・ハードだった。
「ブレイブ…!」
「ブレイブ・ザ・ハード様!?」
「ここは任せろ。お前は下がれ…」
「で、でもこの工場は…この任務だけは…!」
「命を無駄に散らすなと言っている。下がるのだ!」
「わ、わかりました…!」
ブレイブの言葉を聞いたリンダはその場から逃走した。
「また会ったな。舞、ユニよ。マジックを撃退したという報を聞いた時は驚いたぞ。お前達はそれほどまでに成長を遂げていたと言うのだな…」
「ギョウカイ墓場で最後に話して以来だね。また会えて嬉しいよ」
「アタシも舞と同じ気持ちよ。アンタとはもう一度会いたいと思ってたから…!」
「うむ。俺も同じ気持ちだ。それにお前達の輝きは最初に剣を交えた時とは比較にならないほどに強くなっているようだな…。実際に対面するだけで感じ取ることができるほどだ。だが、ここのマジェコン工場を潰させるわけにはいかん。マジェコンが無くなると言うことは子供達が娯楽から飢えることを意味する。それは断じて許すことはできん!」
「マジェコンによる劣化コピーが溢れて何でもタダで手に入るようになったら、誰も新しい物を作り出さなくなる。そうなったらゲームなんてこの世界から消えて無くなるわ! 子供達が本当の意味での娯楽を手にすることはできなくなる!」
「そんなことはない。それしきのことで新しいゲームが作れなくなるなど、力の無いクリエイターの言い訳に過ぎぬ! そんな言い訳を吐いているようでは娯楽に飢えた子供達を楽しませることなどできはしないのだ!」
「力のあるなしなんて関係ないのよ。大事なのは少しでも面白い物を作ろうとする気持ち。その気持ちを持ってお互いに競い合うことで新しいゲームが生み出されるのよ! アンタ達はそれを邪魔しているだけに過ぎないわ!」
「ならば、ゲームで遊ぶことすらできない子供達はどうなる? お前達はあの時に時間をかけてでもなんとかしてみせると言ったな。ならばそれはいつだ! 数十年後か? それとも数百年後か? いつになるかもわからぬお前達の救済を俺は認めん!」
「最初に会った時に言ったと思うけど違法な手段で手に入れたゲームで心から楽しむことはできないよ。それは所詮偽りの娯楽でしかない。私は心から楽しめるゲームを通してこれまでたくさんの人と出会ってきた。時にはぶつかったり、お互いに協力したりして大切な絆を紡いできたの。マジェコンで得られるのも偽りの絆でしかないんだよ?」
「では、なぜ人間どもはマジェコンを求める!? それはお前達の救済など待っていられないと言う意思の表れではないのか!?」
「心が弱い人間だっているのよ。このゲイムギョウ界に生きるみんなが強い心を持ってるってわけじゃない。簡単に誘惑に乗せられちゃう人だっているのよ…」
「それはこのゲイムギョウ界に限らずに私がいた世界でも同じことだよ。だからこそ、間違っている物は間違っていると言わないといけないんだよ」
「やはりお前達の掲げる正義と俺の掲げる正義は明確に違っているということか…。ならば、お前達をここで始末するしかないようだな…!」
「それはこっちの台詞よ。子供達の娯楽をこれ以上奪わせるわけにはいかない! だから、アンタはここでアタシ達が倒す! 舞、アタシと一緒に飛んでくれる?」
「うん。ブレイブに私達の思いを伝えよう!」
私とユニは手を繋いで内に秘めたシェアの力を解放する。
「「ハード・ユニゾン!」」
私とユニが一つになる。私の体にはユニのプロセッサユニットが装着される。
私の体に装着されたユニのプロセッサユニットに変化が生じていた。
黒を基調とするのは変わらないがそれに加えて水色のラインが入っている。
淡い輝きを放つそれは私達の思いにプロセッサユニットが応えてくれたのだろうか。
「今回は私達だけじゃないよ」
ユニとハード・ユニゾンした私の隣に並び立つように
女神化したネプギア・ロム・ラムが立っていた。
「これがお前がこの世界に来て紡いだ絆というわけか…!」
「うん。私達はあなた達の支配を受け入れるわけにはいかないから。ここから先はもはや言葉はいらないんじゃないかな?」
「ふっ…! やはり俺の目に狂いはなかった…! それでこそ俺の前に立つに相応しい! 来るがいい! さらに輝きを増したお前達の意志の力、この俺に示してみろっ!」
「望むところ! みんな、行くよっ!」
私の声を合図に開幕したブレイブ・ザ・ハードとの決戦。
私達とブレイブの意志の力、互いに譲ることのできない正義が火花を散らしてぶつかり合う。