遂に犯罪組織マジェコンヌの四天王を全員倒した私達。
しかし、肉体を持たない犯罪神がこのゲイムギョウ界に干渉するために生み出した
四天王が全員倒されたことで不完全とは言え器を得た犯罪神が復活を果たしてしまう。
再び起きた巨大な地震と共にギョウカイ墓場の黒い塔の真下で観測された巨大な生命反応。
顕現した犯罪神がゲイムギョウ界に侵攻を開始する前に倒さなければならない。
転送装置の核となったイストワールの導きの光によって最後の決戦の舞台に降り立った。
ギョウカイ墓場に到着した私達は生命反応が観測された黒い塔の真下を目指す。
今回はジャッジと戦った場所よりさらに奥に進まなければならない。
歩を進めれば進めるほどに昏い闇の奥に進んでいる気分になってくる。
ジャッジと戦った場所からさらに奥のエリアに進むと邪悪な気を感じ取った。
長時間当たると気分を害する危険があったので魔法で障壁を展開した状態で進んでいく。
私達の進路を阻むモンスターにも前のエリアと比較して変化が表れ始めている。
頭に銀色の王冠を付けた箱型の鳥、朱色の網目模様が印象的な土管。
黒い色をしたディスク型のモンスター。特に土管とディスクは防御力が非常に高い。
新たなモンスターに加えて確認できる危険種はドリームドルフィンと同じ姿をした生物。
それはドリコリンプスと呼称される水棲型のモンスターである。
過去に他の場所でも観測されたことがあるようでシエルがその情報を知っていた。
進路を阻む雑魚モンスターを蹴散らして目標地点である黒い塔の真下に到着した。
「どこにいるの…?」
特に巨大な生物は確認できないが異様な重圧感が場を支配している。
一際大きい雷が落ちると空間が歪み始め、闇の中から異形の存在が姿を現した。
四本の手と足を持ち、腹と思われる部位には巨大な口と獣人の上半身のような物がある。
さらに顔に相当する部分には巨大な目がついており不気味さを際立たせていた。
その巨体に邪悪な気を纏い、大気を震わせるほどの大咆哮を放つ。
「これが…!」
「犯罪神マジェコンヌ…!」
「おおお…! おぉぉぉぉ! 全てに、滅、びをを…!」
言葉を話すことはできるようだがどうも片言で安定しない話し方である。
「随分と醜い神様もいた物ね。どう表現していいのかわからない程の醜さですわ」
「最初からこいつの姿を見せてれば誰も犯罪神なんて信仰しなかったでしょうね。事実、犯罪組織の下の連中は何も知らないで上の奴らの指示に従っている奴らばかりだったし…」
「おぐぅうう…! うぁぁぁああ!」
苦しそうに呻き声を上げる犯罪神。不安定な存在を維持するので精一杯ということか。
「おまけに知性の欠片を全く感じないにゅ。こんなのは到底神様とは呼べないにゅ」
「あの声を聞いていると不快な気持ちになる…。これほど酷い声は聴いたことがないよ」
「犯罪神は邪悪な負の思念の塊と言える存在…。不快な気持ちになるのは必然と言ってもいい」
「どうやら敵として認識されたみたいね。私達を食い入るように見つめているわよ」
「グ…! が…! ガアアアアア!」
「ひゃあ!?」
「恐れないで。様子を見る限り、あいつは存在を維持するので精一杯のはずだよ。あいつを倒すのは今しかない…!」
「アリアの言う通りだよ。私達は犯罪神を倒すためにここまでやってきた。後は私達全員の力をあいつにぶつけるだけ!」
「みんなの力を合わせればどんなに強い敵だって倒すことができる。私はそれを何度も見てきたから。例え神様が相手だったとしても大丈夫だよ」
「よーし! 私達の力であいつを倒そう! 帰ったらみんなで一緒に遊ぶぞー!」
「おー! いいね、それ! 残念ながらアタシの嫁にはできそうにないから、こんな奴さっさと倒してみんなで遊びに行こうよ!」
「はぁ…。あんた達は最後までそんなノリなのね。こんな感じで今までやってこれたのが不思議なくらいだわ」
「こいつをやっつければ全部お終いなのよね? ならさっさと倒してこんなところからおさらばしましょうよ!」
「そうね…。最強のアタシ達に加えてお姉ちゃん達と旅の中で出会った大切な人達が集まった。正直言ってこんな醜い奴に負ける気がしないわね」
「やっつけよう…! わたし達の手で犯罪神を…! みんなでゲイムギョウ界に帰る…!」
「そうだね。私達の世界を破壊しようとする犯罪神…。この世界から消滅させます!」
「さて、全員の士気もいい感じに高まってきたね? さあ、始めようか? ゲイムギョウ界を守るためにあなたは今日ここで倒すよ。犯罪神マジェコンヌ!」
私は女神の力を解放する。私に合わせる形で全員の女神化が完了すると戦いが始まった。
作戦は特に決めていない。各々が持てる力の全てを尽くしてマジェコンヌに攻撃を加える。
「最初から全力でいくわ! 32式エクスブレイド!」
ネプテューヌの体から放たれたシェアが空中に集まると巨大な剣を形成する。
右手を突きだすとシェアの剣はマジェコンヌに一直線に向かって行き、その体を貫く。
「続けてくらいなさい! 天魔流星斬!」
アイエフの両手に握られたカタールによる流星の如き速度の十二連撃。
攻撃のために接近したアイエフをマジェコンヌは巨大な腕の一撃で薙ぎ払おうとする。
「させないよ!」
大剣を使ってネプギアと一緒にその間に割り込むと繰り出された腕の一撃を防ぐ。
不完全とは言っても凄まじい力だ。気を抜くと一瞬で押し切られる程の力である。
マジェコンヌの体には傷がついているのでダメージが入っていることは間違いない。
だが、その傷は攻撃を与え続けない限りは自動で修復されてしまうようだ。
トリックほどの凄まじい回復能力はないようだが連携して攻撃を入れ続ける必要がある。
「これがわたしの最大パワーです! えええいっ!」
巨大注射器を構えたコンパの体から桃色のエネルギーが放出されると
それが収束してハートの形を作り出す。注射器でハートを突くとマジェコンヌに直撃する。
直撃を受けたマジェコンヌが苦しんでいるのを見る限りダメージは入っているようだ。
それにしてもコンパはいつの間に攻撃スキルを習得していたのだろう。
「アタシも負けてられないね! アミューズメントダンス!」
ヨーヨーなどのオモチャを武器に戦うRED。
隠し持っている全てのオモチャを最大限に使った乱舞攻撃である。
たががオモチャと侮ることなかれ、その恐るべき威力を私は何度も見てきた。
「全て、滅ぼ、す…!」
マジェコンヌの腹部にある巨大な口が開くと強力な毒素を含んだブレスが放出される。
「エクステンション!」
「エア・スクリーン!」
ロムが使用したのは単体に効果を及ぼす魔法の効果を全体に拡大する魔法である。
ラムの魔法がこの場にいる味方全員に防御膜を張ってブレスを完全にシャットアウトする。
「この弾幕を避けられるかしら?」
ケイブが大量の火球をマジェコンヌに向けて放つ。
回避することが不可能なほどの火属性の弾幕がその身を焼き焦がす。
「続けていくよ。鬼炎斬!」
凄まじい速度で繰り出されるファルコムの突きがマジェコンヌの体を貫く。
七回の突きを繰り出して最後の八連撃目で敵を斬り上げる剣術の奥義。
各々の技を途切れることなく繋げることでダメージ回復の隙を与えない。
「う、ああ、ああああ!」
十分なダメージは入っていると思われるが、いかに不安定な状態と言えども
一つの世界をまるごと滅ぼすだけの力を持っているマジェコンヌを倒すにはまだ至らない。
繰り出してくるのは力に物を言わせた単純な攻撃ばかりなので回避は難しくない。
「ゲマをくれてやるにゅ」
ブロッコリーは自らの武器であるゲマを何とマジェコンヌに向けて投げた。
投げたゲマが突如巨大化して激突したことで鈍い打撃音が響く。
「この激しい音はどうかな? 激奏リンフォルツァンド!」
5pb.が手に持ったピックで激しくギターをかき鳴らすと爆音の衝撃波が発生した。
「ぁぁあああ…! 滅、び、ぉぉぉ!」
体から闇の波動を放出して凄まじい抵抗を見せるマジェコンヌ。
それをまともに受けた私達は吹き飛ばされるがここで倒れるわけにはいかない。
この場にいる全員が同じ気持ちなのだ。みんなで手を取り合って立ち上がる。
「神速の槍技、お見せしますわ。プープルアセンスバースト!」
一瞬の内に相手の懐に潜り込み、高速の刺突を三連続でお見舞いする槍技の奥義。
防御が弱い部分を正確に貫いたことでマジェコンヌが大きくのけ反る。
「吹っ飛びやがれ! ツェアシュテールング!」
ベールが作り出した隙を見逃さずにブランが強烈な戦斧の一撃を胴体に叩きこむ。
流石にその巨体を吹き飛ばすには至らなかったが転倒させることができた。
「その隙、もらったわ! トルネードチェイン!」
転倒したマジェコンヌにノワールの鋭い斬撃が炸裂する。
高速で接近して一閃を与えると上空から強烈なキックをお見舞いする技だ。
最後に指を鳴らすと鋭い斬撃が追加で襲い掛かり、ダメージを与える。
「うぅぅ…! 破、壊、する…! 全て、壊、して、やる…!」
マジェコンヌはまだ沈まない。
巨大な目に闇の力を収束させるとレーザーを放ってくる。
「その攻撃は通さないわ! トーレントノヴァ!」
エクスマルチブラスターから光属性の極太のレーザーが放たれ、
マジェコンヌが放ったレーザーと激突する。最初は拮抗状態だったが
ユニの力がそれを上回りレーザーを押し返すとマジェコンヌの体を貫通した。
「ぐぅぅう…! う、あああっ!」
「かなり弱ってきたみたいだね。舞、決める時が来たみたいだよ?」
「そうみたいだね。このまま一気に決める!」
私はセレナと、アリアはシエルとハード・ユニゾンを行使する。
シエルとハード・ユニゾンを行使したアリアのプロセッサユニットは蒼い輝きを放つ。
銀と蒼の輝きが調和しているそれはあるモンスターの装備を連想させる作りである。
「「瞬間、響き合い、心交わる! 衝破十文字!」」
金と銀の輝きが交差する。十字を描く形で同時に力を込めた突きをお見舞いする秘奥義。
セレナとハード・ユニゾンを解除するとネプギアと二人で繰り出す秘奥義に繋げる。
「ネプギア、行くよ!」
「はいっ! 舞さん!」
私達はマジェコンヌを挟む形で陣取ると地面に剣を突き刺してシェアの力を解放する。
「「はあああああっ!」」
太陽を模した巨大な魔法陣が現れ、放出されたシェアエナジーがマジェコンヌを包み込む。
「ぐっ、ぐああああっ!」
「これで…!」
「決めます!」
すれ違い様に一閃を加えると背中のプロセッサユニットに力を込めて飛び上がる。
「見せてあげる…! これが!」
「私達の力です!」
「「貫け、武神双天波っ!!」」
私とネプギアは刀身にありったけのシェアを纏わせて力一杯振る。
剣を振ることで放たれたシェアエナジーが螺旋状に絡み合い、敵を貫く光となる。
私達のシェアエナジーの輝きはマジェコンヌの体を一直線に貫いた。
「ぬ…ぐぐぐ…! 器が…持たぬ…!」
マジェコンヌの体が崩れていく。私達の勝ちと言いたいところだが…。
「そんなっ…!」
「まだ、終わってない…!」
私達の攻撃を受けて崩れ去った犯罪神の器から紫色の靄が姿を現した。
「我は…滅びぬ…! 器…! 新たなる、器はっ…!」
壊れた器から出てきたそれが肉体を持たない犯罪神の本体。
それを消滅させないと本当の意味で倒したことにはならない。
私達は攻撃を加えるが物理攻撃、魔法攻撃もまるで効果が見られない。
「我が、収まる、器…。器はここにある…」
犯罪神の本体がギョウカイ墓場の地面に溶け込むと巨大な地震が発生する。
立っていられない程の巨大な地震に身動きすら取れない。
「きゃあっ!?」
「ネプギア!」
あまりの揺れに倒れそうになったネプギアの手を取って何とか踏みとどまる。
「これは…!」
「ギョウカイ墓場と言う土地その物を自分の器にしようとしているの?」
「だとしたら一度撤退した方がいいね。何か対策を講じないと…!」
地震が収まったところで急いでプラネテューヌに撤退しようとするが。
「残念だけど君は居残りだよ?」
聞き覚えのある声が私の耳に入った瞬間、
これまでに感じたことのないほどの激痛が私の体を駆け巡った。
「あああああっ!」
「舞っ!?」
突如響き渡った舞の悲痛な叫びに全員が振り返るとそこにあったのは異様な光景。
舞の胸、即ち心臓に当たる部分から何者かの手が飛び出しているのだ。
「ま、舞さん!」
「きゃはははっ! 犯罪神の器の破壊、お疲れ様~!」
舞の背後に姿を現したのは女神の亡霊、ファントムハート。
「ファントムハート! 舞をどうするつもり!?」
「いいね! その怒りに満ちた表情! 最高だよっ! どうするかって? 私のオモチャになってもらうに決まってるじゃないか。やっとその準備が整ったから舞を迎えに来たんだよ」
「舞さんを離してくださいっ!」
「離せと言われて人質を離すバカはいないよ? 舞には心臓を握りつぶされた時に相当する激痛を与えている。その気になれば本当に心臓を握りつぶすことだってできるけどね。これは舞の痛覚を私が操作しているだけに過ぎない。実際に死にはしないけど、これはこれで相当の激痛だと思うけどね? さて、君も一緒にきてもらおうかな。君と舞の二人が揃った時、救済の歯車が回り始める…!」
「まさか…!」
「君の考えていることで正解さ。下手に逆らうと舞の命の保証はできないよ? 君が私に着いて来てくれれば舞は殺さない。これは天に誓って約束する」
「本当に…?」
「本当さ。自分のオモチャを自分の手で壊すことほど滑稽なことはないからね。ただ、大事な所で君に逆らわれると私の計画が台無しになるから、強引な手段を取らせてもらうよ」
ファントムハートは空いている左手に月の魔術書を顕現させる。
「コンゲラート・ケージ!」
アリアの体が透明な正四面体の檻に閉じ込められるとその中に強烈な冷気が充満する。
「アリアっ!」
「動かないでくれるかな? 君の親友がどうなっても責任は取らないよ?」
「くっ…!」
ファントムハートの言葉にセレナは踏みとどまる。
下手に動けば舞の命が奪われる。この状況で動ける者など誰一人としていない。
檻の中に充満した冷気が晴れるとアリアの体は氷の彫刻となっていた。
「きゃははっ! 随分と綺麗な彫刻ができあがったね! 少し触るだけで壊れてしまいそうなのが唯一の欠点と言った所かな? さて、欲しい物は手に入れたからお暇させてもらうよ。こんな場所に用は無いからね。君達も早く逃げた方がいいと思うよ? 犯罪神の本体はギョウカイ墓場と言う土地に溶け込んだ。つまり、今私達がいるのは…」
ファントムハートは気絶した舞を持ったまま、氷漬けになったアリアを浮かせる。
そして再び発生する巨大な地震にネプギア達は身動きを封じられる。
「犯罪神の体内ってことになるよね? さて、これから楽しいショーの幕開けだ。君達にも楽しんでもらうつもりだから大切な人にもう一度会いたいなら生き延びることだね」
ファントムハートは舞とアリアを闇の中に連れ去っていった。
「舞さん! 舞さあああん!」
大地が激しく揺れる中で立ち上がったネプギアが駆け出そうするがセレナが止める。
「離してください! 舞さんが…!」
「私だって今すぐ追いかけたいよっ…! でも今は逃げることしかできない…! 生き延びないと二人を助けることもできなくなるんだよ!?」
セレナは涙を流していた。自分の大切な親友が二人も亡霊の手に落ちてしまったのだ。
今の自分と同じ気持ちが込められているセレナの言葉にネプギアの体の力が抜ける。
「悔しいけど、セレナの言う通りだよ。生き延びれば二人を助けるチャンスはきっとやってくる! だから、今はここから逃げて落ち着いてから対策を立てよう。みんなも早くっ!」
シエルの言葉に従ってネプギア達は転送ポイントに向かう。
突如強襲したファントムハートの手に落ちた舞とアリアは果たしてどうなるのか。
彼女以外は誰も知らない場所で偽りの救済の歯車が静かに音を立てて回り始める。
第五章・第六章はこれにて終幕となりました。
次回からは外伝「救世の悲槍」に相当する章に入ろうと思います。
どのような展開にするのかはまだ白紙状態なので何とも言えませんが
ここまで目を通してくれた人には最後までお付き合いいただきたいと思います。